高額な謝礼金も?治験の種類を解説

2020年6月9日

謝礼相場

「治験」は新薬を開発するためになくてはならないプロセスの1つです。厚生労働省の承認を得るためには、治験を行って、新薬の候補が人体に及ぼす影響や効果、副作用を確認する必要があります。

治験に参加すると、高額な報酬を得られるというイメージがありますが、実は治験にはいくつもの種類があります。今回は、治験にどのような種類があるのかを見ていきましょう。

治験の種類

治験というと被験者に新薬を投与して経過を観察するというところが注目されがちですが、治験にも種類があります。

大きく分けて企業主導の治験と、研究者もしくは医師主導の治験とがあります。被験者として参加する場合に非常に大きな差があるわけではありませんが、治験に興味がある方はこの二つの違いについて知っておくと良いかもしれません。

企業主導

企業が主導する治験の主な目的は、薬の開発によって利益を得る事です。したがって、治験はたいてい新しい薬の安全性や有効性を確認するという目的で行われることが多いです。

治験によって治験薬の安全性が保証され、かつ患者さんたちに効果があることが分かれば、厚生労働省の承認を経て新薬を販売できます。

治験には健康な成人男性を中心に行われる第一相試験、少数の患者群に対して行われる第二相試験、そしてより大きな患者群に対して行われる第三相試験があります。

試験方法にはいろいろな種類がありますが、第二・三相で多く用いられているのは二重盲検比較試験と呼ばれるものです。これは一定の割合で偽薬を飲む被験者を含めておき、薬を飲んだから変化があるに違いないという思い込み、いわゆるプラセボ効果を防ぐ意味合いがあります。

企業主導の治験は各製薬会社が責任を負っており、謝礼(負担軽減費)は1回の通院につき原則7,000円(〜1万円まで)と決まっています。

研究者主導

企業主導の治験と大きく異なるのが研究者主導の治験です。研究者とは主に医師の事であり、医師はより効果的な治療法を見つけるために治験を行います。

大学や学会などが協力して治験を行うケースもあります。つまりすでに患者さんたちに投与されている薬を用いた治験が行われるという事です。

したがって治験の対象となるのは患者さんたちです。患者さんたちに薬を投与し、さらに別の治療法を組み合わせることで、より良い治療法や診断法を確立することが研究社主導の治験の主な目的になります。

薬の飲み合わせといった比較的簡単なものであれば治験に該当せず、負担軽減費が支払われないこともあります。

一方、手術や放射線治療など非常に専門的な分野が関係している場合には、患者さんたちの協力を得て治験というかたちにすることが多いです。医師や大学は研究費用が限られていること、患者さんたちを対象に治験が行われることから、負担軽減費は製薬会社の治験と比べると低額となる傾向にあります。

通院タイプ

治験タイプ

治験には、通院タイプと入院タイプがあります。

通院タイプの治験は、病院で問診や臨床検査を受けたのち、自宅や宿泊施設に戻ることが可能です。この通院タイプの治験は、主に第二相試験や第三相試験で行われます。では通院タイプの治験について詳しく見ていきましょう。

通院タイプの治験は主に患者が対象

通院タイプの治験では第一相試験はすでに終了し、第二相試験、第三相試験の段階に進んだ新薬が投与されることがほとんどです。そのため、参加者の多くは患者です。

治験期間中は定期的に通院し、副作用の有無や薬の効果を確かめる検査が行われます。治験によっては、長期にわたって通院しなければならないこともあります。しかし入院タイプの治験よりはストレスが少ないため、人気のアルバイトの一つとなっています。

負担軽減費は1回の通院につき7,000円から1万円前後

通院タイプの治験は入院タイプと比べて体への負担やストレスが少ないので、負担軽減費もやや低くなります。通院期間の長さなどによってもやや異なりますが、一般的には1通院ごとに7,000円から1万円前後です。

他の業種のアルバイトよりはかなり割の良い仕事なので、興味のある方は一度応募してみると良いかもしれません。

入院タイプ

入院するタイプの治験も数多く実施されています。入院タイプの治験は、治験の期間中ずっと病院内にいなければならないためややストレスに感じる方もいるようです。入院タイプの治験がどのようなものか見ていきましょう。

入院タイプの治験は健康な人が参加できるものも多い

入院タイプと通院タイプの大きな違いの1つは、入院タイプの治験には健康な成人男性を対象にしているものも多いという点です。最近では女性も参加できる治験も増えてきてはいますが、基本的には健康、成人、男性という3つの条件を満たすことが必要です。

健康な人が参加できるのは主に第一相試験で、有効性を確認するというよりは体内への吸収率や体外へ排出される成分の量を計測することが目的です。そのため初めはごく少量の治験薬を投与し、その後徐々に投薬量を増やしていくという方法が取られます。

また定期的に採血が行われ、治験薬が人体にどのような影響を与えるかが検査されます。新薬のみならず、ジェネリック医薬品の治験も入院タイプで行われることがほとんどです。

症状を持たない被験者たちに対して治験が行われるので、入院中は多くの制限が課せられます。例えば食事は病院側が提供するもの以外は食べられませんし、入院中の飲酒・喫煙も禁止です。被験者の条件を一律にしないと、治験薬が人体に及ぼす影響を正確に計測できないからです。

必ず治験に参加できるとは限らない

入院タイプの治験の場合、応募すれば必ず治験に参加できるとは限りません。治験の前に事前検診が行われ、条件を満たした方だけが被験者として参加できます。合格率はおよそ30%から50%といわれています。持病があったり、肥満であったり、現在服用している薬がある方などは不合格になってしまう可能性がかなり高いでしょう。

病院内での過ごし方はさまざま

治験で入院するというと、病院内ですることがほとんどないように思えるかもしれません。しかし製薬会社もより多くの方に治験に参加してもらえるよう知恵を絞っています。

雑誌や小説、漫画が置いてあることもありますし、パソコンがあったり、Wi-Fiが使えたりすることもあります。激しい運動はできませんが、海外の病院などではビリヤード台が置いてあることもあります。採血の時以外は自由な時間が多いので、病院内で制限下にあるとはいえ、好きなことをして過ごせます。

負担軽減費は1回の入院につき1万円から2万円前後

製薬会社が実施する入院タイプの治験の場合、負担軽減費の総額が数十万という高額になる事もあります。

というのも入院タイプの治験は拘束時間が長く、1日に20回から30回もの採血を行うこともあるからです。治験の内容にもよりますが、負担が大きいということで、入院1泊あたり1万円から2万円ほどの負担軽減費が支払われることが一般的です。

なお、もし治験の事前検診に不合格だったとしても、交通費の名目で3,000円前後の負担軽減費が支払われることがほとんどです。交通費のことを考えずに参加すると結果的に赤字になってしまう事もありますので、遠方から参加する場合は注意しましょう。

負担軽減費は治験終了後に手渡し、もしくは銀行振込で支払われます。

長期間の入院の方が高額になりやすい

治験によって入院の期間は異なります。入院期間が長くなればなるほど拘束時間は長くなるので、負担軽減費は高くなっていきます。単純に1日あたりの負担軽減費に日数をかけていけばよいのです。例えば1日あたり2万円の負担軽減費で入院期間が6日であったとすれば、負担軽減費は12万円となります。

長期間の入院の方が体の負担は大きくなりますが、その分負担軽減費が多くなるということは覚えておきましょう。

トクホや化粧品の治験などもある

これまでご紹介した新薬の治験の他にも、トクホや化粧品の治験も行われています。通院タイプの治験が多く、負担軽減費も1回の通院につき7,000円から2万円ほどと、新薬の治験とそれほど遜色ない負担軽減費が得られるケースもあります。

薬ではないので副作用の心配もほとんどなく、より安心して参加できる治験です。ただし年齢や性別、検査データでかなりふるい分けられるので、合格できるかどうかがポイントです。参加したい場合はこまめにチェックしてみましょう。

治験に参加してみたい方は治験サイトをチェック!

一口に治験といっても入院タイプ・通院タイプ、患者対象・健康な成人が対象など、種類はさまざまです。なかには負担軽減費が高額となるような治験もあります。

気になる方は、ぜひ治験サイトをチェックして、自分が安心して参加できそうな治験がないかを探してみましょう。

ここで解決!治験に関するFAQ

治験とはなんですか?
治験とは、『医薬品の製造販売承認申請の際に提出すべき資料のうち臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施』、つまり、「国から薬としての販売承認を受けるために行う臨床試験」のことです。
治験ボランティアはアルバイト/バイトなのですか?
法的にはアルバイト/バイトではありません。治験ボランティア参加は負担軽減費(謝礼金)の支給がありますが、時間的拘束や、交通費などの負担を軽減する目的でお支払いするもので、治験協力費ともよばれます。
治験って安全ですか?副作用はありませんか?
治験薬は事前に生体への安全性を確認し、問題ないと予想されるものだけが使用され、治験実施についても、国の基準に沿い、参加者の方の安全に配慮した綿密な治験実施計画書に基づいて慎重に進められています。
健康被害が生じた場合は?
治験薬の副作用などにより、何らかの健康被害が生じた場合には、治験薬との因果関係が否定できない場合に限り、治験依頼者(製薬メーカー)から補償を受けることができます。補償の扱いは治験により異なりますので、それぞれの治験説明の際、医師や治験コーディネーターが詳しくお話しします。
都合のいい日程で参加ができますか?
治験の日程は予め決められております。決められた期間内での選択できる場合は、その日程内で調整していただきます。