「最近、少し動いただけですぐに息が切れる」「足のむくみが気になるようになった」。

このような体の変化に、もしかして心不全のサインかもしれないと不安を感じていませんか。心不全は、早期にその前兆に気づき、適切な対応を始めることが重要です。

この記事では、日常生活の中で注意すべき心不全の前兆としての初期症状を詳しく解説します。ご自身でできるセルフチェックの方法や、どのような状態であれば医療機関を受診すべきかの目安についても、分かりやすくお伝えします。

ご自身の健康状態を正しく理解し、心臓の健康を守るための一歩としてお役立てください。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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心不全の前兆、見逃していませんか?

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器が必要とする量の血液を十分に送り出せなくなった状態を指します。病名ではなく、さまざまな心臓の病気が原因で引き起こされる症候群です。

日本循環器学会・日本心不全学会の2025年改訂版心不全診療ガイドラインは、一般の方に向けて「心臓の機能が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と説明しています※1

「心不全」は病名ではなく状態を表す言葉

心筋梗塞、弁膜症、心筋症、高血圧による負担、不整脈など、原因となる病気はさまざまです。原因が違っても、息切れやむくみという共通の症状が出ます。

心不全の初期症状は、非常にゆっくりと現れることが多く、加齢による体力の低下や、単なる疲れと勘違いされがちです。

そのため、本人も周囲も気づかないうちにある程度進行してしまうケースは少なくありません。日常生活における些細な変化を「前兆」として捉え、意識的に観察することが早期発見の鍵となります。

日常生活で注意したい心不全の初期症状リスト

ここでは、心不全の代表的な初期症状を、具体的な場面とともに解説します。

階段や坂道で感じる「息切れ」や「呼吸困難」

以前は問題なくできていた動作で息が切れるようになったら、注意が必要です。例えば、通勤時の駅の階段や、近所の緩やかな坂道で息が上がってしまう、同年代の人と同じペースで歩くのがつらい、といった変化は心不全の初期サインかもしれません。

また、症状が進行すると、夜、布団に入って横になると息苦しくなり、体を起こすと楽になる「起座呼吸」が見られることもあります。夜中に突然の息苦しさで目が覚めてしまうケースも報告されています。

息切れと足のむくみは、頻度の多い初期症状

国立循環器病研究センターは、坂道や階段での息切れ、疲れやすさ、足の甲やすねのむくみを心不全でよくみられる初期症状として挙げ、これらが出たときは一度専門の医療機関を受診するよう勧めています。うっ血が進むと、呼吸が苦しくて横になって眠れない起坐呼吸になることもあります※2

足や顔に現れる「むくみ(浮腫)」

心臓のポンプ機能が低下すると、体内の血液循環が滞り、余分な水分が溜まりやすくなります。これが「むくみ(浮腫)」として現れます。

特に、夕方になると靴がきつく感じる、靴下の跡がくっきりと深く残る、といった症状は要注意です。

すねや足の甲を指で5秒ほど強く押したときに、指の跡がへこんだままなかなか戻らない場合は、むくみが起きている可能性が高いと考えられます。国立長寿医療研究センターも、心不全では血管内に溜まった余分な水分が血管の外にしみ出し、両足に押すとへこんで戻らないむくみが出ると説明しています※4

以前より増した「疲れやすさ」や「だるさ」

全身に十分な血液が送り出されなくなると、筋肉や臓器が酸素不足・栄養不足に陥り、強い疲労感や倦怠感として現れます。

特に理由もなく体がだるい、少し動いただけですぐに疲れてしまい横になりたくなる、以前のように気力が出ない、といった状態が続く場合、それは心機能低下のサインかもしれません。単なる疲労と片付けずに、体の変化に耳を傾けることが大切です。

ドキドキ感が続く「動悸」や「胸の不快感」

心臓は、ポンプ機能の低下を補おうとして、心拍数を増やして懸命に働こうとします。この状態が、安静にしている時でも心臓の拍動を強く感じる「動悸」につながることがあります。

また、脈が飛んだり、リズムが乱れたりする不整脈を感じることもあります。胸が締め付けられるような圧迫感や、言葉で表現しにくい不快感が伴うケースもあります。国立長寿医療研究センターは、動いた時の息切れと動悸、足やまぶたのむくみを代表的な症状とし、胸の圧迫感や食欲低下、意識を失うことも起こりうるとしています※3

短期間での「体重増加」に要注意

食事の量は変わらない、あるいは食欲がないのに、1週間で2〜3kgといった短期間での急な体重増加が見られることがあります。これは、体内に余分な水分が溜まること(体液貯留)が原因である可能性が考えられます。

むくみと同様に、体内の水分バランスが崩れているサインであり、心不全の症状が悪化している兆候の一つとされています。

続く「咳」や「痰」は心不全のサインかも

風邪をひいたわけでもないのに、乾いた咳が続いたり、痰がからんだりすることがあります。これは、肺に血液がうっ滞すること(肺うっ血)が原因で起こる症状です。

特に、夜間や横になった時に咳がひどくなる傾向があります。症状が進行すると、ピンク色で泡状の痰が出ることがあり、これは重篤な状態を示すサインであるため、直ちに医療機関を受診する必要があります。

夜間頻尿や食欲不振など、その他の見落としがちな前兆

心不全の前兆は、ほかにもさまざまな形で現れます。

日中は体の下の方に溜まっていた水分が、夜、横になることで心臓に戻りやすくなり、腎臓への血流が増加します。その結果、尿量が増えて夜中に何度もトイレに起きる「夜間頻尿」が起こることがあります。

ただし、ガイドラインは反対に、心臓から血液を十分に送り出せない場合には腎臓の血流が不足して尿量が減り、トイレに行く回数が減ることもあると説明しています。尿の回数は増える方向にも減る方向にも変わりうるため、変化そのものを主治医に伝えてください。

また、胃腸のあたりに血液が滞ることで、胃もたれや吐き気、食欲不振といった消化器系の症状として現れることも少なくありません。ガイドラインも、お腹に水が溜まると腹部膨満感や食欲不振、便秘が起こり、体重は1週間で2〜3kg増加すると記しています※1

この2つは様子を見ない

安静にしていても息苦しい、夜中に息が苦しくて目が覚める。この2つは、ガイドラインが救急受診が必要な症状として名指ししています。ピンク色の泡状の痰も、様子を見ずに受診してください。

セルフチェックで心不全のサインを見つける方法

心不全の兆候は、日常生活の中に隠されています。日々の暮らしの中で少し意識を変えるだけで、早期発見につなげることが可能です。

症状チェックシートの活用

ご自身の症状を客観的に把握するために、症状や体重を書き留めるチェックシートを活用するのも良い方法です。

「息切れ」「むくみ」「疲れやすさ」など、項目に沿って自身の状態を確認することで、見過ごしていたサインに気づくきっかけになるかもしれません。ガイドラインも、毎日血圧や体重を測って心不全手帳などに記載する、モニタリングの習慣を勧めています。

毎日の体重測定とむくみの確認

特に重要なのが、毎日の体重測定です。朝、トイレを済ませた後など、毎日同じ条件で体重を測定し、記録する習慣をつけましょう。

短期間での急激な体重増加は、体内の水分貯留を示す重要なサインです。あわせて、足のすねなどを指で押し、むくみの有無や程度を確認することも忘れないようにしましょう。

こうした日々の記録は、医療機関を受診した際に、医師が状態を正確に把握するための貴重な情報となります。

記録するのは3つだけでいい

体重、血圧・脈拍、むくみの有無。この3つを同じ時間帯に測って書き留めておけば、変化があったときに「いつから、どのくらい」を医師に伝えられます。

症状だけでは心不全とは決められない

ここで一つ、押さえておきたい事実があります。国立長寿医療研究センターは、息切れは肺の病気や貧血でも起こり、むくみは肝臓、腎臓、甲状腺、リンパ浮腫などでも起こると注意を促しています※3

つまり、症状の有無だけで心不全かどうかを見分けることはできません。一方でガイドラインが日々の備えとして挙げているのは、症状の自己診断ではなく、毎日の血圧と体重の記録でした。

症状は他の病気と重なりますが、数字で残る記録は、症状として自覚するより先に変化を示すことがあります。だからこそ、自己判断で心不全かどうかを決めるのではなく、「毎日記録する、気になる変化を医師に伝える」という順番が現実的です。

受診のときに医師へ伝えたいこと

記録を取っていても、診察室でうまく伝えられないと活かせません。次の5点を整理しておくと、限られた診察時間でも状態が伝わります。

  • 体重 いつから何kg増えたか(1週間で2〜3kgが一つの目安)
  • 息切れ どの動作で、どのくらいの距離で出るか。以前歩けた距離との比較
  • むくみ 出る部位と、押したあとが戻るまでの様子
  • 夜間の状態 横になると苦しいか、夜中に息苦しさで目が覚めるか
  • 服用中の薬 飲み忘れや自己判断での中断がないか

活動量の変化に意識を向ける

「以前は普通にできていたことが、今はつらく感じる」という主観的な変化も、非常に重要な手がかりです。

例えば、「毎日の散歩コースを最後まで歩けなくなった」「掃除機をかけるだけで息が切れるようになった」「買い物で重い荷物を持つのが億劫になった」など、具体的な活動量の変化に意識を向けてみてください。日々の生活の中での「できなくなったこと」に気づくことが、心機能の変化を捉える手がかりになります。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では心不全リスクに備えたい方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

  • 最新の治療をいち早く受けられることがある
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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すぐに医療機関を受診すべき症状の目安

心不全の前兆の中でも、特に緊急性が高い症状や、速やかに専門医の診察を受けるべき状況があります。判断に迷わないよう、受診の目安を覚えておきましょう。

急激な症状悪化や新たな症状の出現

以下のような症状が現れた場合は、心不全が急激に悪化している可能性があります。様子を見ることなく、すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶことを検討してください。

  • 安静にしていても息苦しさが続く、または急に強くなった
  • 横になれず、座っていないと呼吸ができない
  • これまでになかった強い胸の痛みや圧迫感、冷や汗を伴う
  • 意識がもうろうとする、気が遠くなる感じがする
  • 唇や爪が紫色になる(チアノーゼ)
  • ピンク色の泡状の痰が出る

ガイドラインが救急受診の目安としている症状

2025年改訂版心不全診療ガイドラインは、夜間呼吸困難と安静時呼吸困難を注意すべき症状とし、夜間横になって眠れない、夜中に急に息が苦しくなって目が覚めるといった状態は救急受診が必要としています。また、これまで100mほど息切れなく歩けていたのに室内のトイレへの移動だけで息が切れるなど、自宅内の生活だけで息苦しさを感じる場合も早期受診が必要としています※1

これらのサインは、心臓に大きな負担がかかっていることを示しており、一刻を争う場合があります。

どの診療科を受診すべきか

心不全が疑われる症状がある場合、まずはかかりつけの医師に相談するのが第一歩です。ガイドラインも、心不全が安定していればかかりつけ医での診療が可能で、病状の進行や変化がある場合は循環器内科専門医の診断や治療が必要になる場合があるとしています。

かかりつけ医がいない場合や、より専門的な診察を希望する場合は、心臓や血管の病気を専門とする「循環器内科」を受診することをおすすめします。緊急時には、迷わず救急外来を受診するか、救急車を要請してください。

心不全の早期発見が重要な理由と日頃からできること

なぜ、心不全は早期に発見することがそれほど重要なのでしょうか。その理由と、日常生活で心がけたいことについて触れます。

重症化を防ぎ、生活の質を保つために

心不全は、一度進行すると元の状態に戻すことが難しい病気ですが、早期に発見し適切な治療を開始することで、病気の進行を遅らせ、症状を和らげることが可能です。

ガイドラインは、心不全になったときに早く気づいて受診できれば重症化を防げるとしています。これが、早期発見が重要である理由です。

「治して終わり」ではなく「付き合っていく」病気

国立循環器病研究センターは、心不全を風邪のように治療で完治する病気ではなく、長く付き合っていく病気だと説明しています。だからこそ、内服の継続、塩分制限(1日6g未満が目安)、血圧と体重の毎日の記録という3つの自己管理が治療の柱になります※2

生活習慣の改善でリスクを低減する

心不全の背景には、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が隠れていることが少なくありません。

塩分を控えたバランスの良い食事、適度な運動、禁煙、飲酒を適量にすることなど、日頃の生活習慣を見直すことが、心臓への負担を減らし、心不全の発症や進行のリスクを低減させることにつながります。運動については、ガイドラインは週3〜4回、1回30分程度の有酸素運動を勧めています。

また、定期的に健康診断を受け、自身の体の状態を把握しておくことも重要です。

まとめ

心不全の前兆は、息切れやむくみ、疲れやすさといった、日常生活の中に潜む些細な変化として現れます。これらのサインを「年のせい」や「ただの疲れ」と見過ごさず、早期に気づくことが、ご自身の健康を守る上で何よりも大切です。

今回ご紹介した初期症状やセルフチェックの方法を参考に、ご自身の体調を注意深く観察してみてください。

もし、一つでも当てはまる症状があったり、少しでも不安を感じたりした場合は、ためらわずに、かかりつけ医や循環器内科などの医療機関に相談してください。ご自身の健康状態に向き合い、適切な行動を取ることが、心臓の健康を長く保つことにつながります。

よくある質問

心不全の初期症状は年代によって違いがありますか?
基本的な症状(息切れ、むくみ、倦怠感など)は年代を問わず共通していますが、現れ方には差が出ることがあります。高齢者の場合は、加齢による変化と区別がつきにくく、食欲不振やなんとなく元気がない、といった非典型的な症状で現れることも少なくありません。一方、若い世代でも、特定の心臓疾患が原因で急激に症状が現れるケースがあり、動悸や息切れとして自覚されることがあります。
心不全の前兆に気づいたら、何科を受診すべきですか?
心臓の病気を専門とする「循環器内科」が専門の診療科です。ただし、まずは普段からご自身の健康状態を把握してくれている「かかりつけ医」に相談するのも良い方法です。かかりつけ医が必要と判断すれば、適切な専門医を紹介してもらえます。急を要する症状の場合は、救急外来を受診してください。
心不全のサインは、自覚症状がなくても現れることがありますか?
はい、あります。特に初期の段階では、自覚症状がほとんどないまま進行することもあります。健康診断で心電図の異常や胸部X線写真の心拡大などを指摘されて、初めて心機能の低下が判明するケースも珍しくありません。自覚症状がないからといって安心せず、定期的な健康診断を受けることが重要です。
心不全は治る病気ですか?
心不全は、心臓の機能が低下した「状態」を指すため、原因となっている病気によっては完治が難しい場合が多いとされています。しかし、早期に発見し、薬物治療や生活習慣の改善、原因疾患の治療などを適切に行うことで、症状をコントロールし、病気の進行を遅らせることが可能です。これまでの日常生活を続けられる場合も少なくありません。大切なのは、病気と上手く付き合っていくという視点を持つことです。