「最近、人の名前がパッと出てこない」 「買い物に行ったのに、肝心の物を買い忘れてしまった」 「仕事でケアレスミスが増えて、自分でも怖くなる」

このような「激しい物忘れ」を感じて、「もしかして若年性認知症では?」「脳に何か病気があるのでは?」と不安になっているかもしれません。

物忘れには、誰にでも訪れる「加齢による自然な変化」もあれば、早期発見が重要な「認知症などの病気」、そして現代人に多い「脳疲労やストレスによる一時的な不調」など、さまざまな原因があります。

特に最近では、10代から50代の現役世代でも、デジタルデバイスの使いすぎや過度なストレスが原因で、認知症に似た物忘れ症状に悩む人が増えています。

この記事では、あなたの物忘れが「心配ないもの」なのか、それとも「医療機関を受診すべきサイン」なのかを見分けるポイントを解説します。

年代別の原因や、今日からできる対策も紹介しますので、ぜひ不安解消の参考にしてください。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

もの忘れでお困りの方へ

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あなたの物忘れはどっち?「加齢」と「認知症・病気」の違い

物忘れが激しいと感じたとき、まず重要なのは、それが「生理的な老化現象(良性)」なのか、「病的な症状(悪性)」なのかを見極めることです(参考:国立長寿医療研究センター 1)。

誰にでも起こる「加齢による物忘れ」の特徴

年齢を重ねれば、誰でも記憶力は徐々に低下します。これは脳の老化現象であり、病気ではありません。

  • 体験の「一部」を忘れる: 朝食のメニューは忘れても、「朝食を食べたこと」自体は覚えている。
  • ヒントがあれば思い出せる: 「ほら、あの俳優さん…」と言われて名前が出なくても、顔を見れば「そうそう!」と思い出せる。
  • 自覚がある: 「最近物忘れが増えたなぁ」と自分で認識できている。
  • 進行が緩やか: 急激に悪化することはなく、日常生活に大きな支障はきたさない。

注意が必要な「認知症・病気による物忘れ」の特徴

一方で、治療やケアが必要な物忘れには以下のような特徴があります。

  • 体験の「全体」を忘れる: 「朝食を食べたこと」自体をすっぽり忘れてしまい、食事を催促することがある。
  • ヒントがあっても思い出せない: 記憶そのものが抜け落ちているため、指摘されてもピンとこない。
  • 自覚が薄い: 本人は忘れている自覚がなく、周囲の指摘に対して「そんなことは言っていない」「誰かが財布を盗んだ(物盗られ妄想)」などと取り繕うことがある。
  • 時間や場所がわからなくなる: 今日が何月何日かわからない、慣れている道で迷う。
  • 日常生活に支障が出る: 金銭管理ができなくなる、家電の使い方がわからなくなる。

【セルフチェック】危険な物忘れサインリスト

以下の項目に多く当てはまる場合は、単なる加齢ではなく、何らかの対策や受診が必要な状態かもしれません(参考:国立長寿医療研究センター 1)。

  • [ ] 同じことを何度も聞いたり、話したりする
  • [ ] 置き忘れやしまい忘れが増え、いつも探し物をしている
  • [ ] 約束の日時や場所を間違えることが増えた
  • [ ] 以前は好きだった趣味やテレビ番組に興味がなくなった
  • [ ] 料理の味付けが変わった、段取りが悪くなった
  • [ ] 些細なことで怒りっぽくなった、または無気力になった
  • [ ] 財布や通帳など、大事なものを頻繁になくす

認知症だけじゃない!「物忘れが激しい」5つの主要な原因

「物忘れ=認知症」と思われがちですが、実は原因はそれだけではありません。

特に現役世代の場合、生活習慣やメンタルヘルスが大きく関わっていることがあります。

1. アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症

最も広く知られている原因です。

アルツハイマー型認知症は脳内に特定のアミロイドβなどのタンパク質が溜まり脳が萎縮することで起こり、血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの後に発症します。

65歳以上の高齢者に多いですが、それより若い世代(18歳〜64歳)で発症する「若年性認知症」もあります(参考:厚生労働省 4)。

2. 脳疲労・ストレス・睡眠不足(いわゆるスマホ認知症)

現代人に非常に多いのがこのタイプです。

医学的な正式病名ではありませんが、一般に「スマホ認知症」と呼ばれることがあります。

仕事のマルチタスク、人間関係のストレス、長時間のスマートフォン利用などにより、脳が情報過多(オーバーフロー)を起こすと、新しい情報を記憶として定着させる働きが低下します。

脳が疲れ切って一時的に機能不全を起こしている状態と考えられます。

3. うつ病・適応障害などの精神疾患

うつ病などで気力が低下すると、集中力や判断力が著しく鈍ります。

その結果、話が入ってこない、覚えられないといった状態になり、一見すると認知症のように見えることがあります。

これを専門的には「うつ病性仮性認知症」と呼ぶこともあります(参考:日本神経学会 2)。

この場合、認知症の治療ではなく、メンタルヘルスの治療により回復が見込めます。

4. 大人のADHD(注意欠如・多動症)

「昔から忘れ物が多い」「話を聞いていないと言われる」という場合、発達障害の一つであるADHDの特性が関係している可能性があります。

これは記憶力そのものの障害というよりは、「不注意」によって意識が他のことに向いてしまい、情報が記憶として入力されていないケースが多いです(参考:国立精神・神経医療研究センター 6)。

大人になって仕事の責任が増えたことで、ミスが目立ち始め発覚することがあります。

5. 薬の副作用・飲酒・甲状腺機能低下症など

睡眠薬や抗不安薬、抗アレルギー薬などの副作用で一時的に記憶力が低下することがあります。

また、多量の飲酒による影響や、甲状腺ホルモンの低下によっても物忘れが生じます。

これらは原因を取り除けば改善が見込める「治る物忘れ(治療可能な認知症)」の可能性があります。

【年代別】物忘れが激しいときに疑うべき原因と対策

10代・20代・30代(若年層)

この年代でアルツハイマー型などの認知症が発症することは極めて稀です。

最も疑うべきは「脳過労(スマホや情報の使いすぎ)」「睡眠不足」「メンタル不調」「ADHDの特性」などです。

  • 対策: 寝る前1時間はスマホを見ない、十分な睡眠をとる、タスク管理ツールを使う。心当たりがあれば心療内科への相談も検討しましょう。

40代・50代(中年層)

働き盛りで責任も重く、親の介護や子供の教育などでストレスがピークに達しやすい時期です。

また、女性は更年期障害による女性ホルモンの低下が、一時的に記憶力や集中力に影響を与えることがあります(参考:日本女性医学学会 5)。

稀ですが、若年性認知症の初期症状である可能性もゼロではありません。

  • 対策: ストレスを溜め込まない、有酸素運動を取り入れる。更年期症状が辛い場合は婦人科へ。明らかな進行が見られる場合は脳神経内科などで検査を受けましょう。

60代以降(高齢層)

加齢による自然な低下に加え、MCI(軽度認知障害)や認知症のリスクが高まります。

MCIは認知症と正常の中間の段階ですが、運動や生活習慣の改善など適切な対策を行えば、認知機能の維持や改善が期待できることもあります(参考:大阪大学 3)。

  • 対策: 社会とのつながりを持つ、会話を楽しむ、バランスの良い食事。少しでも違和感があれば、早めに専門医を受診することが、健康寿命を延ばす鍵となります。

物忘れを防ぐ・改善するために今すぐできること

「最近物忘れがひどいかも」と思ったら、まずは脳をいたわる生活習慣を意識してみましょう。

脳を休ませる生活習慣(睡眠・デジタルデトックス)

脳の記憶は睡眠中に整理・定着されます。6〜7時間程度の質の高い睡眠を確保しましょう。

また、常にスマホを見て情報を入れ続けるのではなく、脳を意識的に休ませる時間を作ることが大切です。

脳を活性化させる習慣(運動・デュアルタスク)

ウォーキングなどの有酸素運動は、脳の血流を良くし、認知機能の維持に有効であることが示唆されています。

また、「歩きながらしりとりをする」「計算しながら洗濯物をたたむ」といった、2つのことを同時に行う「デュアルタスク(二重課題)」も脳のトレーニングとして推奨されています(参考:国立長寿医療研究センター 1)。

メモやツールの活用(外部脳を使う)

すべてを覚えようとして脳に負荷をかけすぎないことも大切です。

「覚えること」にエネルギーを使うのではなく、スマホのリマインダーやメモ帳などの「外部脳」に記憶を預けましょう。

「書いたから忘れても大丈夫」という安心感が、脳のストレスを減らし、日々の生活をスムーズにします。

心配なときは何科を受診すべき?

生活習慣を見直しても改善しない、あるいは日常生活に支障が出ている場合は、医師の診断を受けましょう。

症状や年齢によって受診すべき科が異なります(参考:東京都健康長寿医療センター 3)。

  • 「脳神経外科」「脳神経内科」「物忘れ外来」
    • 言葉が出にくい、道に迷う、計算ができなくなったなど、脳の機能低下が疑われる場合。
    • 高齢の方や、若年性認知症が心配な方。

  • 「精神科」「心療内科」
    • 気分の落ち込み、不安、不眠、食欲不振などがある場合。
    • 仕事のストレスが強い、ADHDの特性が気になる場合。

  • 「婦人科」
    • 40代〜50代の女性で、ほてりやイライラなど、更年期の症状とともに物忘れが気になる場合。
治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本ではもの忘れでお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

まとめ

「物忘れが激しい」と感じても、すぐに「認知症だ」と悲観する必要はありません。

特に現役世代の多くは、脳の疲れやストレス、生活習慣の乱れが原因であるケースが多々あります。

まずは、しっかりと睡眠をとり、スマホから離れる時間を作って脳を休ませてあげましょう。

それでも改善しない場合や、周囲から指摘されるような変化がある場合は、一人で抱え込まずに専門の医療機関に相談してください。

早期に原因を知ることで、適切な対策が打て、不安のない生活を取り戻すことができます。


参考資料・文献一覧

  1. 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「もの忘れと認知症の違いはどのようなものでしょうか?」 https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/40.html
  2. 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」 https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html
  3. 大阪大学 老年・総合内科学「診療内容のご紹介:認知症とは」 https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/geriat/www/jmedk.html
  4. 厚生労働省「若年性認知症支援ガイドブック」 https://www.mhlw.go.jp/content/guidebook_2020.pdf
  5. 一般社団法人 日本女性医学学会「よくある女性の病気:物忘れ(更年期障害)」 https://www.jmwh.jp/n-yokuaru11-mono.html
  6. 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター「NCNP病院:成人ADHD」https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease07.html