「ただの冷え性だろう」「最近、疲れが溜まっているだけかもしれない」。手足の冷えやしびれ、軽い痛みを感じても、ついそのように考えてしまうことは少なくありません。しかし、その見過ごしがちな症状が、バージャー病という血管の難病が発する初期のサインである可能性も考えられます。
この記事では、バージャー病の初期症状について、具体的なサインから進行度別の変化、そしてよく似た他の病気との違いまでを詳しく解説します。ご自身の症状を正しく理解し、適切な行動をとるための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
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バージャー病とは?血管の炎症が引き起こす病気の全体像
まず、バージャー病がどのような病気なのか、その全体像を把握しておくことが重要です。
バージャー病の基本的な特徴と指定難病としての位置づけ
バージャー病とは
バージャー病は、正式名称を「閉塞性血栓血管炎(へいそくせいけっせんけっかんえん)」といいます。この名前が示す通り、主に手や足の末端にある動脈や静脈に炎症が起こり、血栓(血のかたまり)ができて血管が詰まってしまう病気です(参考:日本循環器学会 血管炎症候群の診療ガイドライン 1)。
血管が詰まると、その先にある組織へ血液が十分に届かなくなります。その結果、手足にさまざまな症状が現れるのです。
バージャー病は厚生労働省によって指定難病の一つに定められており、その診断や治療には専門的な知識が求められます(参考:厚生労働省 指定難病 2)。
なぜバージャー病になるのか?主な原因とリスク因子
バージャー病の発症原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、喫煙との間に極めて強い関連があることが判明しています(参考:日本循環器学会 血管炎症候群の診療ガイドライン 1)。
患者のほとんどが喫煙者であることから、タバコに含まれる何らかの物質が血管の炎症を引き起こすアレルギー反応のようなものを誘発するのではないか、と考えられています。
喫煙以外にも、遺伝的な要因や自己免疫システムの異常が関与している可能性も指摘されていますが、現時点では喫煙が最大のリスク因子であることは間違いありません。好発年齢は20代から40代の比較的若い男性ですが、近年では女性の患者も増加傾向にあります。
見逃したくない!バージャー病の初期症状を具体的に知る
バージャー病の症状は、ゆっくりと進行するため初期段階では気づきにくいことがあります。見逃しがちなサインを具体的に知っておきましょう。
手足の冷えやしびれ感:最も多い初期のサイン
最も多く見られる初期症状が、手足、特に指先や足先の冷えやしびれです。単なる冷え性との違いは、片方の手足だけに強く現れる左右差や、暖かい季節でも症状が続く点にあります。血行が悪くなることで、ジンジン、ピリピリとしたしびれを感じることも特徴です。
皮膚の色調変化:赤み、蒼白、チアノーゼに注意
血流が悪化すると、皮膚の色にも変化が現れます。寒さや精神的なストレスにさらされた際、指先が蒼白になり、次に暗い紫色(チアノーゼ)、そして赤色へと変化する「レイノー現象」がみられることがあります。これは血管が異常に収縮するために起こる症状で、バージャー病のサインの一つです(参考:日本循環器学会 血管炎症候群の診療ガイドライン 1)。
安静時の痛みや疲労感:初期の段階で現れる不快な症状
初期の段階から、安静にしているとき、特に夜間や就寝中に手足の指先に痛みを感じることがあります。これは血流が極端に悪くなっているサインかもしれません。
また、少し歩いただけでも足が重く感じたり、疲れやすくなったりするなど、歩行時の違和感として現れることも少なくありません。
安静時の痛みが出たら早めに受診を
※安静にしているときの痛み(安静時疼痛)は、一般に血流不足が進行した重症の段階で現れる徴候とされています。こうした痛みがある場合は、軽く考えず早めに専門医を受診してください。
進行度別に見るバージャー病の症状の変化
バージャー病は進行性の病気です。適切な治療を受けずに放置すると、症状は段階的に悪化していきます。
初期段階:軽度の違和感から始まる症状
初期段階では、前述したような手足の冷感やしびれ、軽い色調変化が主な症状です。日常生活に大きな支障をきたすことはまだ少ないため、病気のサインとして認識されにくい時期でもあります。
初期に気づくことが重要
しかし、この段階で気づき、対策を始めることが非常に重要です。
中期段階:間欠性跛行の出現と痛みの増加
病気が進行すると、歩行時に特有の症状が現れます。一定の距離を歩くと、ふくらはぎや足の裏に締め付けられるような痛みが生じ、歩けなくなるのです。少し休むと痛みは和らぎ、再び歩けるようになる。この特徴的な症状を「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼びます(参考:日本循環器学会 血管炎症候群の診療ガイドライン 1)。
安静時の痛みもより頻繁に、そして強くなっていきます。
末期段階:潰瘍や壊死、重篤な合併症のリスク
さらに進行すると、血流がほぼ途絶えてしまい、指先や足先に治りにくい潰瘍(皮膚がえぐれた状態)ができたり、組織が死んでしまう壊死(えし)に至ったりします。壊死した部分は黒く変色し、元に戻ることはありません。
末期は感染・切断のリスク
この段階では激しい痛みを伴い、細菌感染のリスクも非常に高まります。最悪の場合、感染の拡大を防ぐために、患部を切断する手術が必要になることもあるのです。
よく似た症状に注意!バージャー病と他の病気との違い
手足の冷えやしびれ、痛みは、他のさまざまな病気でも起こりうる症状です。自己判断は禁物ですが、バージャー病と混同されやすい病気との違いを知っておくことは大切です。
冷えやしびれを伴う神経痛やリウマチとの鑑別ポイント
坐骨神経痛などの神経痛や関節リウマチでも、手足にしびれや痛みが生じます。神経痛の場合は特定の神経の走行に沿って症状が出やすく、リウマチでは関節の腫れや朝のこわばりを伴うことが多いのが特徴です。
バージャー病は血管の問題であるため、脈拍の触診や血管造影検査などで鑑別されます。
脳梗塞の前兆や動脈硬化との関連性
手足のしびれは脳梗塞の前兆として現れることもありますが、その場合はろれつが回らない、顔の片側が歪むといった他の神経症状を伴うことが一般的です。
また、高齢者に多い「閉塞性動脈硬化症(ASO)」もバージャー病と同じく血管が詰まる病気ですが、こちらは動脈硬化が原因で、太い血管に起こりやすいという違いがあります。
レイノー病(現象)とバージャー病の症状の類似点と相違点
寒冷刺激で指先の色が変化するレイノー現象は、バージャー病の症状として現れることがあります。しかし、レイノー現象が単独で起こる「レイノー病」というものも存在します。
レイノー病は、バージャー病や膠原病のような基礎にある病気がなく、症状も比較的軽度なことが多いとされています。バージャー病の場合は、レイノー現象に加えて、安静時の痛みや潰瘍など、より重い血流障害のサインを伴う点が異なります。
バージャー病の診断方法と治療の選択肢
バージャー病が疑われる場合、医療機関ではどのような検査や治療が行われるのでしょうか。
診断の流れ:問診から画像検査まで
診断は、まず詳細な問診から始まります。喫煙歴、症状の出現時期や特徴、生活習慣などについて詳しく聞かれます。その後、手足の脈拍を触れたり、皮膚の色や温度を確認したりする身体診察が行われます。
確定診断のためには、血管の状態を詳しく調べる画像検査が不可欠です。カテーテルを用いて造影剤を注入し、血管の形を撮影する血管造影検査や、MRI、MRAといった検査で、特徴的な血管の閉塞パターンを確認します。炎症反応などを調べるために血液検査も行われます(参考:日本循環器学会 血管炎症候群の診療ガイドライン 1)。
治療の基本:禁煙の徹底と薬物療法
治療の根幹は「絶対的な禁煙」
バージャー病の治療において、何よりも重要で不可欠なのが「絶対的な禁煙」です。喫煙を続ける限り、どのような治療を行っても病気の進行を止めることはできません。受動喫煙も避ける必要があります。
禁煙を大前提とした上で、血流を改善するための薬物療法が行われます。血管を広げる作用のある血管拡張薬や、血栓ができるのを防ぐ抗血小板薬などが用いられます(参考:日本循環器学会 血管炎症候群の診療ガイドライン 1)。
進行した場合の治療:外科的処置や細胞治療
薬物療法だけでは症状が改善しない場合や、潰瘍や壊死が進行している場合には、外科的な治療が検討されます。自分の他の部位の血管(静脈)を使って詰まった動脈のバイパスを作る血行再建術や、交感神経をブロックして血管の収縮を抑える交感神経節ブロックなどがあります。重度の壊死に至った場合は、やむを得ず切断術が選択されることも。
近年では、自身の骨髄や末梢血から採取した細胞を移植して新しい血管の再生を促す、再生医療(細胞治療)も先進的な治療法として注目されています(参考:厚生労働科学研究成果データベース 3)(参考:広島大学病院 4)。
治験を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本ではバージャー病でお困りの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられることがある
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
バージャー病の不安を解消!受診の目安と生活のポイント
「もしかして?」と感じたときの具体的な行動や、診断後の生活について解説します。
「もしかして?」と思ったら、何科を受診すべきか
バージャー病が疑われる症状がある場合、まずは循環器内科や血管外科を受診するのが一般的です。これらの診療科は血管の病気を専門としています。
受診する診療科の目安
また、リウマチなど他の病気との鑑別も必要なケースでは、膠原病内科が窓口になることもあります。かかりつけ医がいる場合は、まず相談して専門医を紹介してもらうのも良い方法です。
バージャー病と診断された後の生活上の注意点
診断後は、病気の進行を抑えるために生活習慣の改善が不可欠です。
完治の可能性と予後について
バージャー病を完全に治癒させる根本的な治療法は、現在のところ見つかっていません(参考:厚生労働省 指定難病 2)。
しかし、早期に発見し、絶対禁煙を貫くことで、病気の進行を食い止め、症状を安定させることは十分に可能です。予後は禁煙を継続できるかどうかに大きく左右されます。症状の進行を抑え、QOL(生活の質)を維持するためには、継続的な自己管理と医療機関との連携が鍵となります。
バージャー病に関してよくある質問(FAQ)
バージャー病に関して多くの方が抱く疑問にお答えします。
発症に何らかの遺伝的要因が関与している可能性は指摘されていますが、明確な遺伝形式は確認されていません。親がバージャー病だからといって、必ずしも子供が発症するわけではありません。
はい、あります。従来は若い男性に多い病気とされてきましたが、女性の喫煙率の上昇に伴い、女性の患者さんも増えています。症状や治療法に男女差は特にありません。
バージャー病は指定難病であり、高血圧や糖尿病のように、生涯にわたって付き合っていく必要のある慢性疾患です。症状が落ち着いても、禁煙や生活習慣の管理、定期的な通院は継続する必要があります。
禁煙は病気の進行を止めるための絶対条件であり、最も効果的な治療法です。禁煙によって症状が劇的に改善するケースも少なくありません。ただし、すでに血管が完全に詰まってしまった部分の血流が元通りになるわけではないため、早期の禁煙が重要です。
初期の軽度な段階では、日常生活に大きな支障はないかもしれません。しかし、寒冷地での作業や長時間の立ち仕事など、特定の環境下では症状を強く感じることがあります。病状の進行を防ぐためにも、軽度であっても医師の指導のもとで適切な管理を続けることが大切です。
まとめ
バージャー病の初期症状は、手足の冷えやしびれ、皮膚の色の変化、安静時の痛みといった、見過ごしやすいサインから始まります。これらは単なる体調不良と片付けられてしまうことも少なくありません。
もし、これらの症状に心当たりがあり、特に喫煙習慣がある方は、決して自己判断で放置しないでください。他の似た症状を持つ病気との鑑別も含め、早期に専門医の診察を受けることが、病気の進行を食い止める上で極めて重要です。
最大の鍵は「絶対的な禁煙」
治療の根幹は絶対的な禁煙です。生活習慣を見直し、継続的なケアを行うことが、ご自身の体を守るための最大の鍵となります。この記事が、あなたの不安を和らげ、適切な医療へ繋がる一歩となることを願っています。
