「潰瘍性大腸炎という病名を耳にする機会が増えたけれど、実際に日本にはどれくらいの患者さんがいるのだろう?」「自分や家族がなる可能性はどのくらいあるの?」といった疑問をお持ちではありませんか。
潰瘍性大腸炎は、国が指定する難病の一つですが、その患者数は年々増加しており、決して珍しい病気ではなくなっています。
この記事では、厚生労働省や難病情報センターといった公的な機関が公表している最新のデータに基づき、潰瘍性大腸炎の患者数や「何人に1人」に相当するのかという罹患率の目安を分かりやすく解説します。さらに、患者数が増えている背景や、発症しやすい年齢・性別についても触れていきます。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
潰瘍性大腸炎でお困りの方へ
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潰瘍性大腸炎の患者数はどれくらい?最新の統計データと推移
潰瘍性大腸炎の患者数は、統計の取り方によって少し数字が異なりますが、一貫して増加傾向にあります。ここでは、公的なデータを基に具体的な数字を見ていきましょう。
日本における潰瘍性大腸炎の有病者数と変遷
日本の潰瘍性大腸炎の患者数は、長期的にみると増加傾向をたどっています。
公的な数として最もよく引用されるのが、厚生労働省の「衛生行政報告例」による「特定医療費(指定難病)受給者証」の所持者数です。最新の令和6年度(2024年度)末時点で151,631人でした。この受給者証は、原則として中等症以上など一定の重症度基準を満たした患者さんに交付されるもので、軽症の方は原則として対象に含まれないため、実際の患者総数とは異なりますが、信頼性の高い公的な数字です(参考:厚生労働省「衛生行政報告例」 1)。
受給者証所持者数の推移
受給者証所持者数は、1975年度(昭和50年度末)にはわずか1,000人程度でしたが、その後増加を続け、2015年度には16万人を超えました。ただし、2015年の医療費助成制度の改正により軽症者が原則として助成の対象から外れた影響で、その後いったん減少し、近年は再び増加に転じています(参考:厚生労働省「衛生行政報告例」 1)。
一方で、医療機関を受診している軽症の患者さんなども含めた全体の推計患者数は、これよりかなり多いと考えられています。2023年に実施された全国規模の疫学調査では、日本の潰瘍性大腸炎の患者数は約31万7千人(95%信頼区間:約22万〜41万人)と推計されており、その規模の大きさがうかがえます(参考:日本における潰瘍性大腸炎・クローン病の全国患者数推計(2023年) 3)。
「何人に1人」に相当する罹患率の目安
では、この患者数は日本の人口に対してどれくらいの割合なのでしょうか。「何人に1人」という形で考えてみましょう。
日本の総人口を約1億2,400万人として計算すると、公的な受給者証所持者数(約15万人)を基にした場合、およそ「800人に1人」の割合になります。ただし、前述のとおり受給者証は中等症以上の方が対象で、軽症の方の多くは含まれていない点に注意が必要です(参考:厚生労働省「衛生行政報告例」 1)。
一方、軽症の方も含めた2023年の全国疫学調査の推計(約31万7千人、人口10万人あたり254.8人)を基にすると、その割合はおよそ「390人に1人」となります(参考:日本における潰瘍性大腸炎・クローン病の全国患者数推計(2023年) 3)。
罹患率のまとめ
計算の基にするデータによって幅はありますが、おおむね日本人のおよそ390人から800人に1人が潰瘍性大腸炎の患者であると理解することができます。学校のクラスや職場のフロアに患者さんがいてもおかしくないほどの割合であり、決して稀な病気ではないことがわかります。
潰瘍性大腸炎の患者数が増加している背景を探る
なぜ潰瘍性大腸炎の患者数はこれほどまでに増え続けているのでしょうか。その理由は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
診断技術の進歩と疾患認知度の向上
まず大きな理由として、診断技術の進歩が挙げられます。特に、内視鏡検査(大腸カメラ)が広く普及したことで、これまで見過ごされていたかもしれない軽症のケースや、初期段階での発見が可能になりました。診断基準が明確になったことも、正確な診断数の増加に貢献しています。
また、インターネットやメディアを通じて潰瘍性大腸炎という病名が広く知られるようになったことも、無視できない要因です。腹痛や下痢といった症状があっても以前は我慢していた人が、病気の可能性を疑って医療機関を受診するきっかけが増え、結果として診断される人の数が増えている側面があります。
生活習慣や食生活の変化との関連性
潰瘍性大腸炎がもともと欧米に多かった疾患であることから、日本人の食生活の欧米化が発症に関係しているのではないか、という指摘があります。動物性脂肪やタンパク質の摂取量が増え、食物繊維の摂取が減るなどの食生活の変化が、腸内環境に何らかの影響を与えている可能性が考えられています。
さらに、衛生環境が非常に良くなったことが、かえって免疫系のバランスを崩しやすくしているという「衛生仮説」も、発症要因の一つとして研究が進められています。
発症原因について
潰瘍性大腸炎は遺伝的な素因に食事や感染などの環境因子が関与して発症すると考えられていますが、その原因はいまだ完全には解明されていません(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
若年層から高齢層まで広がる発症年齢の多様化
かつては若年層に多い病気とされていましたが、近年では高齢になってから初めて発症するケースも増えています。高齢者人口の増加に加え、生命予後が比較的良好で経過が長いことから、患者さんの年齢層が次第に高齢側へと広がっており、これも全体の患者数を押し上げる一因となっています(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
潰瘍性大腸炎の発症しやすい年齢層と男女差
潰瘍性大腸炎は、どの年代の人に多く見られるのでしょうか。また、性別による違いはあるのでしょうか。
若年での発症が多い傾向と高齢発症の増加
潰瘍性大腸炎は若年で発症することが多く、好発年齢は10歳代後半から30歳代前半とされています。しかし、これはあくまで最も発症が多い年代というだけで、小児から高齢者まで、幅広い年齢層で発症する可能性があります(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
特に近年では、高齢になってから初めて症状が現れる「高齢発症」のケースも目立つようになってきました。そのため、若い人だけの病気というわけでは決してありません。
男女比に大きな違いはないが、性差による特徴も
発症における大きな男女差はないとされますが、全国疫学調査では男女比(男性/女性)が約1.3と、わずかに男性に多い傾向が報告されています。臨床の現場で顕著な差として感じられるほどではなく、性別そのものが発症の強いリスク要因になるわけではないと考えてよいでしょう(参考:日本における潰瘍性大腸炎・クローン病の全国患者数推計(2023年) 3)。
治験を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では潰瘍性大腸炎でお困りの方に向け治験が行われています。治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
- 最新の治療をいち早く受けられることがある
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
潰瘍性大腸炎とクローン病:患者数の違いと共通点
潰瘍性大腸炎とよく比較される病気に「クローン病」があります。どちらも国の指定難病ですが、いくつか違いがあります。
どちらも「炎症性腸疾患」に分類される指定難病
潰瘍性大腸炎とクローン病は、どちらも「炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory Bowel Disease)」という大きなグループに含まれる病気です。消化管に慢性的な炎症が起こるという点は共通しています。
炎症は大腸の粘膜に限定して起こります。
口から肛門まで、消化管のどの部分にも炎症が起こる可能性があります。
病変部位の違い
この病変部位の違いは、両疾患を区別するうえでの基本となります(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
日本におけるクローン病の患者数と比較
クローン病もまた、患者数が増加傾向にある指定難病です。厚生労働省の統計によると、令和6年度(2024年度)末のクローン病の特定医療費受給者証所持者数は53,664人でした(参考:厚生労働省「衛生行政報告例」 1)。
潰瘍性大腸炎の受給者証所持者数(約15万人)と比較すると、およそ3分の1程度です。炎症性腸疾患(IBD)全体で見ると、日本の患者さんの多くは潰瘍性大腸炎ということになります。両疾患を合わせると、受給者証所持者数だけでも日本には約20万人のIBD患者さんがいる計算になり、軽症者を含む推計ではさらに多くなります(参考:厚生労働省「衛生行政報告例」 1, 日本における潰瘍性大腸炎・クローン病の全国患者数推計(2023年) 3)。
潰瘍性大腸炎の基礎知識:原因、主な症状、治療の概要
最後に、潰瘍性大腸炎とはどのような病気なのか、基本的な情報について簡潔に説明します。
根本原因は不明ながら、多因子が関与する疾患
残念ながら、潰瘍性大腸炎がなぜ起こるのか、その根本的な原因はまだ完全には解明されていません。しかし、現在では一つの原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
これらが複合的に関与して腸管の炎症が起こると考えられています(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
腹痛、下痢、血便など主な症状と病型
主な症状は、粘液や血液の混じった下痢(粘血便)、腹痛です。これらが長く続いたり、良くなったり悪くなったり(寛解と再燃)を繰り返すのが特徴です。そのほか、発熱、体重減少、貧血、倦怠感などが現れることもあります。
また、炎症が起きている範囲によって、大きく3つの病型に分類されます(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
薬物療法を中心とした治療の選択肢
潰瘍性大腸炎の治療目標は、炎症を抑えて症状がない「寛解」という状態に導き、その状態をできるだけ長く維持すること(寛解維持)です。治療の基本は薬物療法であり、病気の重症度や炎症の範囲に応じて様々な薬剤が使い分けられます。
主な治療薬には、5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などがあります。これらの薬で効果が不十分な場合や、重篤な合併症が起きた場合には、手術(大腸全摘術など)が検討されることもあります(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
長期経過に伴うリスク
長期間にわたって大腸に炎症が続くと、大腸がんを発症するリスクが一般の人より高まることが報告されており、定期的な内視鏡検査(サーベイランス)が重要になります(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
FAQ: 潰瘍性大腸炎に関するよくある質問
潰瘍性大腸炎は、メンデル遺伝のような形で親から子へ直接遺伝する病気ではありません。しかし、血縁者に潰瘍性大腸炎の患者さんがいる場合、いない場合に比べて発症するリスクがやや高くなることが知られています。これは、病気になりやすい体質(遺伝的素因)が受け継がれる可能性があるためと考えられています(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
適切な治療を継続的に受けることで、多くの患者さんは症状のない「寛解」という状態を維持し、発症前と変わらない学校生活や社会生活を送ることが可能です。ただし、病気と長く付き合っていく必要があり、定期的な通院や検査が欠かせません。また、長期間にわたって大腸に炎症が続くと、大腸がんを発症するリスクが一般の人より高まることが報告されており、定期的な内視鏡検査(サーベイランス)が重要になります(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
現時点の医療では、潰瘍性大腸炎を薬で完全に治す「完治」という状態にすることは難しいとされています。治療の目標は、症状が落ち着いた「寛解」の状態をできるだけ長く維持することです。そのためには、症状がない時でも自己判断で薬をやめず、医師の指示に従って治療を続けることが非常に大切です(参考:日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 2)。
まとめ
この記事のポイント
- 日本の潰瘍性大腸炎の患者数は増加傾向にあり、特定医療費受給者証の所持者数は最新の令和6年度末で約15万人、軽症者を含む2023年の推計では約31万人に達します。
- 「何人に1人か」という問いに対しては、計算の基にするデータにより、おおむね「約390〜800人に1人」というのが一つの目安になります。
- この増加の背景には、診断技術の進歩や疾患認知度の向上、食生活をはじめとする生活習慣の変化などが関係していると考えられています。
潰瘍性大腸炎は、もはや決して珍しい病気ではありません。この記事を通じて、病気の規模感や現状について正しい知識を持つことが、ご自身や身近な人の健康を考える上での一助となれば幸いです。もし気になる症状があれば、決して一人で悩まず、専門の医療機関に相談してください。
