子宮頸がんは若い女性にも発症するリスクがあるがんで、その原因のほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)感染によるものです。

このHPV感染を防ぐ「子宮頸がんワクチン」は、世界中で予防策として広く採用されています。

しかし、日本での接種率は他国と比べて低いままです。

この記事では、日本の最新の接種率データ(2025年度上半期まで)やその背景、世界との比較、ワクチンの効果や安全性、そして2026年3月で終了したキャッチアップ接種と、現在の定期接種について解説。

接種を迷っている方に向けたアドバイスもお届けします。

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子宮頸がんワクチンの重要性

子宮頸がんワクチンの重要性について解説します。

子宮頸がんの発症率とHPVワクチンの関係

子宮頸がんは、日本で年間約1万人が新たに診断され(2023年は10,457例)、約2,700人が亡くなっている(2024年は2,751人)病気です。

このがんの95%以上がHPV感染によるものとされており、性的接触を通じて感染するこのウイルスが主な原因と考えられています。

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)は、このHPV感染を予防することで、子宮頸がんの発症リスクを下げることが期待されています。

特に20代から40代の比較的若い女性に発症しやすい点が特徴で、早い段階での予防が重要です。

子宮頸がんとは別の、子宮体がんの初期症状もあわせて知りたいときは、子宮体がんの初期症状を解説した記事が参考になります。

ただし、ワクチンはすべての高リスク型HPVの感染を防げるわけではないため、子宮頸がん検診もあわせて受けることが推奨されています。

若い世代の健康と将来を守るためにも、ワクチンと検診の両方が大切です。

HPVワクチンはこうした状況を改善する鍵として期待されているのです。

参考:国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/17_cervix_uteri.html
厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html

ワクチン接種が推奨される理由

子宮頸がんワクチンが推奨される最大の理由は、その予防効果の高さにあります。

ワクチンはHPVの主要な発がん性タイプである16型や18型などへの感染を防ぎます。現在定期接種で使われている9価ワクチン(シルガード9)は、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐとされています。

さらに性交渉前の接種が最も効果的であるため、小学校6年生から高校1年生の女子を対象に定期接種が実施されています。

この時期に接種することで、将来のがんリスクを大幅に減らすことができるとされています。

世界保健機関(WHO)もHPVワクチンの接種を強く推奨しており、子宮頸がんを「予防可能ながん」と位置付けています。

実際にスコットランドやオーストラリアでは、ワクチン接種が進んだ結果、子宮頸がんの発症が劇的に減少した事例が報告されています。

日本でも同様の効果が期待される中、ワクチンの重要性が改めて注目されています。

参考:BMJグループ
https://www.bmj.com/content/365/bmj.l1161

世界的にワクチン接種が進んでいる背景

世界中で子宮頸がんワクチン接種が進む背景には、科学的根拠に基づく予防効果と、公衆衛生上の成果があります。

多くの国が公費による接種プログラムを導入しており、学校での接種などを通じて高い接種率を保っている国もあります。

これは子宮頸がんが公衆衛生上の大きな課題と認識され、ワクチンによる予防がコスト効果的かつ効果的な対策と判断されたためです。

例えば、オーストラリアでは2007年から全国的な接種プログラムが始まり、現在では子宮頸がんの撲滅が現実的な目標とされています。

このような成功例が、他の国々にも影響を与え、ワクチン接種の普及を後押ししています。

日本でもこうした流れに追随する動きが見られますが、接種率の低さが課題となっています。

参考:国立がん研究センター
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2023/0602/slide_HPVfactsheet2023.pdf

日本ではどのくらいの人が子宮頸がんワクチンを受けている?

日本における現在の子宮頸がんワクチンの接種率や推移を紹介します。

現在の日本の接種率

日本における子宮頸がんワクチンの接種率は、回復傾向にあるものの、依然として高いとはいえない水準です。

厚生労働省の審議会資料(2026年2月)によると、2025年度上半期までの累積初回接種率は、高校1年生相当(2009年度生まれ)で53.9%、中学1年生相当(2012年度生まれ)で14.4%でした。

2025年度上半期に新たに1回目を受けた割合は、小学6年生相当で4.3%、高校1年生相当で10.4%にとどまっています。

同じ審議会では、前年の同じ時期と比べて累積初回接種率が下がっていることも報告されています。

これに対し、例えば新型コロナウイルスワクチンの接種率が80%を超える日本において、HPVワクチンの普及が進まない現状が浮き彫りになっています。

新型コロナワクチンの接種率の推移や世界との比較を知りたいときは、コロナワクチン接種率の最新データを解説した記事もあわせてご覧ください。

参考:厚生労働省(第110回副反応検討部会 資料3-3)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001650653.pdf

接種率の推移(2000年代〜現在)

日本での子宮頸がんワクチン接種率は、歴史的な変遷をたどってきました。

2013年4月に定期接種として導入された当初は、接種率が70%近くまで上昇し、順調なスタートを切っていました。

しかし、同年6月に積極的勧奨が中止されると、接種率は1%未満に急落。

それ以降約8年間にわたり低迷が続きました。

2022年4月に積極的勧奨が再開され、接種機会を逃した世代を救済する制度であるキャッチアップ接種も開始されたことで、接種率は徐々に回復しつつあります。

キャッチアップ接種は2025年3月末で終わり、その期間中に1回以上接種した人が残りの接種を受けられる経過措置も、2026年3月31日で終了しました。

キャッチアップ世代の累積初回接種率は、2025年度上半期までで生まれ年度により約42~88%となっています。

10代・20代の接種率の変化

定期接種の世代では、学年が上がるほど累積初回接種率が高く、2025年度上半期時点で高校1年生相当は53.9%、中学2年生相当は31.5%、中学1年生相当は14.4%でした。

キャッチアップ接種の対象だった1997~2008年度生まれの女性では、2000~2003年度生まれの累積初回接種率が40%台と、特に低くなっています。

一方、1997~1999年度生まれは、定期接種が始まる前後の緊急促進事業などで接種した人が多く、80%台です。

若年層への啓発が進む一方、年齢が上がるにつれて接種機会を逃す人が多いのが現状です。

日本の子宮頸がんワクチン接種率が低かった理由

他の先進国に比べ、日本の子宮頸がんワクチン接種率が低い理由について紹介します。

2013年の積極的勧奨中止の影響

日本の子宮頸がんワクチン接種率が低迷した最大の要因は、2013年の積極的勧奨中止です。

この年、接種後に体の痛みや運動障害などの症状が報告され、メディアで「副反応」として大きく取り上げられました。

厚生労働省は因果関係が不明なまま、勧奨を一時停止。

この決定により、接種率はわずか数カ月で70%から1%未満に急落しました。

その後約8年間にわたり勧奨が再開されなかったため、1997~2008年度生まれの女性を中心に接種機会を逃した世代が生まれています。

この影響は現在も尾を引き、ワクチンへの不信感が根強く残っているのです。

参考:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html

副反応への懸念とメディア報道

副反応への懸念は、メディアの報道姿勢によって増幅されました。

当時、科学的な因果関係が検証されないまま、接種後の症状がセンセーショナルに報じられたことで、世論が反ワクチンに傾きました。

しかし、その後の調査でこうした症状は接種歴のない人にも同様に発生することが分かり、ワクチン特有の副反応ではないとの結論に至っています。

厚生労働省の研究班による全国疫学調査では、12~18歳女子の10万人あたり20.4人が同様の症状を呈しており、ワクチン接種との直接的な関連は否定されています。

それでも当時の報道が与えた心理的影響は大きく、接種率の低下に拍車をかけたのです。

参考:厚生労働省
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/26725

近年の接種再開の動き

状況が好転し始めたのは、2022年4月の積極的勧奨再開からです。

国内外の研究でHPVワクチンの安全性と有効性が再確認され、厚生労働省が方針を転換。

キャッチアップ接種の導入や予防効果が高いとされる9価ワクチン(シルガード9)の公費接種開始など、接種環境の整備が進んでいます。

これにより少しずつではありますが、接種率は上向きつつあります。

世界の子宮頸がんワクチン接種率と比較

日本と同じ先進国における子宮頸がんワクチン接種率を紹介します。

各国の接種率

世界の子宮頸がんワクチン接種率を見ると、日本の低さが際立ちます。

イギリスでは接種率が約80%、オーストラリアでは約90%に達しており、韓国でも約70%と高い水準を維持しています。

これらの国々では、国の公費助成プログラムが整備され、学校での集団接種などアクセスのしやすさが確保されている点が特徴です。

特にオーストラリアは、2007年から全国的な接種を開始し、現在では子宮頸がんの前がん病変がほぼゼロに近づいています。

スコットランドでも13歳までに接種した世代で子宮頸がん発症がゼロになったと報告されており、ワクチンの効果が実証されています。

参考:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202205_00001.html

日本の接種率は他国と比べてどうなのか?

日本の定期接種世代の累積初回接種率は、2025年度上半期時点でも学年によって約14~54%にとどまっています。

学校での接種などを通じて高い接種率を保っている国と比べると、差はまだ大きいといえます。

WHOは、15歳までに女子の90%がHPVワクチンの接種を完了することを目標に掲げており、日本はこの目標にも届いていません。

この差は積極的勧奨中止の影響や情報提供の不足が主な原因と考えられます。

高接種率の国ではどんな影響があったか?

高接種率の国では、子宮頸がんの減少だけでなく、集団免疫の効果も確認されています。

スコットランドの研究では、接種率の上昇により未接種者の前がん病変も大幅に減少し、高度異形成に至っては100%予防できたとされています。

これはHPVの感染者が減ることで、ウイルスが社会全体で広がりにくくなった結果です。

オーストラリアでも同様に、接種率約90%を達成したことで、子宮頸がんの罹患率が激減。

こうした成功例は、日本が目指すべきモデルとなり得ます。

子宮頸がんワクチンの効果と安全性の最新情報

子宮頸がんワクチンの有効性に関する最新情報を紹介します。

これまでの研究で証明されている有効性

子宮頸がんワクチンの有効性は、数々の研究で裏付けられています。

スウェーデンの大規模研究では、17歳までに接種した女性で子宮頸がんリスクが88%減少し、17~30歳でも53%減少したと報告されています。

また、9価ワクチン(シルガード9)は、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐとされ、2023年4月から日本でも定期接種に採用されました。2026年4月からは、定期接種で使うワクチンは9価のみになっています。

英国やデンマークでも、適切な年齢での接種がリスクを9割近く下げるデータが示されており、ワクチンが子宮頸がん予防に極めて有効であることを示唆しています。

参考:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html

副反応は本当にリスクがあるのか?

副反応への懸念は根強いものの、科学的データはそのリスクが極めて低いことを示しています。

接種部位の痛みは50%以上の人に起こるとされますが、多くは数日でおさまります。

このほか、発熱や、注射の痛み・恐怖などによる失神が報告されていますが、重い症状の報告はまれとされています。

名古屋市の調査では、接種群と非接種群で24種類の症状に有意な差がなく、ワクチン特有のリスクは確認されませんでした。

こうした結果から、副反応への過度な不安は払拭されつつあります。

参考:厚生労働省、日本対ガン協会
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/chousa/dl/160212_02.pdf

https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_checkup/hpv_vaccine

WHO・厚生労働省の見解

WHOは、HPVワクチンを「安全で効果的」と評価し、接種を強く推奨。

厚生労働省も、接種後に報告された「多様な症状」とワクチンとの因果関係は証明されていないとしており、審議会での議論を経て2022年4月から積極的勧奨を再開しました。

両機関とも予防効果が副反応リスクを大きく上回ると結論づけています。

キャッチアップ接種とは?(2026年3月で終了)

キャッチアップ接種は、積極的勧奨の差し控えで接種機会を逃した世代を救済するための制度でした。

対象は1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性で、2022年4月から2025年3月31日まで公費で接種が受けられました。

さらに、この期間中に1回以上接種した人は、2025年4月1日から2026年3月31日までの1年間、残りの接種を公費で受けられる経過措置が設けられました(2008年度生まれの女性も対象に追加)。

この経過措置も2026年3月31日で終了しており、現在はキャッチアップ接種として公費で受けることはできません。

現在、公費で接種できるのは、小学6年生から高校1年生相当の女子を対象とした定期接種のみです。

参考:厚生労働省(第60回予防接種・ワクチン分科会 参考資料1)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001388068.pdf

対象者と受け方

定期接種の対象は、小学6年生から高校1年生相当の女子です。1回目を15歳の誕生日までに受けた場合は2回、15歳以降に受けた場合は3回の接種が必要です。

2価・4価ワクチンで接種を始めた人は、残りを9価ワクチンで接種します。

事前に市区町村のウェブサイトで詳細を確認しておくとスムーズです。

費用はどのくらいかかる?

定期接種の対象者は、原則として自己負担なく接種できます。

定期接種の対象年齢を過ぎた場合や、キャッチアップ接種の期限を過ぎた場合は任意接種となり、費用は全額自己負担です。料金は医療機関によって異なるため、事前に確認しましょう。

定期接種の対象者は、公費で受けられる期間のうちに接種を検討することが大切です。

これから接種を考える方へのアドバイス

子宮頸がんワクチンを受けようか迷っているなら、まず効果とリスクを正しく理解することが大切です。

ワクチンは性交渉前に接種するのが理想ですが、性交渉後でも一定の予防効果が期待できます。

不安がある場合は、医師に相談し、個別の状況に応じたアドバイスをもらうのがおすすめです。

定期接種を公費で受けられるのは高校1年生相当の年度末(3月31日)までです。3回接種の場合は完了まで約6か月かかるため、高校1年生相当の方は早めに1回目を受けることが大切です。

接種は全国の医療機関や自治体の指定施設で可能です。

お住まいの市区町村の公式サイトで、対応医療機関一覧や予約方法を確認できます。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

まとめ

子宮頸がんは予防できるがんです。

HPVワクチンはその第一歩として、あなたや大切な人の未来を守る力を持っています。

接種率が低い日本だからこそ、一人ひとりの選択が大きな変化を生む可能性があります。

ぜひ最新情報を確認し、自分に合った判断をしてください。

年代ごとに気をつけたい婦人科系の病気を知りたいときは、婦人科系の病気になりやすい人の特徴を解説した記事も参考にしてください。

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