ADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つお子さんを育てる中で、「どうやって叱ればいいのだろう」と悩む保護者の方は少なくありません。

「つい感情的に怒鳴ってしまい、後で自己嫌悪に陥る」「子どもを傷つけてしまうのではないかと心配で、何も言えなくなってしまう」といった声も聞かれます。

ADHDの特性を理解しないまま叱っても、子どもの心に響かず、逆効果になってしまうこともあります。

この記事では、ADHDの特性を深く理解した上で、お子さんを傷つけずに行動の改善へと導くための具体的な叱り方や声かけの工夫を解説します。

また、叱ることと同じくらい大切な「褒め方」や、つい感情的になってしまう保護者自身の心の持ち方についても触れていきます。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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ADHDの子どもを叱る前に知るべき大切なこと

効果的な叱り方を学ぶ前に、まずADHDの特性とお子さんがなぜ叱られやすい状況に陥るのか、そして「叱る」という行為の本来の目的について理解を深めることが不可欠です。

なぜADHDの子どもは叱られやすいのか?特性を理解する

ADHDの主な特性には「不注意」「多動性」「衝動性」があります。国立特別支援教育総合研究所の発達障害教育推進センターは、ADHDを、年齢や発達に不釣り合いな不注意・衝動性・多動性が続き、社会的な活動や学校生活を営む上で著しい困難を示す状態と説明しています※1

これらの特性は、本人の怠慢やわがままが原因ではありません。脳の機能的な特性によるものです。

  • 不注意 集中力が続きにくい、忘れ物が多い、話を聞いていないように見える。
  • 多動性 じっとしていられない、そわそわと手足を動かす、おしゃべりが止まらない。
  • 衝動性 順番を待てない、考えずに行動してしまう、他の子の邪魔をしてしまう。

国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターも、おしゃべりが止まらない、待つことが苦手でうろうろしてしまう、うっかりして同じ間違いを繰り返す、約束や決まり事を守れないといった例を挙げています※2

その行動は「わざと」ではありません

厚生労働省と日本発達障害ネットワークがまとめたペアレント・トレーニング実践ガイドブックは、発達障害を脳機能の問題であり、本人の努力不足でも親の養育の失敗でもないとしています。できることとできないこと、できるときとできないときのムラが周囲からは見えにくいため、家庭や学校での失敗に対して「わざとやっている」「やる気がない」という叱責が繰り返されやすく、子どもは自尊感情を低下させていきます※3

これらの特性から、宿題を忘れたり、授業中に立ち歩いたり、友達とトラブルになったりする場面が増えがちです。

その結果、周囲から叱られる機会がどうしても多くなってしまう傾向にあります。大切なのは、これらの行動が「わざとではない」という視点を持つことです。

「怒る」と「叱る」の違い:目的意識を持つ大切さ

「怒る」と「叱る」は、似ているようで全く異なります。

  • 怒る 保護者の感情(イライラ、不満、不安など)を一方的にぶつける行為。
  • 叱る 子どもの望ましくない行動を改めさせ、成長を促すための教育的な関わり。

感情にまかせて「怒って」しまうと、子どもは恐怖を感じるだけで、なぜ注意されたのかを理解できません。それどころか、自己肯定感が低下する原因にもなります。

厚生労働省のとりまとめ「体罰等によらない子育てのために」も、叩かれたり怒鳴られたりすると恐怖心などから一時的に言うことを聞くことはあっても、それは自分で考えて行動した姿ではないとしています。同じとりまとめは、しつけを、子どもの人格や才能等を伸ばし、社会において自律した生活を送れるようにサポートする行為と位置づけています※4

一方、「叱る」は、子どもの将来を考えた愛情に基づく行為です。叱る際には、「この行動をなくし、代わりにどうすれば良いかを教える」という明確な目的を持つことが重要になります。

叱ることが逆効果になるケースと、その見極め方

良かれと思って叱ったつもりが、かえってお子さんを追い詰めてしまうケースもあります。例えば、子どもが強い不安やパニック状態にある時に、さらに言葉で追い打ちをかけるのは逆効果です。

また、特性上どうしてもできないこと(例:長時間静かに座っている)を繰り返し叱っても、子どもは無力感を覚えるだけでしょう。

国が運営する発達障害ナビポータルは、ADHDの子どもたちが失敗や叱責に傷つきやすいとしたうえで、好ましい行動を増やすには、感情的な叱り方をせず、好ましい行動を見つけながら褒め方を工夫することが大切だとしています※5

叱るのをいったん止めたいサイン

お子さんの表情がこわばっていたり、フリーズしてしまったり、逆に泣き叫んだりするような場合は、一度叱るのを中断し、まずは子どもの気持ちを落ち着かせることを優先する必要があります。

公的なプログラムでは「叱る」がどこに置かれているか

ペアレント・トレーニング実践ガイドブックは、プログラムの核となる要素として、子どもの良いところ探し&ほめる、行動の3つのタイプわけ、行動理解(ABC分析)、環境調整、子どもが達成しやすい指示、子どもの不適切な行動への対応の6つを挙げています。

このうち不適切な行動への対応は、「ほめる」ことをベースにしたかかわりが定着していることが前提とされ、危険な行動に対する「警告」「タイムアウト」はそもそも核となる要素に含まれず、親子関係が良好でない場合などはかえって悪化させることもあるため、専門家の助言を得て慎重に行うオプションと位置づけられています※3

叱り方を考える前に、叱らずに済む場面を増やす

この並び順を裏返すと、公的なプログラムの設計では、叱ったり罰したりする対応は最初の手段ではなく、褒める関わりと環境調整を土台にした上での最後の調整弁だということになります。「どう叱るか」を磨く前に「叱らずに済む場面をどれだけ増やせるか」を考える。これが家庭で試す順番としても無理がありません。

ADHDの特性別:効果的な叱り方と具体的な声かけ例

ADHDの特性は一人ひとり異なります。「不注意」が目立つタイプ、「多動性・衝動性」が目立つタイプ、そして両方が混在するタイプに合わせて、アプローチを変えることが効果的です。

国立精神・神経医療研究センター病院も、ADHDを不注意や集中力のなさが目立つ「不注意優勢型」、落ち着きのなさや衝動的な言動が目立つ「多動性・衝動性優勢型」、そのどちらも存在する「混合型」に分類しています。こうした特性は養育者の育て方で生じるのではなく、脳機能の発達や成熟に偏りが生じた結果と考えられています※6

不注意優勢型の子どもへの叱り方

このタイプの子どもは、集中力が途切れやすく、指示が頭に入りにくい傾向があります。叱る際は、注意を引きつけ、分かりやすく伝える工夫をします。

具体的な指示の出し方:シンプルに、短く、一度に一つ

「ちゃんとしなさい」のような曖昧な言葉は伝わりません。「今からやることは一つだけ。青い箱におもちゃを全部しまおう」のように、具体的かつ肯定的な言葉で指示を出します。

複数の指示を一度に出すと混乱するため、一つの行動が終わってから次の指示を出すのが基本です。

厚生労働省の市町村職員向けセミナー資料は、子どものそばに行って注意をひき、予告してから、穏やかに(Calm)・近づいて(Close)・落ち着いた静かな声で(Quiet)指示を出し、やるべきことの25%でもできていればすかさずほめる、という流れを示しています※7。支援者向けに整理されたこの手順を、家庭で声をかける直前に確認できる形に置き換えると、次のようになります。

  • 先に環境を整えたか 気が散るものを片づけ、やることを見えるようにしてから声をかける
  • 注意をひいたか 名前を呼び、視線を合わせてから話し始める
  • 予告したか 「あと5分で終わりにしようね」と、切り替えの見通しを先に伝える
  • 穏やかに・近づいて・静かな声で伝えたか 離れた場所から大声で言わない
  • 25%でもできたらほめたか 完了を待たず、動き出した時点で認める

注意を引く声かけの工夫:視覚・聴覚を刺激するアプローチ

話しかける前に、まず子どもの名前を呼び、視線を合わせます。肩にそっと触れるなどの身体的な接触も有効です。

ホワイトボードや絵カードを使って、やるべきことを「見える化」するのも効果的です。実践ガイドブックも、刺激となるようなものを減らし、見てわかりやすいスケジュールやルールを提示する環境調整を挙げています※3

「なぜできないの?」を避ける伝え方

不注意の特性を持つ子どもにとって、「なぜ忘れたの?」「どうして集中できないの?」という問い詰めは苦痛です。本人にも理由が分からないことが多いためです。

代わりに、「どうすれば忘れ物をしないか、一緒に考えようか」「タイマーが鳴るまでの10分間だけ、一緒に宿題をやってみよう」など、解決策を共に探す姿勢を示しましょう。

厚生労働省のとりまとめも、望ましくない行動があるときにそれを批判するのではなく、持ち物リストを作って見える化するなど、忘れ物を減らす方法を子どもと一緒に考える声かけを例に挙げています※4

多動性・衝動性優勢型の子どもへの叱り方

このタイプの子どもは、危険を顧みずに行動したり、順番を待てずに手を出してしまったりすることがあります。安全を確保しつつ、行動をコントロールする方法を教えることが中心になります。

危険な行動を止める即時的かつ毅然とした伝え方

道路への飛び出しなど、命に関わる危険な行動は、その場で即座に止めなくてはなりません。その際は、「危ない!」「ストップ!」など、短く強い言葉で制止します。

感情的に怒鳴るのではなく、低い声で毅然と伝えるのがポイントです。安全を確保した後に、「車が来ると、ぶつかってすごく痛い思いをするから、道路に出る前は必ず止まってね」と理由を簡潔に説明します。

「制止」と「罰」は分けて考える

厚生労働省のとりまとめは、道に飛び出しそうな子どもの手をつかむといった、罰を与えることを目的としない保護のための行為は体罰に該当しないとしています。一方で、身体に苦痛や不快感を意図的にもたらす行為は、どんなに軽いものであっても体罰にあたります※4。制止と罰は別物として切り分けてください。

衝動的な行動の背景にある心理を理解する

友達のおもちゃをいきなり取ってしまうような行動は、意地悪ではなく、「あれで遊びたい」という強い衝動を抑えられないために起こります。

その気持ちを一度受け止めた上で、「使いたかったんだね。でも、今は〇〇くんが使っているから、『貸して』って聞いてみようか」と、適切な行動を具体的に教えることが大切です。

行動の切り替えを促す具体的な声かけと環境設定

遊びに夢中になって次の行動に移れない場合は、「あと5分で終わりにしようね」と事前に見通しを伝えたり、タイマーを使ったりするのが有効です。

また、衝動的に動き回ってしまう子どもの場合、叱るのではなく、「エネルギーを発散する時間」としてトランポリンで遊ばせるなど、エネルギーを安全な形で発散できる環境を整えることも一つの方法です。

混合型の子どもへのアプローチ

不注意と多動・衝動性の両方の特性を併せ持つ場合は、その時々でどの特性が強く出ているかを見極める必要があります。

まず優先すべきは、本人や他者の安全を脅かす衝動的な行動を止めることです。その上で、忘れ物や集中力の問題に対しては、不注意タイプへのアプローチを参考に、環境調整や具体的な指示を心がけます。

一貫した対応が子どもの安心につながる

混合型のお子さんにとって特に重要なのは、一貫したルールと予測可能性です。「こういう時は、こうする」という明確なルールがあり、保護者の対応が日によってブレないことが、子どもの安心感につながり、行動の安定化を促します。実践ガイドブックも、好ましい行動に注目してほめることと、問題となる行動への対応に一貫性をもたせることを、子育て全般に応用できる基本的な考え方として挙げています※3

ADHDの子どもに「避けるべき」NGな叱り方

良かれと思っていても、子どもの自己肯定感を著しく傷つけ、親子関係を悪化させてしまう「NGな叱り方」があります。これらは特に避けるべきです。

人格を否定する言葉や高圧的な態度は厳禁

「あなたはどうしていつもそうなの」「本当にダメな子ね」といった言葉は、行動ではなく子どもの人格そのものを否定するものです。

これは子どもの心に深い傷を残し、「自分は価値のない人間だ」という思い込みを植え付けてしまいます。大きな声で威圧したり、脅したりするのも同様に避けるべきです。

暴言もきょうだいとの比較も、子どもを傷つけます

厚生労働省のとりまとめは、怒鳴りつけたり子どもの心を傷つける暴言も、健やかな成長・発達に悪影響を与える可能性があるとしています。子どもをけなす、辱める、笑いものにするような言動や、やる気を出させるという口実できょうだいを引き合いにけなすことは、子どもの心を傷つける行為として挙げられています※4

法務省によれば、令和4年の民法改正で懲戒権に関する規定が削除され、親権者は子の人格を尊重し、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないことが明記されました(令和4年12月16日施行)※8

長時間にわたる説教や抽象的な注意の危険性

ADHDの子どもは、長い話に集中し続けることが困難です。長々とお説教をしても、内容のほとんどは頭に入っていません。

伝えたいことは、1分以内を目安に要点を絞って簡潔に話すとよいでしょう。ただし、この「1分」という長さそのものに公的な基準があるわけではなく、大切なのは短く区切って伝えることです。

また、「もっとちゃんとしなさい」「しっかりしなさい」といった抽象的な言葉では、何をどうすれば良いのかが伝わりません。

他の子どもと比較する言動が自己肯定感を下げる

「お兄ちゃんはできるのに、どうしてあなたはできないの」「〇〇ちゃんを見てごらん」といった比較は、避けたい関わりです。子どもは「自分は兄弟や友達より劣っている」と感じ、自信を失ってしまいます。

比べるべきは過去の本人です。「前はできなかったけど、今日はここまでできたね」と、その子の成長を認めましょう。

「なぜ?」と問い詰めることがパニックを招く理由

衝動的に行動してしまった後や、うっかり何かを忘れてしまった時に、「なぜそんなことをしたの?」と問い詰めても、子ども自身、自分の行動の理由をうまく説明できないことがほとんどです。

答えられないことを執拗に聞かれると、子どもは混乱し、パニックに陥ってしまうことがあります。

理由を問うのではなく、「次からはこうしよう」と未来に向けた具体的な行動を教える方が建設的です。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本ではADHDでお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

  • 最新の治療をいち早く受けられることがある
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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良好な親子関係を築くための「叱り方」以外の接し方

子どもの行動を変えるには、「叱る」というマイナスを減らすアプローチだけでなく、プラスを増やす関わりが不可欠です。日頃からの接し方が、いざという時の「叱る」効果をも左右します。

叱るだけでなく「褒める」ことの大きな効果

ADHDの子どもは叱られる経験が多いため、自信を失いがちです。だからこそ、意識的に褒める機会を増やすことが何よりも重要です。

褒め方の基本は「具体的に・すぐに」

厚生労働省のとりまとめは、結果だけではなく頑張りを認めること、今できていることに注目して褒めることを挙げています。何が良いのかを具体的に褒めると子どもに伝わりやすく、褒めるタイミングはすぐが一番効果的ですが、寝る前など落ち着いたときでも構いません※4

具体的な行動を褒める「プロセス賞賛」のすすめ

「頭がいいね」といった結果や才能を褒めるのではなく、「宿題を最後まで諦めずに頑張ったね」「お友達に『貸して』って言えたのが素敵だったよ」など、努力の過程や具体的な行動を褒めましょう。

これを「プロセス賞賛」と呼びます。具体的な行動を褒めることで、子どもは次に何をすれば良いのかを学びやすくなります。

小さな成功体験を積み重ねるサポート

当たり前にできていることにも目を向けて褒めるのがコツです。「朝、自分で着替えができたね」「靴を揃えられたね」など、どんなに小さなことでも構いません。

小さな「できた」の積み重ねが、子どもの自己肯定感を育みます。1日に叱る回数よりも、褒める回数が上回ることを目指してみましょう。

日頃からのコミュニケーションで信頼関係を深める

叱る言葉が子どもに届くかどうかは、普段の親子関係の土台にかかっています。

子どもの話に耳を傾ける「傾聴」の姿勢

子どもが話している時は、できるだけ手を止めて、目を見て話を聞きましょう。

「そうなんだ」「それでどうなったの?」と相槌を打ちながら、子どもの気持ちに寄り添う姿勢が信頼関係を築きます。たとえ拙い話であっても、最後まで遮らずに聞くことが大切です。

肯定的な声かけを増やす意識

「走らないで」ではなく「歩こうね」、「こぼさないで」ではなく「そっと持ってね」のように、否定的な言葉を肯定的な言葉に置き換えることを意識するだけでも、家庭内の雰囲気は大きく変わります。

子どもは、何をすべきかが明確に分かり、前向きな気持ちで行動しやすくなります。

家庭でのルール設定と一貫した対応

家庭内でのルールは、できるだけ少なく、シンプルで分かりやすいものにしましょう。

「ゲームは1日1時間まで」「夜9時にはベッドに入る」など、具体的なルールを子どもと一緒に決め、紙に書いて目につく場所に貼っておくのがおすすめです。そして、そのルールは家族全員が一貫した態度で守ることが重要です。

親自身の感情コントロール:怒ってしまいそうな時の対処法

毎日子どもと向き合っていると、どうしても感情的になってしまう瞬間はあります。保護者自身が自分の感情と上手に付き合う方法を知っておくことは、子どものためだけでなく、自分自身を守るためにも重要です。

親も人間、感情的になる前にできること

怒りの感情が湧き上がってきた時に、それを爆発させないためのテクニックがあります。

クールダウンするための「3秒ルール」実践

カッとなったら、心の中で「1、2、3」と数えてみましょう。あるいは、深呼吸を3回繰り返すだけでも構いません。ほんの数秒間、反応を遅らせるだけで、衝動的に怒鳴ってしまうのを防ぐ効果が期待できます。

厚生労働省のとりまとめも、深呼吸して気持ちを落ち着けたり、ゆっくり5秒数えたり、窓を開けて風にあたって気分転換したりといった工夫を挙げており、時には保護者自身が休むことも大切だとしています。うまくいかないときは、市区町村の子育て相談窓口や保健センターなどに相談する方法もあります※4

なお、数える秒数そのものに定まった根拠があるわけではありません。ねらいは秒数ではなく、反応を一拍遅らせることにあります。

一時的にその場を離れる勇気

どうしても怒りが収まらない場合は、「ちょっと頭を冷やしてくるね」と子どもに伝え、トイレや別の部屋に移動しましょう。

物理的に距離を置くことで、冷静さを取り戻しやすくなります。これは、子どもを放置するのではなく、お互いのために必要なクールダウンの時間です。

叱ってしまった後の親の心のケアと子へのフォロー

もし感情的に怒ってしまったとしても、自分を責めすぎないでください。完璧な親など存在しません。大切なのは、その後のフォローです。

罪悪感を手放す考え方

「また怒ってしまった」と自分を責め続けるのは辛いものです。そんな時は、「人間だから感情的になることもある。次はこうしてみよう」と気持ちを切り替えましょう。

保護者が心穏やかでいることは、子どもの安定にもつながります。一人で抱え込まず、パートナーや友人、専門機関に相談することも大切です。

子どもとの関係修復のための声かけ

感情的に叱ってしまった後は、親が冷静になってから、「さっきは大きな声を出してごめんね。ママ(パパ)も悲しい気持ちになっちゃったんだ。でも、あなたのことは大好きだよ」と、正直に謝り、愛情を伝えましょう。

親が自分の非を認めて謝る姿を見せることは、子どもにとっても大切な学びになります。

まとめ

ADHDの子どもへの叱り方で最も大切なのは、その子の特性を深く理解し、「傷つけない」という配慮を忘れないことです。感情的に怒るのではなく、行動の改善を目的とした「叱り方」を意識しましょう。

  • 特性(不注意、多動・衝動性)に合わせた具体的な声かけを工夫する。
  • 人格否定や他者との比較など、NGな叱り方は絶対に避ける。
  • 叱ること以上に「褒める」ことを重視し、小さな成功体験を積み重ねさせる。
  • 保護者自身の感情も大切にし、完璧を目指さずに子どもと共に成長する視点を持つ。

これらのアプローチは、一朝一夕に身につくものではないかもしれません。試行錯誤を繰り返しながら、お子さんにとって最適な関わり方を見つけていくことが、良好な親子関係を築き、子どもの健やかな成長を支える鍵となります。

FAQ

ADHDの子どもが言うことを聞かない時、どうすればいいですか?
まず、子どもの注意がこちらに向いているかを確認しましょう。名前を呼んで視線を合わせる、肩に軽く触れるなどしてから、指示を伝えます。指示は「一つずつ、短く、具体的に」が原則です。「片付けなさい」ではなく「まず、床にある本を本棚に戻そう」のように伝えます。そして、少しでもできたらすぐに褒めることで、次の行動への意欲を引き出すことができます。
ADHDの子どもへの「3秒ルール」とは具体的にどう使うのですか?
これは主に保護者自身が感情的になりそうな時に使うアンガーマネジメントのテクニックです。子どもに対してカッとなり、怒鳴りそうになった瞬間に、行動を起こす前に心の中で「1、2、3」とゆっくり数えます。このわずかな時間を挟むことで、衝動的に怒りをぶつけるのではなく、「どう伝えれば良いか」を冷静に考える一歩を踏み出せます。なお、数秒待つことで脳の特定の部位(大脳辺縁系や前頭前野)の働きがどう変化するかという説明までは、公的な文献で確認できていません。秒数や脳の仕組みにこだわるよりも、反応を一拍遅らせること自体が目的だと考えてください。
叱りすぎた後、子どもとの関係を修復するにはどうしたらいいですか?
最も大切なのは、保護者が冷静になった後、誠実に謝ることです。「さっきは感情的になって、大きな声で怒ってしまってごめんね」と、自分の行動について具体的に謝罪します。その上で、「あなたのことが嫌いなわけじゃないんだよ。大好きだよ」と愛情をしっかりと伝えてください。ハグなどのスキンシップも有効です。親が完璧ではなく、間違うこともあると示すことは、子どもの心の成長にも繋がります。