春の訪れとともに多くの人を悩ませる花粉症。

職場の隣の席の人はマスクの下で鼻水に苦しんでいるのに、自分は全く平気、あるいはその逆という状況はなぜ起こるのでしょうか。

「同じ空気を吸っているのに、なぜ自分だけ?」

その疑問の答えは、単なる運ではなく、遺伝的な体質、環境要因、そして日々の生活習慣の複雑な組み合わせにあります(参考:環境省 1)。

この記事では、花粉症になる人とならない人の医学的な違いをメカニズムから解説し、まだ発症していない人が今すぐできる予防策について詳しく紹介します。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

花粉症でお困りの方へ

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なぜ同じ環境でも違う?花粉症になる人・ならない人の「3つの決定的な差」

花粉症を発症するかどうかは、ひとつの原因だけで決まるわけではありません。

主に以下の3つの要素が重なり合ったときに、発症のリスクが高まると考えられています。

1. 遺伝的体質(アレルギー素因):親からの遺伝は絶対か?

最も大きな要因の一つが「遺伝」です。

正確には、花粉症そのものが遺伝するのではなく、「アレルギー反応を起こしやすい体質(アレルギー素因)」が遺伝します

これは、花粉に対して「IgE抗体(アイジーイーこうたい)」という物質を作りやすい体質かどうか、という点に関わります(参考:日本アレルギー学会 2)。

一般的に、両親や兄弟に花粉症やアレルギー疾患(喘息、アトピー性皮膚炎など)を持つ人がいる場合、発症リスクは高くなる傾向にあります。

ただし、遺伝子を持っていても必ず発症するわけではありません。

発症には後述する環境要因が大きく影響するため、親が花粉症であっても子が必ずしも発症するとは限りません(参考:日本アレルギー学会 2)。

2. 花粉の曝露量(取り込む量):「感作」と「発症」のメカニズム

花粉症の発症メカニズムとしてよく「コップの水」に例えられることがあります。

これは医学的には、体内に取り込まれた花粉(アレルゲン)に対して「IgE抗体」が作られる準備段階(感作)と、その後に許容量を超えて症状が出る段階(発症)を説明する比喩です。

  • なる人
    • アレルギー体質を持ち、花粉を繰り返し浴びることで体内のIgE抗体が一定量を超え、発症の準備が整ってしまった状態。
  • ならない人
    • まだIgE抗体の量が十分でない(感作が成立していない)、あるいは感作されていても発症のスイッチが入っていない状態。

この発症のタイミングには個人差がありますが、生活環境によって取り込む花粉の量を減らすことは、発症を遅らせるために重要です(参考:環境省 1)。

3. 生活習慣と環境:免疫バランスの乱れ

遺伝や花粉の量に加え、生活習慣も発症に関わります。

花粉症は、本来無害な花粉を体が「異物」とみなして過剰反応するアレルギー疾患です。

睡眠不足や食生活の乱れ、過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、アレルギー症状を悪化させる要因となり得ます。

規則正しい生活を送ることは、正常な免疫機能を保つために大切です(参考:厚労省 3)。

【メカニズム解説】体の中で何が起きている?IgE抗体と免疫システム

免疫システムが暴走する仕組み

医学的には、花粉が体内に入ると、リンパ球がそれを受け取り、「IgE抗体」を作ります。

この抗体が、鼻や目の粘膜にある「マスト細胞」にくっつきます。

再び花粉が入ってきて、マスト細胞上のIgE抗体と結合すると、マスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されます。

これが神経を刺激し、くしゃみや鼻水を引き起こすのです(参考:環境省 1)。

都会の人ほど花粉症になりやすい理由

「杉林の多い山間部より、都会の方が花粉症患者が多い」という現象には、いくつかの理由が指摘されています。

  1. 大気汚染物質(アジュバント)の影響
    • 排気ガス(ディーゼル排気粒子)やPM2.5などの大気汚染物質は、アレルギー反応を増強させる「アジュバント物質」として働く可能性が指摘されており、花粉と一緒に吸い込むことで症状が悪化しやすくなると考えられています(参考:環境省 1)。
  2. アスファルトによる再飛散
    • 土の地面と違い、アスファルトやコンクリートは花粉を吸収しません。一度地面に落ちた花粉が風や車の走行で再び舞い上がり(再飛散)、私たちが吸い込む機会が増えることも原因の一つとされています(参考:環境省 1)。

あなたはどっち?花粉症になりやすい人の特徴チェックリスト

以下のような環境や習慣は、花粉症の発症や悪化に関わる可能性があります。

  •  両親や兄弟にアレルギー疾患を持つ人がいる
  •  交通量の多い道路沿いなど、排気ガスの影響を受けやすい場所に住んでいる(参考:環境省 1)
  •  睡眠時間が不規則で、日常的にストレスを感じている(参考:厚労省 3)
  •  喫煙習慣がある(粘膜への刺激となり症状を悪化させる要因となる)(参考:環境省 1)

まだ発症していない人が今すぐやるべき予防アクション

「自分はまだ大丈夫」と思っていても、ある日突然発症する可能性があります。

発症を予防し、遅らせるためには、日々の対策が重要です。

花粉を「入れない」対策

基本にして最大の防御です。

体に入る花粉の総量を減らすことを意識しましょう。

  • マスクとメガネ
    • 飛散シーズンは症状がなくても着用し、粘膜への付着を防ぎます。メガネの使用で目に入る花粉量を減らすことができます(参考:厚労省 3)。
  • 帰宅時の習慣
    • 玄関に入る前に服や髪についた花粉を払い落とします。表面がツルツルした素材のコートは花粉が付着しにくいのでおすすめです(参考:環境省 1)。
  • 空気清浄機
    • 室内に入り込んだ花粉を除去するために有効です。

免疫と体調を「整える」対策

体の調子を整えることも大切です。

特定の食品が花粉症を治すわけではありませんが、バランスの良い食事は健康維持の基本です。

古くから「腸内環境」や「ビタミン」と免疫の関係については様々な研究が行われていますが、現時点のガイドラインで特効薬として推奨される食品はありません。

偏った食事を避け、バランスよく栄養を摂り、十分な睡眠をとることが推奨されます(参考:厚労省 3)。

粘膜を「守る」対策

鼻や喉の粘膜が乾燥して荒れていると、アレルゲンによる刺激を受けやすくなります。

  • 保湿と加湿
    • 部屋の加湿を心がけ、粘膜の乾燥を防ぎましょう。
  • 鼻呼吸の意識
    • 鼻には異物の侵入を防ぐフィルター機能があります。口呼吸ではなく鼻呼吸を意識することも対策の一つです。
治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では花粉症でお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

よくある疑問(FAQ)

Q. 親が花粉症だと子供も必ずなりますか?

A. 必ずなるわけではありません。 アレルギーになりやすい体質(素因)は遺伝する可能性がありますが、実際に発症するかどうかは、花粉の飛散量や生活環境など、様々な要因が複雑に関係しています(参考:日本アレルギー学会 2)。

Q. 「花粉症の人は癌になりにくい」って本当ですか?

A. そのような説を耳にすることがあるかもしれませんが、現時点において、その主張を裏付ける明確な医学的根拠や公的なガイドラインの記載はありません。花粉症であるかどうかにかかわらず、定期的ながん検診を受けるなどの一般的な健康管理を行うことが重要です。

Q. 一度なると自然に治ることはないのですか?

A. 自然に完全に治ることは稀ですが、加齢とともに免疫反応が変化し、症状が軽くなることはあります。また、現在は「アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)」という、体をアレルゲンに慣らして症状を治したり和らげたりすることを目指す治療法も普及しています(参考:厚労省 3)。

まとめ:正しい知識で対策を

花粉症になる人とならない人の違いは、遺伝的な背景と、環境要因の両方が関係しています。 

体質をすぐに変えることは難しくても、マスクの着用や生活習慣の見直しによって、花粉という「環境要因」の影響を減らすことは可能です。

正しい知識を持って対策を行い、快適な春を迎えましょう。

参考資料・文献一覧

  1. 環境省「花粉症環境保健マニュアル2022」 https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/2022_full.pdf
  2. 日本アレルギー学会「アレルギーポータル(鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版準拠)」 https://allergyportal.jp/documents/bien_guide_2021.pdf
  3. 厚生労働省「的確な花粉症の治療のために(第2版)」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf