「酒さ(しゅさ)は一生治らないのではないか」と不安になっている方も少なくないでしょう。
赤ら顔やブツブツなどの炎症が続く慢性の皮膚疾患である酒さは、完治が難しい場合もありますが、適切な治療と生活習慣の工夫で症状が軽い状態を維持することは可能です。
この記事では皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、酒さの原因や治療法、日常生活での対策を詳しく解説します。
酒さの症状に悩む方々が前向きにケアを進められるよう、正確な情報をお届けします。
酒さは一生治らない?その真実とは
酒さは治らない病気なのか、症状が長引く理由、再発する理由を解説します。
「完治」と「寛解」の違い
酒さは完治が難しい疾患とされていますが、適切な治療で症状が軽減した状態を維持し、寛解(かんかい)状態を目指すことができます。
寛解とは症状が落ち着き、日常生活にほとんど影響がない状態を指す言葉です。
一方完治は疾患が完全に消失し、再発の可能性がない状態を意味します。
酒さは慢性の炎症性疾患であり、根本的な原因が完全に取り除けない場合が多いため、完治は難しいとされています。
しかし、酒さの症状が軽減した寛解状態を長期間維持することは十分可能です。
酒さは一生治らないと諦めるのではなく、生活に支障のない程度の状態の維持を目指して治療を続けることが重要です。
酒さの症状はなぜ長引くのか?
酒さの症状が長引く主な理由は、慢性的な炎症と血管の過剰な反応にあります。
酒さは顔の毛細血管が拡張しやすく、炎症が繰り返されることで赤みやブツブツが持続しやすいとされています。
酒さのこの症状は遺伝的要因や免疫異常、皮膚のバリア機能低下など様々な要因が関与していると考えられています。
また、適切な治療を受けずに放置すると、炎症が悪化し症状が慢性化するリスクが高まる可能性もあります。
特に治療を中断した場合には症状が悪化する可能性もあるため注意が必要です。
酒さの症状を長引かせないためには、皮膚科医による早期の診断と継続的な治療が欠かせません。
再発を繰り返す理由とは
酒さは再発を繰り返すこともあり、その背景には外的・内的要因の複合的な影響があります。
例えば紫外線やストレス、アルコールなどの刺激が血管拡張や炎症を引き起こし、再発の要因となることがあるとされています。
また、治療を途中でやめたり、スキンケアが不適切だったりすると、酒さの症状がぶり返すリスクが高まります。
酒さの再発を防ぐためには、引き金となる要因を避け、継続的なケアを心がけることが大切です。
酒さの主な原因と発症メカニズム
酒さが発症する主なメカニズムを解説します。
血管の異常と皮膚の炎症反応
酒さの原因は特定されていないものの、発症には血管の異常と皮膚の炎症反応が深く関わっているとされています。
顔の毛細血管が過剰に拡張し、炎症を引き起こす物質が放出されることで、赤みやブツブツが現れると考えられています。
この反応は免疫系の異常やニキビダニ(毛穴に常在するダニ)の増殖が関与している可能性があると指摘されています。
このような血管と炎症の異常を抑えることが、酒さ治療の鍵となります。
紫外線・ストレス・気温差など外的要因
酒さの症状を悪化させる外的要因には、紫外線、ストレス、気温差、アルコールなどが挙げられます。
これらの要因は、血管を拡張させたり皮膚のバリア機能を低下させたりすることで、酒さの症状を悪化させることがあります。
特に紫外線は皮膚の炎症を増幅させ、赤みを強めることがあります(参考:環境省「紫外線による健康被害」)1。
外的要因を避ける工夫が、酒さの症状管理に欠かせません。
酒さ様皮膚炎との違いも確認しよう
酒さ様皮膚炎は酒さと似た症状ですが、異なる疾患です。
酒さ様皮膚炎は、主にステロイド外用薬の長期使用が原因で起こる赤みや炎症です。
一方、酒さは慢性の炎症性疾患であり、ステロイドが原因ではありません。
両者は見た目が似ているため、皮膚科専門医による診断が重要です。
酒さ様皮膚炎はステロイド外用剤の使用中止で改善する可能性がありますが、酒さは異なる治療が必要です。
そのため、皮膚科専門医による正確な診断を受け、適切な治療を選ぶことが大切です。
酒さの症状をコントロールする治療法
酒さの症状をコントロールするための治療法を解説します。
内服薬(抗生剤)による治療
内服薬は、酒さの炎症やブツブツを抑える有効な手段とされています。
抗生剤(例:ドキシサイクリン)は、炎症を抑える効果があり、特にニキビに似た赤いぶつぶつや、膿を持ったぶつぶつができる丘疹膿疱型(きゅうしんのうほうがた)酒さに有効です。
ただし、内服薬は医師の指導のもとで使用しましょう。
外用薬やスキンケアの工夫
外用薬と適切なスキンケアは、酒さの症状を軽減する鍵となります。
メトロニダゾールやアゼライン酸などの外用薬は炎症を抑え、ブツブツした症状の軽減に期待が持てます。
また、低刺激性の洗顔料や保湿剤を使用することで、皮膚のバリア機能を強化できる可能性があります。
内服薬同様、外用薬も皮膚科専門医の指導のもとで使用するようにしましょう。
レーザー治療(Vビームなど)の効果と注意点
レーザー治療は、酒さの赤みや毛細血管拡張を改善する有効な方法です。
Vビームなどのレーザー治療は、血管をターゲットに照射し、赤み軽減に期待ができます。
ただし、一旦黒く色素沈着が生じることがあり、また施術後の皮膚は敏感になるため、紫外線対策や保湿が重要です。
レーザー治療は効果的ですが、皮膚科専門医と相談し、適切なアフターケアを行うことが必要です。
保険適用の可否や費用目安
酒さの治療には、保険適用と自費診療の両方があります。
抗生剤や一部の外用薬は保険適用されることもあり、1ヶ月あたり数千円程度で治療可能です。
一方、レーザー治療などの一部治療は自費診療となり、1回あたり2~5万円程度が目安です。
特にイソトレチノインは副作用があるため、医師の管理が必須である点は覚えておきましょう。
酒さとの向き合い方|日常生活でできる工夫
酒さに対して日常的にできるケア方法を紹介します。
食事・睡眠・ストレス管理の重要性
食事、睡眠、ストレス管理は、酒さの症状を抑えるために効果的とされています。
刺激物の多い食事(例:香辛料、アルコール)は血管拡張を引き起こすため避けるべきです。
また、十分な睡眠とストレス管理は、免疫系の安定に役立ち、症状改善につながります。
生活習慣を見直すことで、酒さの症状をコントロールしやすくなります。
酒さと相性の良いスキンケアの選び方
酒さに適したスキンケアは、低刺激で保湿力が高いものが理想とされています。
セラミドやヒアルロン酸配合の保湿剤、刺激の少ない洗顔料を選ぶことで、皮膚のバリア機能を強化できる可能性があります。
紫外線・気温差への対策ポイント
紫外線や気温差への対策は、酒さの悪化を防ぐ重要な要素の一つです。
SPF50以上の日焼け止めや帽子で紫外線をブロックし、寒暖差の大きい環境ではマスクやスカーフで肌を保護します。
日常的な対策を続けることで、酒さの症状を軽減することも可能です。
酒さは一生付き合う病気?皮膚科医 川島医師のコメント
酒さのブツブツを改善する治療薬は保険適応のものもあります。
しかし、赤みを軽くする治療薬は、海外では血管収縮剤の外用剤がありますが、まだ日本には十分なものがありません。
その登場が待たれますが、現時点ではブツブツを改善し、残った赤みが少しでも改善するように炎症を収める生活習慣を継続することが大切です。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では酒さ(しゅさ)でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
まとめ|酒さと上手に向き合うために
酒さの管理には、早期の診断と治療が不可欠です。
皮膚科専門医による正確な診断を受け、適切な治療を始めることで症状の悪化を防ぎ、寛解状態を目指せます。
酒さは一生治らないと諦めず、継続的なケアで症状をコントロールすることが大切です。
参考資料・サイト一覧
1.環境省「紫外線による健康被害」 https://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/02.pdf

記事監修者情報
川島 眞(かわしま まこと)
皮膚科専門医・医学博士
東京女子医科大学 名誉教授
Dクリニックグループ代表
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
日本皮膚科学会
日本美容皮膚科学会
日本皮膚アレルギー学会
日本香粧品学会
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