うつ病とは?症状と治療方法について

2020年8月18日

現代日本は、ストレス社会といっても過言ではありません。そのため、私達は日々の暮らしの中でストレスをうまく解消させながら生活をしています。

ただ、なかにはストレスにさらされ続けてうつ病という心の病気を患ってしまった人も少なくありません。

今回は、決して他人事ではない「うつ病」について詳しく解説します。

うつ病は主に3タイプに分けられる

一般的にうつ病は、気分が落ち込む、憂鬱といった「抑うつ状態」が重症な場合に呼ばれる名称です。

そしてうつ病は、主に「身体因性うつ病」「内因性うつ病」「心因性うつ病」の3タイプに分けられており、それぞれ特徴が異なります。

1. 身体因性うつ病

身体に起こった異常が要因で引き起こされるうつ病のことです。

主に、アルツハイマー型認知症、甲状腺機能低下症、副腎皮質ステロイド系の薬剤がうつ病を引き起こすと考えられています。

2. 内因性うつ病

もともと持って生まれた脳によって引き起こされるものであり、アメリカでは「メランコリー型うつ病性障」とも呼ばれています。中高年に多いと考えられています。

3. 心因性うつ病

仕事や経済的なストレス、対人関係のトラブルが要因で引き起こされるものです。ストレスが多い環境に長時間さらされることで、過度に交感神経が高まってしまった結果、心因性のうつ病が発症してしまうと考えられています。

うつ病に見られる主な症状

うつ病の主な症状

うつ病を発症している人、またはうつ病になりそうな人には特有の症状があります。

以下に示すのは、うつ病に多くみられる症状です。

当てはまる項目が多い人ほど、うつ病になりやすい状態もしくは、うつ病の領域に足を踏み入れている可能性が高いと考えられます。

まずはどれくらい当てはまるのかを確認してみてください。

1. 抑うつ気分が強い

抑うつ気分とは、

  • 朝は気分が落ち込む
  • 1日中気分が上がらない
  • 突然悲しい気持ちになる
  • ちょっとしたことで憂鬱な気分へと変わる
  • 自分に対して希望がもてない

といった状態を指します。

うつ病になる人は、抑うつ気分が強くこれらが顕著に表れる傾向があります。

2. 思考力が低下してしまう

うつ病は、自身の集中力を低下させ、注意力を散漫させます。

そのため、大事な決断でもないにも関わらず決められなかったり、人の話が耳に入ってこないため理解が乏しくなったりする可能性があります。

仕事では、能率や効率が低下しやすくなると考えられています。

もし最近自分の仕事効率が落ちていたり、人の話が耳に入ってきにくくなっていたりするなら、それはうつ病の兆候かもしれません。

3. 意欲が低下する

うつ病は、その人のやる気や意欲にも影響を及ぼします。

たとえば休みの日に好きなことをやってリフレッシュしていたはずなのに、ある日突然それをやる気すら起きなくなってしまうのはうつ病の典型的な症状です。

ほかにも「人と話すことが面倒でつまらないと感じる」「テレビや新聞、服といった娯楽に面白みや興味を感じなくなった」「休みの日なのに仕事のことを考え、焦りや落ち着きがなくなり、休もうという気さえ起きなくなる」といった症状も引き起こされます。

休んだはずなのに休んだ気になれていない場合は、うつ病の発症へと近づいているかもしれません。

4. 睡眠が障害される

うつ病の人は、不安やストレスを抱えている度合いが強いため、常に交感神経が優位な状態といっても過言ではありません。

しかし、そのような状態が続くと夜眠れない、何度も目を覚ます(中途覚醒)、夜遅く眠ったにもかかわらず朝早く起きる(早期覚醒)と、体にとってよくない症状がではじめます。

結局寝た気がせず、疲れもストレスも軽減していないという状態が続きます。

5. 食欲の増加・低下が激しい

うつ病の症状には食欲の過度な増加・低下もみられます。

そのため、「食欲がわかない日が続く」「好きな食べ物を見ても食べたいと感じない」「逆に今まであまり食べなかった甘いものを欲する」「気がついたら何か食べたくなる」といった状況は、あまり好ましい状況ではありません。

ほかにも、ダイエットもしていないのに体重が気づかないうちに激減してしまった場合なども、うつ病の典型的な症状として挙げられています。

ストレスを抱えているなと感じたら、食事に対する意欲を自分なりに分析してみるとよいでしょう。

6. 疲労や倦怠感が取れない

「身体が常に重たい・だるさを感じる」「寝ても疲れが取れない」「普段と同じ仕事量・運動量のはずなのに、極度に疲れてしまう」といった症状が感じられた場合も、うつ病である可能性があります。

そもそもうつ病は睡眠障害や食欲低下を引き起こす可能性も持っていますので、疲れやすく、回復しにくい環境であることは至極当然といえます。

疲労の蓄積は思考も鈍らせてしまうため、無理は禁物です。

7. ホルモンの異常をきたしてしまう

うつ病はホルモンの異常をきたす可能性があります。

男性であれば「勃起障害」「性欲の低下」が起き、女性は「月経不順」を起すと考えられます。

うつ病の人全員当てはまることではありませんが、もしこのような状態が見受けられた場合はストレスの環境に身を置きすぎていないか振り返ってみる必要があるでしょう。

8. 各臓器に違和感を覚えるようになる

人はストレスを過度に感じる環境に身を置きすぎると、体内の臓器に違和感を覚えるようになると考えられています。

うつ病の人にとくに多いのが以下の症状です。

  • 胃の不快感・痛み
  • 息苦しさ・呼吸困難感
  • 暑いわけではないのに発汗が止まらない
  • 便秘・腹痛
  • 関節が痛む
  • 頭痛(鈍い痛み)、頭が重く感じる

このように、うつ病が引き起こす症状はさまざまです。人によっては症状の出やすさ、出にくさも分かれるため、ここに挙げた症状が出たからといって必ずうつ病であるとはいえません。

ただ体に異常が起きていることに変わりはないので、今までの環境や生活スタイルに無理がなかったかを振り返るきっかけにしましょう。

うつ病になりやすい人ってどういう人?

上述したように、うつ病はさまざまな要因から引き起こされやすいものであると考えられています。なかでも、環境の変化はうつ病の要因を作り出すきっかけになります。

以下のような事象がその代表例として挙げられています。

うつ病の要因の代表例
喪失体験 近親者の死、離別
身体関連 病気・怪我による入院、事故(大小問わず)
家庭関連 結婚、離婚、出産、夫婦喧嘩、子育て
仕事関連 昇進、降格、長期出張・転勤、異動、
仕事上のミス、社内いじめ、リストラ
お金関連 借金、ローン返済、税金、年金問題、養育費、生活費の工面

大人になると、仕事やお金関係でストレスを抱えることが多くなります。もし上記のような事象が起きたときは、生活習慣だけでも乱れないように注意しましょう。

またうつ病は、その人が持つ性格や性質によっても引き起こされやすさが変わるともいわれています。

個人差はあるものの、以下のような性格の持ち主はうつ病のリスクが高い可能性があるので、気をつけましょう。

  • 社交的でかつ善良
  • 義務感、責任感が強い
  • 完璧主義
  • 几帳面で細かいところまで気になってしまう
  • 仕事や物に対するこだわりが強い
  • 仕事熱心
  • 常識から外れたことが苦手
  • 他者と円満な関係を保とうとする
  • 他者からの評価がとても気になる
  • 何事も0か100で決めつけてしまう

うつ病の診断基準・治療法

現代のうつ病に対する診断基準には、アメリカ精神医学会が公表している「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」が用いられています。

DSM-5で用いられる表
1. ほとんど毎日、1日中ずっと気分が落ち込んでいる。
2. ほとんど毎日、1日中ずっと何に対する興味もなく、喜びを感じない。
3. ほとんど毎日、食欲が低下(増加)し、体重の減少(増加)が著しい。
4. ほとんど毎日、眠れない、もしくは寝すぎている。
5. ほとんど毎日、話し方や動作が鈍くなったり、イライラしたり、落ち着きがなくなったりする。
6. ほとんど毎日、疲れやすかったり、やる気が出なかったりする。
7. ほとんど毎日、自分に価値がないと感じたり、自分を責めるような気持ちになる。
8. ほとんど毎日、考えがまとまらず集中力が低下して、決断できない。
9. 自分を傷つけたり、死ぬことを考えたり、その計画を立てる。

この中から、1または2を含む5つ以上の症状があり、かつ2週間以上続いていると判断された場合、うつ病と診断されます。[注1]

[注1]厚生労働省:みんなのメンタルヘルス うつ病
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html

うつ病に効果的な6つの治療法

うつ病の治療法6つ
現在は、うつ病に対して以下の6つの治療法が適用されます。

うつ病の治療法
薬物治療 SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)を中心に、睡眠導入剤や抗不安薬などが使用される。継続的な服用が大事。
積極的な休養
環境の調整
薬物治療と併用して行われる治療法の1つ。まずはストレスを感じやすい環境から離れて心と体を休ませることに専念する。休んだ後もストレスがかかりにくい部署に異動を希望し、就業時間を少しずつ伸ばしてもらえるように申請することも必要。
精神療法 うつ病の原因や過度なストレスを引き起こした要因についてあえて振り返り、対処法を学んで再発を防ぐ目的で行われる治療法。主に、悲観的な物事の捉え方や考え方の癖を改善させる「認知行動療法」と、対人関係における問題を解決させる「対人関係療法」の2つに分けられる。
TMS(経頭蓋磁気刺激療法) 専用の機器で磁場を発生させて、電流による神経細胞の刺激を促す療法のこと。TMSと称される場合が多い
m-ECT(修正型電気けいれん療法) 希死念慮がとくに強い人や、重篤なうつ病の人、副作用の関係で薬物療法が難しい人に対して行われる電気刺激を用いた療法。
運動療法 薬物治療と併用して行われる。主に有酸素運動(心臓に負荷がかからない程度の運動)を行い、心と体をリフレッシュさせることが目的。

うつ病の治験とは?

うつ病に対する治験は、さまざまな所で行われています。

治験のメリットは通常受けられない治療が試せる点にありますが、一方で完全に薬剤の有効性や安全性が確立されていないというデメリットも存在します。

うつ病専門の治験を受ける際は、必ず担当医に相談しましょう。

うつ病は誰でもなり得る!心と体を大事に!

どんなに屈強な人でも、ストレスの多い環境に長期間さらされてしまえば、うつ病になる可能性は充分にあります。大事なことは、体や心に起きた異常をたまたまだと思わずに、その環境から一旦離れるようにすることです。

命よりも大事なものはこの世にありません。自分の心と体を大事にしながら、仕事や学校に励みましょう。

ここで解決!治験に関するFAQ

治験とはなんですか?
治験とは、『医薬品の製造販売承認申請の際に提出すべき資料のうち臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施』、つまり、「国から薬としての販売承認を受けるために行う臨床試験」のことです。
治験ボランティアはアルバイト/バイトなのですか?
法的にはアルバイト/バイトではありません。治験ボランティア参加は負担軽減費(謝礼金)の支給がありますが、時間的拘束や、交通費などの負担を軽減する目的でお支払いするもので、治験協力費ともよばれます。
治験って安全ですか?副作用はありませんか?
治験薬は事前に生体への安全性を確認し、問題ないと予想されるものだけが使用され、治験実施についても、国の基準に沿い、参加者の方の安全に配慮した綿密な治験実施計画書に基づいて慎重に進められています。
健康被害が生じた場合は?
治験薬の副作用などにより、何らかの健康被害が生じた場合には、治験薬との因果関係が否定できない場合に限り、治験依頼者(製薬メーカー)から補償を受けることができます。補償の扱いは治験により異なりますので、それぞれの治験説明の際、医師や治験コーディネーターが詳しくお話しします。
都合のいい日程で参加ができますか?
治験の日程は予め決められております。決められた期間内での選択できる場合は、その日程内で調整していただきます。