「健康診断で『肥満』と判定されてしまった」
「最近、お腹周りの脂肪がどうしても落ちない」
「自分はただ太っているだけ? それとも病気なの?」
このような不安を感じて検索された方も多いのではないでしょうか。
実は、医学的には単に体重が重いだけの「肥満」と、治療が必要な病気である「肥満症」は明確に区別されています(参考:日本肥満学会 1)。
もしあなたが「肥満症」に該当する場合、放置することで糖尿病や高血圧などの重大な病気を引き起こすリスクが高まります。
しかし、逆に言えば、適切な治療を受ければ健康を取り戻せる状態でもあります。
この記事では、あなたが医学的に治療が必要な状態かどうかを判断するための「肥満症セルフチェック」について、専門的なガイドラインに基づき分かりやすく解説します。
まずは現状を正しく把握することから始めましょう。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
肥満症でお困りの方へ

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。
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まずは30秒で確認!肥満度チェック(BMI計算と判定基準)
肥満かどうかを判断する世界共通の指標が「BMI(Body Mass Index:体格指数)」です。
まずはご自身の身長と体重を使って、今の数値を計算してみましょう。
BMI(体格指数)の計算方法
BMIは以下の計算式で求められます。
電卓をご用意ください。
例)体重70kg、身長170cm(1.7m)の場合
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
日本肥満学会の基準では、このBMIが「25以上」の場合を「肥満」と定義しています(参考:厚生労働省 2)。
あなたの肥満度はどのくらい?(判定表)
計算した数値がどこに当てはまるか、以下の表で確認してください。
| BMI値 | 判定 | 状態 |
| 18.5未満 | 低体重(やせ) | 痩せすぎ。栄養不足の可能性。 |
| 18.5〜25未満 | 普通体重 | 最も病気になりにくい標準的な状態。 |
| 25〜30未満 | 肥満(1度) | 軽度の肥満。生活習慣の見直しが必要。 |
| 30〜35未満 | 肥満(2度) | 中等度の肥満。健康リスクが高まる。 |
| 35〜40未満 | 肥満(3度) | 高度の肥満。医学的管理が望ましい。 |
| 40以上 | 肥満(4度) | 重度の肥満。治療が急務。 |
BMI25以上=肥満症ではない?
ここで重要なポイントがあります。
「BMIが25を超えているから、私は肥満症なんだ」と即断するのは早計です。
医学的には以下の違いがあります。
- 肥満
- BMIが25以上の体型のこと。あくまで「脂肪組織が過剰に蓄積した状態」を指します。
- 肥満症
- 肥満に加えて、「健康障害(合併症)」がある、または「内臓脂肪が過剰に蓄積している」状態。これは医学的な減量治療が必要な病気と定義されます(参考:日本肥満学会 1, 厚生労働省 3)。
つまり、BMIが25以上であっても、健康状態に問題がなければ「単なる肥満」ですが、体に悪影響が出ている場合は「肥満症」として扱われます。
次の章で、詳しくチェックしていきましょう。
治療が必要な「肥満症」診断セルフチェックリスト

あなたが「治療が必要な肥満症」かどうかは、BMIに加えて以下の2つのステップで判断します。
ステップ1:内臓脂肪の蓄積チェック(腹囲測定)
肥満には、皮下脂肪型(洋ナシ型)と内臓脂肪型(リンゴ型)があります。
特に健康リスクが高いのは内臓脂肪型です。
これを簡易的に判断するのが「腹囲(ウエスト周囲径)」の測定です。
内臓脂肪面積100cm²以上に相当するスクリーニング基準は以下の通りです(参考:厚生労働省 3)。
【腹囲の基準値】
- 男性:85cm以上
- 女性:90cm以上
正しい測り方:
- 立った姿勢で、両足をそろえ、腕は自然に下げます。
- 息を吐いた状態で測定します。
- おへその高さに合わせてメジャーを水平に巻きます(おへそ周りに脂肪が多い場合は、肋骨の一番下と骨盤の骨の間の中間で測ります)(参考:厚生労働省 4)。
- 腹筋に力を入れず、リラックスして測りましょう。
この基準を超えている場合、内臓脂肪型肥満の疑いがあり、生活習慣病のリスクが高い状態と考えられます。
ステップ2:健康障害(合併症)の有無チェック
次に、肥満に関連する健康障害がすでに起きていないかを確認します。
日本肥満学会では、肥満症の診断に必要な「肥満に関連する11の健康障害」を定めています(参考:日本肥満学会 1, 5)。
以下の項目の中に、健康診断で指摘されたものや、治療中の病気はありますか?
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など、血糖値が高い)
- 脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)
- 脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(脂肪肝など)
- 月経異常・不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(いびき、睡眠中の呼吸停止)
- 運動器疾患(変形性膝関節症、変形性腰椎症など)
- 肥満関連腎臓病
【結論】あなたが「肥満症」に当てはまる条件
これまでのチェック結果をまとめてみましょう。
- BMIが25以上である
- 以下のAまたはBのどちらかに当てはまる
- A:「11の関連疾患」のうち、1つ以上の健康障害がある。
- B: 腹囲測定で基準値を超えており、内臓脂肪型肥満の疑いがある(精密検査で内臓脂肪面積100cm²以上と確定される)(参考:日本肥満学会 1)。
この条件を満たす場合、あなたは単なる太り気味ではなく「肥満症」という疾患である可能性が極めて高いと言えます。
これは、「痩せられたらいいな」という美容の悩みではなく、「痩せなければならない」という医療の課題です。
放置すると危険?肥満症が引き起こす健康リスク
「痛いところもないし、まだ大丈夫だろう」と油断するのは禁物です。
肥満症が怖いのは、自覚症状がないまま体の中で静かに進行するためです。
サイレントキラーとしての内臓脂肪
内臓脂肪は、単にエネルギーを蓄えているだけではありません。
実は、脂肪細胞からは様々な生理活性物質(アディポサイトカイン)が分泌されています。
内臓脂肪が増えすぎると、この物質のバランスが崩れ、「血糖値を下げるインスリンの効きを悪くする」「血圧を上げる」「血栓を作りやすくする」といった悪さを始めます(参考:厚生労働省 2)。
これが、糖尿病や高血圧、動脈硬化の直接的な原因となり、最終的には心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気を引き起こすのです。
QOL(生活の質)の低下
内臓の病気だけではありません。
重い体重を支え続けることで、膝や腰には常に過度な負担がかかります。
- 階段の上り下りがつらい(変形性膝関節症)
- 腰が痛くて長く歩けない
- 夜中に何度も呼吸が止まり、昼間に強烈な眠気が襲う(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)
これらはQOL(生活の質)を著しく低下させ、仕事や趣味を楽しむ気力を奪ってしまいます。
病院に行くべき?受診の目安と治療内容

セルフチェックで「肥満症」の疑いがあった場合、または「境界線だけど不安だ」という場合は、医療機関への相談をお勧めします。
セルフチェックで該当したら何科に行くべき?
まずは以下の診療科を受診するのが一般的です。
- 内科
- 一般的な窓口として。
- 糖尿病・代謝内科
- 血糖値や代謝異常の専門的な検査が可能。
- 肥満外来
- 肥満症治療に特化した専門外来(大学病院や一部のクリニックに設置)。
受診の際は、「健康診断の結果」や「日頃の血圧測定の記録」などを持参すると、よりスムーズに診断が受けられます。
肥満症は「治療」で改善できる
肥満症と診断された場合、それは「意志の力だけで治すべきもの」ではありません。
医師、管理栄養士、理学療法士などのチームによる医学的なサポートを受けることができます。
- 食事療法
- 極端な制限ではなく、継続可能な適正カロリーと栄養バランスの指導。
- 運動療法
- 膝や腰に負担をかけず、脂肪を燃焼させる効果的な運動処方。
- 薬物療法
- 食欲を抑制したり、脂質の吸収を抑えたりする医薬品の使用(医師の処方が必要)。
- 外科療法
- 高度肥満症の場合、胃を小さくする手術などが検討されることもあります。
「肥満症」は病気であるため、検査や治療には健康保険が適用されます(※美容目的の痩身治療は自費診療となりますのでご注意ください)。
治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では肥満症お悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
最新の治療をいち早く受けられることがある
専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
よくある質問(FAQ)
まとめ:肥満症は早期に対策すれば改善できる
ご自身のBMIと健康状態を確認してみて、いかがでしたか?
「肥満症かも」という結果が出たとしても、過度に落ち込む必要はありません。
肥満症は、適切な介入を行えば数値が改善し、リスクを回避できる病気です。
肥満症診療ガイドラインでも、現体重の3%を減らす(3%減量)だけでも、血圧や血糖値、脂質データなどの検査値が改善することが示されています(参考:日本肥満学会 1)。
「自分は病気なのかもしれない」と気づけたことが、健康への第一歩です。
自己流の無理なダイエットでリバウンドを繰り返す前に、ぜひ一度、医療機関で専門家の知恵を借りてみてください。
それが、将来のあなたを守る最も確実な方法です。
- 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」https://www.jasso.or.jp/contents/magazine/journal.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-001
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満症・メタボリックシンドロームの判定基準」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-01-003
- 厚生労働省「特定健診・特定保健指導について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161103.html
- 日本肥満学会「肥満症の診断基準2011(11の健康障害リスト)」https://www.jasso.or.jp/contents/wod/index.html
