健康診断で「腎機能が低下しています」「クレアチニン値が高い」と言われ、不安を感じていませんか?
インターネットで検索すると、「玉ねぎが効く」「納豆は良い」「いや、納豆はダメだ」など、矛盾する情報が多くて混乱してしまう方も多いはずです。
「腎臓を回復させる特効薬のような食べ物があれば知りたい」
これは、腎機能に不安を持つすべての方の切実な願いです。
この記事では、最新の医学情報やガイドラインに基づき、「腎機能を守り、これ以上悪化させないための本当に正しい食事法」を分かりやすく解説します。
結論からお伝えすると、一度完全に壊れてしまった腎臓の細胞(糸球体)を、特定の食べ物だけで「元通りに再生」させることは、現代医学では困難とされています。
しかし、適切な食事療法によって残っている腎臓の負担を減らし、腎機能の低下を食い止める(進行を遅らせる)ことは十分に可能です (参考:日本腎臓学会 1)。
あなたの5年後、10年後の健康を守るために、今日からできる食事の工夫を一緒に見ていきましょう。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
腎疾患でお困りの方へ

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【結論】腎機能は食事で「回復」できるのか?医学的な真実
まず、最も重要な「回復」についての考え方を整理しましょう。
「回復」ではなく「維持・負担軽減」がカギ
腎臓は一度機能が失われると再生しにくい臓器ですが、早期から適切な管理を行うことで、透析への進行を防いだり遅らせたりすることができます。
食事療法の最大の目的は、今残っている元気な腎臓の細胞にかかる負担を減らすことにあります。
負担が減れば、結果としてeGFR(推算糸球体濾過量)などの数値の低下速度が緩やかになったり、一時的に安定したりすることが期待できます (参考:日本腎臓学会 2)。
腎臓をいじめる「3つの過剰」を取り除く
腎臓を元気にするためには、何かを「足す」前に、負担となっているものを「引く」ことが最優先です。
腎臓に負担をかける主な要因は以下の通りです。
- 塩分の摂りすぎ
- 血圧を上げ、腎臓に負担をかけます。CKD(慢性腎臓病)診療ガイドラインでは、1日6g未満の食塩制限が推奨されています (参考:日本腎臓学会 1)。
- タンパク質の摂りすぎ
- タンパク質は体内で代謝されると老廃物となり、腎臓でろ過する必要があります。摂りすぎは腎臓の過剰な働きにつながるため、ステージに応じた制限が推奨されます (参考:日本腎臓学会 2)。
- エネルギー不足
- カロリーが足りないと、体は自分の筋肉を分解してエネルギーにします。この際に出る老廃物が、かえって腎臓の負担になります。十分なエネルギー確保が必要です (参考:日本腎臓学会 1)。
この3つのバランスを整えることが、基本となります。
腎機能低下を防ぐための「食材の選び方」
特定の食品が腎臓を治すわけではありませんが、腎臓に負担をかけにくい食材や、エネルギー不足を補うための工夫は存在します。
腎臓に負担をかけないエネルギー源
食事制限(特にタンパク質制限)を行う際、最も注意すべきなのが「エネルギー不足」です。
タンパク質を減らした分、糖質や脂質でカロリーを補う必要があります (参考:日本腎臓学会 1)。
- エネルギー密度の高い油脂類
- 少量で高カロリーを摂取できる植物油などは、効率的なエネルギー源となります。
- 低タンパク米・低タンパク質食品
- 普通のご飯に含まれるタンパク質をカットしたお米や麺類です。これらは消費者庁により「病者用食品(腎疾患患者用食品)」として許可されているものもあり、食事療法を継続するための有効なツールとなります (参考:消費者庁 3)。
食べていい果物・控えるべき果物(カリウム制限がある場合)
果物はビタミンが豊富ですが、腎機能が低下している方にとっては「カリウム」が問題になることがあります。
カリウム制限が必要な場合は、含有量が比較的少ないものを選ぶ工夫が求められます (参考:厚生労働省 4)。
- 比較的カリウムが少ない果物
- リンゴ、ブルーベリー、ブドウ、缶詰の果物(※シロップは捨てること)
- カリウムが多い果物
- バナナ、メロン、ドライフルーツ(干し柿など)
※ただし、果物の摂取可否はご自身のカリウム値や医師の指示によります。
【要注意】健康に良いはずが逆効果?誤解しやすい食材と「カリウム」の矛盾

ネット上には「野菜は腎臓に良い」という情報と「野菜は食べてはいけない」という情報が混在しています。
これが混乱の原因ですが、正解は「あなたの腎臓のステージ(病期)による」です。
なぜ「野菜は体に良い」と「腎臓に悪い」という情報があるのか?
腎臓の状態によって、推奨される栄養管理が異なるためです。
- 初期~中期(ステージG1~G3a)
- まだカリウムを排出する能力が保たれていることが多く、この段階では一律のカリウム制限は行いません。むしろ生活習慣病予防のために野菜摂取が勧められることもあります (参考:日本腎臓学会 2)。
- 進行期~末期(ステージG3b~G5)
- 腎機能が低下し、カリウムを尿として十分に排出できなくなります。この段階では高カリウム血症(不整脈などの原因)を防ぐため、1日2,000mg以下などのカリウム制限が推奨されます (参考:日本腎臓学会 2)。
医師から「カリウム制限」を指示されている場合は、自己判断での野菜・果物の大量摂取は控えましょう。
納豆・豆腐などの「大豆製品」はどう判断する?
納豆などの大豆製品は「植物性タンパク質」であり良質な栄養源ですが、カリウムやリンも含んでいます。
完全に禁止されるわけではありませんが、タンパク質制限やカリウム制限の範囲内で摂取量を調整する必要があります。
過剰摂取にならぬよう、全体の食事バランスの中で考えましょう (参考:日本腎臓学会 1)。
腎臓に負担をかけないための「食べ方」3つの黄金ルール
何を食べるかと同じくらい、「どう食べるか」も重要です。
1. 「減塩」でも美味しく食べるコツ
塩分は1日6g未満が目標とされています (参考:日本腎臓学会 1)。
- 酸味: お酢、レモン、カボスなどの酸味を利用する。
- 香り: シソ、カレー粉、ハーブなどの香辛料でアクセントをつける。
- 出汁: 旨味成分を効かせる(※顆粒出汁などは塩分を含む場合があるため成分表示を確認)。
2. 「カリウム」を減らす調理法
カリウムは水に溶け出す性質があります。
野菜を食べる際は、以下のひと手間でカリウムを減らすことができます (参考:厚生労働省 4)。
- 茹でこぼす: 野菜を茹でて、お湯を捨てる。
- 水にさらす: 切った野菜を水にさらす。
生野菜サラダよりも、茹で野菜(お浸しなど)にして汁気を絞って食べるのが基本テクニックです。
治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では腎疾患でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
最新の治療をいち早く受けられることがある
専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
よくある質問(FAQ)
最後に、食事療法についてよく寄せられる疑問について、医学的な視点からお答えします。
まとめ
腎機能を回復させる魔法の食べ物はありませんが、あなたの腎臓を守るための食事法は確立されています。
- 基本は「減塩」「適正タンパク」「十分なエネルギー」 (参考:日本腎臓学会 1)。
- 特定の食品に過度に依存せず、医師の指示した栄養量の範囲でバランスよく食べる。
- 自分のステージに合わせて、カリウムや水分の摂取量を調整する (参考:日本腎臓学会 2)。
食事療法は、今日やって明日結果が出るものではありません。
しかし、日々の積み重ねは腎臓を守る大きな力になります。
具体的な食事制限の内容については、必ず主治医や管理栄養士の指導に従って進めてください。
- 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023(第8章 栄養)」 https://jsn.or.jp/data/gl2023_ckd_ch08.pdf
- 日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024(第8章 成人CKD患者への栄養管理)」 https://jsn.or.jp/data/gl2024_ckd_ch08.pdf
- 消費者庁「特別用途食品の表示許可基準」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/assets/food_labeling_cms206_20230927_01.pdf
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「カリウム」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-005.html
