潰瘍性大腸炎と診断された方にとって、日々の食事は症状をコントロールする上で非常に重要な要素となります。
何を食べれば良いのか、あるいは何を避けるべきなのか、悩む場面も少なくないかもしれません。
この記事では、「食べてはいけないもの」という厳しい制限ではなく、「症状を悪化させないために避けたいもの」「気をつけて摂取したいもの」という視点から、具体的な食品や飲み物を解説します。
病状が比較的落ち着いている「寛解期」と、症状が強く出ている「活動期」とで異なる食事のポイントについても詳しく触れていきます。
日々の食事管理に対する不安を少しでも軽減し、ご自身の体調と上手に付き合っていくための一助となれば幸いです。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
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潰瘍性大腸炎の食事管理、なぜ大切?
腸への負担を減らし、炎症を抑えるために
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こる病気です。
特定の食べ物が発症の直接的な原因になるわけではなく、症状が落ち着いている寛解期には、食事が病状に与える影響はそれほど大きくないと考えられています。
一方で、症状の強い活動期には、消化に負担のかかる食事が腹痛や下痢などの症状に影響することがあるため、腸にやさしい食事を心がけることがすすめられます(参考:日本消化器病学会 1)。
活動期の食事管理の目的は、消化しやすいものを選び、腸をできるだけ休ませることにあります。
腸への刺激を最小限に抑えることで、症状の安定を目指します。
病状に合わせた柔軟な対応が求められる
潰瘍性大腸炎の食事療法は、常に同じものを食べ続けるわけではありません。
症状が強く出ている「活動期」と、症状が落ち着いている「寛解期」では、食事の考え方が異なります。
活動期には腸への負担を徹底的に減らす食事が中心となり、寛解期には少しずつ食べられるものの幅を広げ、バランスの取れた栄養摂取を目指していく。
この病状に合わせた柔軟な対応が、長期的な体調管理の鍵となります。
【活動期】潰瘍性大腸炎で特に避けたい食べ物リスト
活動期は、腹痛や下痢、血便などの症状が強く現れる時期です。
この期間は、腸を最大限に休ませるため、消化に悪く、刺激となる食べ物は極力避ける必要があります。
高脂質の食品は腸を刺激しやすい
脂質は消化に時間がかかり、多くの消化酵素を必要とするため、炎症を起こしている腸にとっては大きな負担となります。
注意点として
脂質の多い食事は、下痢や腹痛を誘発する可能性が高いため、特に注意が必要です(参考:日本消化器病学会 1)。
具体的には、以下のような食品が挙げられます。
これらの食品は、活動期には避けるのが賢明です。
刺激の強い香辛料や調味料に注意
香辛料やカフェイン、アルコールなどは、人によっては腸への刺激となり、活動期の症状を悪化させることがあります。
腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発化させ、下痢を引き起こす原因になることもあります。
唐辛子やこしょう、カレー粉、わさび、からしといった香辛料の使用は控えましょう。
また、にんにくやニラなど香りの強い野菜も、人によっては刺激となる場合があります。
コーヒーや紅茶に含まれるカフェイン、そしてアルコール飲料も避けるべきです(参考:日本消化器病学会 1)。
不溶性食物繊維が多い食材は控えるべきか
補足
食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、溶けにくい「不溶性食物繊維」があります。このうち、不溶性食物繊維は腸内で水分を吸って膨らみ、便の量を増やして腸を刺激する働きがあります。
健康な時には便通を促す良い働きをしますが、腸に炎症がある活動期には、その刺激が負担となり、症状を悪化させることがあります。
ごぼう、たけのこ、きのこ類、海藻類、こんにゃく、豆類、ナッツ類などは不溶性食物繊維を多く含んでいるため、活動期には摂取を控えるのが無難です(参考:日本消化器病学会 1)。
乳製品や冷たい飲食物も控えるのが無難
牛乳や一部の乳製品に含まれる乳糖は、体質によってうまく分解できず(乳糖不耐症)、下痢や腹部膨満感の原因となることがあります。
ただし、潰瘍性大腸炎だからといって乳製品を一律に避ける必要があるわけではなく、乳糖不耐症の傾向がある方が活動期に症状を感じやすい場合に、量や種類を調整するとよいでしょう(参考:日本消化器病学会 1)。
また、極端に冷たい飲み物や食べ物は、胃腸を直接刺激し、腸の動きを活発化させることがあります。
下痢の症状があるときは、常温か温かい飲み物を選ぶように心がけましょう。
【寛解期】潰瘍性大腸炎で気をつけたい食事のポイント
寛解期は症状が落ち着き、体調が安定している時期です。
この期間は、栄養バランスを整え、体力を回復させることが目標になります。
活動期に避けていた食品も、様子を見ながら少しずつ試していくことができます。
基本はバランスの取れた食生活を目指す
寛解期に入ったら、特定の食品に偏ることなく、主食(ごはん、パン、麺類)、主菜(魚、肉、卵、大豆製品)、副菜(野菜)をそろえたバランスの良い食事を心がけることが大切です。
ポイント
寛解期には、いたずらに食事を制限する必要はないとされています(参考:日本消化器病学会 1)。
活動期に制限していた食品を再開する際は、必ず少量から試すようにしてください。
そして、食べた後の体調に変化がないか、数日間は注意深く観察することが重要です。
もし症状が悪化するようであれば、その食品はまだ身体に合っていないのかもしれません。
不溶性食物繊維は少しずつ摂取を
活動期には避けていた不溶性食物繊維も、寛解期には腸内環境を整える上で大切な役割を果たします。
ただし、急にたくさん摂るのではなく、少しずつ慣らしていくことがポイントです。
まずは、りんごやバナナ、桃、里芋、大根など、比較的消化しやすい食品から取り入れるのがおすすめです。
様子を見ながら、葉物野菜などを細かく刻んだり、柔らかく煮込んだりして試していくと良いでしょう。
脂質の摂取量にも引き続き配慮を
症状が落ち着いている時期の潰瘍性大腸炎では、厳しい脂質制限が必要とされているわけではありません。
ただし、脂質の多い食事は消化の負担になりやすいため、揚げ物や脂肪の多い肉の過剰摂取は、引き続き控えめにするとよいでしょう(参考:日本消化器病学会 1)。
一方で、脂質は身体にとって必須の栄養素でもあります。
脂質を摂る際は、青魚に含まれるEPAやDHA(オメガ3系脂肪酸)など、質にも配慮するという考え方もあります。
気をつけたいこと
なお、オメガ3系脂肪酸のサプリメントについては、潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患に対する有効性は、現時点では暫定的または否定的とする報告があり、確立した治療法ではない点には注意が必要です(参考:厚生労働省eJIM 2)。
潰瘍性大腸炎の食事でよくある疑問を解決
ここでは特定の食品に関する疑問についてお答えします。
お菓子選びには注意が必要です。
洋菓子(ケーキ、クッキー、ドーナツ)やチョコレート、スナック菓子(ポテトチップスなど)は、脂質や糖分が多く含まれているため、腸に負担をかける可能性があります。
比較的安心なのは、脂質の少ない和菓子(ようかん、まんじゅうなど)や、ゼリー、プリン、カステラなどです。
ただし、食べ過ぎは禁物です。
また、「糖分ゼロ」を謳う飲料やお菓子に含まれる人工甘味料が、人によってはお腹の不調を引き起こすこともあるため、少量から試すようにしましょう。
寛解期であっても、これらの飲み物は人によっては腸への刺激となることがあるため、量や体調に応じて調整するとよいでしょう。
カフェインやアルコールは刺激となることがあり、炭酸飲料はガスが発生して腸を膨張させ、不快感の原因となることがあります。
基本的には、水やお茶(麦茶、ほうじ茶などカフェインの少ないもの)を中心に水分補給をするのがおすすめです。
どうしても飲みたい場合は、ノンカフェインのコーヒーやノンアルコール飲料を試すなど、工夫してみるとよいかもしれません。
これらの食品は、調理法や選び方に気をつければ、栄養補給に役立ちます。
潰瘍性大腸炎の食事、外食時の注意点
外食は、使われている食材や調理法が分かりにくいため、メニュー選びが重要になります。
脂肪分の多い揚げ物や炒め物、香辛料の強い料理は避け、和食や蒸し料理、煮込み料理など、消化に良さそうなものを選ぶのがポイントです(参考:日本消化器病学会 1)。
例えば、煮魚定食やうどん、おかゆ、湯豆腐などが選択肢として考えられます。
注文時に「油を少なめに」「香辛料を抜いてほしい」といったリクエストが可能であれば、お店の方に相談してみるのも一つの方法です。
治験を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では潰瘍性大腸炎でお困りの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられることがある
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
日々の食事で意識したい工夫と食べ方
何を食べるかだけでなく、どのように食べるかも、腸への負担を減らす上では非常に大切です。
よく噛んでゆっくり食べる習慣を
食事は、よく噛んで、時間をかけてゆっくりと食べましょう。
よく噛むことで、食べ物が細かくなり、唾液とよく混ざり合うことで消化されやすくなります。
これは、消化器官全体の負担を軽減する第一歩です。
調理法を工夫して消化を助ける
同じ食材でも、調理法によって消化のしやすさは大きく変わります。
基本は「焼く・揚げる」よりも「煮る・蒸す・茹でる」といった、油を使わず水分を多く含む調理法を選ぶことです。
また、食材を細かく刻んだり、ミキサーにかけたり、圧力鍋で柔らかく煮込んだりするのも有効な工夫。
少しの手間で、腸への優しさが格段に変わります。
食事記録で体調の変化を把握する
「何を食べたら、お腹の調子が悪くなったか」「この食事は問題なかった」といった記録を付けることは、自分自身の体質や、その時々の体調に合った食事を見つけるための非常に有効な手段です。
食事日記をつけることで、症状と食事の関連性が客観的に見えてくる場合があります。
水分補給はこまめに行う
下痢の症状がある場合は、脱水症状を起こしやすいため、こまめな水分補給が欠かせません。
一度に大量に飲むのではなく、少しずつ、回数を分けて飲むのが効果的です。
冷たい水は腸を刺激することがあるため、常温の水や白湯、カフェインの少ないお茶がおすすめです。
まとめ
潰瘍性大腸炎の食事管理は、症状を安定させ、穏やかな日々を送るために不可欠です。
重要なのは
重要なのは、避けるべき食品を正しく理解し、ご自身の体調に合わせて食事を調整していくことです。
活動期には高脂質食や刺激物、不溶性食物繊維などを避け、腸を休ませることに専念します。
そして、症状が落ち着いた寛解期には、バランスの取れた食事を基本としながら、食べられるものの幅を少しずつ広げていくことが目標です(参考:日本消化器病学会 1)。
食事制限は時にストレスに感じられるかもしれませんが、完璧を目指しすぎる必要はありません。
調理法を工夫したり、自分の体調を記録したりしながら、できる範囲で食事と向き合っていくことが、この病気と長く付き合っていくための大切な姿勢です。
この記事が、あなたの食生活のヒントになれば幸いです。
