「体重が増え続けて健康が心配」「ダイエットがうまくいかないけれど、病院に行くべきなのだろうか」「もし病院に行くなら、肥満症は何科で相談すればいいの?」
このような疑問や不安を抱えている方は少なくないかもしれません。
肥満症は、単に見た目の問題ではなく、高血圧や糖尿病、脂質異常症といったさまざまな生活習慣病を引き起こす可能性がある「病気」です。そして、適切な治療を受けることで、これらの健康リスクを軽減できます。
この記事では、肥満症が疑われる際にどの診療科を受診すれば良いのか、専門的な治療を行う「肥満外来」とはどのような場所なのかを詳しく解説します。
さらに、治療が保険適用になるための具体的な条件や、信頼できる医療機関の選び方まで、一歩を踏み出すために必要な情報を網羅しました。ご自身の状況に合った受診先を見つけ、健康的な未来へと繋げるための参考にしてください。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
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肥満症が疑われるとき、まず何科を受診するべき?
肥満症の治療や相談ができる診療科は一つではありません。ご自身の健康状態や合併症の有無によって、適した受診先は異なります。ここでは主な選択肢を紹介します。
どの科か迷ったら
まずは身近な「一般内科」やかかりつけ医への相談が出発点です。合併症の有無や希望に応じて、糖尿病・内分泌内科、循環器内科、肥満外来などの専門科へと進む流れが基本です。
まずは「一般内科」や「生活習慣病外来」を検討してみましょう
どの科を受診すれば良いか迷った場合、最初の相談窓口として最も適しているのが「一般内科」です。特に、日頃から通っているかかりつけ医がいる場合は、まず相談してみるのが良いでしょう。
かかりつけ医はあなたの体質や過去の病歴を把握しているため、総合的な視点から健康状態を評価し、適切なアドバイスや必要に応じた専門医への紹介を行ってくれます。
また、生活習慣病全般を診る「生活習慣病外来」を設置しているクリニックもあり、こちらも初期相談の窓口として適しています。
肥満症と深く関わる「糖尿病・内分泌内科」
肥満は、2型糖尿病の最大の危険因子です。すでに血糖値の異常を指摘されている方や、血縁者に糖尿病の方がいる場合は、「糖尿病・内分泌内科」の受診を検討する価値があります。
この診療科では、血糖コントロールだけでなく、肥満の原因となりうるホルモンバランスの異常(内分泌疾患)についても専門的な観点から検査・診断が可能です(参考:日本内科学会雑誌 内分泌性肥満 3)。代謝の専門家として、肥満症とその合併症を同時に管理する治療が期待できます。
循環器系の合併症があるなら「循環器内科」
肥満は心臓に大きな負担をかけ、高血圧や心不全、心筋梗塞などのリスクを高めます。健康診断で血圧の高さを指摘されたり、動悸や息切れといった症状があったりする場合には、「循環器内科」への相談が推奨されます。
循環器系の専門医が、心臓や血管の状態を評価しながら、肥満治療を進めてくれます。
専門的なアプローチを求めるなら「肥満外来(ダイエット外来)」
肥満症の治療に特化した診療を行っているのが「肥満外来」や「ダイエット外来」です。これらの専門外来では、医師だけでなく、管理栄養士や理学療法士、臨床心理士といった多職種の専門家がチームを組み、包括的な治療を提供するケースが多く見られます。
食事療法や運動療法はもちろんのこと、必要に応じて薬物療法や行動療法など、一人ひとりの状態に合わせた専門的なプログラムを組んでくれるのが大きな特徴です。一般的な内科との違いは、肥満症そのものを中心に据えた多角的なアプローチが受けられる点にあります。
小児の肥満症は「小児科」へ相談を
お子さんの肥満が気になる場合は、まずはかかりつけの「小児科」に相談してください。子どもの肥満は、成長過程を考慮した専門的なアプローチが不可欠です。小児科医が成長曲線などを用いて適切に評価し、必要な指導や専門外来への紹介を行ってくれます。
肥満症の診断基準と治療の基本を知る
医療機関を受診する前に、肥満症がどのように診断され、どのような治療が行われるのか、基本的な知識を持っておくと安心です。
肥満症はBMIだけではない?診断のポイント
日本では、体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)で算出されるBMI(Body Mass Index)が25以上を「肥満」と定義しています(参考:厚生労働省e-ヘルスネット 1)。しかし、単に太っているだけでは「肥満症」とは診断されません。
重要なのは、肥満に起因する健康障害(合併症)を伴っているかどうか、あるいは合併症のリスクが高い内臓脂肪型肥満であるかどうかです。具体的には、以下のいずれかに該当する場合に「肥満症」と診断されます。
診断のポイント
つまり、BMIの数値だけでなく、健康への具体的な悪影響の有無が診断の鍵となります。
なぜ治療が必要なのか?肥満症が引き起こす健康リスク
肥満症を放置すると、さまざまな病気を引き起こしたり、悪化させたりする可能性があります。代表的な健康リスクは以下の通りです。
放置のリスクに注意
これらの疾患は、一つひとつが生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、健康寿命を縮める要因にもなりかねません。肥満症の治療は、これらのリスクを減らし、将来の健康を守るために不可欠です(参考:厚生労働省e-ヘルスネット 1)。
肥満症治療の主なアプローチ:食事・運動・薬物療法
肥満症治療の基本は、生活習慣の改善です。主に3つのアプローチが柱となります。
- 食事療法:単なるカロリー制限ではなく、栄養バランスの取れた食事を適切な量、規則正しく摂ることが中心です。管理栄養士の指導のもと、個人の生活スタイルに合った方法を見つけていきます。
- 運動療法:有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)とレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせることが推奨されます。身体機能や合併症を考慮し、安全で継続可能な運動計画を立てることが重要です。
- 薬物療法:食事療法や運動療法を行っても効果が不十分な場合に、医師の判断で検討されます。食欲を抑制する薬や、脂肪の吸収を抑える薬などが用いられますが、あくまで補助的な治療法です(参考:日本肥満学会 肥満症診療ガイドライン2022 2)。
重度の肥満症には手術療法も選択肢に
BMIが35以上の高度肥満症で、内科的な治療では十分な効果が得られない場合などには、外科手術(減量・代謝改善手術)が選択肢となることがあります。胃を小さくする手術などがあり、長期的な体重減少や合併症の改善が期待できる治療法です。
BMI35未満でも対象になる場合があります
なお、原則はBMIが35以上ですが、ガイドラインでは、BMIが35未満であっても、合併する健康障害の種類や程度によっては外科療法が適切な場合があるとされています(参考:日本肥満学会 肥満症診療ガイドライン2022 2)。
肥満症治療は保険適用になる?その条件とは
肥満症の治療を考えるうえで、費用面は大きな関心事です。治療には保険が適用されるケースと、自由診療になるケースがあります。
保険適用される肥満症の基準(BMIと合併症)
肥満症の治療が保険適用となるには、医師によって「治療が必要な病気としての肥満症」と診断される必要があります。厚生労働省が定める基準では、一般的に以下のような場合に保険が適用されます。
この基準に該当すれば、診察、検査、薬の処方、栄養指導などが保険診療の範囲内で行われます。なお、肥満症治療薬や減量・代謝改善手術には、それぞれBMIや合併症、医療機関の施設基準など、より詳細な保険適用要件が別途定められています。
自由診療となるケースと費用感
美容目的は自由診療(全額自己負担)
一方、医学的な治療の必要性が認められない、美容目的の痩身(ダイエット)は保険適用外となり、全額自己負担の自由診療です。
例えば、「健康障害はないが、もっとスリムになりたい」といったケースがこれにあたります。自由診療の費用は医療機関や治療内容によって大きく異なりますが、一般的に高額になる傾向があります。
受診前に、ご自身の目的が治療なのか美容なのかを考え、医療機関の方針を確認することが大切です。
医療費控除の対象になることも
医療費控除という制度
保険適用で肥満症の治療を受けた場合、その年に支払った医療費の合計が一定額を超えれば、医療費控除の対象となる可能性があります(参考:国税庁 医療費控除の対象となる医療費 5)。これは、確定申告をすることで所得税の一部が還付される制度です。
治療にかかった費用に関する領収書は、きちんと保管しておくことをお勧めします。
肥満症の専門治療を受けられる病院の選び方
いざ受診しようと決めても、どの医療機関を選べば良いか迷うかもしれません。信頼できる病院を見つけるためのポイントをいくつか紹介します。
専門性で選ぶ:肥満外来・糖尿病内科の有無を確認する
まずは、医療機関のウェブサイトなどで、肥満症の治療に力を入れているかを確認しましょう。「肥満外来」「生活習慣病外来」「糖尿病・内分泌内科」といった専門的な診療科を標榜しているかどうかは、一つの目安になります。
クリニックごとの特色や治療方針が記載されていることも多いので、参考にすると良いでしょう。
日本肥満学会の認定施設を探すメリット
より専門性の高い治療を求めるなら、日本肥満学会が認定する専門医や指導医、あるいは認定施設を探すのが確実な方法です。
同学会のウェブサイトでは、認定医や認定施設の一覧が公開されています(参考:日本肥満学会 認定制度 4)。これらの施設には、肥満症治療に関する豊富な知識と経験を持つ専門家が在籍しており、質の高い医療が期待できます。
大学病院や総合病院の専門センターの役割
すでに複数の合併症を抱えている場合や、重度の肥満症である場合には、大学病院や地域の基幹となる総合病院が適していることがあります。
これらの大規模病院では、内科、循環器科、整形外科、精神科など、関連する複数の診療科の専門医が連携して治療にあたる体制が整っています。複雑な病態にも対応できるのが強みです。
地域で探す:クリニックと病院、どちらが良いか?
肥満症の治療は、長期にわたる継続的な通院が必要になることがほとんどです。そのため、自宅や職場から通いやすいという点も、医療機関選びの重要な要素です。
まずは通いやすい地域のクリニックで初期相談をし、必要に応じて専門性の高い病院を紹介してもらう、という流れも一つの方法です。継続できることが治療成功の鍵となります。
治験を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では肥満症でお困りの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられることがある
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
肥満症に関するよくある疑問を解消
ここでは、肥満症に関して多くの方が抱く疑問についてお答えします。
健康上の問題はなく、美容的な目的で痩せたいという場合は、医療保険の対象外となります(参考:国税庁 医療費控除の対象となる医療費 5)。この場合は、自由診療を行っている美容クリニックや、民間のパーソナルトレーニングジムなどが相談先となるでしょう。ただし、過度なダイエットは健康を損なう恐れがあるため注意が必要です。
食事量や運動量に大きな変化がないにもかかわらず体重が著しく増加し続ける場合、背景に何らかの病気が隠れている可能性があります。
例えば、甲状腺の機能が低下する「甲状腺機能低下症」や、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される「クッシング症候群」などの内分泌系の疾患が原因で太ることがあります(参考:日本内科学会雑誌 内分泌性肥満 3)。このような場合は、自己判断せずに内分泌内科など専門の医療機関を受診し、原因を調べることが重要です。
肥満外来の受診に、「体重〇〇キロ以上」という明確な基準はありません。重要なのは体重そのものよりも、前述したBMIの数値と、肥満に関連する健康障害の有無です。ご自身のBMIが25を超えていて、高血圧や血糖値の異常などを指摘されている場合は、一度相談してみることをお勧めします。
肥満症の治療期間は、個人の体重や合併症の状態、治療目標によって大きく異なります。数ヶ月で目標を達成できる人もいれば、数年単位での取り組みが必要な人もいます。大切なのは、短期間で結果を求めるのではなく、改善された生活習慣を継続し、長期的に体重をコントロールしていくことです。
リバウンドを防ぐためには、治療によって身につけた食生活や運動習慣を、治療後も継続していくことが最も重要です。無理な目標設定はリバウンドの原因になります。医師や管理栄養士と相談しながら、一生続けられるような自分に合った生活スタイルを確立することが、成功への近道です。
まとめ
肥満症は、さまざまな健康リスクを伴う病気であり、専門的な治療によって改善が期待できます。どの診療科を受診すれば良いか迷ったときは、まず身近な「一般内科」や「生活習慣病外来」に相談することから始めましょう。
合併症の有無や専門的な治療の希望に応じて、「糖尿病・内分泌内科」「循環器内科」、そして「肥満外来」といった選択肢があります。ご自身の健康状態やライフスタイルに合わせて、最適な受診先を選ぶことが大切です。
最初の一歩を
また、肥満症の治療は一定の基準を満たせば保険適用となります。信頼できる医療機関の選び方も参考にしながら、一人で悩まずに専門家の力を借りることを検討してください。健康的な生活を取り戻すための第一歩として、まずは勇気を出して医療機関の扉を叩いてみましょう。
