健康診断の結果を見て、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値に印がついていた。医師から生活習慣の改善を勧められたものの、一体何から手をつければ良いのかわからない。
そんな漠然とした不安や戸惑いを抱えている方も少なくないかもしれません。
この記事では、HbA1cの数値を下げるための具体的な方法を解説します。食事や運動といった日々の生活習慣の見直しはもちろん、改善にかかる期間の目安、そして何よりも大切な「無理なく、長く続けるためのコツ」に焦点を当てます。
ご自身の健康と向き合い、より良い未来への第一歩を踏み出すための知識がここにあります。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
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HbA1cとは?血糖値との違いを理解する
対策を始める前に、まずはHbA1cがどのような指標なのかを正しく理解しておくことが重要です。
HbA1cが示す数値の意味
HbA1cは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が、どのくらいの割合でブドウ糖と結合しているかを示す指標です。
血液中のブドウ糖が多い状態、つまり高血糖の状態が長く続くほど、ヘモグロビンとブドウ糖は結合しやすくなります。
厚生労働省のe-ヘルスネットは、HbA1cを過去1〜2か月の血糖コントロール状態を評価する指標と説明しています※1。この数値は、検査時点から過去1〜2ヶ月間の血糖コントロールの状態を反映しているため、検査当日の食事や運動などの影響を受けにくいという特徴があります。
血糖値との関係性
血糖値は、採血した時点での血液中のブドウ糖濃度を直接測定したものです。食事や運動によって短時間で大きく変動するため、「点」のデータと言えます。
平均血糖値を反映するHbA1cの特性
一方、HbA1cは過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均的な状態を示す「線」のデータです。日々の血糖値の変動をならした成績表のようなもの、と考えると分かりやすいかもしれません。
そのため、長期的な血糖コントロールの評価にはHbA1cが非常に重要な指標として用いられます。
HbA1cの基準値とリスク
健診結果でよく使われるHbA1cの区分は、次のように整理できます。
この数字は出どころが2つに分かれています
区分のうち「5.6%」は、厚生労働省の特定健診で血糖高値とされる基準です※3。一方「6.5%」は、日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024が「糖尿病型」と定める基準です。
同じガイドラインでは、5.6〜5.9%はブドウ糖負荷試験(甘い液を飲んで血糖の上がり方を調べる検査)を行うことが望ましい範囲、6.0〜6.4%は同じ検査が強く推奨される範囲とされています※2。上の区分では6.0〜6.4%が抜けていますが、この範囲はむしろ検査を勧められる層にあたります。
HbA1cだけで糖尿病と診断されるわけではありません
糖尿病診療ガイドライン2024は、HbA1cだけを繰り返し測って診断することを認めていません。2回の検査のうちの1回は、必ず血糖値で確認する必要があります。健診でHbA1cだけが高かった場合は「糖尿病疑い」として3〜6ヶ月以内に血糖値とHbA1cを再検査する、という流れになります※2。
数値が基準を超えている状態を放置すると、血管が傷つきやすくなり、将来的に糖尿病の合併症である網膜症、腎症、神経障害や、さらには心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気のリスクを高めることが知られています※3。
HbA1cを下げるにはどのくらいの期間が必要か?
生活習慣の改善を決意したとき、多くの方が気になるのが「どれくらいの期間で効果が現れるのか」という点でしょう。
改善期間の目安と個人差
HbA1cは過去1〜2ヶ月の血糖値の平均を反映するため、生活習慣を改善しても数値に変化が現れるまでには少し時間がかかります。一般的に、食事や運動の改善を始めてから、数値として効果が確認できるまでには2〜3ヶ月程度かかるとされています。
この2〜3ヶ月という単位は、医療現場の判断基準とも一致します。糖尿病診療ガイドライン2024は、インスリンの分泌が保たれている場合、十分な食事療法と運動療法を2〜3ヶ月間行っても目標の血糖値に届かないときに薬物療法を検討する、という流れを示しています※4。
もちろん、もともとの数値や生活習慣、改善への取り組み方によって個人差は大きいため、これはあくまで目安です。すぐに結果が出なくても焦る必要はありません。
1ヶ月ごとの増減に一喜一憂しなくていい理由
ここまでに出てきた3つの数字を並べると、ひとつの構造が見えてきます。HbA1cが映すのは過去1〜2ヶ月の平均※1。生活習慣の効果を判定する単位は2〜3ヶ月※4。健診でHbA1cだけが高かったときの再検査の間隔は3〜6ヶ月※2。いずれも1ヶ月より長い時間で動く設計になっています。
つまり、1ヶ月で数値がほとんど動かなかったとしても、それは取り組みが無駄だったことを意味しません。まだ平均が入れ替わりきっていないだけ、という可能性が十分にあります。評価の物差しを2〜3ヶ月に合わせておくと、続ける負担はかなり軽くなります。
短期的な努力と長期的な継続
大切なのは、短期的な目標達成に一喜一憂するのではなく、改善された生活習慣を長期的に継続していくことです。一時的に数値を下げても、元の生活に戻ってしまえばHbA1cは再び上昇してしまいます。
体重を落とすことと同じで、急激な変化は体に負担をかけ、リバウンドの原因にもなりかねません。無理のない範囲で、着実に続けられる方法を見つけることが、最終的に健康を維持する上で大切なポイントになります。
減量は「何キロ」より「何%」で考える
糖尿病診療ガイドライン2024がまとめた解析では、過体重・肥満を伴う2型糖尿病で体重が5%未満しか減らなかった場合は血糖コントロールの有意な改善が得られず、5%以上減った場合に有意な改善が得られました※5。体重70kgなら3.5kgが目安です。急激に落とす必要はなく、この幅を数ヶ月かけて維持できるかどうかが分かれ目になります。
食事療法でHbA1cを効果的に下げるポイント
HbA1cを下げるための基本は、食後の血糖値の急上昇を抑えることです。日々の食事で意識したい具体的なポイントを紹介します。
血糖値の急上昇を抑える食べ方の工夫
何から手をつけて良いか分からない場合は、まず「食べ方」を見直すことから始めてみるのがおすすめです。
食物繊維を最初に摂る「ベジタブルファースト」
食事の最初に野菜や海藻、きのこ類など、食物繊維が豊富なものから食べる方法です。食物繊維が後から来る糖質の吸収を穏やかにしてくれるため、食後の血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。
日本糖尿病学会の学会誌に掲載された総説でも、野菜を米飯の前に食べることで食後の血糖上昇が有意に抑えられた試験と、2型糖尿病の患者101名を対象に毎日野菜から食べる指導を行い、2年間にわたりHbA1cをより良好に維持できた比較試験が紹介されています※6。
まずはいつもの食事に、野菜の小鉢やサラダをプラスし、それを最初に食べることから試してみてください。
よく噛んでゆっくり食べる習慣
早食いは、満腹感を得る前に食べ過ぎてしまう原因となり、血糖値の急上昇にもつながります。厚生労働省のe-ヘルスネットは、速食いの習慣がある人はBMIが高く、一口30回噛む「噛ミング30」運動が提唱されていると紹介していますが、一口30回噛むことは必ずしも容易に実践できる習慣ではないとも記しています※7。
一口ごとに箸を置く、一口30回噛むことを意識するなど、時間をかけてゆっくり食事を楽しむ習慣をつけましょう。回数を数えることが目的化して食事が苦痛になるくらいなら、箸を置くだけでも構いません。
食事に時間をかけることで、少量でも満足感を得やすくなるという利点もあります。
食材選びで意識したいこと
食べる順番や速さに加え、どのような食材を選ぶかも非常に重要です。
糖質の質と量を見直す
糖質は体を動かすエネルギー源として不可欠ですが、摂りすぎは血糖値の上昇に直結します。白米や食パン、うどんといった精製された炭水化物よりも、玄米や全粒粉パン、そばなど、食物繊維が豊富で血糖値の上昇が緩やかなもの(低GI食品)を選ぶのが良いでしょう。
糖尿病診療ガイドライン2024も、2型糖尿病の血糖コントロールのために低GI食を推奨しています。ただし推奨の強さは二段階のうち弱いほうで、個々の研究では効果が見られなかった報告もあると付記されています※5。また、一度に食べる量を少し減らすだけでも効果的です。
タンパク質と脂質のバランス
肉や魚、卵、大豆製品などに含まれるタンパク質は、筋肉を作る材料となり、基礎代謝を維持するために重要です。脂質も細胞膜の構成成分となる大切な栄養素ですが、摂りすぎはカロリーオーバーにつながります。
青魚に含まれる良質な油(EPA、DHA)や、オリーブオイルなどを適量摂ることを心がけ、バランスの良い食事を目指しましょう。
食物繊維が豊富な食品を積極的に取り入れる
野菜、きのこ類、海藻類、こんにゃく、大豆製品などに豊富な食物繊維は、糖の吸収を穏やかにするだけでなく、腸内環境を整え、満腹感を持続させる効果もあります。
同じガイドラインは食物繊維の積極的な摂取も推奨しており、水に溶けるタイプの食物繊維(水溶性食物繊維)については1日あたり7.6〜8.3gという推奨摂取量が示されています※5。毎食、これらの食品を意識して取り入れることが、血糖コントロールの鍵となります。
食事の間隔と回数の調整
食事を抜くと、次の食事で空腹感から食べ過ぎてしまい、血糖値が急上昇する「ドカ食い」の原因になります。1日3食を規則正しい時間にとることで、血糖値の安定につながります。
間食・アルコールとの賢い付き合い方
間食やアルコールを完全に断つのは難しいものです。重要なのは、量や種類を考えて上手に付き合うこと。間食をするなら、糖質の少ないナッツやヨーグルトなどを選び、時間を決めて少量に留めましょう。
国立国際医療研究センター糖尿病情報センターは、3食以外の間食は体重が増えやすく血糖コントロールも難しくなるため、主治医と相談して適量を決めるよう勧めています※8。
アルコールは、適量を守り、休肝日を設けることが大切です。同センターは、糖尿病を持っている方でも一般的に許される量を1日アルコールとして25g程度まで(日本酒1合、ビール中瓶1本500ml程度)とし、休肝日をつくることを勧めています※8。
「蒸留酒なら安心」とは言い切れません
ビールや日本酒などの醸造酒は糖質が多いため、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒を選ぶという考え方が知られています。ただし、公的機関の資料や診療ガイドラインに、酒類の種類を選ぶことを勧める記載は見当たりませんでした。
糖尿病情報センターが挙げているのは種類ではなく量と飲み方で、飲酒後は肝臓に負担がかかって逆に低血糖になることもあると注意を促しています※8。飲む量は主治医に相談して決めてください。
運動療法でHbA1cを下げる具体的な方法
食事療法と並行して行いたいのが運動療法です。運動は、ブドウ糖をエネルギーとして消費することで直接的に血糖値を下げる効果が期待できます。
有酸素運動が血糖コントロールに与える影響
有酸素運動は、血液中のブドウ糖や脂肪をエネルギーとして利用するため、血糖値を下げるのに効果が期待できます。また、継続することでインスリンの働きが良くなることも知られています。
日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024は、2型糖尿病の血糖コントロールに有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)を推奨しており、推奨の強さは最も強い区分です※9。
ウォーキングや軽いジョギングのすすめ
特別な道具や場所を必要としないウォーキングは、最も手軽に始められる有酸素運動です。まずは1日15〜30分程度、少し息が弾むくらいの速さで歩くことから始めてみましょう。
国立国際医療研究センター糖尿病情報センターも、歩行では1回15〜30分間を1日2回、日常生活の歩行と合わせて1日1万歩程度を目安として挙げています※10。慣れてきたら、時間や距離を少しずつ延ばしていくのが継続のコツです。
運動するなら食後1〜2時間が狙い目
同センターは、食後に血糖値が高くなる方は食後1〜2時間頃に運動を行うとよいと説明しています。ただし、インスリンや血糖値を下げる薬を使っている方は、低血糖になりにくい時間帯を選ぶ必要があります※10。
継続しやすい運動習慣の作り方
「毎日運動しなければ」と意気込むと、かえって長続きしないことがあります。エレベーターを階段にする、一駅手前で降りて歩くなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やすことから始めるのも良い方法です。
週に3〜5日、合計で150分以上の運動が目標とされていますが、まずは無理のないペースで続けることを最優先に考えましょう。
「週150分」には続きがあります
糖尿病診療ガイドライン2024が示す目安は、中強度の有酸素運動を週150分かそれ以上、週3回以上で、運動をしない日が2日間以上続かないように行う、というものです。回数の上限は決められていません。
間隔を空けすぎない理由として同ガイドラインが挙げているのは、運動によるインスリンの効きやすさの高まりが運動後24〜48時間程度しか続かないことです。また、最新の解析では週150分に届かない週30〜100分の運動でも、時間に応じた血糖改善効果が得られる可能性が示されているとも記されています※9。
筋力トレーニングで基礎代謝を上げる
筋力トレーニングは、筋肉量を増やすことで基礎代謝を高める効果があります。基礎代謝が上がると、運動をしていない時でも消費されるエネルギー量が増えるため、血糖値が上がりにくい体質へと改善していくことが期待できます。
ガイドラインが挙げている仕組みはもうひとつあり、筋力トレーニングは骨格筋量と筋力を増やすと同時にインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)を改善し、それによって血糖コントロールを改善するとされています※9。
スクワットや腕立て伏せなど、自宅でできる簡単なトレーニングから始めてみましょう。頻度の目安は、連続しない日程で週2〜3回です※9。
効果を高めるインターバル速歩の取り入れ方
インターバル速歩とは、「ややきついと感じる程度の速歩き」と「ゆっくり歩き」を数分間ずつ交互に繰り返す運動方法です。通常のウォーキングよりも体に負荷がかかるため、短時間で効率的に血糖値改善や筋力アップの効果を得やすいとされています。
実際、2型糖尿病の患者を対象に普段の生活のなかで行われた比較試験では、3分ごとの速歩とゆっくり歩きを交互に繰り返す歩行が、同じ運動量の通常歩行と比べて血糖コントロールと体組成、体力をより改善したと報告されています。この試験では1回60分を週に5回、4ヶ月継続する方法がとられました※11。
例えば、「3分間の速歩き」と「3分間のゆっくり歩き」を5セット繰り返すといった形で、週に数回取り入れるのがおすすめです。
ただし「短時間で同じ効果」とまでは言えません
糖尿病診療ガイドライン2024は、高強度のインターバルトレーニング全般について、中強度の運動と比べて心肺機能の向上には効果的であるものの、HbA1cに対する効果は結論が出ていないとしています。長期的な血糖コントロール改善効果も現時点では不明で、運動強度の高さから対象が限られるとも述べています※9。
体力に自信がない方や合併症のある方は、始める前に主治医に相談してください。
今週の運動を組み立てるチェックリスト
ガイドラインの目安を、そのまま1週間の予定表に落とすと次のようになります※9。
薬物療法はどのような時に検討する?
食事療法や運動療法を続けてもHbA1cの数値が十分に改善しない場合や、診断時の数値が非常に高い場合には、薬物療法が検討されます。
医師との相談が不可欠
薬物療法を始めるかどうか、どの薬を選択するかは、専門的な判断が必要です。必ず医師と相談し、ご自身の体の状態やライフスタイルに合った治療法を選択することが重要です。
糖尿病診療ガイドライン2024も、インスリンの分泌が保たれている場合は食事療法・運動療法を2〜3ヶ月続けても目標に届かないときに薬物療法へ進む一方、血糖値が著しく高い場合は最初から薬物療法を併用すると整理しています※4。
薬物療法の種類と役割
糖尿病の治療薬には、インスリンの分泌を促す薬、インスリンの働きを良くする薬、糖の吸収や排泄を調整する薬など、様々な種類があります。国立国際医療研究センター糖尿病情報センターも、血糖値を下げる飲み薬をこの3つの働きに大きく分類しています※12。
これらの薬は、食事療法や運動療法の効果を補助する役割を担います。場合によっては、インスリン注射が必要になることもあります。
自己判断せず専門家と連携する
薬を飲み始めたからといって、食事や運動をおろそかにして良いわけではありません。あくまで生活習慣の改善が治療の基本です。
薬の量を自己判断で変えたり、服用を中止したりすることは非常に危険です。定期的に受診し、医師や管理栄養士などの専門家と連携しながら治療を進めていくことが、HbA1cを良好な状態で維持するための鍵となります。
治験を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本ではhba1cの高い数値でお困りの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられることがある
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
HbA1cを無理なく長く下げるための継続のコツ
HbA1cの改善は長期戦です。モチベーションを保ち、楽しみながら続けるための工夫を紹介します。
目標設定とモチベーション維持
「3ヶ月でHbA1cを0.5%下げる」といった、具体的で達成可能な短期目標を設定すると、モチベーションを維持しやすくなります。目標を達成したら、自分にご褒美を用意するのも良いでしょう。
日々の体重や歩数、食事内容を記録するのも、自分の頑張りを可視化できるためおすすめです。
日常生活に取り入れやすい工夫
特別なことを始めようとすると長続きしにくいものです。例えば、歯磨きをしながらスクワットをする、テレビを見ながらストレッチをするなど、「ながら運動」を習慣にするのも一つの手です。
食事に関しても、まずは夕食のご飯を半分にする、ジュースをお茶に変えるなど、小さな変化から始めてみましょう。
ストレス管理と質の良い睡眠
ストレスは血糖値を上げるホルモンの分泌を促し、睡眠不足はインスリンの働きを悪くすると考えられています。
睡眠とストレスでは、わかっていることの深さが違います
睡眠不足については仕組みまで確認されています。厚生労働省のe-ヘルスネットは、睡眠不足が数日続くとインスリンの作用が現れにくくなり(インスリン抵抗性)、同じ食事をしても血糖が高くなることが明らかになっていると説明しています※14。
一方でストレスのほうは、国立がん研究センターの多目的コホート研究で、日常のストレスが多い男性は少ない男性より糖尿病の発症リスクが統計学的に有意に高いことが示されています。ただし同研究は、ストレスが糖尿病を引き起こす仕組みはよくわかっておらず、ホルモンの変化を介するという説は仮説の段階だとも述べています※13。
趣味の時間を持つ、ゆっくり入浴するなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。また、質の良い睡眠を確保するために、就寝前のスマートフォンの使用を控えるなどの工夫も有効です。
定期的な検査と専門家のアドバイスを活用する
定期的に血液検査を受けることで、自分の努力の成果を客観的に確認できます。数値が改善していれば大きな励みになりますし、そうでなくても専門家から新たなアドバイスをもらう良い機会になります。
一人で抱え込まず、医師や管理栄養士、保健師といった専門家の力を積極的に活用しましょう。
HbA1cを下げるためのQ&A
ここでは、HbA1cに関してよく寄せられる質問にお答えします。
「1ヶ月で0.1〜0.2%」という数字の出どころ
この0.1〜0.2%という幅は、目安としてよく紹介されるものの、診療ガイドラインや公的機関の資料に該当する記述は見当たりませんでした。もともとの数値や治療内容によって変化の幅は大きく異なります。
実際、糖尿病診療ガイドライン2024がまとめた解析では、管理栄養士による栄養指導を3ヶ月行った際のHbA1cの変化に2.0%下がった研究から0.3%にとどまった研究まで幅がありました※5。数字そのものより、2〜3ヶ月単位で下向きの傾向が出ているかを見てください。
まとめ
HbA1cの数値を下げるためには、特効薬や裏技のようなものは存在しません。食事療法、運動療法、そして必要に応じた薬物療法を組み合わせ、日々の生活の中で根気強く続けていくことが、健康を取り戻すための着実な道です。
改善には時間がかかりますが、正しい知識を持って行動すれば、数値は着実に良い方向へ向かっていきます。この記事で紹介した方法を参考に、まずはご自身ができそうなことから一つでも始めてみてください。
そして、不安なことや分からないことがあれば、一人で悩まずに必ずかかりつけの医療機関に相談しましょう。専門家とともに、ご自身の体と向き合っていくことが何よりも大切です。
