歩き始めは問題ないのに、しばらくすると足に痛みやしびれが生じて歩けなくなる。しかし、少し休むとまた歩けるようになる。

もしあなたがこのような症状に悩まされているなら、それは「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」かもしれません。

この症状と向き合う中で、「この痛みは治るのだろうか」「元の生活に戻れるのか」という切実な不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、間欠性跛行がどこまで改善できるのか、そしてどのような治療選択肢があるのかについて、症状の原因から具体的な対策まで網羅的に解説します。

ご自身の症状と向き合い、適切な治療へ一歩踏み出すための道しるべとして、ぜひ最後までお読みください。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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歩行を妨げる「間欠性跛行」とは?その症状と原因を知る

間欠性跛行は、それ自体が病名ではなく、特定の疾患によって引き起こされる症状の一つです。

まずは、この特徴的な症状と、その背後にある原因を正しく理解することから始めましょう。

間欠性跛行の典型的な症状:歩行と休息のサイクル

間欠性跛行の最も特徴的な症状は、歩行と休息を繰り返す点にあります。

歩き始めは特に問題を感じません。しかし、一定の距離を歩くと足に痛み、しびれ、重だるさ、張りといった症状が現れ、歩行を続けるのが困難になります。

ここで立ち止まって少しの間休んだり、座ったりすると、症状が和らぎ、再び歩けるようになる。これが一連のサイクルです。

痛みやしびれが起こりやすい部位

症状が現れる部位は、原因となる疾患によって多少異なりますが、一般的にはお尻(臀部)から太ももの裏側、そしてふくらはぎにかけて生じることが多いとされています。

片足だけに起こることもあれば、両足に現れるケースもあります。

症状の進行度合いと日常生活への影響

症状が進行すると、連続して歩ける距離が徐々に短くなっていきます。最初は500メートル歩けていたものが、300メートル、100メートルと短縮され、日常生活における行動範囲が狭まってしまうのです。

買い物や散歩といった些細な外出でさえ、苦痛を伴うようになることも少なくありません。

なぜ痛みやしびれが起こるのか?主な原因となる疾患

間欠性跛行を引き起こす原因は、大きく分けて「神経」に由来するものと「血管」に由来するものがあります。代表的な疾患は次の二つです。

間欠性跛行を起こす二大原因

間欠性跛行は、神経の通り道が狭くなる「脊柱管狭窄症」と、足の血管が細くなる「閉塞性動脈硬化症」が主な原因です。どちらが原因かによって治療や受診すべき診療科が異なるため、見分けが重要になります。

神経の圧迫が引き起こす「脊柱管狭窄症」

加齢などによって背骨(脊椎)にある神経の通り道「脊柱管」が狭くなり、中を通る神経が圧迫されることで発症します。歩くことで神経への血流が一時的に不足し、足に痛みやしびれが生じます。

この場合、前かがみの姿勢をとると脊柱管が少し広がり、神経への圧迫が和らぐため、症状が軽快するのが特徴です(参考:日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 1)。

血流障害が原因の「閉塞性動脈硬化症」

足の血管が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりして、血流が悪くなる病気です。歩行によって筋肉がより多くの酸素や栄養を必要としますが、血流が悪いために供給が追いつかず、筋肉が酸欠状態になって痛みを生じさせます。

こちらは、前かがみの姿勢をとっても症状は変わりません(参考:日本循環器学会・日本血管外科学会 末梢動脈疾患ガイドライン 2)。

症状を見分けるポイント:セルフチェックと受診の目安

ご自身の症状がどちらの原因に近いかを見分ける簡単なポイントがあります。

歩行中に痛みが出た際、立ち止まって前かがみの姿勢やしゃがみ込む姿勢をとってみてください。もし、その姿勢で症状が楽になるのであれば「脊柱管狭窄症」の可能性が考えられます。一方、姿勢を変えても症状が変わらない場合は「閉塞性動脈硬化症」が疑われます。

受診の目安

ただし、これはあくまで目安です。正確な診断には専門医による診察が不可欠。「歩くと足が痛くなり、休むと治る」という症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。

「治る」は期待できるのか?間欠性跛行の完治と改善の可能性

患者さんが最も気になるのは、「この症状は完全に治るのか」という点でしょう。

ここでは、間欠性跛行の治療における「完治」の考え方と、現実的な改善目標について解説します。

自然に治ることは稀:進行性の病態を理解する

まず理解しておくべきなのは、間欠性跛行の原因となる脊柱管狭窄症や閉塞性動脈硬化症は、多くの場合、加齢や生活習慣が関わる進行性の病態であるということです。

そのため、何もしないで自然に症状が完全に消えることは稀だと考えられています。放置すれば、むしろ症状が悪化していく可能性が高いのです。

「完治」の定義と現実:どこまで症状改善を目指せるのか

「完治」という言葉を「症状が完全になくなり、病気になる前の状態に完全に戻ること」と定義するならば、間欠性跛行の完治は容易ではありません。変形した骨や硬化した血管を元通りにすることは難しいからです。

しかし、治療の目標を「症状をコントロールし、日常生活に支障がないレベルまで改善すること」と設定するならば、その可能性は十分にあります。適切な治療によって、痛みなく歩ける距離を伸ばし、生活の質(QOL)を大きく向上させることは可能です。

治療のゴール

治療のゴールは、症状の完全な消失ではなく、症状と上手に付き合いながら、快適な毎日を送れる状態を目指すことにあるのです。

早期発見・早期治療が重要な理由

間欠性跛行の症状に気づいたら、できるだけ早く専門医に相談することが極めて重要です。早期に治療を開始することで、病気の進行を遅らせ、症状の悪化を防ぐことができます。

また、治療の選択肢も広がり、より身体への負担が少ない保存療法で症状をコントロールできる可能性も高まります。症状を我慢したり、年のせいだと諦めたりせず、まずは正確な診断を受けることが、改善への第一歩です。

間欠性跛行の治療法:あなたの症状に合った選択肢を見つける

間欠性跛行の治療は、原因となっている疾患や症状の重症度によって異なります。ここでは、代表的な治療法をいくつか紹介します。どの治療法が最適かは、医師との相談の上で決定されます。

保存療法:まずは試したい薬物療法と運動療法

多くのケースで、まず初めに検討されるのが保存療法です。身体への負担が少なく、手術を伴わない治療法を指します。

痛みを和らげる薬、血流を改善する薬の種類

薬物療法では、症状を和らげることを目的に薬が処方されます。

脊柱管狭窄症が原因の場合は、神経への血流を改善するプロスタグランジンE1製剤や、神経の痛み(末梢性神経障害性疼痛)を緩和する薬などが用いられます(参考:日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 1)。

閉塞性動脈硬化症が原因の場合は、血液をサラサラにして血栓ができるのを防ぐ抗血小板薬や、血管を広げて血流を促す薬が中心です(参考:日本循環器学会・日本血管外科学会 末梢動脈疾患ガイドライン 2)。

痛みに負けない!正しい歩き方とリハビリ・ストレッチの具体例

運動療法も保存療法の重要な柱です。痛みを恐れて動かないでいると、筋力が低下し、かえって症状が悪化することもあります。専門家の指導のもと、適切なリハビリテーションを行うことが推奨されます。

例えば、脊柱管狭窄症の場合は、腰を少し曲げた姿勢でのウォーキングや自転車こぎが有効です。一方、閉塞性動脈硬化症の場合は、痛みが出る直前まで歩いては休む、というサイクルを繰り返す「インターバル速歩」が血行改善に役立つとされています。

補足:運動療法はまず専門家の指導のもとで

なお、閉塞性動脈硬化症の運動療法として診療ガイドラインで中心に位置づけられているのは、中等度の痛みが出る程度まで歩いて休むことを繰り返す監視下運動療法です。自己流で行わず、運動の内容や強度は必ず医師・理学療法士に確認しましょう(参考:日本循環器学会・日本血管外科学会 末梢動脈疾患ガイドライン 2)。

再生医療:新しい選択肢としての可能性と最新情報

近年、注目されているのが再生医療です。ご自身の細胞などを用いて、損傷した組織の修復や機能回復を目指す治療法で、間欠性跛行の原因疾患に対しても研究が進められています。

例えば、血管の再生を促す細胞を投与することで、血流の改善を図る治療などが試みられています。まだ一般的な治療法ではありませんが、将来的な選択肢の一つとして期待される分野です(参考:厚生労働省 再生医療・遺伝子治療等について 3)。

手術療法:根本的な改善を目指すケースとは

保存療法で十分な効果が得られない場合や、症状が重く日常生活に大きな支障が出ている場合には、手術が検討されます。

脊柱管狭窄症に対する手術アプローチと期待できる効果

脊柱管狭窄症の手術では、神経を圧迫している骨や靱帯の一部を切除して圧迫を取り除く「除圧術」が基本です。背骨の状態によっては、金属で固定する「固定術」が併用されることもあります。

手術によって神経への圧迫という根本原因を取り除くため、足の痛みやしびれの大幅な改善が期待できます(参考:日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 1)。

閉塞性動脈硬化症に対する血管治療の選択肢

閉塞性動脈硬化症では、狭くなったり詰まったりした血管を広げる治療が行われます。足の付け根などからカテーテルという細い管を血管内に挿入し、風船(バルーン)や金属の筒(ステント)で血管を広げる「カテーテル治療」が主流です。

重症の場合には、自分の血管や人工血管を使って血流の新しい迂回路を作る「バイパス手術」が行われることもあります(参考:日本循環器学会・日本血管外科学会 末梢動脈疾患ガイドライン 2)。

どの治療法を選ぶべきか?専門医との相談が不可欠な理由

ここまで様々な治療法を紹介しましたが、最適な選択は一人ひとり異なります。神経が原因なのか、血管が原因なのかで、診療科も整形外科や血管外科などと専門が分かれます。

まずは原因を特定し、専門医と十分に話し合いながら、ご自身のライフスタイルや症状の程度に合わせた治療計画を立てることが何よりも大切です。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では間欠性跛行でお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

  • 最新の治療をいち早く受けられることがある
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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悪化を防ぎ、快適に過ごすために:日常生活でできる工夫

治療と並行して、日常生活の中で少し工夫をすることも症状の管理に役立ちます。ここでは、今日からでも始められるセルフケアのポイントを紹介します。

歩行距離を伸ばすための「休憩を挟む歩き方」のコツ

「痛みが出たらどうしよう」と不安に思うかもしれませんが、無理のない範囲で歩くことは大切です。痛みが出る前にこまめに休憩を挟む「計画的休憩」を心がけましょう。

あらかじめ地図でベンチのある場所を確認しておくのも良い方法です。また、杖やシルバーカー(歩行補助車)を利用すると、安定性が増し、脊柱管狭窄症の場合は前かがみの姿勢をとりやすくなるため、楽に歩けることがあります。

食生活や禁煙など、生活習慣の改善ポイント

特に閉塞性動脈硬化症が原因の場合、生活習慣の見直しは不可欠です。動脈硬化の進行を抑えるため、塩分や脂肪分の多い食事を控え、バランスの取れた食生活を意識してください。

禁煙は症状改善に必須

また、喫煙は血管を収縮させ、血液の流れを悪化させる最大の要因の一つ。禁煙は症状改善のために必須です(参考:日本循環器学会・日本血管外科学会 末梢動脈疾患ガイドライン 2)。

痛みが和らぐ姿勢やストレッチ:自宅でできるケア

自宅でできる簡単なケアも症状緩和に繋がります。脊柱管狭窄症であれば、腰を丸めるようなストレッチが効果的です。仰向けに寝て両膝を抱えるような姿勢をとると、神経の圧迫が和らぎます。

ただし、痛みが強い時に無理に行うのは禁物。どのような運動やストレッチが適しているかは、必ず医師や理学療法士に相談してください。

放置するとどうなる?進行を食い止める重要性

放置による重症化のリスク

間欠性跛行を放置すると、症状は徐々に進行します。歩ける距離がますます短くなり、安静にしていても足が痛むようになることも。閉塞性動脈硬化症が重症化した場合には、足に潰瘍ができて治らなくなったり、最悪の場合、壊死して下肢を切断しなければならないケースも存在します(参考:日本循環器学会・日本血管外科学会 末梢動脈疾患ガイドライン 2)。

症状の進行を食い止めるためにも、早期からの適切な対応が求められるのです。

間欠性跛行に関するよくある疑問と回答 (FAQ)

ここでは、間欠性跛行に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。

間欠性跛行は完治しますか?

原因疾患を完全に取り除くという意味での「完治」は難しい場合が多いです。しかし、適切な治療とセルフケアによって、症状を大幅に改善し、日常生活に支障のないレベルまで回復することは十分に可能です。治療目標は、症状と上手に付き合い、生活の質を高めることに置かれます。

間欠性跛行を放置するとどうなりますか?

放置すると、原因となっている脊柱管狭窄症や閉塞性動脈硬化症が進行し、症状が悪化する可能性が高いです。連続して歩ける距離が短くなるだけでなく、安静時にも痛みが出たり、重篤な合併症を引き起こしたりするリスクがあります。

どのような運動やストレッチが効果的ですか?

原因疾患によって推奨される運動は異なります。脊柱管狭窄症の場合は腰を反らさない自転車こぎや水中ウォーキング、閉塞性動脈硬化症の場合は痛みが出る手前で休憩を挟むウォーキングなどが挙げられます。自己判断で行わず、必ず医師や理学療法士の指導のもとで、ご自身の状態に合った運動療法を選んでください。

間欠性跛行の治療は何科を受診すれば良いですか?

症状から脊柱管狭窄症など背骨の問題が疑われる場合は「整形外科」、閉塞性動脈硬化症など血管の問題が疑われる場合は「血管外科」や「循環器内科」が専門となります。どちらか判断に迷う場合は、まずは整形外科を受診して相談してみるのが一般的です。

治療期間はどのくらいかかりますか?

治療期間は、症状の重症度、原因疾患、選択する治療法によって大きく異なります。薬物療法や運動療法といった保存療法は、効果を見ながら継続的に行うことが多く、長期的な視点での付き合いが必要です。手術を受けた場合でも、その後のリハビリ期間を含めると数ヶ月単位の時間が必要になることがあります。

まとめ

間欠性跛行は、その原因となる疾患が進行性であるため、自然に治癒することは難しく、放置すれば症状が悪化していく可能性があります。この事実は、不安に感じるかもしれません。

しかし、決して希望を失う必要はありません。薬物療法、運動療法、そして必要であれば手術療法といった適切な治療を受けることで、症状を大きく改善し、進行を抑制することは十分に可能です。

大切なのは、ご自身の症状を正しく理解し、専門医と密に連携しながら、最適な治療法を見つけ出すこと。

「治る」という希望を持ちつつ、日常生活での工夫も取り入れながら、前向きに治療に取り組んでいきましょう。一人で悩まずに医療機関の扉を叩くその一歩が、痛みやしびれから解放され、より快適な毎日を取り戻すための重要なスタートラインとなるはずです。