全身性エリテマトーデス(SLE)は治る?完治の可能性と寿命・寛解して普通の生活を送る方法

2025年11月27日

「全身性エリテマトーデス」と医師からそう告げられた時、目の前が真っ暗になり、「もう治らないのか」「余命は短いのではないか」と強い不安に襲われたことと思います。

インターネットで検索し、「難病」「一生」といったネガティブな言葉を目にして、さらに恐怖を感じているかもしれません。

しかし、まずは安心してください。

現代医療において、SLEは「不治の病」ではなく、「コントロール可能な病気」へと劇的に変化しています。(参考:厚生労働省(難病情報センター) 1)

医学的な「治る(寛解)」の意味を正しく理解し、適切な治療を行えば、軽症例の場合は病気がない人と変わらない寿命を全うし、仕事や結婚などの普通の生活を送ることは十分に可能です。

この記事では、多くのSLE患者さんの「治るのか?」という切実な疑問に対し、最新の生存率データ、そして薬を減らして自分らしい人生を送るための具体的な道筋を、専門的なエビデンスに基づいて解説します。

全身性エリテマトーデス(SLE)は完治するのか?

まず、最も気になる「この病気は完全に治るのか」という疑問について、医学的な現状と希望をお伝えします。

「完治(治癒)」と「寛解(かんかい)」の決定的な違い

結論から言うと、SLEにおいて「薬を一切飲まなくても、体から病気が完全に消えて二度と現れない」という意味での「完治(治癒)」は、現時点では難しいのが正直なところです。(参考:日本内科学会 4)

しかし、それに代わる目標として「寛解(かんかい)」という状態があります。

寛解とは、以下のような状態を指します。

  • 症状がまったくない
  • 検査数値(尿蛋白や補体価など)が正常範囲で安定している
  • 日常生活になんの支障もない

つまり、体の中に病気の火種はわずかに残っているものの、「治療によって火が完全に消され、煙も出ていない状態」を維持することは十分に可能です。

 多くの患者さんが、この「寛解」の状態を長く維持し、健康な人と変わらない生活を送っています。(参考:順天堂大学附属順天堂医院 2)

専門機関が提唱する「SLEは“治る病気”へ」の真意

日本を代表する医療機関の一つである東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科のWebサイトには、「SLEは“治る病気”となりました」という言葉が記されています(参考:東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科 3)。

この言葉を見て、「完全に薬がいらなくなるの?」と期待する方もいるかもしれません。

この言葉の真意は、以下のような医学的進歩を背景にしています。

  • かつてのように、診断されて数年で命を落とす病気ではなくなった。
  • 適切な治療を行えば、長期的な生存(10年生存率90%以上)が可能になった。
  • 重篤な臓器障害を防ぎ、生活の質(QOL)を維持できるようになった。

つまり、医学的な定義としての「完治」は難しくとも、「人生を脅かす病気ではなくなった」という意味で、SLEは克服可能な病気になったと言えるのです。

なぜSLEは「完治しにくい」と言われるのか

なぜ、完全に治りきらない(薬をやめにくい)のでしょうか。

それは、SLEが「免疫の記憶」に関わる病気だからです。

一度自分自身を攻撃するように誤作動を起こした免疫細胞は、その記憶(自己抗体)を長く保持してしまいます。

治療によって攻撃を「休戦」させることはできても、根本的にその記憶を消去することが難しいため、薬を完全にやめてしまうと、再び攻撃が始まってしまう(再燃する)リスクが残るのです。

だからこそ、今の医療では「無理に完治(薬ゼロ)を目指してリスクを冒す」よりも、「少量の薬で寛解を維持し、平穏な生活を守る」ことが最良の戦略とされています。

寿命と生存率【最新データ】「短命」の誤解を解く

インターネット上にはSLEに関して「寿命が短い」「余命30年」といった古い情報や極端な噂が存在し、患者さんを苦しめています。

ここでは、信頼できる最新データをもとに真実をお伝えします。

5年生存率は95%以上へ。劇的に向上した予後

SLEの治療成績は、この半世紀で劇的に改善しました。

  • 1950年代: 5年生存率は約50%(半数の方が5年以内に亡くなっていました)
  • 現在: 5年生存率は95%〜99%以上に向上しています。(参考:順天堂大学附属順天堂医院 2)

これは、ステロイド薬の適切な使用法が確立されたことや、強力な免疫抑制薬、そして近年登場した生物学的製剤などの新薬による恩恵です。

もはや「診断=死」というイメージは、完全に過去のものです。

現代の死因は「病気そのもの」より「合併症」

現在、SLE患者さんの生命予後を左右するのは、SLEの活動性(炎症)そのものよりも、長期治療に伴う「合併症」に変化しています。(参考:厚生労働省(難病情報センター) 1)

  • 感染症: ステロイド等で免疫が下がっている時の肺炎など
  • 動脈硬化性疾患: 心筋梗塞や脳梗塞など(SLE自体が血管のリスク因子になるため)

逆に言えば、「感染症対策」や「生活習慣病(血圧・コレステロール)の管理」さえしっかり行えば、命に関わるリスクは大幅に下げられるということです。

SLEの治療期間と薬について – 一生飲み続ける必要がある?

「一生薬漬けになるのではないか」「副作用で顔がパンパンになるのが怖い」という不安も大きいでしょう。薬との付き合い方も、昔とは変わってきています。

基本の治療薬(ステロイド・免疫抑制薬・プラケニル)

治療の基本は、過剰な免疫を抑えることです。

  1. 副腎皮質ステロイド(プレドニンなど): 即効性があり強力ですが、長期大量投与は副作用が出やすいため、減らす努力がなされます。
  2. 免疫抑制薬(タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルなど): ステロイドの効果を助け、ステロイドを減量するために併用されます。
  3. ヒドロキシクロロキン(プラケニル): 皮膚・関節症状の改善や再燃予防に有効であり、近年、SLE治療の中心的な薬剤と位置づけられています。

これらの薬は「病気をきれいに抑え、将来の臓器障害を防ぐための道具」です。

副作用を怖がるあまり、必要な薬まで拒否してしまうと、かえって将来の合併症リスクが高まってしまいます。

どれくらいの期間、薬を続けるのか?

治療期間は患者さんごとに異なりますが、一般的には数年以上の長期戦になります。

  • 発症初期から数年間:病気をしっかり抑え込むため、ステロイドを多めに使用し、その後徐々に減量
  • 寛解状態が安定している期間:ステロイドは出来る限り減らし、必要に応じて免疫抑制薬やプラケニルを少量で継続

ごく稀に、主治医の判断で薬を中止(ドラッグフリー)できる方もいますが、それは非常に幸運なケースです。

 ここで最も注意すべきは、「調子が良いから」と自己判断で薬をやめてしまうことです。

これは再燃の最大の原因であり、再燃すると再び大量のステロイドが必要になってしまいます。

「薬はやめられない」ではなく、「少量のお守り代わりの薬で、健康を守っている」と捉えることが大切です。

副作用(ムーンフェイス等)との付き合い方

ステロイドの副作用で有名な脂肪がつき顔が丸くなる「ムーンフェイス(満月様顔貌)」は、女性にとって深刻な悩みです。

しかし、これは薬の量が減れば必ず改善し、元に戻ります。

 一生あの顔のままではありませんので、治療の初期は辛いかもしれませんが、将来の健康のために乗り越えていきましょう。

「普通の生活」は送れるか?仕事・結婚・妊娠のリアル

診断後、人生設計をどう修正すべきか悩む方も多いはずです。

結論から言えば、いくつかの注意点を守れば、SLEであっても多くのライフイベントを諦める必要はありません。

仕事・就労の継続と周囲への理解

SLE患者さんの多くが、仕事を続けています。(参考:札幌医科大学 5)

ただし、SLEは「疲れやすい(易疲労性)」という特徴があります。

また、紫外線に当たると悪化するため、屋外作業よりは事務職などの屋内業務が望ましいでしょう。

 産業医や職場の上司に「過労やストレスが悪化の原因になること」「通院への配慮が必要なこと」を伝え、無理のない働き方を相談することをおすすめします。

【女性の悩み】妊娠・出産は「計画的」なら可能

かつてSLEは「妊娠は諦めたほうがいい」と言われることもありましたが、現在は大きく変わりました。(参考:日本内科学会 4)

「病気が落ち着いている(寛解している)」状態で、「妊娠・授乳に影響の少ない薬に切り替えている」ならば、妊娠・出産は十分に可能とされています。

日本の専門機関でも、多くのSLE合併妊娠の管理が行われています。

 重要なのは「計画妊娠」です。

病気が暴れている時期の妊娠は母子ともに危険なため、必ず主治医と相談してタイミングを決めましょう。

日常生活で「やってはいけないこと」と「やるべきこと」

「治った(寛解した)」状態を維持するために、日常生活で以下のことを心がけてください。

  • 絶対に避けるべきこと:
    • 強い紫外線: 海水浴や真夏の長時間外出は避け、日焼け止めや帽子・日傘を常備してください。
    • 勝手な断薬: 命に関わる再燃を招きます。

  • 積極的に行いたいこと:
    • 十分な睡眠と休養: 疲労は病気の悪化要因です。
    • バランスの良い食事と適度な運動: 体力を維持し、動脈硬化のリスクを下げます。
      ストレスマネジメント: 趣味やリラクゼーション、カウンセリングなどを活用し、心の負担を軽くしましょう。

主治医との付き合い方 – 共に歩くパートナー

SLEは長く付き合う病気です。

主治医との関係は「治療する側」と「される側」という上下関係ではなく、「自分の人生を守るチームメイト」と考えるとよいでしょう。

  • 気になる副作用や不安は、我慢せずに伝える
  • 治療の目標(仕事を続けたい、妊娠したい、旅行に行きたいなど)を共有する
  • 納得できない場合は、遠慮せずに質問する

「今は数値をどこまで下げたいのか」「将来妊娠したいがどうすればいいか」など、自分の希望を医師に伝え、目標を共有することが大切です。

 最近は「Treat to Target(T2T)」といって、明確な目標数値を設定して治療する考え方が広まっています。

受け身にならず、自分の人生を守るパートナーとして主治医と信頼関係を築きましょう。

新たな治療法を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。

日本では全身性エリテマトーデス(SLE)でお悩みの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。

例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

・最新の治療をいち早く受けられる

・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる

・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。

実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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全身性エリテマトーデス(SLE)に関するよくある疑問

全身性エリテマトーデス(SLE)に関するよくある疑問を紹介します。

Q1. 芸能人や有名人で治った人はいますか?

完全に「治った(薬がいらなくなった)」と公表している例は少ないですが、病気と共存しながら第一線で活躍している方は世界中にいます。

 例えば、アメリカの歌手セレーナ・ゴメスさんはSLEを公表し、腎臓移植や治療を受けながら活動を続けています。

彼女のように、適切な治療を受けながらキャリアを継続することは可能です。

Q2. SLEは難病指定ですか?医療費助成は?

はい、指定難病(告示番号49)に認定されています。

 重症度分類で一定以上の症状がある場合や、軽症でも高額な医療費がかかる場合は、医療費助成の対象となります。

申請することで経済的な負担を大きく減らせますので、病院の相談窓口や保健所で確認してください。

Q3. ストレスで悪化するというのは本当ですか?

本当です。ストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、免疫システムに悪影響を与える可能性があります。

 「無理をしない」「嫌なことは避ける」勇気を持つことも、SLEの重要な治療の一つです。

まとめ – 「完治」にこだわらず、「自分らしい人生」を取り戻そう

全身性エリテマトーデス(SLE)は、確かに「完治(病気の消失)」させることは難しい病気です。

しかし、医学の進歩により、「寛解(病気を眠らせた状態)」を維持し、天寿を全うできる病気になりました。

  • 昔のイメージ(短命・不治)は捨ててください。 生存率は95%以上に改善しています。
  • 薬は「敵」ではなく、あなたの普通の生活を守る「盾」です。
  • 仕事も、結婚も、出産も、諦める必要はありません。 計画的に進めれば叶えられる可能性があります。

病気と闘って「完全に消そう」とするのではなく、「上手になだめて、共に生きていく」という気持ちに切り替えた時、不安は少し軽くなるはずです。

もし、まだ体の不調や不安が続いている場合は、決して一人で悩まず、リウマチ科や膠原病内科の専門医を訪ねてください。

正しい診断と治療が、あなたの未来を明るく照らしてくれます。

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参考資料・文献一覧
1.厚生労働省(難病情報センター) https://www.nanbyou.or.jp/entry/215
2.順天堂大学附属順天堂医院 https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/collagen/disease/disease02.html
3.東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科 https://ryumachi.umin.jp/cli/SLE.html
4.日本内科学会 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/112/4/112_674/_pdf
5.札幌医科大学 https://web.sapmed.ac.jp/rhe/sle.html
6.東京都立小児総合医療センター https://www.tmhp.jp/shouni/section/internal/nephrology-08.html

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