下腹部の鈍い痛み、食事のたびに繰り返す不快感、あるいは突然襲ってくる激しい痛み。潰瘍性大腸炎と診断された方、もしくは原因不明の腹痛に悩んでいる方にとって、「この痛みは本当に潰瘍性大腸炎によるものなのだろうか」という疑問や不安は、常に付きまとうものではないでしょうか。

痛みの感じ方は人それぞれであり、その特徴を言葉で表現するのは難しいものです。

この記事では、潰瘍性大腸炎が引き起こす腹痛について、その具体的な「痛み方」、痛みが現れやすい「部位」、そして痛みを少しでも「和らげるための対処法」を詳しく掘り下げていきます。ご自身の症状を客観的に理解し、不安を軽減しながら、適切な治療やセルフケアにつなげるための一助となれば幸いです。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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潰瘍性大腸炎の腹痛はどんな痛み?その特徴

潰瘍性大腸炎の腹痛は、一言で「お腹が痛い」と表現できるほど単純ではありません。病状の活動性や炎症の範囲によって、その性質はさまざまに変化します。

下腹部に感じる「重苦しい痛み」や「不快感」

比較的症状が落ち着いている時期や、炎症が軽度の場合にみられるのが、下腹部全体の重たい感覚やシクシクとした痛みです。常に違和感があるような状態で、日常生活に支障をきたすほどではないものの、すっきりしない不快感が続くケースがあります。

「ギュッと差し込む」ような激痛に見舞われることも

病状が活発な「活動期」に入ると、痛みはより激しさを増します。突然、お腹をえぐられるような、あるいはキリで突き刺されるような鋭い痛みが波のように押し寄せることがあります。こうした痛みは、冷や汗を伴うことも少なくありません。

排便前に強まる「絞られるような」感覚

潰瘍性大腸炎の腹痛で特に特徴的なのが、便意と連動する痛みです。便意を感じると同時に、下腹部が強く絞られるような、あるいはねじれるような痛みが生じることがあります。

これは、炎症を起こしている大腸が蠕動(ぜんどう)運動によって刺激されるために起こると考えられています。排便後には、痛みが一時的に和らぐ傾向にあります。

持続する鈍痛や痙攣性の痛み、その違いとは

痛みの現れ方には個人差があります。常にじくじくと続くような鈍い痛み(鈍痛)を感じる方もいれば、間隔を置いて急に強くなる痙攣性(けいれんせい)の痛みを繰り返す方もいます。これらは炎症の強さや場所、その時の腸の状態によって異なり、同じ人でも時期によって両方の痛みを経験することがあります。

潰瘍性大腸炎の痛む場所でわかること

「お腹のどこが痛むか」は、病状を把握する上で重要な手がかりになります。潰瘍性大腸炎では、痛む部位にある程度の傾向が見られます。

最も多いのは「下腹部」の痛み

潰瘍性大腸炎で最も痛みが現れやすいのは、へその下あたりから骨盤にかけての「下腹部」です。これは、炎症が直腸から始まり、上行結腸に向かって連続的に広がっていくという病気の特徴と深く関係しています(参考:難病情報センター 1)。

特に左下腹部に集中する理由とは

左下腹部に痛みが集中しやすい理由

中でも、体の左側の下腹部に痛みを訴えるケースが多く見られます。大腸は腹部の右下から始まり、上、左、そして下へと走行しています。

炎症の好発部位である直腸やS状結腸が体の左側に位置しているため、痛みが左下腹部に集中しやすいのです。

炎症の広がりと痛む部位の変化

病状が進行し、炎症が大腸の奥へと広がっていくと、痛む部位も変化します。直腸炎型では下腹部中心ですが、左側大腸炎型では左腹部全体、全大腸炎型になると腹部全体に痛みが広がる可能性があります。

このように、痛む場所の変化は炎症範囲の拡大を示唆するサインのひとつです(参考:難病情報センター 1)。

重症化すると腹部全体が痛むことも

腹膜刺激症状はただちに受診を

炎症が非常に強くなると、腹部全体が張って硬くなり、触れるだけでも激しい痛みを感じるようになります。

これは「腹膜刺激症状」と呼ばれる危険な状態で、腸に穴が開く(穿孔)などの合併症のリスクも高まるため、ただちに医療機関を受診する必要があります(参考:潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 2)。

腹痛が起こりやすい「タイミング」とは

潰瘍性大腸炎の腹痛は、特定の状況や時間帯に起こりやすい傾向があります。ご自身の痛みのパターンを把握することは、生活の質を保つ上で役立ちます。

排便前後に痛みが強まる傾向

最も特徴的なタイミングは、先述の通り「排便前」です。便が炎症部分を通過する際の刺激や、排便のための腸の動きそのものが痛みを誘発します。

多くの場合、排便を終えると痛みは軽快しますが、炎症が強いと排便後も痛みが続く「しぶり腹(テネスムス)」が起こることもあります。

食事内容やストレスが痛みを誘発するケース

食事も痛みの引き金となり得ます。特に、脂肪分の多い食事や香辛料、食物繊維の多い食品、冷たい飲み物などは、腸を刺激して痛みを悪化させる可能性があります。

また、精神的なストレスが自律神経のバランスを乱し、腸の過剰な運動を引き起こして腹痛につながることも少なくありません。

活動期と寛解期で異なる痛みの現れ方

活動期と寛解期の違い

潰瘍性大腸炎には、症状が強く現れる「活動期」と、症状が落ち着いている「寛解期」があります。

活動期には腹痛が頻繁に、そして強く現れますが、適切な治療によって寛解期に入ると、腹痛はほとんど感じられなくなるか、感じたとしても非常に軽度になります(参考:難病情報センター 1)。

腹痛以外の「初期症状」と「悪化のサイン」

潰瘍性大腸炎は、腹痛だけで判断できる病気ではありません。他の症状と合わせて考えることが重要です。

腹痛と合わせて注意すべき「粘血便」と「下痢」

腹痛と並んで、潰瘍性大腸炎の代表的な症状が「粘血便」と「下痢」です。便に血液や粘液が混じる状態は、大腸の粘膜がただれている(びらん)ことを示しています。

また、炎症によって水分が十分に吸収されなくなるため、頻回の下痢が起こります。これらの症状が腹痛と同時に見られる場合は、潰瘍性大腸炎の可能性を考慮する必要があります(参考:難病情報センター 1)。

見逃してはいけない「発熱」や「倦怠感」

大腸の炎症が全身に影響を及ぼすと、発熱や体のだるさ(倦怠感)、食欲不振、体重減少などが現れることがあります。これらの全身症状は、病気の活動性が高まっているサインと考えられます。

症状が悪化している危険なサインとは

病状悪化・合併症が疑われるサイン

以下のような症状が見られる場合は、病状がかなり悪化しているか、重篤な合併症の可能性があります。

  • 一日に10回以上の頻繁な下痢
  • 大量の血便
  • 37.5度以上の発熱が続く
  • 脈が速い(頻脈)
  • 強い腹痛が持続する

これらのサインが見られたら、自己判断せず、速やかに主治医に連絡するか、医療機関を受診してください(参考:潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 2)。

潰瘍性大腸炎の腹痛を「和らげる」ための対処法

つらい腹痛をコントロールし、日常生活を取り戻すためには、医療機関での治療とセルフケアの両方が重要になります。

医療機関での適切な「薬物療法」

治療の基本は炎症を抑える薬物療法

基本となるのは、大腸の炎症を抑えるための薬物療法です。5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤を基本薬とし、症状に応じてステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などが用いられます。

これらの薬で炎症をコントロールし、「寛解」の状態を維持することが、腹痛を抑える最も確実な方法です(参考:難病情報センター 1)。

痛みを軽減する「食事内容」の工夫

活動期で症状が強い時期は、腸に負担をかけない食事が推奨されます。具体的には、低脂肪・低残渣(食物繊維が少ない)の食事が基本です。おかゆやうどん、白身魚、鶏ささみ、豆腐などが適しています。

一方、症状が落ち着いている寛解期であれば、食事制限はそれほど厳しくない場合が多いですが、ご自身の体調を観察しながら、食べると症状が悪化する食品を避けることが大切です。

ストレスを管理し、心身を「リラックス」させる

ストレスは症状を悪化させる一因です。完璧を目指しすぎず、心と体を休める時間を意識的に作ることが重要です。趣味に没頭する時間や、軽い運動、ヨガ、瞑想など、自分に合ったリラックス法を見つけることが、痛みの緩和につながることもあります。

日常生活で取り入れられる「痛みの緩和ケア」

腹痛が起こった際には、まず安静にすることが第一です。お腹を温めると、腸の緊張がほぐれて痛みが和らぐことがあります。使い捨てカイロや湯たんぽ、温かい飲み物などを活用するのも良いでしょう。ただし、熱すぎるものは避けてください。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では潰瘍性大腸炎でお困りの方に向け治験が行われています。

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ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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「危険な腹痛」を見極めるポイントと受診の目安

ほとんどの腹痛は病気の活動性によるものですが、中には緊急を要するケースも存在します。

放置してはいけない腹痛の特徴

いつもと違う、経験したことのないような激しい痛みには注意が必要です。特に、痛みがどんどん強くなる、お腹が板のように硬くなる、といった症状は危険なサインかもしれません。

こんな時はすぐに受診を!緊急性の高い症状

ためらわず救急外来を受診すべき症状

以下の症状が腹痛と同時に現れた場合は、夜間や休日であってもためらわずに救急外来を受診してください。

  • 立っていられないほどの激痛
  • 意識がもうろうとする
  • 冷や汗が止まらない
  • 吐血や大量の下血がある
  • お腹がパンパンに張って苦しい

これらは、中毒性巨大結腸症や大腸穿孔といった、命に関わる合併症の兆候である可能性があります(参考:潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 2)。

不安を感じたら迷わず専門医へ相談を

緊急性はなくとも、痛みが続いたり、普段と違う症状が現れたりして不安を感じる場合は、自己判断で様子を見るのではなく、かかりつけの専門医に相談することが最も重要です。症状を正確に伝えることが、適切な診断と治療への第一歩となります。

潰瘍性大腸炎の腹痛に関するQ&A

ここでは、潰瘍性大腸炎の腹痛に関するよくある疑問にお答えします。

Q1. 潰瘍性大腸炎の腹痛はなぜ起こるのですか?

潰瘍性大腸炎の腹痛は、主に3つの原因が複合的に関与していると考えられています。

  • 大腸粘膜の炎症そのものによる痛み
  • 炎症によって腸管が狭くなり、便が通過する際の刺激
  • 炎症や潰瘍が腸の筋肉層にまで及び、腸の動き(蠕動運動)が異常になることによる痛み

これらの要因が組み合わさることで、さまざまな種類の腹痛が引き起こされます。

Q2. 痛みがひどい時、市販の痛み止めは使えますか?
自己判断での市販の痛み止め(特に非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)の使用は、原則として避けるべきとされています。これらの薬剤は、潰瘍性大腸炎の症状を悪化させる可能性があるためです。腹痛がつらい場合は、必ず主治医に相談し、処方された薬剤を指示通りに服用してください。
Q3. 潰瘍性大腸炎の腹痛は子供にも現れますか?
はい、潰瘍性大腸炎は子供(小児)にも発症します。症状は成人と同様に、腹痛、血便、下痢が主となります。子供は症状をうまく表現できないこともあるため、食欲がない、元気がない、体重が増えないなどの変化に保護者の方が気づくことが重要です。疑わしい症状があれば、小児科や小児消化器の専門医に相談しましょう。

まとめ

潰瘍性大腸炎の腹痛は、下腹部を中心に、重苦しい痛みから差し込むような激痛まで、実に多様な形で現れます。その痛み方や部位、タイミングは、病状の活動性を知るための重要なバロメーターです。

この記事で解説した痛みの特徴をご自身の症状と照らし合わせ、客観的に状態を把握することが、不安の軽減と適切な対応につながります。腹痛を和らげるためには、医療機関での治療を基本としながら、食事やストレス管理といった日々の工夫も大切です。

痛みを一人で抱え込まないことが大切

最も重要なのは、痛みを一人で抱え込まないことです。症状の変化や強い不安を感じた際には、自己判断せずに必ず専門医に相談してください。医師と二人三脚で病気と向き合っていくことが、より良い毎日を送るための確かな一歩となるでしょう。