下肢閉塞性動脈硬化症と診断された方やそのご家族にとって、足の冷えや痛み、しびれといった症状は日常生活に大きな影響を与えます。
症状を少しでも和らげようと、マッサージを検討される方は少なくありません。
しかし、インターネットなどで調べると「マッサージは禁忌である」という情報と、「軽くなら行ってもよい」という情報が混在しており、どうすべきか迷ってしまうことでしょう。
結論から申し上げますと、下肢閉塞性動脈硬化症におけるマッサージは一概にすべてが禁忌というわけではありません。
病状の進行度や、深部静脈血栓症などの合併症の有無によって、マッサージの適否は大きく異なります。
状態によっては症状を悪化させるリスクがあるため、自己判断は避ける必要があります。
この記事では、マッサージが禁忌となる具体的な条件や、安全に行える場合の注意点、さらにマッサージに代わる効果的な足のケア方法について、専門的な知見に基づき分かりやすく解説します。
足の症状でお悩みの方が、安全で適切なケアを選択するための一助となれば幸いです。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
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下肢閉塞性動脈硬化症とは?足の血流障害を理解する
下肢閉塞性動脈硬化症の基本的な知識
下肢閉塞性動脈硬化症は、足の血管に動脈硬化が起こり、血管が狭くなったり詰まったりすることで血流が悪くなる病気です。
主な症状としては、足の冷えやしびれから始まり、進行すると間欠性跛行と呼ばれる症状が現れます。
これは、一定の距離を歩くとふくらはぎなどに痛みやしびれが生じて歩けなくなり、少し休むと再び歩けるようになるという特徴的な症状です(参考:国立循環器病研究センター 1)。
病状の進行度(フォンテイン分類)
病状の進行度は、一般的にフォンテイン分類という指標を用いて4つの段階(I度からIV度)に分けられます。
I度は冷感やしびれのみの軽度な状態、II度は間欠性跛行が現れる状態です。
さらに進行してIII度になると、じっとしていても足が痛む安静時疼痛が生じます。
最も重症なIV度では、足の組織に十分な血液が行き渡らず、皮膚に潰瘍ができたり、組織が壊死したりする危険な状態となります(参考:国立循環器病研究センター 1)。
なぜ足の血流が悪くなるのか
足の血流が悪くなる根本的な原因は、動脈硬化の進行にあります。
加齢に加えて、高血圧、脂質代謝異常症、糖尿病といった生活習慣病や、運動不足、肥満、そして喫煙の習慣が血管に負担をかけ引き起こされます(参考:国立循環器病研究センター 1)。
ダメージを受けた血管の壁にはコレステロールなどの成分が付着し、血管の内壁を徐々に狭くしていきます。
血管が狭窄すると、心臓から送り出される酸素や栄養を豊富に含んだ血液が足の末端まで十分に届かなくなります。
特に、歩行時など筋肉が多くの酸素を必要とする状況において血液供給が追いつかなくなるため、痛みや疲労感といった症状として現れるのです。
早期の対策が重要です
血流障害は放置すると徐々に進行するため、早期に病態を理解し、適切な対策を講じることが重要となります(参考:関西医科大学附属病院 2)。
下肢閉塞性動脈硬化症におけるマッサージの可否:禁忌となるケースとそうでないケース
マッサージが「禁忌」となる具体的な条件とリスク
下肢閉塞性動脈硬化症において、特定の条件下ではマッサージを行うなどの下肢への物理的な圧迫が禁忌とされています。
最も注意すべきは、深部静脈血栓症の合併が疑われる場合です。
深部静脈血栓症は足の深いところにある静脈に血栓ができる病気で、太ももやふくらはぎに急激な腫れ、赤み、痛みが現れるのが特徴です。
肺塞栓症の危険性
この状態でマッサージをしてしまうと、圧迫によって血栓が剥がれ落ち、血流に乗って肺の血管を塞いでしまう肺血栓塞栓症(肺塞栓症)を引き起こすおそれがあります(参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構 3)。
肺塞栓症は命に関わる重篤な疾患であるため、このような症状がある場合は絶対にマッサージをしてはいけません。
また、病状が進行しているフォンテイン分類のIII度やIV度のような重度の場合もマッサージや外からの圧迫は禁忌です(参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構 3)。
安静時疼痛があるほど血流が不足している状態や、皮膚潰瘍や壊死が生じている組織に対して外から物理的な圧迫を加えると、血管がさらに損傷したり、組織の破壊が進行したりする危険性があります。
さらに、足に感染症による炎症や発熱がある場合や、動脈瘤が形成されている場合も、症状を悪化させるリスクが高いため避けるべきです。
マッサージが「禁忌ではない」とされる場合の注意点
一方で、病状が比較的安定しているフォンテイン分類のI度やII度の段階であれば、マッサージが直ちに禁忌とならないケースもあります。
この段階では、筋肉の緊張をほぐし、滞りがちな末梢の血流を促すことを目的として、軽いマッサージやストレッチが推奨されることがあります。
マッサージを安全に行うための重要な注意点
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ただし、安全に行うためにはいくつかの重要な注意点があります。まず、閉塞性動脈硬化症の患者さんは小さな傷や低温やけどから感染を起こして壊死に悪化しやすいため、マッサージは決して強い力で揉みほぐすのではなく、皮膚を傷つけないよう優しく撫でる程度に留めることが基本です(参考:国立循環器病研究センター 1)。
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また、足先から心臓に向かって強い圧力をかけて押し上げるようなマッサージは、弱った血管に負担をかけるため避けてください。
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少しでも痛みや違和感を感じた場合は、直ちにマッサージを中止することが鉄則です。
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そして最も重要なのは、自己判断でマッサージを始めず、必ず事前に主治医や専門医に相談し、ご自身の現在の病状でマッサージを行っても問題ないかを確認することです。
マッサージ以外の安全で効果的な足のケアと生活習慣
血流改善に役立つ運動療法とリハビリテーション
マッサージ以外にも、足の血流を改善するための安全で効果的なアプローチがあります。
その代表が運動療法です。
特にフォンテイン分類のI度やII度で間欠性跛行の症状がある方にとって、適切な運動療法はそれまであまり使われていなかった細い血管(側副血行路)の血流を増やし、症状を緩和する効果が期待できます(参考:国立循環器病研究センター 1)。
日常的に取り組みやすいのはウォーキングです。
痛みがある程度我慢できる間は歩き続け、強い痛みのでる一歩手前で休みながら、繰り返し歩くよう心掛けることが推奨されます。
無理をして痛みがでるまで歩くのはお勧めできません(参考:国立循環器病研究センター 1)。
より安全かつ効果的に運動を行うためには、医療機関で理学療法士などの専門家による指導のもと、専門的なリハビリテーションを受けることが望ましいです。
重症例の運動療法について
なお、フォンテイン分類III度以上の重症例では運動療法自体が禁忌となることがあるため、必ず医師の指示に従ってください。
足の温め方と温熱療法の注意点
足の冷えを和らげ、血管を広げて血流を促すために、足を温める温熱療法も有効なケアの一つです。
入浴なども血行改善に役立ちます(参考:国立循環器病研究センター 1)。
低温やけどに注意
ここで注意しなければならないのが低温やけどです。
下肢閉塞性動脈硬化症の患者さん、特に糖尿病を合併している方は、四肢の感覚障害を伴っていて熱さを感じにくく、電気あんかや湯たんぽなどを長時間同じ場所に当てていると、気づかないうちに重度の低温やけどを負ってしまう危険性があります(参考:国立循環器病研究センター 1)。
暖房器具を使用する際は手足に直接触れないようにし、間接的な保温になるように長時間の使用は避けるなどの工夫が必要です。
日常生活で実践できるフットケア
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日々の生活の中で足の状態を清潔かつ健康に保つフットケアは、潰瘍や壊死といった重症化を防ぐために非常に重要です。まず、毎日の入浴時には足を優しく洗い、水虫などの皮膚病にかからないように清潔を心掛けます(参考:国立循環器病研究センター 1)。
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爪の手入れも慎重に行う必要があります。深爪をすると周囲の皮膚を傷つけ、そこから細菌が入り込む原因となるため、深爪をしないように切り方に注意します。
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また、外出時は足先のきつくない靴を選び、靴擦れを防ぐことが大切です。四季を通じて素足は避け、靴下を着用して足を保護し、同時に保温に努めましょう(参考:国立循環器病研究センター 1)。
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毎日足を観察し、小さな傷や異常がないかをチェックする習慣をつけることで、異常の早期発見と迅速な対処が可能になります。
病状管理のための生活習慣改善
下肢閉塞性動脈硬化症の進行を食い止め、症状を改善するためには、根本的な原因である動脈硬化の進行を防ぐ生活習慣の改善が不可欠です。
中でも最も重要視されるのが禁煙の厳守です。
タバコに含まれるニコチンは毒性が強いばかりでなく血管を収縮させる作用があり、血流をさらに悪化させるだけでなく、動脈硬化を急速に進行させます。
禁煙できなければ症状が悪化するうえ、手術を行っても再発してしまいます(参考:国立循環器病研究センター 1)。
加えて、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった基礎疾患の管理も欠かせません。
塩分や糖分、動物性脂肪を控えたバランスの取れた食事を心がけ、医師の指示に従って適切な数値を維持することが求められます(参考:国立循環器病研究センター 1)。
生活習慣の改善と並行して、血流を良くする薬や血栓を防ぐ薬を用いた薬物療法が行われます。
症状が進行し、これらの保存的治療では十分な効果が得られない場合には、カテーテルを用いて狭くなった血管を広げる治療や、バイパス手術といった外科的治療(血行再建術)が検討されることになります(参考:関西医科大学附属病院 2)。
治験を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では下肢閉塞性動脈硬化症でお困りの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられることがある
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
下肢閉塞性動脈硬化症の足の症状で迷ったら、専門家へ相談を
どのような症状があれば受診すべきか
足の不調を感じた際、それが単なる疲れなのか、病気によるものなのかを判断するのは難しい場合があります。
しかし、歩行時にふくらはぎなどに締め付けられるような痛みを感じ、休むと痛みが無くなって再び歩けるという症状が続く場合は、下肢閉塞性動脈硬化症のサインである可能性が高いため、早めの受診が必要です(参考:国立循環器病研究センター 1)。
重症化のサインに注意
また、安静にしていても足が痛む、足にできた傷がなかなか治らないといった症状が現れた場合は、病状がかなり進行しているサインです。
さらに、片方の足だけが急激に赤く腫れ上がり、強い痛みが生じた場合は深部静脈血栓症などの疑いがあるため、一刻も早い医療機関への受診が求められます。
どこに相談すべきか
受診療科
下肢閉塞性動脈硬化症が疑われる場合、受診すべき適切な診療科は循環器内科や心臓血管外科などの専門科です(参考:関西医科大学附属病院 2)。
これらの専門科では、血圧脈波検査(ABI検査)や超音波検査、MRI、CTといった専門的な検査機器を用いて、血管の狭窄の程度や血流の状態を正確に評価することができます(参考:関西医科大学附属病院 2)。
かかりつけの内科医がいる場合は、まずはそちらで症状を相談し、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらうのも良い方法です。
専門医の診断を受けることで、ご自身の現在の病状のステージが明確になり、マッサージや運動療法を行っても安全かどうかという具体的なアドバイスを得ることができます。
自己判断の危険性と早期発見・早期治療の重要性
インターネット上には様々な情報が溢れており、良かれと思って試したケアが、実はご自身の病状には適しておらず、かえって症状を悪化させてしまうケースが後を絶ちません。
特に足の血流障害がある状態での不適切なマッサージや温熱療法は、取り返しのつかない組織の損傷を招く危険性があります。
専門医への相談を
下肢閉塞性動脈硬化症は、早期に発見し、適切な治療と生活習慣の改善を開始すれば、重症化を防ぐことが十分に可能な病気です。
足の症状に不安を感じたり、ケアの方法で迷ったりした場合は、決して自己判断で解決しようとせず、必ず専門医の診察を受けることを強くお勧めします。
まとめ
下肢閉塞性動脈硬化症におけるマッサージは、すべての場合において禁忌というわけではありませんが、病状や合併症の有無によって安全性が大きく異なります。
急激な足の腫れや痛みを伴う深部静脈血栓症の疑いがある場合や、安静時疼痛、皮膚潰瘍、壊死などの重篤な症状がある進行期においては、マッサージは症状を悪化させるリスクが高いため絶対に避けるべきです。
一方で、病状が安定している初期段階であれば、優しく撫でる程度の軽いケアが役立つこともありますが、自己判断は危険です。
安全で効果的な対策
マッサージ以外にも、医師の指導に基づく運動療法、保温による足のケア、日々の丁寧なフットケア、そして何より禁煙をはじめとする生活習慣の改善が、安全で効果的な対策となります。
足の症状でお悩みの方は、ご自身の状態に合った最適なケアを見つけるためにも、まずは血管外科や循環器内科などの専門医にご相談ください。
下肢閉塞性動脈硬化症に関するよくある疑問
最も避けるべきは喫煙です。
タバコは血管を収縮させ、動脈硬化の原因になります(参考:国立循環器病研究センター 1)。
また、足の感覚が鈍くなっていることがあるため、湯たんぽや電気あんかなどを直接当てて低温やけどを起こすことや、深爪をして足に傷を作ることにも細心の注意を払う必要があります(参考:国立循環器病研究センター 1)。
さらに、自己判断で強い力で足を揉むようなマッサージも、血管や組織を傷つけ感染の原因となる恐れがあるため避けてください。
深部静脈血栓症など、足の静脈に急性期の血栓がある状態での一般的なマッサージや下肢の圧迫は禁忌です。
物理的な圧迫で血栓が血管の壁から剥がれ落ち、血流に乗って肺に到達すると、肺血栓塞栓症(肺塞栓症)という命に関わる重大な合併症を引き起こすおそれがあるためです(参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構 3)。
足に急激な腫れや痛みがある場合は、触らずにすぐに医療機関を受診してください。
足を温めることは血行改善に役立ちます。
靴下や電気毛布などを使って保温に努め、入浴も効果的です(参考:国立循環器病研究センター 1)。
ただし、湯たんぽや電気あんかなどの暖房器具を使用する場合は、手足に直接当たらないように間接的な保温を心がけ、低温やけどに十分注意してください(参考:国立循環器病研究センター 1)。
歩行時に痛みが出る間欠性跛行の場合は、無理をせずに痛みが我慢できる範囲で歩き、強い痛みが出る一歩手前で休むことを繰り返す運動療法が推奨されます(参考:国立循環器病研究センター 1)。
これにより、側副血行路と呼ばれる細い血管の血流が増え、症状が緩和されることが期待できます(参考:国立循環器病研究センター 1)。
安静にしていても痛む場合は病状が進行しているサインですので、速やかに専門医を受診し、外科的治療などの適切な処置を受ける必要があります。
第一に禁煙を厳守することです(参考:国立循環器病研究センター 1)。
それに加えて、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症といった基礎疾患をコントロールするために、生活習慣の改善を心がけましょう。
また、足の小さな傷や低温やけどから感染を起こして壊死に至ることを防ぐため、靴下を着用して足を保護し、足先のきつくない靴を選び、毎日足を清潔に保つフットケアを習慣づけることが非常に重要です(参考:国立循環器病研究センター 1)。
