健康診断の結果表を見て、γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー、またはγ-GT)の欄に「高値」や「要再検査」と書かれていると、戸惑いや不安を覚える方は少なくありません。
γ-GTPは胆管(肝臓でつくられた胆汁が流れる管)などに分布する酵素の一種で、飲酒量が多いときや胆道の病気などで値が上がります※1。
数値を下げるには、まず自分の生活背景に合った対策を選ぶ必要があります。なぜなら、日常的にお酒を飲む人と、お酒をほとんど飲まない人(脂肪肝や代謝の低下が原因の人)では、優先すべき改善アプローチが異なるためです。
本記事では、飲酒習慣の有無に応じた具体的な対策から、肝臓をいたわる食事・運動・睡眠の工夫、さらには数値が下がるまでの期間の目安や受診が必要な基準値までを整理しました。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
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まずは原因を見極める:飲酒習慣の有無で分かれる改善アプローチ
γ-GTPを下げるための近道は、数値が上がっている根本的な要因を取り除くことです。飲酒習慣があるのか、それともアルコール以外の要因が関わっているのかによって、最初に取り組むべき行動は大きく2つに分かれます。
お酒を日常的に飲む場合|「休肝日」と「純アルコール20g」の目安
普段からお酒を飲む習慣があってγ-GTPが高い場合、まず疑われるのはアルコールによる肝臓の障害です。厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」も、γ-GTが高く飲酒習慣がある場合はアルコール性肝障害の疑いがあるとして、減酒を勧めています※2。
お酒を完全にやめるのが難しい場合でも、1日の飲酒量を「節度ある適度な飲酒」の範囲内に抑える工夫が欠かせません。
厚生労働省の国民健康づくり運動「健康日本21」の当初の計画では、「節度ある適度な飲酒」を1日平均純アルコールで約20g程度としていました※3。
また、現在の厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、生活習慣病のリスクを高める量を、1日あたりの純アルコール摂取量で男性40g以上、女性20g以上としています。純アルコール量は、飲んだ量(ml)×アルコール度数(%)÷100×0.8(アルコールの比重)で計算できます※4。
厚生労働省のe-ヘルスネットに掲載された解説書「お酒のたしなみ方(女性編)」に示された、純アルコール約20gに相当するお酒の量の例は次のとおりです※5。
| 種類 | 量(アルコール度数) | 純アルコール量 |
|---|---|---|
| ビール | 500ml(5%) | 20g |
| 日本酒 | 180ml(15%) | 21.6g |
| 焼酎 | 110ml(25%) | 22g |
| ワイン | 180ml(14%) | 20.2g |
| ウイスキー | 60ml(43%) | 20.6g |
| 缶チューハイ | 350ml(7%) | 19.6g |
度数9%のストロング系チューハイは、350ml缶1本だけで純アルコール量が25.2gになり、1缶で約20gの目安を超えます※5。飲んでいる量(ml)だけでなく、アルコール度数にも目を向けなければなりません。
加えて、飲酒しない日(休肝日)を設ける習慣も大切です。厚生労働省のガイドラインは「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)」ことを勧めています※4。
厚生労働省のe-ヘルスネットも、休肝日を、週に1日以上飲酒しない日を設けることを勧める目的で作られた言葉として紹介しています※6。
お酒を飲まない・少量の場合|「体重5〜7%の減量」が最優先課題
「お酒は一滴も飲まないのにγ-GTPが高い」というケースも珍しくありません。
この場合、食べ過ぎや運動不足によって肝臓に中性脂肪がたまる「脂肪肝」が背景にあることがよくあります。
脂肪肝の呼び方が変わっています
お酒によらない脂肪肝は、これまでNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれてきました。日本消化器病学会と日本肝臓学会からは、2026年4月に「MASLD診療ガイドライン:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 2026」が刊行されています※7。
非アルコール性の脂肪肝によってγ-GTPが上がっているなら、最優先で取り組むべきは減量です。
日本消化器病学会と日本肝臓学会の「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020」は、食事や運動による体重減少で、肝機能や肝臓の組織の状態が改善するとしています※8。
同ガイドラインによると、5%の減量で生活の質(QOL)の改善が、7〜10%以上の減量で肝臓の組織の改善が期待できます。ただし、これらは海外の研究結果で、日本人での検証も必要だとしています※8。
現体重の5〜7%というと、体重80kgの人であれば約4.0〜5.6kg、体重60kgの人なら約3.0〜4.2kgに相当します。
何十キロも痩せる必要はありません。まずは内臓脂肪や皮下脂肪を少しずつ落とし、肝臓の細胞にたまった脂肪を減らすことが、γ-GTPを下げる第一歩になります。
減量を無理なく続ける方法を知りたいときは、リバウンドしないダイエットの進め方を解説した記事が参考になります。
まず取り組むこと
お酒を飲む人は飲酒量を減らして飲まない日をつくり、お酒をほとんど飲まない人は5〜7%程度の減量から始めます。
「20g」はどの資料の数字?3つの目安の違い
お酒の量の目安としてよく出てくる「20g」という数字は、資料によって意味が異なります。
| 資料 | 示している数字 | 数字の意味 |
|---|---|---|
| 健康日本21(当初の計画) | 1日平均 約20g程度 | 節度ある適度な飲酒※3 |
| 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン | 男性40g以上、女性20g以上 | 生活習慣病のリスクを高める量※4 |
| NAFLD/NASH診療ガイドライン2020 | 男性30g/日未満、女性20g/日未満 | お酒によらない脂肪肝(NAFLD)と定義する飲酒量の上限※8 |
並べてみると、女性にとっての20gは、生活習慣病のリスクを高める量の境目であると同時に、お酒によらない脂肪肝と定義される飲酒量の上限でもあります。
男性の場合、20gは「節度ある適度な飲酒」の目安で、生活習慣病のリスクを高める量(40g以上)の半分にあたります。
肝機能の数値を下げるための食事の見直し
肝臓は、食事から摂った栄養素を代謝・貯蔵する巨大な化学工場のような臓器です。日々の食事内容を少し組み替えることが、肝臓への負担を和らげることにつながります。
減らすべきもの:隠れ糖質・飽和脂肪酸・果糖ブドウ糖液糖
脂肪肝やγ-GTPの上昇というと「脂っこい食事」ばかりが原因と思われがちですが、糖質のとりすぎも肝臓に脂肪がたまる原因になります。
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、脂肪肝の改善にはまず食事からとるエネルギー(カロリー)の量を適正にすることを優先し、そのうえで炭水化物か脂質のどちらかを控えることを提案しています。この提案は、推奨の強さが「弱」、根拠となる研究の確かさ(エビデンスレベル)が「C」で、まだ限られた根拠にもとづくものです※8。
食事で摂りすぎた糖質は中性脂肪に作り変えられ、肝臓にたまりやすくなります。
控えるのが無難なものの例は次のとおりです。
厚生労働省の健診プログラムも、脂肪肝が疑われる人に向けて、過剰な糖分や脂質(特に飽和脂肪酸、コレステロール)の摂取を控えるよう勧めています※2。
一方、NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、地中海式の食事のように不飽和脂肪酸をとることで肝臓の脂肪が減ったという報告も紹介しています※8。揚げ物などを、青魚(サバやイワシなど)やオリーブオイルを使った料理に置き換えてみるのもひとつの方法です。
特に気をつけたいのが、清涼飲料水やスポーツドリンク、甘いお菓子などに含まれる果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)です。
同ガイドラインは、果糖の摂取と脂肪肝の進行との関連を示す報告があり、果糖を多く含む食品の適正な摂取について議論する必要があるとしています※8。
喉が渇いたときは甘い飲み物を避け、水やお茶を選ぶ習慣をつけましょう。
肝臓に負担をかけやすい食事をさらに詳しく確かめたいときは、肝臓に悪い食べものと避けたい食事を解説した記事も参考にしてください。
積極的に摂りたい食材|たんぱく質・食物繊維など
糖質や脂質を控える一方で、たんぱく質が不足しないようにすることも大切です。極端な食事制限でたんぱく質まで不足すると、肝臓から脂肪を運び出す働きが弱まり、脂肪肝がかえって悪化するおそれがあるともいわれています。
鶏むね肉やささみ、タラなどの白身魚、卵、そして納豆や豆腐といった大豆製品を毎食1品は取り入れるのが理想的です。大豆製品に含まれる植物性たんぱく質は脂質量が少なく、使いやすいたんぱく源です。
また、食事の最初に海藻類、きのこ類、根菜などの食物繊維が豊富な副菜を食べる(ベジファースト)と、食後の血糖値の急な上昇を抑えやすくなります。
イカやタコ、貝類に多いタウリンや、ブロッコリースプラウトなどに含まれるスルフォラファンといった成分に注目が集まることもありますが、ガイドラインがまず優先しているのは、食事からとるエネルギーの量を適正にすることです※8。
コーヒーとγ-GTPの関係は?
日常の飲み物としてコーヒーを選ぶことも、肝臓にとってプラスに働く可能性があります。
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、コーヒーの摂取が脂肪肝の発症や、肝臓が硬くなる変化(線維化)の進行、肝臓がんを抑えるとした疫学研究(集団を対象に生活習慣と病気の関係を調べる研究)が複数あると紹介しています※8。
日本でも、九州大学医学部公衆衛生学教室などによる1998年の研究(ある時点のデータを分析した横断研究)で、長野県の職場で健診を受けた40〜69歳の1万2687人を調べたところ、男性ではコーヒーを多く飲む人ほどγ-GTPが低い傾向がみられました。この傾向は飲酒量の多い男性ではっきりしていた一方、お酒を飲まない人ではみられず、女性では弱い関連にとどまりました※9。
コーヒーに含まれるクロロゲン酸やカフェインなどが関係しているという見方もあります。ただし、缶コーヒーやカフェオレのように砂糖やミルク、シロップがたっぷり入ったものを飲むと、糖質や脂質のとりすぎにつながるため、無糖のブラックコーヒーを選ぶようにしましょう。
胃腸が弱い方やカフェインに敏感な方は、無理をして飲む必要はありません。
市販サプリメントの注意点|自己判断での服用が肝障害を招くリスク
「γ-GTPを手っ取り早く下げたい」という焦りから、ウコンやオルニチン、肝臓水解物などの市販サプリメントや健康食品を大量に摂取しようとする方がいます。しかし、ここには落とし穴があります。
国民生活センターによると、健康食品でも、薬と同じように肝臓の機能が障害される「薬物性肝障害」を発症することがあり、頻度はまれですが重症化する場合もあります。同センターに医師から寄せられた179件の事故情報のうち、9件が健康食品による薬物性肝障害と診断されたものでした※10。
ウコンについても、厚生労働省のサイトに掲載された日本医師会の資料で、慢性肝炎や2型糖尿病などの持病がある成人11名に、ウコンとの関連が疑われる肝障害が報告されています。追跡できた10名は摂取をやめて回復しました※11。
サプリメントは自己判断で増やさない
サプリメントはあくまで栄養補助であり、数値を下げる特効薬ではありません。まずは食事と生活習慣の土台を整えることが先決です。サプリメントや常用薬(コレステロールの薬、鎮痛剤、漢方薬など)を飲んでいる場合は、自己判断で増減させず、かかりつけの医師に相談してください。健康食品やサプリメントをとっていることも、医師に伝えておきましょう。
肝臓の脂肪を減らす運動と、睡眠の見直し
食事の改善と車の両輪になるのが、身体活動量の増加と十分な休養です。特に運動については、体重が減らなくても肝臓の脂肪が減ったという報告があります※8。
研究では週3〜4回・30〜60分の有酸素運動で改善
肝臓の脂肪を減らすには、息が弾む程度の有酸素運動が適しています。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、運動療法だけでも脂肪肝の人の肝機能や肝臓の脂肪が改善するとして、運動療法を行うことを推奨しています。推奨の強さは「強」、根拠となる研究の確かさ(エビデンスレベル)は「B」です※8。
同ガイドラインが紹介する研究では、主に肥満のある人が30〜60分・週3〜4回の有酸素運動を4〜12週間続けたところ、体重が減らなくても肝臓の脂肪が改善しました。週250分以上の中等度から強度の有酸素運動を12週間続けた群で、肝臓の脂肪が効果的に改善したという報告もあります※8。
たとえば1回30分の早歩きを週4日、あるいは1回50分のウォーキングを週3日といった組み方なら、これらの研究で使われた範囲に収まります。まとまった時間がとれない日は、通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うといった日常の工夫で、体を動かす量を増やしましょう。
お腹まわりの脂肪を減らす運動の組み方を知りたいときは、内臓脂肪を落とす運動と食事・睡眠を解説した記事が参考になります。
食後に体を動かすと、食事で増えた血糖を筋肉で使いやすいという考え方もあります。
睡眠不足は肝臓に影響する?
見落とされがちですが、睡眠時間の確保も生活習慣の見直しには欠かせません。肝臓は多くの血液が集まる臓器で、横になって休んでいる間は肝臓に流れる血液が増えるともいわれます。
反対に、慢性的な寝不足は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きを悪くしたり(インスリン抵抗性)、食欲を高めるホルモン(グレリン)の分泌を増やしたりして、太りやすくなる一因になると考えられています。
睡眠時間の目安
厚生労働省の健康日本21(第三次)の資料は、成人の睡眠時間について、適正な時間には個人差があるものの、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保するよう示しています※12。
夜間はスマートフォンやパソコンの光を控え、十分な睡眠時間を確保しましょう。
γ-GTPは何日で下がる?効果が現れる期間と禁酒の日数目安
生活改善を始めたとき、多くの人が気になるのは「あと何日くらいで数値が下がるのか」「次の健康診断や再検査までに間に合うのか」という点です。数値が下がるまでの期間は、上昇の原因が「お酒」なのか「脂肪肝」なのかによって違いがあります。
お酒が原因なら、断酒後は週単位で変化をみる
もしγ-GTPが高い原因が毎日の飲酒にあるなら、比較的早い段階で数値の変化が期待できます。
国立岩国病院内科などのグループが報告した1977年の原著論文(新しい研究結果を報告した論文)では、アルコール性肝炎の患者31例のγ-GTPの経過を調べています※13。
- 断酒を始める
対象の31例は、全員の血液中のγ-GTPが上がっていました
- 断酒後3週間以内
肝硬変のない17例では、上がっていたγ-GTPが正常に戻りました
- 断酒後6週間を過ぎても
肝硬変のある例では、正常に戻りませんでした
古い研究で、対象もアルコール性肝炎の患者に限られますが、肝硬変があるかどうかで、正常に戻るまでの期間に違いがみられました。
まずは数週間お酒をやめてみることは、自分の数値上昇がアルコールによるものかどうかを考える手がかりにもなります。
ただし、健康診断の直前だけ禁酒して一時的に数値を下げたとしても、健診が終わってから元の飲酒量に戻せば、γ-GTPは再び上がりやすくなります。検査をパスするためだけの断酒ではなく、検査後も休肝日と適量を守る習慣へと移行することが肝心です。
脂肪肝が原因なら、数か月単位で続ける
一方、お酒を飲まない人の脂肪肝や肥満が原因でγ-GTPが上がっている場合は、短期間で大きく数値が下がることは期待しにくくなります。肝臓にたまった脂肪が減り、それが血液検査の数値に表れるまでには、ある程度の時間がかかります。
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020が紹介する運動療法の研究も、4〜12週間続けたあとの変化を調べたものです※8。
まずは数か月単位で、食事の見直しと有酸素運動を続けることを目標にしましょう。
脂肪肝の改善にかかる期間の目安を知りたいときは、脂肪肝が治るまでの期間と個人差を解説した記事もあわせてご覧ください。
急激なダイエットは避ける
早く数値を下げようとして極端な断食(絶食)や過度な糖質制限を行い、短期間で急激に体重を落とすのは避けてください。急激なダイエットは筋肉量を減らしやすく、かえって脂肪肝を悪化させることがあるともいわれています。
いくつから危険?数値の基準ラインと受診の目安
自分のγ-GTPの数値がどの段階にあるのかを知っておくと、生活改善で様子を見てよいのか、医療機関を受診すべきなのかを判断する手がかりになります。
数値レベル別の危険度判定
γ-GTPの判定は、検査機関や健診の種類によって多少異なります。人間ドックでは、日本人間ドック・予防医療学会の判定区分(2026年4月1日改定)が使われています※14。
特定健診では、厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」に判定と対応の分類が示されています※2。
| γ-GTP(U/L) | 人間ドックの判定区分 | 特定健診での分類と対応 |
|---|---|---|
| 50以下 | A:異常なし | 基準範囲内:今後も継続して健診受診を |
| 51〜80 | B:軽度異常 | 保健指導判定値を超えるレベル:生活習慣の改善を |
| 81〜100 | C:要再検査・生活改善 | 保健指導判定値を超えるレベル:生活習慣の改善を |
| 101以上 | D:要精密検査・治療 | 受診勧奨判定値を超えるレベル:医療機関の受診を |
健診結果に「B」や「C」とあれば生活習慣を見直す段階、「D」や101 U/L以上であれば医療機関を受診する段階と読み替えることができます。
51〜100 U/Lの段階は自覚症状がないことも多いため、節酒や減量などの生活習慣の改善に取り組むきっかけにしましょう。101 U/L以上の場合は、自分だけの判断で放置せず、医療機関で詳しい検査を受けて肝臓の状態を確認してください。
数値が高い場合、原因はお酒や脂肪肝だけとは限りません。厚生労働省のプログラムは、生活習慣以外で肝機能の異常を起こすものとして、ウイルス性肝炎や薬剤性肝障害、自己免疫性肝炎(免疫が自分の肝臓を攻撃してしまう病気)などを挙げています※2。
また、γ-GTPは胆道の病気でも上がります。胆道の病気には、胆石や胆道がんなどで胆汁の流れがせき止められる状態(胆汁うっ滞)なども含まれます。
原発性胆汁性胆管炎のように、血液検査で胆道系の酵素であるALP(アルカリホスファターゼ)やγ-GTPが上がる病気もあります。
AST・ALTとの同時高値や自覚症状がある場合の対応
健康診断の結果を見る際は、γ-GTPだけでなく、すぐ隣に並んでいる「AST(GOT)」や「ALT(GPT)」という項目も一緒に確認してください。
特定健診では、AST・ALTは30 U/L以下が基準範囲内、31〜50 U/Lが保健指導判定値を超えるレベル、51 U/L以上が受診勧奨判定値を超えるレベルとされています※2。
ALTの数値が高いと言われたときは、ALTの数値別リスクと受診の判断を解説した記事が参考になります。
γ-GTPだけが単独で高く、ASTとALTが基準範囲内(30 U/L以下)にとどまっている場合は、お酒の刺激で肝臓がγ-GTPを多くつくるようになっている(酵素誘導)段階であることも考えられます。
一方、γ-GTPと同時にASTやALTも高い場合は、肝臓の細胞そのものが傷ついている可能性があります。アルコールによる肝臓病は、はじめは脂肪肝として起こり、その一部が肝炎から肝硬変へと進みます※1。
国民生活センターは、健康食品による薬物性肝障害について、倦怠感、食欲不振、黄疸、吐き気・おう吐などの症状が続く場合は、すみやかに医療機関を受診するよう呼びかけています※10。
次のような症状があるときは、早めに医療機関を受診しましょう。
受診する診療科は、一般的な内科でも対応可能ですが、腹部エコー検査や詳しい血液検査が行える「消化器内科」や「肝臓内科(肝臓専門外来)」を選ぶと、より詳しい検査と指導を受けやすくなります。
受診を考えたいタイミング
上のような症状があるとき、またはγ-GTPが101 U/L以上、AST・ALTが51 U/L以上といった受診勧奨判定値を超えるレベルにある場合は、医療機関を受診しましょう。
女性でお酒をあまり飲まないのにγ-GTPが上がる背景は?
「女性でお酒も飲まず、そこまで太っていないのに、40代・50代になって急にγ-GTPが上がった」という悩みを持つ方もいます。ここには、女性ならではの体質の変化や特徴が関わっていることがあります。
閉経に伴う女性ホルモンの変化
第一の要因として考えられるのが、更年期や閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少です。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020によると、日本では、脂肪肝から進んだ肝炎(NASH)の割合は若い世代では男性に多いものの、60歳以上では女性に多いと報告されています。加齢や閉経に伴うエストロゲンの低下が、病気の進み方に影響していると考えられています※8。
エストロゲンには内臓脂肪の蓄積を抑え、脂質の代謝を保つ働きがあるとされ、閉経前後で分泌が減ると、以前と同じ食事量でも肝臓に脂肪がたまりやすくなることがあります。
また、肥満ではない人にも脂肪肝はあります。同ガイドラインによると、肥満ではない(BMI=体重と身長から計算する肥満度の指標が25未満の)人の脂肪肝の割合は7〜20%と報告されており、アジアで多い傾向があります※8。
女性はアルコールの影響を受けやすい
第二に、女性でお酒を飲む習慣がある場合、男性よりもアルコールの影響を受けやすいという特徴があります。
厚生労働省のガイドラインは、その理由として、女性は一般的に男性より体内の水分量が少ないこと、分解できるアルコール量が少ないこと、エストロゲンなどのはたらきでアルコールの影響を受けやすいことを挙げています※4。
同じ解説書「お酒のたしなみ方(女性編)」は、女性は体重あたりの飲酒量が同じでも肝臓障害などの臓器障害を起こしやすいとし、諸外国のガイドラインを参考に、女性の飲酒量は男性の1/2〜2/3程度が適当としています※5。
健康日本21でも、女性は男性よりも少ない量が適当とされています※3。
原発性胆汁性胆管炎(PBC)が隠れていることも
中年以降の女性で、飲酒も肥満もないのにγ-GTPやALP(アルカリホスファターゼ)という数値が目立って高い場合、まれに「原発性胆汁性胆管炎(PBC)」などの、自己免疫(免疫が自分の体を攻撃してしまうしくみ)に関わる肝臓の病気が隠れていることもあります。
原発性胆汁性胆管炎(PBC)とは
厚生労働省の指定難病の資料によると、原発性胆汁性胆管炎は中年以後の女性に多く、病気の成り立ちには自己免疫のしくみが考えられています。血液検査では、ALPやγ-GTPなどの胆道系酵素の上昇がみられます※15。
生活習慣に心当たりがないのに高値が続く女性は、一度消化器内科で血液検査を受けると安心です。
治験を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では肝機能障害・脂肪肝でお困りの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられることがある
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
よくある質問(FAQ)
アルコール分が「0.00%」と表示されているノンアルコール飲料であれば、アルコールを含まないため、休肝日にも取り入れやすい飲み物です。
ただし、製品によっては飲みごたえを出すために、果糖ブドウ糖液糖や糖質、人工甘味料が添加されているものがあります。糖質入りのノンアルコールビールを毎日何本も飲んでいると、糖質のとりすぎから脂肪肝を招き、γ-GTPが上がる原因になり得ます。
選ぶ際は「アルコール0.00%」かつ「糖質ゼロ・カロリーゼロ」の表示があるものを選ぶか、無糖の炭酸水にレモンを絞って飲むのもひとつの方法です。
健康診断の前日や数日前だけの対策で、γ-GTPを劇的に下げる裏ワザは知られていません。
前述の1977年の研究でも、アルコール性肝炎の患者で肝硬変のない17例のγ-GTPが正常に戻ったのは断酒後3週間以内で、日単位ではなく週単位で経過をみています※13。
検査直前に極端な水抜きや絶食を行うと、体調を崩したり、検査結果に影響したりするおそれがあります。健診の数週間前から禁酒し、規則正しい食事を心がけましょう。
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、筋力トレーニング(レジスタンス運動)でも有酸素運動と同じように、脂肪肝の人の肝臓の脂肪が改善したというメタアナリシス(複数の研究結果をまとめて分析した研究)を紹介しています※8。
ただ一点だけ気をつけたいのは、血液検査の直前に激しい筋トレを行うことです。和歌山県立医科大学附属病院の臨床検査部門の資料によると、採血前に激しい筋肉運動を行うと、骨格筋(体を動かす筋肉)からASTが漏れ出して高値になることがあります※16。
肝臓が悪くなくても検査結果のASTが上がると、医師が判断しづらくなります。健康診断や再検査の前は激しい筋トレを控え、軽いストレッチやウォーキング程度にとどめておきましょう。
まとめ
γ-GTPを下げるためのアプローチは、まず自分の数値上昇の原因が「お酒」にあるのか、「脂肪肝などの代謝低下」にあるのかを切り分けることから始まります。お酒を飲む習慣がある方は、1日の飲酒量を純アルコール20g程度までにとどめ(女性はそれより少なめに)、週に1日以上は飲酒しない日を作りましょう。お酒が原因であれば、断酒後は週単位で数値の変化をみていきます(アルコール性肝炎の患者を調べた研究では、肝硬変のない人は3週間以内に正常に戻りましたが、肝硬変のある人では6週間を過ぎても戻りませんでした)。
一方、お酒をほとんど飲まない方は、現体重の5〜7%程度の減量を目標に据え、甘い飲み物や糖質・脂質の摂りすぎを控えつつ、大豆製品や魚などのたんぱく質、食物繊維、無糖のコーヒーなどを上手に取り入れてください。
有酸素運動(研究では週3〜4回・30〜60分で肝臓の脂肪が改善)と、6時間以上を目安にした睡眠を組み合わせ、数か月単位で続けることが基本です。ただし、γ-GTPが101 U/L以上の場合や、AST・ALTも同時に高い場合、あるいは強い倦怠感や黄疸といった自覚症状がある場合は、自己判断での生活改善にとどめず、速やかに消化器内科や肝臓専門外来を受診してください。
健康診断の数値は、沈黙の臓器と呼ばれる肝臓の状態を知る大切な手がかりです。今日できる小さな習慣の見直しから始めてみてください。
