健康診断の結果票を開き、「心電図異常」「要精密検査」「要経過観察」といった文字を目にすると、心臓の重い病気かもしれないと強い不安や焦りを覚えるものです。

しかし、健康診断の心電図でひっかかる原因は、必ずしも重大な心疾患ばかりではありません。検査時のわずかな緊張や自律神経の乱れ、睡眠不足、あるいは生まれつきの体質など、治療の必要がないケースも多く含まれています。

とはいえ、中には狭心症や心房細動のように、放置すると命に関わる疾患や脳梗塞のリスクを高めるサインが隠れていることもあります。大切なのは、手元の結果票から「経過を見てよい状態か、すぐに専門医へ相談すべき状態か」を正しく見極めることです。

本記事では、結果票に書かれた判定区分や所見名の意味、直ちに受診すべき危険なサイン、そして何科を受診してどのような検査を受けるのかを整理しました。ご自身の結果を冷静に受け止め、適切な次の一歩を踏み出すための判断材料としてお役立てください。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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健診の心電図で「ひっかかる」とは?判定区分の正しい読み方

健康診断における心電図検査は、心臓の筋肉が収縮・拡張する際に流れる微弱な電気信号を波形として記録するスクリーニング検査(病気の可能性がある人をふるい分ける検査)です。

標準的な「安静時12誘導心電図」では、ベッドに仰向けになった状態で手足と胸部に電極をつけ、短い時間の電気的な動きを切り取って評価します。ここで基準となる波形パターンから外れた波形が記録されると、コンピュータの自動解析や判定医によって「所見あり(ひっかかる)」と分類されます。

A〜E判定・「要経過観察」「要精密検査」の緊急度の違い

健康診断の結果票には、所見名とともにアルファベット等による判定区分が記載されています。健診機関によって細かな表記は異なりますが、日本人間ドック・予防医療学会の判定区分(2026年4月改定)※1と、同学会の判定区分に関するQ&A※2では、次のように分けられています。

判定 名称 意味
A 異常なし ―
B 軽度異常 基準からわずかに外れるものの、異常とはいえないレベルの状態
C 要再検査・生活改善 医師が指定した時期に再検査を受け、生活習慣の見直しも求められる状態
D 要精密検査・治療 医療機関を受診して、精密検査を受けるか治療を始める必要がある状態(どちらにするかは受診先の医療機関が決める)
E 治療中 その項目について、すでに医療機関で薬やペースメーカーなどの治療を受けている状態

心電図の再検査の時期は、3か月後・6か月後・12か月後の中から判定医が選ぶことになっています※3。結果票によっては、C判定にあたる区分が「要経過観察」と書かれていることもあります。

特に判断に迷いやすいのが「C判定(要再検査・生活改善)」と「D判定(要精密検査・治療)」の違いでしょう。D判定が出た場合は、自覚症状の有無にかかわらず、速やかに医療機関を受診する必要があります。E判定の方は、通院先の主治医に結果票を見せて相談してください。

一方、C判定は今すぐの精密検査までは求めない区分ですが、指定された時期の再検査は必要です。もし胸の違和感や動悸などの自覚症状が少しでもあるなら、再検査の時期を待たずに受診するのが安全な選択です。

病気以外でも異常波形が出る仕組み(緊張・寝不足・自律神経)

心臓そのものに器質的な病気(構造や血管の異常)がまったくなくても、心電図でひっかかる人は少なくありません。心臓の動きは自律神経(交感神経と副交感神経)によって24時間絶えずコントロールされており、検査時の体調や精神状態が波形に反映されるためです。

たとえば、診察室や検査台の上で「異常が出たらどうしよう」と無意識に力が入ると、交感神経が優位になり脈拍数が上がる(洞性頻脈)ことがあります。白衣を見ると血圧が上がる「白衣高血圧」と似た現象です。

また、健診前日の睡眠不足、過労、精神的なストレス、検査前のカフェイン摂取や喫煙なども、心臓の電気信号を一時的に乱れさせ、「期外収縮」などの軽い不整脈を誘発する引き金になることがあります。

さらに、やせ型や肥満といった体型、胸郭(胸の骨格)の形、心臓のわずかな傾き具合といった個人の体質によっても、電気の伝わり方や電極との距離が変わり、見かけ上の異常波形として記録されるケースがあります。

心電図の「異常」が意味するもの

心電図の「異常」とは「標準的な波形パターンと異なる」という意味を含んでおり、イコール「重い心臓病」ではありません。

結果票に書かれた「所見名」の意味と危険度の目安

健康診断の結果票には、「ST-T異常」や「右脚ブロック」といった聞き慣れない医学用語が並びます。ここでは、健診で指摘されることが多い代表的な4つのグループについて、その意味と危険度の目安を整理します。同じ所見名であっても、年齢や持病の有無によって判定の重みが変わる点に注意してください。

日本人間ドック学会の「標準12誘導心電図検診判定マニュアル(2023年度版)」では、主な所見の判定区分を次のように定めています※3。

所見名 判定区分 条件など
洞不整脈(洞性不整脈) B ―
心拍過多 C 心拍数86〜99
洞頻脈(洞性頻脈) D 心拍数100以上
洞徐脈(洞性徐脈) A/C/D 心拍数45〜49はA、40〜44はC、39以下はD
上室期外収縮・心室期外収縮(単発) B/C 単発2個以下はB。自覚症状や重い心臓の病気があればC
上室期外収縮・心室期外収縮(頻発・2連発) C/D 単発3個以上、または2連発
心房細動 D ―
不完全右脚ブロック B ―
完全右脚ブロック C/D 初めての指摘で、動脈硬化の危険因子がある場合はD
完全左脚ブロック D ―
左室高電位 B ―
軸偏位 B/C 左脚前枝ブロックが疑われる場合などはC

複数の区分が書かれている所見は、条件によって判定が変わります。

不整脈(期外収縮・心房細動・洞性頻脈/徐脈など)

脈を打つリズムや速さが乱れる所見の総称です。一口に不整脈といっても、放置してよいものから早期治療が不可欠なものまで幅広く存在します。

まず、「洞性頻脈」「洞性徐脈」「洞性不整脈」と書かれている場合、電気信号の発生源(洞結節)自体は正常に働いています。緊張で脈が速くなるのが洞性頻脈、マラソンなど持久系のスポーツ習慣がある人や睡眠時などに脈がゆっくりになるのが洞性徐脈です。

呼吸に合わせて脈の間隔が自然に変動する洞性不整脈は生理的な現象で、判定もB(軽度異常)にとどまります。

ただし、上の表のとおり、緊張で脈が速くなっただけであっても、心拍数が100以上なら洞頻脈としてD判定、86〜99なら心拍過多としてC判定になります。判定の基準は、記録された心拍数で決められています。

次に多いのが「上室性期外収縮」や「心室性期外収縮」です。本来のタイミングより少し早く電気信号が飛び出す状態で、健康な人でも疲労や寝不足、ストレスが重なると出ることがあります。

上の表のとおり、記録の中で単発に2個以下しか出ておらず、自覚症状や重い心臓の病気がなければB判定となります。単発で3個以上出ている場合や、連続して出る(連発する)場合はC〜D判定となり、再検査や精密検査の対象になります。

一方、不整脈の中で特に注意すべき所見が「心房細動」で、判定はDです。心房が小刻みに震えて血液がよどみやすくなるため、心臓の中に血の塊(血栓)ができ、それが脳の血管に飛ぶと重症の脳梗塞(心原性脳塞栓症)を引き起こす危険があります。

心房細動は症状がなくても受診を

日本脳卒中学会のサイトで公開されている「脳卒中予防への提言」によると、心房細動がある人はない人と比べて約5倍脳梗塞になりやすく、心房細動の半数は自覚症状のない「無症候性」です※4。動悸などの自覚症状がなくても、健診で指摘されたら循環器内科を受診してください。

ST-T異常(ST低下・ST上昇・T波平低化・陰性T波)

心電図の波形を構成する「ST部分」や「T波」という箇所に、基準と異なる変化が見られる状態です。「非特異的ST-T変化」と記載されることもあります。

ST低下や陰性T波などが指摘された場合、医師がまず念頭に置くのは、心臓の筋肉(心筋)へ酸素を送る冠動脈の血流が不足する「虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)」、あるいは高血圧によって心臓の筋肉が分厚くなる「心肥大」や「心筋症」(心臓の筋肉そのものの病気)などの可能性です。

特にST上昇は、急性心筋梗塞や異型狭心症などの重要なサインとなる場合があり、慎重な評価が必要です。

もっとも、ST-T異常が指摘された人すべてが狭心症というわけではありません。若い人や中年女性などでは、ホルモンバランスや自律神経の影響、体質的な要因によって、心臓に何の病気がなくても軽度のST低下やT波の平低化が見られることがあります。

しかし、波形だけで「体質による無害なもの」と「血管が狭くなっている危険なもの」を完全に見分けることは困難です。前述の判定マニュアルでも、ST低下は初めて指摘された場合や、動脈硬化の危険因子、若くして冠動脈の病気になった家族がいる場合にはD判定とされています※3。

したがって、初めてST-T異常を指摘された場合や要精密検査の判定が出た場合は、心臓の超音波検査などで一度しっかり確認しておく必要があります。

ST-T異常の原因や受診を急ぐべきサインをさらに詳しく知りたいときは、心電図のST-T異常を解説した記事が参考になります。

脚ブロック(右脚ブロック・左脚ブロック)

心臓の上部(心房)から下部(心室)へ電気信号を伝える通り道を「刺激伝導系」と呼び、心室へ分かれる枝をそれぞれ「右脚」「左脚」といいます。この電気の通り道の一部で伝導が遅れたり途切れたりしている状態が「脚ブロック」です。血管が詰まっているわけではありません。

「右脚ブロック」と「左脚ブロック」では、医学的な意味合いが大きく異なります。

右脚は構造的に細く長いため、健康な人でも生まれつき、あるいは加齢に伴って電気の通りが少し遅れることが珍しくありません。「不完全右脚ブロック」の判定はBで、ほかに異常を伴わない「完全右脚ブロック」も、自覚症状がなく心臓の形や動きに問題がなければ、治療を必要としないことが多い所見です。

ただし、完全右脚ブロックを初めて指摘され、動脈硬化の危険因子もある場合はD判定になります。

左脚ブロックは精密検査の対象

「左脚ブロック」が指摘された場合は注意が必要です。左脚は太く頑丈な構造をしているため、ここがブロックされる背景には、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞の既往)、心筋症、高血圧性心疾患、大動脈弁疾患など、心臓そのものの病気が隠れていることがあります。完全左脚ブロックは、症状がなくてもD判定となる代表的な所見です。

左室肥大・軸偏位

「左室肥大(または左室高電位)」は、全身に血液を送り出すポンプの主役である左心室の壁が厚くなっている可能性を示す所見です。

心電図の波が基準より大きく記録されただけの「左室高電位」はB判定ですが、ST-T変化を伴って「左室肥大」と判定された場合は、ST-T変化の程度に応じてC〜D判定になります。

左室肥大の主な原因の一つが長年の高血圧です。高い圧力に逆らって血液を送り出し続けることで、心筋が筋トレをしたように分厚くなります。放置すると心臓の柔軟性が失われ、将来的に心不全や不整脈を引き起こす原因となるため、血圧管理を含めた精査が重要です。

左室肥大が治るのかや治療の選択肢を知りたいときは、左室肥大の原因と改善の方法を解説した記事も参考にしてください。

なお、胸壁が薄い(やせ型の)若い男性やスポーツ選手では、心臓の肥大がなくても電極が心臓に近いために電気信号が大きく記録され、「左室高電位」としてひっかかることがあります。

「軸偏位(左軸偏位・右軸偏位)」は、心臓の中を流れる電気の全体的な向き(電気軸)が、標準的な角度から左右どちらかに傾いている状態です。

やせ型で長身の人は心臓が縦長になるため「右軸偏位」になりやすく、逆に肥満体型の人や妊娠中の人は横隔膜が押し上げられて心臓が横向きになるため「左軸偏位」が出やすいとされます。

軸偏位の判定は多くがBですが、左脚前枝ブロック(左脚の枝の一部で伝導が遅れる状態)が疑われる場合などはCになります。脚ブロックや心肥大など他の所見と組み合わさっている場合は精査が検討されます。

今すぐ受診すべき「レッドフラグ(危険信号)」

健康診断の結果票を受け取った際、「仕事が忙しいから」「特に痛いところはないから」と受診を先延ばしにしてしまうケースが見受けられます。

しかし、以下の条件に一つでも当てはまる場合は、心臓の病気が潜んでいる可能性があるため、放置せず速やかに医療機関を受診してください。

見逃してはいけない身体症状(胸痛・動悸・息切れ・失神)

心電図の異常に加えて、日常生活の中で以下のような身体症状を感じたことがある場合は、判定区分がたとえ「C(要再検査・生活改善)」や「B(軽度異常)」であっても、受診が必要です。前述の判定マニュアルでも、心電図の所見と関係がありそうな自覚症状がある場合はD判定を考慮するとしています※3。

  • 胸の痛み・圧迫感・締め付け感:階段を上ったときや急ぎ足で歩いたとき、あるいは早朝や安静時に、前胸部の中央から左胸、時には左肩や顎、みぞおちにかけて重苦しさや痛みを感じる(狭心症や心筋梗塞の疑い)。
  • 動悸・脈の乱れ:突然心臓がドキドキと速く打つ、脈が飛ぶ感覚がある、胸が詰まるような違和感が続く(心房細動や頻脈性不整脈などの疑い)。
  • 以前より強い息切れ・むくみ:同世代の人と同じペースで歩くと息が切れる、坂道がつらい、靴下の跡が深く残るほど足がむくむ、夜間に息苦しくて目が覚める(心不全や弁膜症などの疑い)。
  • めまい・立ちくらみ・失神:急に目の前が暗くなる(眼前暗黒感)、気を失って倒れたことがある(重症の不整脈や徐脈、大動脈弁狭窄症などの疑い)。

健康診断の心電図は短時間の記録に過ぎません。

自覚症状は見逃せないサイン

検査の瞬間にはたまたま軽い波形変化しか出ず、日常のふとした瞬間に危険な発作が起きているケースもあるため、自覚症状は見逃せない重要なサインです。慶應義塾大学保健管理センターが学生の健康診断を調べた2019年の報告でも、短時間の心電図だけでは足りず、症状の原因を確かめるにはホルター心電図や心臓超音波検査などの二次検査が必要と考えられる、としています※5。

判定がD、または高血圧・糖尿病などの持病がある場合

自覚症状がまったくない場合でも、結果票の判定が「D(要精密検査・治療)」となっているなら受診は必須です。心臓の病気には、かなり進行するまで痛みや苦しさが現れないものが少なくありません。

特に、高血圧、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)、糖尿病、高尿酸血症といった生活習慣病を指摘されている人や、喫煙習慣がある人、血縁者に心筋梗塞や突然死の家族歴がある人は要注意です。これらは冠動脈の動脈硬化を進行させる危険因子(リスクファクター)とされています。

どのような人が狭心症や心筋梗塞になりやすいのかを確かめたいときは、虚血性心疾患の危険因子と予防策を解説した記事が参考になります。

たとえば同じ「軽度のST低下」や「T波の平低化」という所見であっても、判定マニュアルでは動脈硬化の危険因子がない人はB判定、危険因子がある人はC判定と、扱いを分けています※3。複数の項目で異常を指摘されている場合は、早めに専門医の診察を受けてください。

毎年同じ異常を指摘されている、または波形に経年変化がある場合

「毎年健康診断で心電図にひっかかるけれど、今まで何ともなかったから今年も大丈夫だろう」と自己判断するのは危険です。確かに、不完全右脚ブロックのように何年も同じ波形で変化がなく、問題のないケースもあります。

しかし、毎年指摘されている所見の裏で、実は少しずつ心肥大や弁膜症、心筋の虚血が進行している可能性も否定できません。これまでに一度も精密検査(心エコーなど)を受けたことがないまま放置しているのであれば、まずは一度、心臓の構造に異常がないかを確認しておく必要があります。

また、昨年までは「異常なし」だったのに今年初めて「ST-T異常」や「左脚ブロック」「心房細動」などが現れた場合や、昨年よりも所見の表現が強くなっている(例:軽度ST低下から明らかなST低下・陰性T波への変化など)場合は、この1年間のうちに心臓に何らかの新しい負荷や変化が生じた可能性があります。経年変化が見られるケースは、精密検査の必要性が高い状態です。

ここまでの内容を、結果票を見るときの確認ポイントとしてまとめると次のとおりです。

  • 判定区分:A〜Eのどれか。Dなら症状がなくても受診する
  • 所見名:心房細動・完全左脚ブロックなど、それだけでD判定になる所見ではないか
  • 初めての指摘か:ST低下や完全右脚ブロックは、初めての指摘かどうかで判定が変わる
  • 動脈硬化の危険因子:危険因子があると、同じ所見でも判定が重くなるものがある
  • 自覚症状:所見と関係がありそうな症状があれば、判定にかかわらず受診を考える

何科に行くべき?精密検査の流れと受診の準備

健康診断で心電図の再検査や精密検査を指示された際、「どこの病院の何科に行けばいいのか」「痛くて苦しい検査をされるのではないか」と戸惑う方は少なくありません。受診先と検査の具体的なイメージを持っておくことで、落ち着いて受診に臨めます。

最初の受診先は「循環器内科」がベストな理由

心電図異常を指摘された際、最初に受診すべき診療科は「循環器内科」です。循環器内科は、心臓や血管の病気を専門的に診断・治療する診療科です。

もちろん一般的な「内科」でも診察自体は可能ですが、健診で同じ「安静時心電図」をもう一度撮り直すだけでは、同じ波形が出て原因がはっきりしないこともあります。

心電図にひっかかった原因が「心配のない体質的な波形」なのか「治療が必要な心臓病」なのかを見分けるには、心臓の超音波検査(心エコー)や24時間心電図といった専門的な検査と、波形を読み解く循環器専門医の知見が必要です。

最初から大病院へ行く必要はない

受診にあたっては、最初から大病院(大学病院や総合病院)へ行く必要はありません。まずは通いやすい地域の「循環器内科を標榜している(看板に掲げている)クリニック(診療所)」を受診するのがスムーズです。厚生労働省によると、特定機能病院と、一般病床200床以上の地域医療支援病院に紹介状なしで受診すると、定額の特別な料金がかかります※6。そのほかの一般病床200床以上の病院でも、特別な料金を徴収できることになっています。待ち時間も長くなりがちです。

地域の循環器内科クリニックであれば、基本的な精密検査(心エコーやホルター心電図など)の多くを院内で実施でき、もしカテーテル検査や高度な治療が必要と判断された場合には、適切な総合病院へ紹介状を書いてもらえます。

なお、受診の際は健康診断の「結果票(要精密検査などの記載があるもの)」を持参してください。精密検査は通常の健康保険(3割負担など)を使って受けられます。

病院で行われる主な精密検査(ホルター心電図・心エコー・血液検査)

循環器内科を受診すると、医師の問診と聴診、再度の安静時心電図検査に加え、指摘された所見に応じて以下のような精密検査が組み合わされます。多くは痛みや体への負担が少ない検査です。

まず、よく行われる重要な検査が「心臓超音波検査(心エコー検査)」です。胸にゼリーを塗って超音波のプローブ(探触子)を当て、心臓の大きさ、壁の厚さ、筋肉が収縮する力、そして心臓の4つの部屋を仕切る「弁」の開閉状態や血液の流れをリアルタイムの映像として観察します。

レントゲンやCTのような放射線被曝はなく、痛みもほとんどありません。ベッドに横になっている間に、心肥大、心筋梗塞の痕跡、心筋症、弁膜症などの有無を確認できます。

不整脈や狭心症が疑われる場合に活躍するのが「ホルター心電図(24時間心電図)」です。胸に数枚のシール電極と小型軽量の記録器を貼り付け、そのまま自宅に帰って普段通りに仕事や家事、睡眠をとります。

翌日(24時間後)に機器を取り外して解析することで、健診の短時間の記録では捉えきれなかった「1日の中で不整脈が何回出ているか」「睡眠中や活動中に危険な波形が出ていないか」を確認できます。機器によっては、装着したままシャワーを浴びられるものもあります。

また、階段の上り下りや歩行など、心臓に負担がかかったときの変化を調べるのが「運動負荷心電図」です。ベルトコンベアの上を歩く(トレッドミル)か、自転車をこぐ(エルゴメーター)運動をしながら心電図と血圧を記録し、安静時には隠れている狭心症の波形(ST低下など)や運動誘発性の不整脈が出現しないかを評価します。

このほか、採血による「血液検査」も行われます。心臓に負担がかかると分泌が増えるホルモン「BNP」や「NT-proBNP」を測定すれば、心不全の可能性を数値で把握できます。

BNPの基準値や数値が高いときの目安を知りたいときは、BNPが高いときの意味と危険ラインを解説した記事もあわせてご覧ください。

また、脂質異常症や糖尿病、甲状腺機能の異常(甲状腺ホルモンが多すぎても少なすぎても不整脈や心電図異常の原因になります)、貧血や電解質(ナトリウムやカリウムなど)のバランスの乱れがないかも同時にチェックします。これらの検査でも冠動脈の狭窄(血管が狭くなること)が強く疑われる場合には、造影剤を用いた「冠動脈CT検査」などが検討されます。

受診当日に持参するものと診察をスムーズにするコツ

循環器内科を受診する際は、以下のものを準備して持参すると、無駄な検査を省き、より正確な診断につながります。

まず忘れずに持参したいのが「今回の健康診断の結果票(原本またはコピー)」です。心電図の判定だけでなく、血圧、コレステロール値、血糖値、貧血の有無、胸部レントゲンの結果など、全身のデータが診断の手がかりになります。もし結果票に「心電図の波形そのもののコピー(記録紙)」が添付されている場合は、重要な情報となるため持参してください。

そして、ぜひ探して持っていただきたいのが「過去(前年・前々年など)の健康診断の結果票」です。医師にとって、「今回の異常波形が昔からずっと同じ形で出ているのか、それとも今年新しく出現したのか」を比較することは、緊急度を判断する上で大きな助けになります。

そのほか、次のものを持参すると診察がスムーズに進みます。

  • マイナ保険証(または資格確認書)
  • 現在服用している薬がある場合は「お薬手帳」(薬の副作用で心電図の波形が変化することもあるため)
  • 自宅で血圧を測っている方やスマートウォッチで脈拍・心電図を記録している方はそのデータ(メモやアプリの画面)

服装は、胸元や足首をすぐに出せるよう、上下が分かれた脱ぎ着しやすいもの(ワンピースやストッキングは避ける)を選ぶのがおすすめです。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では心電図異常でお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

  • 最新の治療をいち早く受けられることがある
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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心電図の異常判定に関するよくある質問(FAQ)

健康診断の心電図結果に関して、多くの方が抱きやすい疑問とその回答をまとめました。

Q1:20代や30代でも心電図に引っかかることはありますか?

若い世代であっても、健康診断の心電図でひっかかることは決して珍しくありません。若い人の健診でも見られる所見には、呼吸に伴って脈が変動する「洞性不整脈」、生まれつきの電気の通り方の特徴である「不完全右脚ブロック」、「早期再分極(J波)」、やせ型体型による「左室高電位」などがあります。判定マニュアルでは、洞性不整脈・不完全右脚ブロック・左室高電位はB判定(軽度異常)、早期再分極はJ点(波形の一部)の上がり方の程度でBかC判定です。また早期再分極は、失神やけいれんを起こしたことがある場合や、若くして突然亡くなった家族がいる場合はD判定になり、QT延長も失神・動悸の症状や同様の家族歴がある場合はD判定とされています※3。

ただし、「若いから絶対に病気ではない」と決めつけることはできません。若年層であっても、遺伝性の不整脈疾患(QT延長症候群やブルガダ症候群など)や、生まれつきの心疾患、ウイルス感染後などに起こる心筋炎、肥大型心筋症などが隠れているケースがまれに存在します。

特に「要精密検査(D判定)」が出た場合や、運動中の息切れ、立ちくらみ・失神の経験がある場合は、年齢にかかわらず循環器内科を受診してください。

Q2:ストレスや極度の緊張だけで心電図に引っかかることはありますか?

強い精神的ストレスや検査時の緊張、睡眠不足などが原因で心電図にひっかかることは実際にあります。緊張によって交感神経が活発になると、心拍数が上がって「洞性頻脈」と判定されたり、心臓の筋肉が刺激を受けやすくなって「期外収縮」が出現したり、軽度の「ST-T変化」が見られたりするためです。

しかし、結果票に書かれた異常を見て「あの時は緊張していたからストレスのせいだ」と自分自身で結論づけ、精密検査を受けずに終わらせてしまうのはリスクを伴います。本当に心臓の血管や筋肉に病気がある人でも、同じような波形が出るからです。

「ストレスや緊張による一時的な波形変化に過ぎない」と判断できるのは、心エコーなどの精密検査を行って心臓に器質的な病気がないことを確認(除外診断)したあとです。安心を得るためにも、まずは専門医の評価を受けてください。

Q3:「要経過観察(C判定)」なら次回の健診まで何もしなくていいですか?

日本人間ドック・予防医療学会の区分では、C判定は「要再検査・生活改善」です。今すぐ精密検査が必要な状態ではありませんが、生活習慣に気をつけながら、医師が指定した時期(3か月後・6か月後・12か月後のいずれか)に再検査を受けて変化がないか確認する、という意味です※3。自覚症状がまったくなく、過去にも同じ所見を指摘されていて精密検査で「問題なし」と言われたことがある方であれば、指定された時期の再検査で様子を見る形になることが多いでしょう。

一方で、今回生まれて初めて心電図異常(C判定)を指摘された方や、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙などのリスク因子を持っている方、あるいは胸の違和感や動悸、息切れといった些細な症状でも自覚している方は、再検査の時期を待たずに一度循環器内科を受診することをおすすめします。一度心エコー検査などで「心臓の作りや動きに問題はない」と確認しておけば、余計な不安を抱えずに済むという利点もあります。

Q4:再検査や精密検査の費用はどのくらいかかりますか?

健康診断で「要精密検査」「要再検査」と判定されて医療機関を受診する場合、その診察や検査には公的医療保険(健康保険)が適用されます。

窓口での自己負担額は、実施する検査の組み合わせによって異なります。初診料や安静時心電図、胸部レントゲン、血液検査に、心臓超音波検査(心エコー)やホルター心電図(24時間心電図)が加わると、その分負担額は大きくなります。

なお、すべての検査を初日に一度に行うとは限らず、医師の判断により日を分けて実施することもあります。費用が心配な場合は、受診前に医療機関へおおよその金額を問い合わせておくと安心です(キャッシュレス決済に対応しているクリニックも増えています)。

まとめ

健康診断の心電図で「ひっかかる」と、どうしても悪い想像をしてしまいがちですが、実際には自律神経の影響や体質による波形変化も多く、精密検査を受けた結果「心配なし(治療不要)」と診断されることもあります。過度に恐れる必要はありません。

しかし、その一方で、狭心症や心筋梗塞、心房細動、心不全といった重大な疾患が、自覚症状のないまま心電図の小さな変化として現れている可能性があることも事実です。

心不全の初期にみられやすい体の変化を知っておきたいときは、息切れやむくみなど心不全の前兆を解説した記事も参考にしてください。

自己判断で放置しないでほしいケース

特に以下のポイントに該当する場合は、自己判断での放置は禁物です。

  • 判定区分が「D(要精密検査・治療)」である
  • 胸の痛み・圧迫感、動悸、息切れ、めまい・失神などの自覚症状がある
  • 「ST-T異常」「心房細動」「左脚ブロック」などの所見が記載されている
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの持病や喫煙習慣がある

心電図の波形が「放置してよい個性」なのか「治療すべき病気のサイン」なのかは、循環器内科で心エコーやホルター心電図などの検査を受けることで、見分ける手がかりが得られます。

迷ったときは健康診断の結果票(可能であれば過去の結果票も)を手元に用意し、お近くの循環器内科へ相談してみてください。専門医による正確な診断を受けることが、不安を解消し、ご自身の健康を守るための近道です。