海外での治験とは?

2020年6月9日

治験の流れ

治験ボランティアといえば、高額の報酬が得られる人気のアルバイトです。入院タイプの治験で1日に2万円程度の報酬を得られるケースあるため、何度も治験に参加する人は少なくありません。
なかには日本国内ではなく、海外の治験に参加する人もいます。

今回は、海外での治験について、参加方法やメリット・デメリットについてご紹介いたします。

海外での治験実態

日本人が海外の治験に参加する機会は少ないため、その実態についてはあまり知られていないのが現状です。
では海外での治験がどのように行われているのか、どのくらいの報酬が得られるのか見ていきましょう。

まずは治験サイトから登録

まず海外で治験に参加したいと思った場合、日本と同様に治験サイトに登録する必要があります。国によって「治験サイト」という言葉を使っていないことも多いので、その国の言語でどのように呼ばれているのかを調査してから登録するようにしましょう。

治験サイトに登録する際、基本的な情報、身長や体重、喫煙の有無などを尋ねられます。肥満の人は治験に参加できないケースも多いので、BMIの制限などがないかあらかじめ確認しましょう。

その後、治験に参加できるかを尋ねる連絡がメールなどを通して届きます。もし自分にできそうだと感じたなら、参加の旨を連絡しましょう。

日本にいる方が海外の治験に参加する場合には、飛行機などで現地に向かう必要があります。飛行機代など交通費は治験参加が認められれば支給されます。もし落ちてしまっても、半額支給など、ある程度補償される場合がほとんどです。

現地での事前検診を受ける

治験に参加することになったなら、日本国内の治験と同様、現地の病院で事前検診を受けます。検査はそれほど複雑なものではなく、身長や体重、血圧、心電図、血液検査などです。
この際、どのような薬の治験を行うかなど、ある程度の説明を受けます。まったく新しい薬の治験のこともあれば、すでに一部の地域で承認された医薬品の販売地域を広げる目的で行われる治験もあります。
詳しい入院・通院期間、禁止事項、副作用の説明などもこのときに行われます。

治験開始

こうしたプロセスを経て、事前検診に合格した方が実際に治験に参加することになります。その薬の目的によって、ある特定の項目の数値が製薬会社の期待する基準に達している方だけが合格する場合もあるため、健康だからといって絶対に治験に参加できるというわけではありません。
事前検診に合格しても、詳細の説明を受けたあとに治験を辞退することも可能です。

治験に参加すると投薬が開始されます。投薬といっても、点滴のように体内に注入するものもあれば、飲み薬のようなものもあり、さまざまです。一定の割合で体に何の影響も及ぼさない偽薬を混ぜておき、プラセボ効果を調査する場合もあります。

投薬の回数や入院・通院期間などは、その薬の効果などによって異なります。数日の入院、1週間程度の通院、1ヶ月の入院などタイプはさまざまですが、一般的に拘束時間が長いほど報酬は高い傾向にあります。

治験終了後

製薬会社によって定められた治験期間が終了すると、退院となります。万が一入院中に副作用が出たときには、すぐに治療してもらえますし。退院後にも事後検診があり、問題があった場合には適切な治療が施されます。

治験終了後、しばらくして報酬が支払われます。現金で受け取れる場合と小切手の場合などがあるため、治験が行われた国で小切手を現金化する方法を調べておくと良いかもしれません。

海外の治験は報酬が高いのか?

治験といえばやはり高い報酬が魅力の1つです。では海外の治験に参加するとどのくらいの報酬がもらえるのでしょうか。

治験の報酬は、拘束時間、禁止事項、副作用の出る確率、副作用の重さなどによって大きく異なります。前述の通り、通院タイプの治験よりも入院タイプの治験の方が高報酬です。アルコールの摂取、激しい運動などが制限される場合も報酬が高くなる傾向があります。

副作用も胃が荒れる、少し頭痛がするなど軽度のものから、吐き気や湿疹といったやや重度なものまであります。副作用が出やすいと考えられる薬、強い副作用が出る恐れがある薬の場合は、リスクのぶん、当然報酬は高くなります。

平均的には入院タイプの治験の場合、1泊あたり3万円から5万円程度の報酬であることが多いようです。国内の入院タイプの治験では1日あたり2万円程度が平均的な報酬であることを考えると、海外の治験の方がかなり高額の報酬が得られることが分かります。
なかには4週間程度の入院で100万円ほどの報酬が得られる治験もあり、バックパッカーなどに非常に人気です。

海外旅行の一環??

海外の治験というと、治験のためだけに外国に行かなければならないと感じるかもしれませんが、実はそうではありません。
いろいろな人の海外での治験の体験談を見てみると、海外旅行の一環のような形で治験に参加していることが分かります。その理由を見ていきましょう。

海外の治験は交通費などが支給される

まず重要なポイントは、海外での治験では交通費が支給されるということです。例えば日本からアメリカやイギリスでの治験に参加する場合、航空券のための費用は製薬会社が支給してくれます。
ただし事前検診に合格して、治験に参加した場合のみ全額支給されることがほとんどです。もし事前検診に落ちてしまうと支給される交通費が半額程度になってしまいます。
それでも通常の半額で外国に行けるならお得だと考える人は少なくありません。

そのうえ、ほとんどの場合宿泊費が支給されます。滞在した日数に限定されるうえ上限額も決められていますが、これも大きなメリットといえるでしょう。
治験の期間中であれば、隔週通院するだけであってもそのあいだの宿泊費は製薬会社が支払ってくれます。

病院での待遇が良い

海外旅行の一環として海外の治験を受ける方は、いかに病院内が快適であるかを強調します。特に入院タイプの治験の場合、ずっと病院内に留まることが求められます。
もちろん何も娯楽などがない状態でずっと過ごすのは難しいので、病院内では娯楽が充実していることがほとんどです。
日本語の雑誌や小説が置いてあることもあれば、激しい運動を伴わない娯楽を楽しむこともできます。食事はそれほどたくさん食べられませんが、ある程度の品質の物を毎日食べられます。ただの入院よりははるかに好待遇といえます。

治験前後は観光も可能

治験のために外国に行き、治験の事前検診の合否を待っているあいだは基本的に自由行動のため、治験の前や後にその国を観光することも可能です。
とくに交通費・宿泊費を支給してもらえる場合には、その状況を存分に生かして観光を楽しむ方が多いようです。

治験の事前検診で不合格になってしまった場合には治験という目的自体がなくなってしまうので、「治験で稼ぎに行く」と意気込んでいくよりも、「海外旅行の一環として治験をする」と考えていた方が良いかもしれません。

海外治験の意外な落とし穴

このように海外での治験には非常に多くのメリットがあります。しかしその一方で意外な落とし穴も存在します。

治験のために海外に行き、事前検診で不合格になってしまうのはその一例です。
この他にもいくつかデメリットや意外な落とし穴があるので見ていきましょう。

1. 治験中は制限が多い

海外に限った話ではありませんが、とくに入院タイプの治験では行動に多くの制限が課せられます。
まず食事については、病院側が提供するものしか食べられません。これは食べるものによって検査結果に変化が出るのを防ぎ、すべての被験者が同じものを食べることで正確なデータを得るためです。
食事自体は美味しいことが多いですが、量が少なかったり、自分の好きなものが食べられなかったりという状況をしばらく我慢しなければならないでしょう。

さらに喫煙や飲酒は基本的に禁止されます。タバコやお酒が大好きという方にはつらい期間となります。激しい運動も禁止されるため、筋力が落ちたと感じる方もいるようです。

2. 治験中の採血が多く、痛い

こちらも国内外を問わないデメリットですが、採血が多く、しかも毎回同じ場所から採血するため、痛みを伴うことになります。採血する回数は治験薬や製薬会社によって異なりますが、場合によっては1日に20回から30回も採血するケースもあります。

針を腕に固定して、採血用ホルダーを使う方法は痛みが軽減されるため、この方法を用いている治験が徐々に主流になりつつあります。

3. 報酬は治験終了後

日本国内の治験の場合、1日の終わりにその日の報酬が支払われることは珍しくありません。しかし海外の治験の場合、負担軽減費が支払われるのは治験が終了したあとです。交通費や宿泊費も、治験終了後に補償されます。

治験が終わるまでの宿泊費や航空券などは自分で手配しなければならないため、ある程度まとまったお金が必要になることを覚えておきましょう。

海外の治験のメリット・デメリットをしっかり把握しよう

海外の治験ではメリットの方がクローズアップされがちですが、同時にデメリットも存在します。海外でどのように治験が行われるのか詳しく調べてから参加するようにしましょう。

さらに事前検診で不合格になってしまう恐れがあることも理解した上で参加するかどうかを決定することが重要です。

ここで解決!治験に関するFAQ

治験とはなんですか?
治験とは、『医薬品の製造販売承認申請の際に提出すべき資料のうち臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施』、つまり、「国から薬としての販売承認を受けるために行う臨床試験」のことです。
治験ボランティアはアルバイト/バイトなのですか?
法的にはアルバイト/バイトではありません。治験ボランティア参加は負担軽減費(謝礼金)の支給がありますが、時間的拘束や、交通費などの負担を軽減する目的でお支払いするもので、治験協力費ともよばれます。
治験って安全ですか?副作用はありませんか?
治験薬は事前に生体への安全性を確認し、問題ないと予想されるものだけが使用され、治験実施についても、国の基準に沿い、参加者の方の安全に配慮した綿密な治験実施計画書に基づいて慎重に進められています。
健康被害が生じた場合は?
治験薬の副作用などにより、何らかの健康被害が生じた場合には、治験薬との因果関係が否定できない場合に限り、治験依頼者(製薬メーカー)から補償を受けることができます。補償の扱いは治験により異なりますので、それぞれの治験説明の際、医師や治験コーディネーターが詳しくお話しします。
都合のいい日程で参加ができますか?
治験の日程は予め決められております。決められた期間内での選択できる場合は、その日程内で調整していただきます。