「トイレが近くて夜も眠れない」
「膀胱が締め付けられるように痛い」
それなのに、病院で検査をしても「きれいな尿ですね」「菌はいません」と言われてしまう。
このように、原因がはっきりしないまま辛い症状に悩まされている方は少なくありません。
それはもしかすると、一般的な膀胱炎とは異なる「間質性膀胱炎(かんしつせいぼうこうえん)」かもしれません。
この記事では、なぜ間質性膀胱炎が起こるのか、現在医学的に考えられているメカニズムと、よくある誤解について専門的な知見に基づき解説します。
まず結論からお伝えすると、この病気の決定的な原因はまだ完全には解明されていません(参考:難病情報センター 1)。
しかし、決して「あなたの生活習慣が悪かったから」なる病気ではありません。
膀胱の中で何が起きているのか、その仕組みを正しく知ることから始めましょう。
※この記事は疾患啓発を目的としています。

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。
※負担軽減費とは:治験協力者が負担する交通費や時間的拘束などがあるためお金が支給されます。
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結論:間質性膀胱炎の決定的な原因はまだ「不明」
間質性膀胱炎(別名:膀胱痛症候群)は、医学が進歩した現在でも、残念ながら「原因不明」の疾患とされています(参考:日本泌尿器科学会 2)。
これは、「インフルエンザウイルスが原因」というように、たった一つの犯人が特定できていないためです。
近年では遺伝的な背景に関する研究も進んでいますが、まだ解明の途上にあります(参考:大阪大学 3)。
しかし、「原因不明」だからといって、それが「気のせい」や「精神的な問題」であることを意味するわけではありません。
厚生労働省の指定難病(指定難病226)にも認定されている通り、この病気は膀胱の組織に慢性的な炎症や機能障害が起きている身体的な疾患です。
決して、あなたの不摂生や衛生管理の問題で発症したものではないことを、まずは理解して安心してください。
現在考えられている「3つの有力な原因メカニズム」
「原因不明」とは言いつつも、近年の研究で「膀胱で何が起きているか(病態)」については、いくつかの有力な説が提唱されています。
現在、日本の診療ガイドラインや専門医の間では、主に以下の3つの要素などが複雑に関係していると考えられています(参考:日本泌尿器科学会 2)。
①膀胱粘膜のバリア機能障害(防御膜の欠損)
最も有力な説の一つが、膀胱の内側を守っているバリア機能のトラブルです。
健康な膀胱の内側は、グリコサミノグリカン(GAG)層というネバネバした粘膜によってコーティングされています。
このコーティングのおかげで、尿の中に老廃物などの刺激物質が含まれていても、膀胱の壁には染み込みません。
しかし、間質性膀胱炎の患者さんの多くは、何らかの理由でこのコーティング(GAG層)が薄くなったり、機能不全を起こしたりしていると考えられています。
その結果、尿が直接膀胱の知覚神経に触れてしまい、「しみるような痛み」や「尿が溜まると痛い」という症状を引き起こすと推測されています。
②免疫システムの異常・アレルギー反応
2つ目は、免疫系の異常な活性化です。
本来は体を守るはずの免疫細胞(特に肥満細胞など)が、膀胱の中で過剰に活動してしまい、ヒスタミンなどの炎症物質を放出しているという説です。
これは、アレルギー反応に近い状態が膀胱の中で起きているとイメージすると分かりやすいかもしれません。
実際、間質性膀胱炎の患者さんには、他のアレルギー疾患を持っている方が比較的多いことも報告されています。
③神経の過敏化(神経原性炎症)
3つ目は、膀胱の神経が過敏になりすぎているという説です。
繰り返される刺激によって、痛みを感じる神経が過敏になり、スイッチが入りっぱなしになってしまっている状態です(神経の可塑的変化)。
通常なら気にならない程度の少量の尿が溜まっただけでも、脳に「強い痛み」や「強い尿意」として信号が送られてしまいます。
これが、頻尿や激しい尿意切迫感の原因の一つと考えられています。
よくある誤解「細菌性膀胱炎」や「ストレス」との関係

原因が分かりにくい病気だからこそ、誤った情報に惑わされてしまうことがあります。
ここでは代表的な2つの誤解を解いておきましょう。
細菌感染(ばい菌)が原因ではない
一般的な「急性膀胱炎」は、大腸菌などの細菌が尿道から入り込んで炎症を起こします。
そのため、抗生物質を飲めば菌が死んで治癒します。
一方、間質性膀胱炎は細菌感染が原因ではありません(参考:難病情報センター 1)。
そのため、抗生物質を飲んでも効果が得られず、尿検査をしても「菌はマイナス(異常なし)」という結果が出ることが一般的です。
「菌がいないのに痛いなんておかしい」と悩む患者さんもいますが、これは病気の性質上、矛盾することではありません。
ストレスや食事は「原因」ではなく「悪化要因」
「ストレスのせいで膀胱炎になったのでしょうか?」
「コーヒーを飲みすぎたからでしょうか?」
そう自分を責める方もいますが、ストレスや食事が直接の「発症原因」であるという明確な根拠はありません。
しかし、「症状を悪化させる要因(増悪因子)」であることは多くの患者さんで経験されており、ガイドラインでも指摘されています(参考:日本泌尿器科学会 2)。
- 食事: 柑橘類などの酸性食品、コーヒー、香辛料、カリウムを多く含む食品などは、症状を悪化させる可能性があります。
- ストレス: 精神的なストレスは症状の悪化因子として知られており、痛みをより強く感じさせるきっかけになります。
これらは「原因」ではありませんが、これらをコントロールすることは「治療」の重要な一部となります。
原因がわからなくても治療は可能です
ここまで読んで、「原因が不明なら、治らないのでは?」と不安に思ったかもしれません。
確かに、一発で完治させる特効薬はまだ確立されていませんが、それぞれの症状や病態に応じた治療法は存在します(参考:難病情報センター 1)。
- 膀胱水圧拡張術:
- 内視鏡で膀胱を広げる治療で、診断と治療を兼ねて行われます。約半数の症例で症状の緩和が期待できるとされています。
- 薬物療法:
- 痛みや頻尿を和らげるための鎮痛薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬などの内服や、DMSO(ジメチルスルホキシド)製剤を膀胱内に直接注入する治療などがあります(参考:日本泌尿器科学会 4)。
このように、症状をコントロールし、日常生活を支障なく送れるようにする(寛解を目指す)ことは十分に可能です。

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では間質性膀胱炎の方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
最新の治療をいち早く受けられることがある
専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
まとめ
間質性膀胱炎の原因は、現時点では医学的に「不明」とされていますが、以下の点が分かってきています。
- 細菌感染ではなく、不衛生が原因ではない。
- 膀胱の「バリア機能」「免疫」「神経」のトラブルなどが関係していると考えられている。
- ストレスや食事は悪化させるきっかけになるが、根本原因ではない。
「私のせいでこうなった」と自分を責める必要は全くありません。
この病気は、厚生労働省も認める指定難病であり、確立された診断基準があります。
もし「治らない膀胱炎」に悩んでいるなら、一度「間質性膀胱炎」を専門に診ている泌尿器科医に相談してみてください。
正しい診断が、辛い症状から解放されるための第一歩になります。
参考資料・文献一覧
- 難病情報センター「間質性膀胱炎(ハンナ型)(指定難病226)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/4430
- 日本泌尿器科学会「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン」 https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/35_interstitial_cystitis.pdf
- 大阪大学 ResOU「指定難病 間質性膀胱炎(ハンナ型)の遺伝的背景を解明」 https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230719_4
- 日本間質性膀胱炎研究会/日本泌尿器科学会「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドラインの修正・追加」 https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/35_interstitial_cystitis_ver2021_info.pdf
