「健康診断で血糖値が高いと言われた」

「糖尿病と診断された。もう一生、好きなものは食べられないの?」

「毎日薬を飲み続ける生活なんて嫌だ……」

糖尿病、特に生活習慣が大きく関わる「2型糖尿病」と診断されたとき、多くの人が目の前が真っ暗になるような不安を感じます。

「一度なったら治らない不治の病」というイメージが強いからです。

しかし、結論から申し上げます。

 2型糖尿病は、医学的な意味での「完治」は難しくても、薬を使わずに健康な人と同じように過ごす「寛解(かんかい)」を目指すことは十分に可能です。

特に、肥満があり、発症してからまだ期間が短い方には、大きなチャンスが残されています。

この記事では、最新の医学的知見に基づき、2型糖尿病が「治る」とはどういうことか、薬のない生活を取り戻すために必要な条件と具体的なステップについて、分かりやすく解説します。

絶望する必要はありません。

正しい知識を持てば、糖尿病は決して怖い病気ではなく、コントロール可能なパートナーになり得ます。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

2型糖尿病でお困りの方へ

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。

※負担軽減費とは:治験協力者が負担する交通費や時間的拘束などがあるためお金が支給されます。

治験ジャパンでは参加者の皆様に医療費の負担を軽減しながら、最新治療を受ける機会のご提供が可能です。

結論:2型糖尿病は「治らない」が「寛解」は目指せる

まず、多くの患者さんが抱く「治る」という言葉の意味を、医学的に整理しましょう。

ここを誤解していると、怪しい民間療法に惑わされたり、治療のゴールを見失ったりしてしまいます。

「完治」と「寛解」の決定的な違い

医学の世界では、以下の2つを明確に区別しています。

  1. 完治(かんち)
    • 病気の原因が完全になくなり、再発の可能性がない状態。風邪が治ったり、怪我が治ったりするのはこちらです。糖尿病において「完治」とは、体質が完全に元に戻り、暴飲暴食をしても血糖値が上がらない状態を指しますが、現在の医療ではこれは困難とされています。
  2. 寛解(かんかい)
    • 病気の症状が治まっており、検査数値も正常範囲内を維持しているが、体質的なリスクは残っている状態。

糖尿病治療において目指すべきゴールは、この「寛解」です。

日本糖尿病学会等の定義によれば、「薬物療法を行っていない状態で、HbA1c(過去1〜2ヶ月の血糖平均値)が6.5%未満の状態が、少なくとも3ヶ月以上継続していること」が寛解とされています(参考:日本糖尿病学会 1)。

つまり、「糖尿病になりやすい体質」は残っていても、適切な管理によって「健康な人と全く変わらない数値」を薬なしで維持することは可能なのです。

これを実質的に「治った」と感じる患者さんは多くいらっしゃいます。

なぜ「治った」ように見える人がいるのか?

「近所の〇〇さんは、糖尿病だったけど治ったらしいよ」という話を聞いたことがあるかもしれません。

これは奇跡ではなく、体のメカニズムに基づいた現象です。

2型糖尿病の主な原因は、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の効きが悪くなる「インスリン抵抗性」と、インスリンを出す力が弱まる「インスリン分泌不全」です。

特に肥満の方の場合、内臓脂肪から出る悪玉物質がインスリンの邪魔をしています。

減量をして内臓脂肪が減ると、この邪魔者がいなくなり、インスリンが効きやすい体(インスリン感受性が高い状態)に戻ります(参考:厚生労働省 2)。

その結果、少量のインスリンでも血糖値が下がるようになり、薬が不要になる=寛解するのです。

薬なしの生活へ!「寛解」しやすい人の2つの条件

では、すべての人が寛解できるのでしょうか?

残念ながら、膵臓の機能が完全に失われている場合は難しいこともあります。

しかし、以下の条件に当てはまる方は、寛解の可能性が高いと言われています。

条件1:肥満があり、減量の余地がある人

これが最大のチャンス要因です。

国内外の研究で、「診断時に肥満があり、その後減量に成功した人」は寛解率が高いことが分かっています。

脂肪がインスリンの働きをブロックしている状態であれば、その脂肪を落とすことで根本原因が解消されるからです。

一般的には、現在の体重から7%以上の減量に成功すると、血糖コントロールの大幅な改善が見込めるとされています(参考:日本糖尿病学会 3)。

条件2:発症してから期間が短い(早期発見)

「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、糖尿病治療も同じです。

高血糖状態を放置すると、膵臓のβ細胞(インスリンを出す工場)が糖毒性によってダメージを受け、徐々に機能が低下していきます。

しかし、発症して間もない時期(診断から数年以内など)であれば、β細胞はまだ回復可能な状態で「休んでいるだけ」の可能性があります。

この時期に適切な治療を行い、膵臓を休ませてあげれば、機能が回復し、寛解に至る可能性が高まります

寛解を目指すための具体的な3つのステップ

「痩せればいい」「早く治療すればいい」と分かっていても、それが難しいのが現実です。

ここでは、無理なく寛解を目指すための現実的なアプローチを紹介します。

Step1 食事療法:ただ減らすのではなく「質」を変える

極端な絶食はリバウンドの原因になります。

寛解を目指す食事のポイントは、「血糖値を急上昇させない食べ方」です。

  1. 食べる順番(ベジファースト)
    • 野菜、海藻などを先に食べることで、糖の吸収を緩やかにする効果が期待できます。
  2. 精製された炭水化物を控える
    • 食物繊維を多く含む、未精製の穀類(玄米、全粒粉パンなど)を選ぶと、食後の血糖値上昇が抑えられやすくなります(参考:厚生労働省 4)。
  3. 適正カロリーを守る
    • 主治医と相談し、自分に合ったエネルギー摂取量を守りましょう。

Step2 運動療法:筋肉は天然の「糖代謝臓器」

運動は単にカロリーを消費するためだけに行うのではありません。

筋肉は、血液中の糖を取り込んでエネルギーに変えてくれる、巨大な「糖の処理工場」です。

有酸素運動は「中強度で週に150分以上」行うことが推奨されており、特に食後に行うと、食事で上がった血糖値を筋肉が処理してくれます(参考:日本糖尿病学会 3)。

筋肉量が増えれば、安静にしていても血糖値が下がりやすい体質になれます

Step3 薬物療法:薬は「一生」ではなく「膵臓を休ませる期間」

ここが最も重要な誤解ポイントです。

「薬を飲み始めたら、一生やめられない」と思い込み、受診を先延ばしにする人がいます。

しかし、これは逆です。

早期に薬を使って血糖値を下げ、疲弊した膵臓を休ませてあげること(糖毒性の解除)こそが、将来的に薬をやめるための近道なのです(参考:日本糖尿病学会 3)。

最初は薬やインスリン注射が必要でも、膵臓の機能が回復し、食事・運動療法で体重が落ちてくれば、徐々に薬を減らし、最終的にゼロにすることは十分に可能です。

薬は「一生の鎖」ではなく、「寛解への架け橋」と考えてください。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では2型糖尿病でお悩みの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

【2025年版】糖尿病治療の最前線と「完治」への期待

医学は日進月歩で進化しています。

以前は「治らない」と言われていた常識も変わりつつあります。

進化する薬物療法(GLP-1受容体作動薬など)

近年、糖尿病治療薬の進歩は目覚ましいものがあります。

特に注目されているのが「GLP-1受容体作動薬」「GIP/GLP-1受容体作動薬」といったタイプの薬です。

これらはインスリン分泌を調整するだけでなく、食欲を抑制し、体重減少をサポートする作用を持つものがあります。

「自分の意志だけでは痩せられない」という患者さんでも、こうした薬が治療の選択肢となることで、血糖管理の改善が期待されています(参考:日本糖尿病学会 3)。

再生医療とiPS細胞の可能性

さらに未来の話をすれば、iPS細胞を使ってインスリンを出す細胞を作り出し、移植するという再生医療の研究も進んでいます。

現在は主に1型糖尿病に対する治験などが進められている段階ですが、将来的に実用化されれば、膵臓の機能が失われた人でもインスリン分泌能を取り戻せる日が来るかもしれません(参考:京都大学 5)。

よくある質問(FAQ)

検索ユーザーの皆様からよく寄せられる疑問にお答えします。

Q: 2型糖尿病になったら寿命は縮まりますか?

A: 適切な管理により、健康な人と変わらない生活を送ることは可能です。かつては「糖尿病だと寿命が10年縮む」などと言われ、実際に日本人の糖尿病患者の平均寿命は一般より短いというデータもありました。しかし、最新の調査ではその差は年々縮小しています(参考:日本糖尿病学会 6)。早期に発見し、良好な血糖コントロールを維持することで、寿命への影響を最小限に抑えることができます。

Q: 2型糖尿病は障害者認定されますか?

A: 糖尿病という診断だけでは認定されません。ただし、治療せずに放置し、合併症が進行して「人工透析が必要になった(腎機能障害)」「失明した(視覚障害)」「足を切断した(肢体不自由)」といった状態になった場合は、身体障害者手帳の対象となります(参考:厚生労働省 7)。そうならないための早期治療であり、寛解を目指す努力なのです。

Q: インスリン注射を始めたら一生やめられませんか?

A: いいえ、やめられる可能性はあります。インスリン注射は「最後の手段」ではなく、早期に膵臓を休ませるための「積極的な治療」として使われることが増えています。糖毒性が取れて膵臓の機能が回復すれば、飲み薬に戻したり、食事・運動療法のみに移行(離脱)できたりするケースは多々あります。

まとめ:諦める必要はない。今日からの行動が「寛解」への第一歩

2型糖尿病と診断されたことは、確かにショックな出来事です。

しかし、それは「今の生活習慣を続ければ危険ですよ」という体からのサインでもあります。

医学的に「完治」という言葉は使わなくても、薬を飲まず、注射も打たず、好きな趣味を楽しみながら健康に暮らす「寛解」という状態は、決して夢物語ではありません

特に、早期発見できたあなたには、その切符が手渡されています。

  • まずは主治医に「将来的に薬をやめたい(寛解したい)」という意思を伝えること。
  • そして、体重管理と生活習慣の見直しを、今日から少しずつ始めること。

この一歩が、あなたの未来を大きく変えます。諦めずに、一緒に治療に取り組んでいきましょう。