花粉症・アレルギー性鼻炎の症状とは?

2020年8月19日

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会が公表している「鼻アレルギー診療ガイドライン2020」によると、 アレルギー性鼻炎全体の有病率は2008年が39.4%だったのに対し、2019年は49.2%まで増加しています。[注1]

ここではアレルギー性鼻炎の症状について解説します。

[注1]日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会:2020年版鼻アレルギー診療ガイドライン[pdf]
http://jiao.umin.jp/news/download/public_comment200320.pdf

アレルギー性鼻炎はアレルギー性疾患の1つ

アレルギー性鼻炎はアレルギーによって引き起こされる疾患の1つです。

主に「季節性アレルギー性鼻炎」と「通年性アレルギー性鼻炎」に分かれています。どちらも同じアレルギー性鼻炎ですが、原因や引き起こしやすい症状が異なります。

季節性アレルギー性鼻炎=花粉症

季節性アレルギー性鼻炎とは、通称「花粉症」のことです。

花粉症は、「スギ」「ヒノキ」「ブタクサ」といった花が持つ花粉が、鼻や目の粘膜を刺激することでアレルギー反応を起こす疾患です。

一般的には、これらの花が咲く時期、春や秋にだけ症状が現れるものですが、人によっては複数の原因にアレルギー反応が出てしまう特性を持っており、1年中症状に悩まされる場合があります。

また花粉症には、「鼻水・くしゃみタイプ」「鼻詰まりタイプ」「混合タイプ」があり、症状ごとに適用される治療法が変わります。

自分がどのタイプの花粉症なのかを知っておくと治療もスムーズに進むでしょう。

花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)の主な症状

花粉症の症状は「くしゃみや鼻水が絶えず出る」「鼻が詰まり、上手く呼吸ができない」といったものがほとんどです。

ちなみに、花粉症によるくしゃみは、何回も立て続けに起こりやすく、鼻水は透明でさらさらしているという特徴が見られます。

花粉症を引き起こすメカニズム

季節性アレルギー性鼻炎のメカニズム
鼻づまり、くしゃみなどを引き起こすメカニズムは以下の通りです。[注2]

  • 空気中に浮遊している花粉(アレルギー物質)が鼻に侵入する
  • 花粉(アレルギー物質)が鼻の細胞内のマスト細胞にくっつく
  • マスト細胞が「ヒスタミン」「PAF」「トロンボキサン」「ロイコトリエン」
    といった免疫物質を放出する
  • 放出された免疫物質が鼻の神経や血管を刺激する

知覚神経を刺激した場合は、くしゃみや鼻水の症状、鼻甲介を刺激した場合は、鼻詰まりの症状がでます。

また、花粉症は目にも症状を引き起こします。

「目がかゆみ」「目の充血」「涙が止まらない」といった症状は以下のようなメカニズムで起こることがわかっています。

目のかゆみ、充血を引き起こすメカニズムは以下の通りです。[注2]

  • 空気中に浮遊している花粉(アレルギー物質)が目に侵入する
  • 花粉(アレルギー物質)が目の粘膜内のマスト細胞にくっつく
  • マスト細胞が免疫物質を放出する
  • 放出された免疫物質が目の神経や血管を刺激する

知覚神経を刺激した場合は目のかゆみ、血管を刺激した場合は充血、涙腺神経を刺激した場合は涙が止まらなくなるなどの症状が表れます。

さらに、花粉症は、「口喝」「呼吸苦」「味覚障害」「睡眠障害」「皮膚のかゆみ」「倦怠感」「頭痛」といった諸症状も引き起こすことで有名です。なかでも口喝、呼吸苦、味覚障害は鼻が詰まり口呼吸となることで引き起これる症状です。

このような症状が引き起こされる前に、クリニックで診断を受けるようにしましょう。

[注2]アレジオン
https://www.ssp.co.jp/alesion/hayfever/

通年性アレルギー性鼻炎は、年中引き起こされるアレルギー疾患のこと

通年性アレルギー性鼻炎は、花粉症と異なり、年中アレルギーの原因となる物質があるため、症状も年中引き起こされてしまうのが特徴です。

以下の症状が表れます。

部位 症状
くしゃみ、鼻水が止まらない、鼻詰まり
充血、目のかゆみ、涙が止まらなくなる
そのほか 喉のかゆみ・違和感、咳、喘息の悪化、頭痛、アトピー性皮膚炎

花粉症と大きく異なる症状は

  • 喘息やアトピー性皮膚炎が合併症として引き起こされる割合が高い
  • 喘鳴(ヒューヒューという呼吸音)や皮膚のかゆみを伴うことが多い

という点です。
とくに口が渇きやすい人や、ダニの駆除を定期的にしない家に住んでいる人に多いと考えられています。

アレルギー性鼻炎になりやすい人の4つの特徴

季節性、通年性というように、2つのタイプに分かれるアレルギー性鼻炎ですが、なりやすい人の特徴は共通しています。

以下に示すのはアレルギー性鼻炎になりやすい人、悪化しやすい人の4つの特徴です。

当てはまる項目が多い方は、今から積極的にアレルギー対策をしていきましょう。

1. 疲労・ストレスが溜まっている人

自律神経を乱し、疲労を蓄積させてしまう睡眠不足やストレスもアレルギー性鼻炎の原因になると考えられています。

なぜなら、睡眠不足やストレスは身体の回復力を低下させてしまうからです。また、ストレスや疲労によって自律神経が乱れてしまい、アレルゲンに過敏に反応しやすくなる体へと変化してしまいます。

対策として、日頃から規則正しい生活を心がけましょう。とくに睡眠は身体と脳を休ませる重要な行動です。睡眠時間を削ることだけはやめましょう。

眠れなかったとしても目を閉じて何もしないだけでも休息になります。

2. 食生活が乱れている人

睡眠と同じように、食生活の偏りもアレルギー性鼻炎の原因になりえます。

一般的に高たんぱく質、高カロリー、高脂肪となる献立は、アレルギー体質を促進させると考えられています。インスタント食品やスナック菓子などが代表例です。

対策としては、卵、牛乳、大豆、加工食品や食品添加物を多く含む食事にならないように気をつけ、バランスの取れた食事を心がけるようにしましょう。
嗜好品のお酒、たばこ、香辛料なども控えることをおすすめします。

3. 家系的にアレルギー体質の人

アレルギーの体質かどうかは遺伝が関係しているとされています。そのため、もし遺伝的にアレルギー体質だとわかっているのであれば、花粉やハウスダストなどのアレルゲンとなるものを遠ざける必要があります。

生活上の自己管理を心がけることができれば、たとえアレルギー体質であっても発病しないことも考えられます。

4. 都会や車の交通量が多い地域に住んでいる人

都会や車の交通量が多い地域に住んでいる人は、ほかの地域と比べて排気ガスのなかに含まれる微粒子と一緒に花粉を吸いこみやすく、そのせいでアレルギー反応が出やすくなると考えられています。

都会の場合ほとんどがアスファルトで道が構成されています。アスファルトは、落ちた花粉が風で舞い上がりやすい環境を作り出します。

一方、アスファルトの道が少ない田舎は、花粉が地面に落ちても土に吸収され、再び舞い上がる頻度が少ないため、アレルギー性鼻炎を起こしにくいと考えられています。

都会に住んでいる方は、外出時に帽子、マスク、眼鏡を必ず装着するなど対策をしましょう。また家の中にアレルゲンを持ち込まないように、帰宅後すぐに着替えることも有効です。

ほかにも鼻うがい、洗濯物は乾燥機で乾かす、夜に部屋の換気を行う、ダニが繁殖しやすいカーペットは敷かない、ぬいぐるみを置かないといった工夫も有効でしょう。

アレルギー性鼻炎の治療法

アレルギー性鼻炎の治療方法

アレルギー性鼻炎の治療法は症状の傾向によって異なります。

鼻水・くしゃみタイプは抗ヒスタミン薬が、鼻詰まりタイプはロイコトリエン拮抗薬、混合タイプもしくは重症化してしまった場合はステロイド剤導入などが考えられます。

ただ、これらの治療薬はすべて症状が起きてからの対処する「対症療法」といわれており、アレルギー性鼻炎を根本的に治す方法ではありません。

根本的な治療を望む方は体を徐々にアレルゲンに慣れさせていく「減感作(げんかんさ)療法」がおすすめです。

花粉症においては、花粉のシーズンが訪れる約2週間前から薬の服用を始める「初期療法」を行うことが有効と考えられています。

これにより症状が出るのを遅らせたり、症状を軽くしたりできる可能性が高くなります。

通年性アレルギー性鼻炎は、まずハウスダストやダニといったアレルゲンを除去することが根本的な治療へと繋がります。以下を参考にアレルゲンを除去してみましょう。

  • 部屋の湿度はダニが活動しづらい50%前後、室温は20~25℃に保つ
  • 布団やベッドのマット、枕にカバーをつけてダニを通さないようにする
  • 掃除機は週2回以上、1㎡に対し20秒掃除機をかけると効果的

アレルギー性鼻炎と風邪の見分け方

アレルギー性鼻炎の症状は、風邪の症状と似ており、季節がかぶっているとアレルギー性鼻炎なのか風邪なのか見分けがつかなくなってしまいます。疾患にあった対症療法を施すためにも、以下にまとめたアレルギー性鼻炎と風邪の違いを参考にしてください。

アレルギー性鼻炎 風邪
鼻の症状 ・透明のさらっとした鼻水
・鼻づまり
・発作的で連発するくしゃみ
・粘りっぽい黄色い鼻水
・鼻づまり
・くしゃみ
目の症状 ・目のかゆみ
・充血
・涙が止まらなくなる
ほとんど見られない
鼻以外の症状 ・喉のかゆみと違和感
・咳
・頭痛
・喘息の悪化(通年性)
・アトピー性皮膚炎(通年性)
・発熱、悪寒
・喉の痛み
・痰が絡む咳
・関節痛
期間 ・年中
(通年性アレルギー性鼻炎)
・花粉シーズン中
(季節性アレルギー性鼻炎)
個人差はあるものの、
10日前後でおさまる

アレルギー性鼻炎の治験

治験とは、新しく開発された薬の安全性や有効性を確認するために行う臨床試験のことです。アレルギー性鼻炎に対する新薬も、この治験で認証されてから販売されます。

一般的に治験を受ける人は「治験ボランティア」というのですが、アレルギー性鼻炎といった疾患に対する効果があるかどうかを調べる場合は、あえてアレルギー性鼻炎の患者にボランティアを依頼します。新薬をいち早く試せるといったメリットがある一方で、まだ認証されていない薬であるため安全性や有効性に不安が残るというデメリットもあります。

治験を受ける際は、メリットもデメリットも理解したうえで申し込みましょう。

アレルギー性鼻炎は予防と早めの治療が大事!

アレルギー性鼻炎はどの症状においても対策や予防策が立てられる疾患です。アレルギー性鼻炎の症状でお悩みの方は、予防を徹底させましょう。

もしアレルギー性鼻炎になってしまった場合は、早めにクリニックに受診することをおすすめします。

ここで解決!治験に関するFAQ

治験とはなんですか?
治験とは、『医薬品の製造販売承認申請の際に提出すべき資料のうち臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施』、つまり、「国から薬としての販売承認を受けるために行う臨床試験」のことです。
治験ボランティアはアルバイト/バイトなのですか?
法的にはアルバイト/バイトではありません。治験ボランティア参加は負担軽減費(謝礼金)の支給がありますが、時間的拘束や、交通費などの負担を軽減する目的でお支払いするもので、治験協力費ともよばれます。
治験って安全ですか?副作用はありませんか?
治験薬は事前に生体への安全性を確認し、問題ないと予想されるものだけが使用され、治験実施についても、国の基準に沿い、参加者の方の安全に配慮した綿密な治験実施計画書に基づいて慎重に進められています。
健康被害が生じた場合は?
治験薬の副作用などにより、何らかの健康被害が生じた場合には、治験薬との因果関係が否定できない場合に限り、治験依頼者(製薬メーカー)から補償を受けることができます。補償の扱いは治験により異なりますので、それぞれの治験説明の際、医師や治験コーディネーターが詳しくお話しします。
都合のいい日程で参加ができますか?
治験の日程は予め決められております。決められた期間内での選択できる場合は、その日程内で調整していただきます。