脳卒中は命に関わる病気ですが、一命を取り留めた後も「後遺症」との向き合いが始まります。
身体の麻痺や言語障害、目に見えない高次脳機能障害や感情の変化など、その症状は多岐にわたり、患者さんご本人だけでなく、ご家族の生活にも大きな影響を及ぼします。
この記事では、脳卒中後遺症の種類や具体的な症状、効果的なリハビリテーション、そして回復に向けた治療法や日常生活で役立つ工夫、利用できる支援制度までを網羅的に解説します。
脳卒中後遺症と向き合い、より良い生活を送るためのヒントを見つけていきましょう。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
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脳卒中後遺症とは?その多様な症状を理解する
脳卒中後遺症が残るメカニズム
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)を発症すると、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳細胞に酸素や栄養が届かなくなります。
その結果、一部の脳細胞が壊死してしまい、その脳細胞が担っていた機能が失われることで後遺症が現れます。
脳は部位によって運動、感覚、言語、記憶などの役割が分担されているため、どの部位がどの程度ダメージを受けたかによって、現れる症状や重症度は一人ひとり異なります。
身体的・精神的・高次脳機能障害の全体像
脳卒中後遺症は、大きく分けて身体的な障害、精神的な障害、そして高次脳機能障害の3つに分類されます。
これらは単独で現れることもあれば、複雑に絡み合って現れることもあります。
「目に見えない後遺症」が生活に与える影響
麻痺のように外見からわかりやすい症状がある一方で、高次脳機能障害や精神的な症状は「目に見えない後遺症」と呼ばれます。
例えば、記憶が抜け落ちてしまう、集中力が続かない、感情のコントロールが効かないといった症状です。
これらは周囲の人から気づかれにくく、「怠けている」「性格が変わった」と誤解されることがあるため、患者さんご本人が深い孤独感やストレスを抱える原因になりやすいという特徴があります。
脳卒中後遺症の主な種類と具体的な症状
運動麻痺と感覚障害(しびれ、痛み、痙縮)
最も代表的な後遺症が、体の片側が動かしにくくなる「片麻痺」です。
右脳がダメージを受けると左半身に、左脳がダメージを受けると右半身に麻痺が現れます。
また、触覚や温度を感じにくくなる感覚障害や、逆に触れられただけで強い痛みやしびれを感じる感覚過敏が起こることもあります。
痙縮(けいしゅく)とは?症状と対処法
運動麻痺が回復していく過程で、「痙縮」と呼ばれる症状が現れることがあります。
これは筋肉が過度に緊張し、手足がこわばって突っ張ってしまう状態です。
指が握りこんだまま開かない、肘が曲がったまま伸びないといった症状が見られ、着替えや入浴などの日常生活動作を困難にします。
リハビリテーションによるストレッチや、筋肉の緊張を和らげる内服薬、ボツリヌス療法などの治療が行われます(参考:日本脳卒中学会 1)。
言語障害(失語症、構音障害)
言葉に関する障害には、主に「失語症」と「構音障害」の2種類があります。
高次脳機能障害(記憶、注意、遂行機能、半側空間無視など)
高次脳機能障害には様々な症状が含まれます。新しいことを覚えられない「記憶障害」、一つのことに集中し続けられない「注意障害」、物事の計画を立てて順序よく実行できない「遂行機能障害」などがあります。
また、視力には問題がないのに、空間の片側(多くは左側)にあるものを見落としてしまう「半側空間無視」も特徴的な症状の一つです。食事の際に左側のおかずだけを残してしまうなどの行動が見られます。
感情障害・精神症状(意欲低下、うつ、情動失禁)
脳の損傷や、病気による心理的なショックから、感情や精神面にも変化が現れます。
何事にもやる気が起きない「意欲低下」や、気分が落ち込む「脳卒中後うつ」は、リハビリテーションの進行を妨げる要因にもなります。
また、些細なことで突然泣き出したり怒り出したりと、感情のコントロールができなくなる「情動失禁」が見られることもあり、ご家族の負担感を高める原因になることがあります。
嚥下障害と排泄障害
食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる「嚥下障害」は、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
食事の形態を工夫したり、飲み込むための筋肉を鍛えるリハビリを行います。
また、尿意を感じにくい、トイレまで間に合わないといった「排泄障害」も、患者さんの尊厳に関わるデリケートかつ深刻な問題です。
視野障害と複視
眼球そのものに異常がなくても、脳の視覚情報を処理する経路がダメージを受けることで、視野の半分が欠けて見えなくなる「半盲」などの視野障害が起こることがあります。
また、眼球を動かす筋肉の麻痺により、物が二重に見える「複視」が生じることもあり、歩行時の転倒リスクを高めます。
脳の損傷部位によって異なる後遺症の特徴
左脳は論理的思考や言語を司るため、左脳が損傷すると右半身の麻痺に加えて失語症が現れやすくなります。
一方、右脳は空間認識や直感的な処理を担うため、右脳の損傷では左半身の麻痺とともに、半側空間無視や病態失認(自分の病気や麻痺を認識できない状態)が起こりやすくなります。
小脳や脳幹の損傷では、めまいやふらつき、重度の嚥下障害などが特徴的です。
回復への道筋:脳卒中後遺症のリハビリテーションと治療
発症からの時期別リハビリテーションの重要性
- 急性期
リハビリテーションは、発症からの時期によって「急性期」「回復期」「生活期(維持期)」の3つの段階に分けられます。急性期は発症直後からベッドサイドで始まり、廃用症候群(寝たきりによる身体機能の低下)を防ぎます。
- 回復期
その後、身体機能の回復が最も期待できる時期に集中的なリハビリを行うのが回復期です。
- 生活期(維持期)
退院後は、獲得した機能を維持し、実際の生活に適用していく生活期へと移行します(参考:厚生労働省 2)(参考:国立循環器病研究センター 3)。
回復期リハビリテーションの役割と内容
発症から1〜2ヶ月後の状態が安定した時期に、回復期リハビリテーション病棟などで集中的な訓練を行います。
理学療法士による歩行訓練などの基本動作訓練、作業療法士による食事や着替えなどの応用動作訓練、言語聴覚士による発声や飲み込みの訓練が、毎日数時間にわたって実施されます。
この時期の取り組みが、その後の生活の質を大きく左右します。
各後遺症に対する具体的なリハビリ方法
薬物療法や外科的治療の選択肢
リハビリテーションと並行して、症状を和らげるための治療も行われます。
痙縮に対しては、筋肉を緩める内服薬や、緊張している筋肉に直接注射をするボツリヌス療法、あるいは神経の束の一部を切断する外科的治療が選択されることがあります。
また、再発予防のための抗血小板薬や抗凝固薬の内服は、生涯にわたって継続することが基本となります(参考:日本脳卒中学会 1)。
最新の治療法と研究動向
近年、脳卒中後遺症の治療分野は大きな進歩を遂げています。
磁気や微弱な電流で脳の特定の部位を刺激し、脳の可塑性(変化する能力)を促すニューロモデュレーション治療や、ロボットスーツを用いた歩行訓練、VR(バーチャルリアリティ)を活用したリハビリテーションなどが臨床現場に導入され始めており、従来は回復が難しいとされていた慢性期の患者さんにも新たな希望をもたらしています(参考:日本脳卒中学会 1)。
脳卒中後遺症との向き合い方:日常生活での工夫と支援
自宅でのセルフケアと家族のサポート
退院後の自宅生活では、リハビリで獲得した動作を日常生活の中で実践し続けることが重要です。
手すりの設置や段差の解消など、住環境を整えることで転倒を防ぎ、自立した生活を支援します。
ご家族は、過剰な介助を避けて本人ができることを見守りつつ、精神的な支えとなることが求められます。
介護疲れを防ぐためにも、ご家族自身が休息をとる時間を確保することが不可欠です。
社会復帰と就労支援の活用
後遺症があっても、多くの方が仕事や趣味などの社会活動に復帰しています。
職場復帰を目指す場合は、主治医や産業医、ハローワークの専門窓口、地域障害者職業センターなどの支援機関と連携し、短時間勤務や配置転換などの環境調整を行うことが大切です。
就労移行支援事業所を利用して、職業訓練や就職活動のサポートを受けることも有効な選択肢です(参考:厚生労働省 2)。
精神的なケアとカウンセリングの重要性
身体的なリハビリだけでなく、心のケアも非常に重要です。
後遺症を抱えながら生きていくことに対する喪失感や不安は、簡単に解消できるものではありません。
臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングを受けたり、同じ境遇の患者さんやご家族が集まる患者会(家族会)に参加して経験を共有したりすることが、精神的な安定と前向きな気持ちを取り戻す助けになります。
脳卒中後遺症と障害者手帳:申請のメリットと手続き
後遺症により日常生活に支障がある場合、身体障害者手帳や精神保健福祉手帳(高次脳機能障害の場合)の取得対象となる可能性があります。
手帳を取得することで、医療費の助成、税金の控除、公共交通機関の運賃割引、障害福祉サービスの利用など、様々な経済的・制度的メリットを受けることができます。
申請には指定医の診断書が必要となるため、まずは主治医や医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう(参考:国立循環器病研究センター 4)。
公的支援制度とサービスの種類
障害者手帳による支援の他にも、年齢や状態に応じて介護保険制度が利用できます。
各市町村の窓口や地域包括支援センターが相談窓口となります。
治験を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では脳卒中後遺症でお困りの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられることがある
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
脳卒中後遺症に関するよくある疑問
一度壊死してしまった脳細胞そのものを完全に元通りにすることは、現在の医療では困難です。
しかし、脳には「可塑性」という性質があり、生き残った脳細胞が新たなネットワークを構築することで、失われた機能の一部を補うことができます。
リハビリテーションはこの脳の可塑性を引き出すために行われます。
発症から半年程度が最も回復しやすい時期とされていますが、それ以降も適切な訓練を続けることで、動作のコツを掴み、生活の質を向上させることは十分に可能です。
急性期脳卒中治療の発展により死亡率は改善してきていますが、脳卒中を発症した方の多くに何らかの後遺症が残るか、あるいは命を落とされるという厳しい現実があります。
ただし、後遺症の程度は極めて軽く日常生活にほとんど支障がないレベルから、常に介護が必要なレベルまで様々です。
早期に適切な治療とリハビリを開始することが、重篤な後遺症を防ぐ最大の鍵となります(参考:国立循環器病研究センター 5)。
脳卒中後に「怒りっぽくなった」「無気力になった」「涙もろくなった」など、性格が変わったように見えることは珍しくありません。
これは、高次脳機能障害による感情のコントロールの低下や、前頭葉の損傷による意欲の低下、あるいは後遺症を抱えたことによる精神的なストレスやうつ状態が原因で起こります。
ご本人の意思でわざとやっているわけではないため、周囲の理解と専門的なアプローチが必要です。
リハビリテーションに明確な「終わり」はありません。
病院での集中的な回復期リハビリテーションが終了した後も、獲得した身体機能や認知機能を維持し、低下を防ぐために、生活期(維持期)のリハビリを継続することが重要です。
デイケアでの訓練や、自宅での自主トレーニング、日々の家事や散歩などの活動そのものも立派なリハビリとなります。
生涯にわたって、無理のない範囲で体を動かし続けることが推奨されます。
脳の感覚を伝える経路が損傷することで起こる「視床痛」などのしびれや痛みは、一般的な鎮痛薬が効きにくく、難治性となるケースがあります。
しかし、抗てんかん薬や抗うつ薬など、神経の過敏性を抑える薬が効果を示すことがあります。
また、温熱療法やマッサージ、適切な装具の使用によって痛みが和らぐこともあります。
痛みを我慢せず、主治医やリハビリスタッフに症状を正確に伝え、根気よく治療法を探っていくことが大切です(参考:日本脳卒中学会 1)。
まとめ
脳卒中後遺症は、一人ひとりの症状や程度が異なり、長期的なケアと向き合いが必要となるものです。
しかし、適切なリハビリテーションや治療、そして社会的なサポートを活用することで、多くの患者さんが生活の質の向上を目指すことができます。
決して一人で抱え込まず、医療機関や地域の相談窓口、患者会などのネットワークを頼りにしてください。
この記事で得た知識を基に、ご自身や大切な方が前向きに後遺症と向き合い、希望を持って生活していくための一助となれば幸いです。
利用できる支援制度を積極的に活用し、ご自身らしいペースで回復への道を歩んでいきましょう。
