水虫は足の指の間や足の裏などの皮膚に小さな水ぶくれやあかみ、ふやけた状態が生じるものをいいます。医学的には足白癬(あしはくせん)と呼ばれます。
水虫と聞くと、かゆみがあるイメージがありますが、実はかゆくない水虫も存在します。
そのため「かゆみがないから水虫じゃない」と自己判断するのは、悪化のリスクが高まり危険です。
この記事では皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、かゆみのない水虫の特徴、タイプ、見分け方、治療法、注意すべき他の皮膚疾患についてわかりやすく解説します。
水虫なのにかゆくない?
水虫にはかゆみが少ない、あるいは全くないケースが少なくありません。
多くの人が水虫=かゆいというイメージを持っていますが、症状が軽い場合や特定の水虫のタイプでは自覚症状がほとんど出ないこともあります。
これは水虫の原因である白癬菌(はくせんきん)が皮膚の角質層で繁殖する際、必ずしもかゆみを引き起こす炎症反応を伴わないためです。
例えば、角質が厚いかかとや爪に白癬菌が感染した場合、かゆみを感じにくい傾向があります。
そもそも水虫患者の内、かゆみを感じるのはわずか10%程度ともいわれています(参考:日本皮膚科学会1)。
また、個人の体質によってもかゆみの感じ方は異なるため、かゆみがなくても水虫の可能性を疑うことが重要です。
かゆみのない水虫の3つのタイプとは?
かゆみが出にくい3つの水虫タイプを解説します。
角質増殖型水虫(もっともかゆみが出にくい)
角質増殖型水虫は、足裏の角質が厚くなり、ガサガサした状態になる水虫のタイプです。
かゆみがほとんどないとされ、ひび割れや厚い角層による硬い皮膚が主な症状です。
このタイプは白癬菌が角質層の深い部分で繁殖し、炎症が表面に出にくいためです。
足裏全体が硬くなり、見た目が「たこ」や「ひび割れ」に似ているため、水虫と気づかない人も多いです。
かゆみがなくても足裏の硬さやひび割れが続く場合は、角質増殖型水虫の疑いがあります。
趾間型水虫(皮はむけるがかゆくないことも)
趾間(しかん)型水虫は、足の指の間が白くふやけたり、皮がむけたりするタイプです。
軽症の場合、かゆみがほとんどないこともあります。
これは白癬菌が指の間の湿った環境で繁殖する一方、炎症が軽度にとどまるためです。
また、乾燥した環境や適切な通気性のある靴を履いている場合、かゆみが抑えられることがあります。
皮むけが続く場合は、かゆみがなくても水虫を疑った方が良いでしょう。
爪水虫(白く濁るだけでかゆみや痛みはない)
爪水虫は爪が白く濁ったり厚くなったりするタイプで、かゆみや痛みがほぼないのが特徴とされます。
白癬菌が爪の内部に侵入し、見た目の変化だけを引き起こすため、気づかずに放置されることも多いです。
爪水虫は他のタイプと合併することもあり、足全体の水虫の原因となることがあります。
爪の変色や変形に気づいたら、早めに皮膚科を受診することが重要です。
他の皮膚疾患との違いも知っておこう
かゆみのない水虫は、乾癬(かんせん)、湿疹、汗疱(かんぽう)、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)など他の皮膚疾患と似ているため、見分けるのが難しい場合があります。
例えば、乾癬は赤みや鱗状の皮むけが特徴で、水虫と異なり全身に症状が出ることがあります。
掌蹠膿疱症では、足の裏に膿疱やカサカサが生じます。
正確な診断には皮膚科での顕微鏡検査が必要です。
自己判断せず、皮膚科専門医の診断を受けましょう。
水虫かどうかを見分けるポイントとセルフチェック
水虫かどうかの見分け方を解説します。
かゆみ以外に注目すべき症状とは?
水虫の診断では、かゆみ以外の症状に注目することが重要です。
主な症状には、皮むけ、角質の肥厚、爪の変色、ひび割れ、わずかなにおいなどがあります。
特に足裏や指の間、爪にこれらの変化が長期間続く場合は水虫の可能性が高いです。
かゆみがなくても、これらの症状を見逃さないようにしましょう。
皮膚の状態・色・厚み・においのチェック
セルフチェックでは、皮膚の状態を詳しく観察することが有効です。
具体的には足裏の角質が硬くなっていないか、指の間が白くふやけていないか、爪が白く濁ったり厚くなったりしていないかを確認します。
また、足のにおいが強くなる場合も水虫のサインであることがあります。
例えば、趾間型水虫では湿った環境で菌が繁殖し、独特のにおいを伴うことがあるとされています。
市販薬で改善しない場合は水虫かも?
市販の抗真菌薬を試しても症状が改善しない場合でも水虫の可能性は残ります。
市販薬は軽度の趾間型水虫には効果的ですが、角質増殖型や爪水虫には効果が限定的です。
また、誤診による不適切な薬の使用も改善を妨げます。
早めに皮膚科専門医を受診し、自己判断で長期間市販薬を使い続けるのは避けましょう。
確実なのは病院での顕微鏡検査
水虫の確実な診断には、皮膚科での顕微鏡検査が有効です。
この検査では角質や爪のサンプルを採取し、白癬菌の有無を確認します。
検査は簡単で結果も数分で判明することが多いです。
正確な診断により適切な治療法を選択できるため、自己判断による誤診を防げます。
かゆくない水虫の放置リスクとは?
かゆみがない水虫を放置するとどうなるのかを解説します。
他人への感染リスクが高まる
かゆみのない水虫を放置すると、家族や周囲の人への感染リスクが高まります。
白癬菌は皮膚の角質や爪から剥がれ落ち、床やタオル、靴などを介して感染します。
特に角質増殖型や爪水虫は症状が目立たないため、気づかずに感染を広げることがあります。
また、家庭内感染の多くは無症状の水虫患者から発生しているとの報告もあります。
放置で爪にまで感染するケースも
かゆみがないからと言って水虫を放置すると、爪水虫に進行するリスクがあります。
爪水虫は治療に時間がかかるとされ、完治に半年から1年以上かかることもあります。
爪水虫は見た目の問題だけでなく、靴の圧迫による痛みや歩行に支障が出ることもあります。
自然治癒はほぼ期待できない
水虫は自然治癒がほぼ期待できない疾患とされています。
これは白癬菌は角質層や爪に根強く残り、免疫力だけでは排除が難しいためです。
特にかゆみのない水虫は症状が軽いため放置されがちですが、菌は増殖を続けます。
放置せず、早めに治療を始めましょう。
かゆくない水虫の正しい治療法と注意点
かゆくない水虫の正しい治療法を解説します。
市販薬と処方薬の違い
水虫の治療には市販の抗真菌薬と皮膚科で処方される薬があります。
市販薬は軽度の趾間型水虫に効果的ですが、角質増殖型や爪水虫には不十分な場合が多いです。
一方で処方薬は菌の種類や感染部位に合わせた成分が含まれ、効果が高い傾向があります。
特に爪水虫は外用薬だけでは治りにくいとされ、内服薬も処方されることがあります。
ただし、副作用のリスクがあるため、定期的な血液検査が必要です。
市販薬での治療に頼らず、皮膚科での早期の診断と処方薬の使用を検討しましょう。
治療期間の目安と途中でやめないための工夫
水虫の治療期間はタイプによって異なり、趾間型で1~2か月、角質増殖型で3~6か月、爪水虫で6か月~1年以上が目安です。
かゆみや皮むけなどの症状が改善しても菌が残っている場合があるため、医師の指示通りに治療を続けることが大切です。
治療を継続するための工夫として毎日同じ時間に薬を塗る習慣をつけたり、治療の進捗を記録したりする方法が有効です。
爪水虫は特に根気が必要ですが、最近では3か月の内服で効果のある薬もあるため、医師の指導のもと治療を続けましょう。
再発を防ぐ生活習慣とは?
水虫の再発を防ぐには、足を清潔に保ち、乾燥させることが重要です。
具体的には毎日足を洗い、指の間をしっかり乾かす、吸湿性の高い靴下を選ぶ、通気性の良い靴を履くなどが推奨されます。
また、家族間でタオルやスリッパを共有しないことも大切です(参考:日本皮膚科学会2)。
正しい生活習慣で水虫を予防しましょう。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では足水虫(足白癬)でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
水虫以外で「かゆくない皮むけ」が起こる病気
水虫以外のかゆくない皮むけが起きる病気を解説します。
汗疱(異汗性湿疹)
汗疱(かんぽう)は、手や足に小さな水疱や皮むけが起こる疾患で、かゆみが軽いか全くない場合があります。
汗腺の詰まりや汗の刺激が原因と考えられ、水虫とは異なり白癬菌は関与しません。
汗疱はストレスや季節の変化で悪化することがあり、夏場に多い傾向があります。
乾癬・湿疹・掌蹠膿疱症などとの違い
乾癬(かんせん)は赤みや鱗状の皮むけが特徴で、関節や頭皮にも症状が出ることがあります。
湿疹はアレルギーや乾燥が原因で、かゆみを伴うことが多いですが、軽症ではかゆみが少ない場合もあります。
掌蹠膿疱症は足の裏、手のひらに膿疱、皮むけ、赤みなどが生じて爪の変形も生じることがあります。
これらの疾患は見た目が水虫と似ているため、専門医の診断が重要です。
皮膚科での診断で正確に見極める重要性
かゆみのない皮むけや角質の異常は、水虫だけでなく他の皮膚疾患の可能性もあります。
自己判断では誤診のリスクが高く、適切な治療が遅れることがあります。
皮膚科での顕微鏡検査などにより、正確な原因を特定できます。
まとめ|かゆくない水虫こそ早期対処が大切
かゆみのない水虫は症状が軽いため見過ごされがちですが、放置すると感染拡大や悪化のリスクがあります。
角質増殖型や爪水虫は見た目以外に自覚症状が少なく、気づかないうちに進行することがあります。
かゆみのない水虫を治療するには、正しい知識と継続的なケアが欠かせません。
適切な薬の使用、足の清潔保持、通気性の良い靴の選択など、日常生活での工夫が完治への近道となります。
かゆみがないからと言って放置はせず、早めに皮膚科を受診しましょう。
参考資料・サイト一覧
1.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q12.html
2.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q24.html
記事監修者情報

Dクリニックグループ代表
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚アレルギー学会
- 日本香粧品学会
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