突然、胸がドキドキと不規則に波打ったり、息苦しさを感じたりすると、誰しも強い不安や恐怖を覚えるものです。

心房細動の発作が起きたとき、パニックにならずにどう行動すべきかを知っておくことは、ご自身の身を守るために非常に重要です。

この記事では、心房細動の発作が起きた際の具体的な対処法をはじめ、救急車を呼ぶべき危険なサイン、受診の目安、そして発作時に絶対にしてはいけない行動について詳しく解説します。

発作のメカニズムや合併症のリスク、日頃からできる予防策についても網羅的にまとめています。

正しい知識を持ち、いざという時に冷静な判断ができるよう、ぜひ最後までお読みいただき、ご自身やご家族の安心にお役立てください。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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心房細動の発作が起きたらまずすべきこと

心房細動の発作が起きた際、最も大切なのは慌てずに状況を把握し、心身の負担を最小限に抑えることです。

ここでは、発作を感じた直後に取るべき具体的な行動ステップをご紹介します。

落ち着いて行動する:パニックを避けるための第一歩

突然の動悸や脈の乱れを感じると、強い不安から呼吸が浅くなり、結果としてさらに心拍数が上がってしまう悪循環に陥ることがあります。

発作が起きたら、まずはその場で動きを止め、安全で静かな場所を見つけて座るか、横になってください。

衣服のベルトやネクタイ、ボタンなど体を締め付けているものがあれば緩め、深くゆっくりとした呼吸を心がけます。

深呼吸のコツ

鼻から息を吸い、口から細く長く吐き出す深呼吸を繰り返すことで、自律神経のバランスが整いやすくなり、気持ちを落ち着かせる効果が期待できます。

周囲に人がいる場合は、自分が心房細動の発作を起こしているかもしれないと伝え、そばにいてもらうだけでも精神的な安心につながります。

処方薬の服用:指示がある場合の具体的な飲み方

すでに医療機関で心房細動と診断されており、発作時のための頓服薬(発作を抑えるための薬)を処方されている場合は、医師の指示通りに服用してください。

薬を飲む際は、必ずコップ一杯程度の水または白湯で飲みます。

お茶やコーヒー、ジュースなどで飲むと薬の成分に影響を与える可能性があるため避けてください。

自己判断での服用は危険です

早く症状を治めたいからといって、自己判断で決められた用量以上の薬を飲むことは非常に危険です。

薬を飲んでも数時間以上症状が治まらない場合や、逆に息苦しさが増してくるような場合は、我慢せずに医療機関へ連絡して指示を仰ぎましょう。

症状の記録:受診時に役立つ情報整理のポイント

発作が起きている最中、あるいは症状が少し落ち着いたタイミングで、ご自身の状態をメモなどに記録しておくことをお勧めします。

この記録は、後日または緊急で医療機関を受診した際、的確な診断と治療方針を決定するための非常に重要な情報源となります。

記録しておくべき主な項目は以下の通りです。

  • 発作が始まった正確な時間
  • 発作が続いた時間(いつ治まったか)
  • 具体的な症状(脈が飛ぶ感覚、胸の圧迫感、めまい、息切れなど)
  • その時の行動(安静にしていた、運動中だった、飲酒後だったなど)
  • 血圧や脈拍の数値(家庭用血圧計やスマートウォッチなどで測定可能な場合)

スマートフォンや手帳に簡単な箇条書きで残しておくだけでも、診察時のやり取りがスムーズになります。

発作時の受診判断と医療機関への連絡

発作が起きたとき、そのまま様子を見て良いのか、すぐに病院へ行くべきか迷う方は少なくありません。

ここでは、緊急性の高い症状の見極め方と、医療機関への適切な連絡方法について解説します。

救急車を呼ぶべきケースとは?緊急性の高い症状

心房細動の発作自体は、すぐに命に関わるものではないケースも多いですが、以下のような症状が伴う場合は危険なサインです。

一刻も早い処置が必要となるため、ためらわずに119番通報をして救急車を呼んでください。

  • 意識が遠のく、または気を失って倒れた(失神)
  • 胸を締め付けられるような激しい痛みがある(30分以上持続する場合など)
  • 冷や汗が止まらない
  • 座っていても息をするのが苦しい、呼吸が浅く速い
  • 顔面が蒼白になっている、唇が紫色になっている(チアノーゼ)
  • 体の片側が動かしにくい、ろれつが回らない(脳梗塞を疑う症状)

これらの症状は、心臓のポンプ機能が著しく低下している状態や、重大な合併症を引き起こしている可能性を示唆しています。

ご自身で動けない場合は、周囲の人に助けを求め、救急隊が到着するまで安静な姿勢を保ちましょう(参考:独立行政法人 労働者健康安全機構 関西ろうさい病院 1)(参考:東邦大学医療センター大橋病院 2)。

循環器内科を受診する目安と連絡方法

緊急性の高い症状がない場合でも、初めて発作のような症状を感じた場合は、できるだけ早めに循環器内科を受診してください。

心電図検査などで脈の乱れの原因を特定する必要があります。

すでに通院中で、いつもの発作であり、処方薬で症状が治まった場合でも、次回の定期診察を待たずに一度かかりつけ医に電話で状況を報告することをお勧めします。

発作の頻度が増えていたり、持続時間が長くなっていたりする場合は、薬の調整や治療方針の変更が必要になることがあるためです。

夜間や休日の対応

夜間や休日に発作が起き、不安が強い場合は、地域の救急相談センターなどに電話をして指示を仰ぐのも一つの方法です。

家族や周囲の人ができるサポートと連絡先リストの準備

患者さんご本人が発作を起こした際、周囲の人の冷静なサポートが大きな助けとなります。

ご家族や同僚が発作を起こしていることに気づいたら、まずは「大丈夫ですか」と声をかけ、安全な場所に誘導して休ませてください。

患者さんがパニックになっている場合は、一緒に深呼吸を促すなどして安心させることが大切です。

また、患者さんの顔色や呼吸の状態、意識がしっかりしているかを観察し、緊急性が高いと判断した場合は速やかに救急車の手配を行います。

平時からの準備が重要です

いざという時に慌てないよう、平時から「かかりつけの医療機関名と電話番号」「緊急連絡先(家族の携帯電話など)」「服用中のお薬手帳の保管場所」を家族間で共有し、目のつく場所にリストアップしておくことを強く推奨します。

心房細動の発作とは?症状と種類を理解する

心房細動という病気について正しく理解することは、発作時の適切な対応につながります。

ここでは、心房細動の基本的なメカニズムと、発作の際に見られる症状について解説します。

発作性心房細動の主な症状

心房細動は、心臓の上部にある「心房」という部屋が、規則正しく収縮できず、細かく震えるように動いてしまう不整脈の一種です。

この状態が一時的に起こり、自然に元の正常な脈に戻るタイプを「発作性心房細動」と呼びます。

発作が起きている間は、心臓が血液を全身に送り出す効率が低下するため、さまざまな症状が現れます。代表的な症状は以下の通りです。

  • 動悸:胸がドキドキする、脈が速い、脈が飛ぶ、不規則に打つ感じがする。
  • 息切れ:階段を上ったり、少し動いたりしただけで息が上がる。
  • 胸部不快感:胸がザワザワする、軽く圧迫されるような感じがする。
  • めまいや立ちくらみ:脳への血流が一時的に不足することで起こる。
  • 強い疲労感や倦怠感:全身に十分な酸素や栄養が運ばれにくくなるため。

自覚症状がないケースにも注意

一方で、発作が起きていても全く症状を感じない「無症候性心房細動」の方も一定数存在します。

自覚症状がない場合でも、後述する合併症のリスクは同様にあるため注意が必要です(参考:兵庫医科大学病院 3)(参考:独立行政法人国立病院機構 岩国医療センター 4)(参考:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 5)。

発作の持続時間と自然に止まるケース

発作性心房細動の場合、発作の持続時間は人によって大きく異なります。

数分から数十分程度で自然に治まる短いものから、数時間、あるいは数日間続くものまで様々です。

一般的には、発症してから7日以内に自然に正常な脈(洞調律)に戻るものを発作性心房細動と定義しています。

放置せず医療機関へ

発作が一時的に治まった場合、「もう大丈夫だろう」と安心しがちですが、放置することは推奨されません。

発作を繰り返すうちに、心房が震え続ける状態が慢性化し、自然には元に戻らなくなる「持続性心房細動」へと進行するリスクがあるためです。

症状が治まった後でも、必ず医療機関で検査を受けることが大切です。

発作が引き起こす合併症のリスク

心房細動の発作そのものよりも恐ろしいのが、それに伴って引き起こされる合併症です。

最も重大なリスクとして知られているのが「心原性脳塞栓症」というタイプの脳梗塞です。

心房が細かく震えて正常に収縮しないと、心房の中に血液がよどみ、血の塊(血栓)ができやすくなります。

この血栓が血流に乗って脳の太い血管に運ばれ、そこを詰まらせてしまうと、広範囲の脳組織がダメージを受け、命に関わったり重い後遺症が残ったりします。

また、頻脈(脈が速い状態)が長期間続くことで心臓の筋肉が疲弊し、全身に血液をうまく送り出せなくなる「心不全」を引き起こすリスクも高まります。

これらの重篤な合併症を防ぐためには、早期発見と適切な治療、特に血栓を予防するための治療が不可欠です(参考:国立長寿医療研究センター 6)。

心房細動の発作時に「してはいけないこと」

発作が起きた際、良かれと思って取った行動が、かえって症状を悪化させたり危険を招いたりすることがあります。

ここでは、発作時に避けるべき行動について具体的に解説します。

無理な運動や運転:体を安静に保つことの重要性

発作中は心臓のポンプ機能が低下しているため、体を動かすと心臓にさらなる負担をかけることになります。

動悸や息切れを感じているにもかかわらず、無理に歩き続けたり、階段を上ったり、家事や仕事を続けたりすることは絶対に避けてください。

また、自動車や自転車の運転中に発作が起きた場合は非常に危険です。

めまいや立ちくらみ、最悪の場合は意識消失を引き起こし、重大な交通事故につながる恐れがあります。

さらに、心疾患の不安がある場合の長時間の運転などは精神的緊張や疲労を招き症状悪化の可能性があるため、適宜休憩を取り負担のかからない範囲で行うか、控える必要があります。

運転中の対応

運転中に異変を感じたら、ハザードランプを点灯させ、周囲の安全を確認しながら速やかに道路の左端など安全な場所に停車し、エンジンを切って安静にしてください(参考:独立行政法人 労働者健康安全機構 関西ろうさい病院 1)。

自己判断での市販薬服用や民間療法

動悸や息切れの症状を和らげようと、薬局で販売されている市販の動悸薬や気付け薬などを自己判断で服用するのは危険です。

心房細動による症状は、一般的な疲労やストレスによる動悸とは原因が根本的に異なります。

市販薬の中には、心房細動の患者さんには適さない成分が含まれている場合もあり、かえって不整脈を悪化させる可能性があります。

民間療法にも注意

また、インターネット上の情報などを鵜呑みにして、根拠のない民間療法やサプリメントに頼ることも、適切な医療を受ける機会を遅らせる原因となります。

症状がある場合は、必ず医師の診断に基づいた処方薬を使用してください。

不安や焦りによる精神的な負担の増幅

「このまま心臓が止まってしまうのではないか」という過度な不安や恐怖心は、交感神経を強く刺激し、血圧を上昇させたり脈拍をさらに速めたりする原因となります。

精神的な動揺が症状を増悪させる悪循環に陥らないよう注意が必要です。

冷静な対応を

心房細動の発作自体で直ちに心臓が止まることは稀です。

まずは「落ち着いて安静にすれば大丈夫」と自分に言い聞かせ、ゆっくりと深呼吸を繰り返すことに意識を向けてください。

一人でいると不安が募りやすいため、可能であれば家族や友人に連絡を取り、声を聞くだけでも精神的な安定につながります。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。

日本では心房細動でお困りの方に向け治験が行われています。治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

※治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

  • 最新の治療をいち早く受けられることがある
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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発作の予防と再発を防ぐための日常生活の注意点

心房細動は、加齢や高血圧などの疾患に加えて、日々の生活習慣が発症や発作の引き金になることが分かっています。

発作を予防し、心臓の健康を保つためのポイントを解説します。

規則正しい生活習慣とストレス管理

睡眠不足や過労、強い精神的ストレスは自律神経のバランスを崩し、心房細動の発作を誘発しやすくなります。

毎日決まった時間に就寝・起床し、十分な睡眠時間(一般的に7時間程度)を確保するよう心がけましょう。

また、日頃から自分なりのストレス解消法を見つけておくことも重要です。

ぬるめのお湯にゆっくり浸かる、好きな音楽を聴く、軽いストレッチや散歩をするなど、心身をリラックスさせる時間を意識的に作ることが、心臓への負担を減らすことにつながります(参考:兵庫医科大学病院 3)(参考:独立行政法人 労働者健康安全機構 関西ろうさい病院 7)。

アルコール・カフェイン・喫煙の制限

過度なアルコール摂取は心房細動の明確な危険因子です。

特にお酒を飲みすぎた翌日や、休肝日を設けずに連日飲酒していると発作が起きやすくなります。

アルコールは適量を守り、可能であれば禁酒を検討することが推奨されます。

また、コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインの過剰摂取も交感神経を刺激し、脈の乱れを引き起こす可能性があります。

適度な量に留めるよう注意しましょう。

喫煙は心臓に大きな負担をかけます

さらに、喫煙は血管を収縮させ、心臓に大きな負担をかけます。

心房細動だけでなく、心筋梗塞や脳卒中などあらゆる心血管疾患のリスクを跳ね上げるため、禁煙は必須の取り組みと言えます(参考:兵庫医科大学病院 3)(参考:独立行政法人 労働者健康安全機構 関西ろうさい病院 7)。

定期的な受診と服薬の継続

心房細動と診断された場合、最も重要な予防策は、医師の指示通りに薬を飲み続けることと、定期的に通院して状態を確認してもらうことです。

自己判断の服薬中止は厳禁

特に、脳梗塞を予防するための「抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)」を処方されている場合、自己判断で服用を中止することは極めて危険です。

薬をやめた途端に血栓ができやすくなり、致命的な脳梗塞を引き起こすリスクが高まります。

「最近は発作が起きていないから」「症状がないから」という理由で治療を中断せず、疑問や不安がある場合は必ずかかりつけ医に相談してください。

心房細動に関するよくある疑問

心房細動の発作に関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。

心房細動の発作はどのくらいで治まりますか?
発作性心房細動の場合、数分から数時間で自然に治まることが多いですが、中には数日間(長くても7日以内)続くケースもあります。ただし、発作の持続時間にかかわらず、症状が現れた場合は医療機関への相談が必要です。
心房細動の発作中に食事はできますか?
発作中は胃腸への血流も変化しており、食事をすることでさらに心臓に負担がかかる可能性があります。また、吐き気を催すこともあるため、症状が落ち着くまでは食事を控え、安静に過ごすことをお勧めします。水分の摂取は、むせないように少しずつ行ってください。
発作が起こりやすい時間帯はありますか?
人によって異なりますが、夜間就寝中から明け方にかけての副交感神経が優位になる時間帯や、逆に日中の活動時、飲酒後、強いストレスを感じた直後などに起こりやすい傾向があります。ご自身の発作のパターンを記録しておくと役立ちます。
心房細動の発作で救急車を呼ぶのは大げさですか?
決して大げさではありません。激しい胸の痛み、息苦しさ、冷や汗、意識が遠のくといった症状がある場合は、命に関わる状態の可能性があります。迷わず119番通報してください。判断に迷う場合は、救急安心センター事業(#7119)などを活用するのも良いでしょう。
心房細動と診断されたら、どんなことに気をつけるべきですか?
処方された薬(特に抗凝固薬)を指示通りに確実に服用することが最も重要です。その上で、禁煙、節酒、十分な睡眠、適度な運動といった生活習慣の改善に取り組み、定期的な通院を欠かさないようにしてください。

まとめ

心房細動の発作が起きたときは、突然の動悸や息苦しさに驚き、不安になるのは当然のことです。

しかし、まずは慌てずに安全な場所で安静にし、ゆっくりと深呼吸をして落ち着くことが第一歩となります。

意識障害や激しい胸の痛みなど、危険なサインが見られる場合は直ちに救急車を呼び、そうでない場合も発作の状況を記録して、早めに医療機関を受診することが大切です。

発作時に無理に動いたり、自己判断で市販薬を飲んだりすることは避けましょう。

定期的な通院と治療の継続を

心房細動は、適切な治療と生活習慣の改善によってコントロールが可能な病気です。

重大な合併症である脳梗塞を防ぐためにも、日頃からかかりつけ医としっかり連携し、規則正しい生活と処方薬の服用を継続して、安心できる毎日をお過ごしください。