足の爪が内側に巻いて見た目が気になる、爪が切りにくい、周りの皮膚に食い込んで痛むなど、巻き爪の症状に悩まされる方は少なくありません。
しかしながら、どの科を受診すればいいのかわからないといった方も多くいます。
この記事では、巻き爪(まきづめ)の原因や症状、適切な診療科、治療法、費用相場、セルフケア方法まで、詳しく解説します。
皮膚科専門医 川島裕平医師の監修のもと、巻き爪の治療をスムーズに進めるためのガイドをお届け。
早めの対処で快適な生活を取り戻しましょう。
巻き爪とは?症状とセルフチェック方法
巻き爪の基礎知識と放置するリスクを解説します。
巻き爪と陥入爪(かんにゅうそう)の違いとは?
巻き爪と陥入爪は混同されがちですが、異なる状態を指します。
巻き爪は爪の端が内側に彎曲(わんきょく)して皮膚に食い込む状態で、痛みがなくても見た目や違和感が気になることがあります。
一方陥入爪は爪の角が皮膚に深く刺さり、炎症を引き起こした状態を指します。
特に足の親指に多く、巻き爪が進行して陥入爪になるケースも少なくありません。
巻き爪・陥入爪の原因には深爪、サイズの合わない靴、歩き方の癖、遺伝的な爪の形状などが挙げられます。
また、軽い巻き爪はセルフケアでも改善可能ですが、陥入爪は炎症を伴うため医療機関での治療が必要となります。
この違いを理解することで、適切な治療法や受診科を選びやすくなります。
よくある症状と進行レベルの見分け方
巻き爪の主な症状は、見た目の変化のほか、爪の端が皮膚に食い込むことによる痛み、赤み、腫れです。
進行レベルは軽症から重症まで3段階に分けられます。
軽症では爪が軽く彎曲し、靴を履くときや運動時に違和感や軽い痛みを感じます。
中等度では爪がさらに彎曲し、爪が皮膚に食い込むことで歩行時の痛みが強まることがあります。
重症では爪が皮膚に深く刺さり陥入爪を合併して爪の周囲が赤く腫れ、肉芽(にくげ)形成を伴う場合や、歩くのが困難になる場合があります。
セルフチェックでは、爪の両端が内側に巻いているか、押すと痛むか、皮膚が赤く腫れているかを確認しましょう。
自分の症状の進行レベルを把握することで、適切なタイミングで医療機関を受診できます。
放置するとどうなる?リスクと悪化のサイン
巻き爪を放置すると、爪の彎曲が徐々に進行することがあります。
さらに痛みを避けるために不自然な歩き方になり、膝や腰の痛み、場合によっては転倒リスクが高まることもあります。
そのため、特に高齢者では注意が必要です。
症状が深刻になって治療が難しくなるのを避けるために、巻き爪は放置せず早めに医療機関で相談しましょう。
巻き爪の治療は何科に行けばいい?
巻き爪は何科を受診するべきかを解説します。
皮膚科・形成外科・形成外科の違い
巻き爪治療は、主に皮膚科、形成外科、整形外科で受けることができますが、それぞれ得意分野が異なります。
皮膚科は爪や皮膚の疾患を専門とし、軽症の巻き爪に対しては保存的治療(コットンパックやテーピングなど)や軟膏処方を主に行います。
また、中等度以上の巻き爪に対しては、巻き爪矯正治療も広く行われるようになりました。
形成外科や整形外科では足の骨や関節、歩き方の問題に着目し、足の構造的な原因を考慮した外科的な治療(手術)が主に行われています。
自分の症状や治療の希望に応じて、適切な診療科を選ぶことも大切です。
軽症~中等度の場合の治療法
軽症から中等度の巻き爪は、まず皮膚科の受診が推奨されます。
皮膚科では爪の食い込みを軽減するコットンパックやテーピング、ワイヤー矯正などの保存的治療が行われます。
これらは痛みが少なく、日常生活への影響も最小限です。
たとえば、テーピング法は爪が皮膚に食い込むのを防ぎ、軽症例で効果を発揮します。
また、皮膚科は爪水虫など関連する皮膚疾患の診断・治療も可能です。
軽い痛みや赤みがある場合、皮膚科で軟膏とテーピングを組み合わせた治療で改善した例が多く報告されています。
軽症~中等度の場合は、まず皮膚科で保存的治療を試みることが効果的でしょう。
重症例の場合の治療法
重症の巻き爪に対しては様々な矯正治療が行われています。
巻き爪と陥入爪を合併した場合では、陥入爪を改善して炎症が落ち着いてから、巻き爪自体の矯正を行うことが重要です。
医療機関を早めに受診して専門医の診察を受け、痛みの原因や効果的な矯正治療について相談しましょう。
病院選びのポイント|失敗しない診療科の探し方
巻き爪で病院にかかる際、チェックするポイントを解説します。
爪専門外来のある病院とは?
爪専門外来は爪の治療に特化した外来で、経験豊富な皮膚科や形成外科、整形外科の医師が担当する場合が多いです。
専門外来では様々な矯正治療や手術、フットケアまで幅広い治療が受けられ、医師の経験値も高い傾向があります。
たとえば、専門外来では爪の状態に応じたカスタム治療プランが提供され、再発予防にも注力しています。
近くの皮膚科で対応できるケース
軽症の巻き爪や炎症がある場合は、近隣の皮膚科で対応可能です。
皮膚科では、保存的治療(テーピングやコットンパック)や抗菌剤の処方が一般的で、軽い痛みや赤みを抑えるのに効果的です。
また、中には手術などの外科的治療まで対応してくれる皮膚科もあり、軽症~重症まで皮膚科で完結することもあります。
巻き爪矯正治療で保険が適用されるか?
巻き爪矯正治療治療の多くは自費診療となります。
部分爪切除などの処置は保険適用で行われることもありますが、ワイヤー矯正(VHO式や弾性ワイヤー法)やプレート矯正などの多くが自費診療となります。
たとえば、ワイヤー矯正は自費で1回10,000~15,000円が相場とされています。
治療法の詳細や費用は、病院のウェブサイトや受診前に確認すると安心です。
巻き爪の主な治療法と費用相場
ワイヤー矯正とプレート矯正は、爪の形状を正常に戻し症状を軽減するための治療です。
ワイヤー矯正(例:マチワイヤ、VHO式)は、爪にワイヤーを通して引っ張り、彎曲を矯正します。
処置時間は約10~15分で、痛みはほぼありません。
VHO式は軽症から重症まで対応可能で、仕事帰りに受けられる手軽さが特徴です。
プレート矯正(例:B/Sブレース)は、爪表面に樹脂製プレートを貼り、弾性力で矯正します。
ワイヤー矯正・プレート矯正どちらも1~2ヶ月に1度の通院が必要で、半年~1年で症状改善が期待できます。
ワイヤーやプレート矯正は、痛みが少なく日常生活に影響の少ない治療法として有効です。
また、近年は爪を柔らかくする塗り薬が登場し、ワイヤーなどによる矯正治療と併用することで重症の巻き爪の改善、矯正効果が早く得られるようになってきました。
巻き爪のセルフケアや予防法
巻き爪のセルフケア、予防方法を解説します。
正しい爪の切り方と日常ケア
巻き爪の予防には、正しい爪切りと日常ケアも効果的です。
爪は指先と同じ長さに揃え、角を丸くする「スクエアオフカット」が推奨されています。
深爪は陥入爪の原因となるため避けましょう。
硬い爪にはニッパー型爪切りや足湯を活用すると切りやすくなります。
また、爪周りの保湿や清潔を保つことも重要です。
正しい爪切りと日常ケアを習慣化することで、巻き爪のリスクを減らせます。
靴選び・歩き方で巻き爪を予防
靴選びと正しい歩き方は、巻き爪予防に大きく影響します。
足に合ったサイズの靴を選び、つま先に余裕のあるものを優先しましょう。
ハイヒールや先の狭い靴は爪を圧迫するため、長時間の着用は避けた方が無難です。
歩き方では親指側に重心をかけ、足のアーチを意識することが有効です。
また、インソールを使用すると足裏の負担が軽減されます。
巻き爪を繰り返さないための生活習慣
巻き爪の再発防止には、生活習慣の見直しも重要です。
体重増加による足への負担、運動不足、誤った爪切り習慣は巻き爪のリスクを高めることがあります。
定期的な足のストレッチや正しい靴の選択、爪の清潔保持を心がけましょう。
また、扁平足(へんぺいそく)や外反母趾(がいはんぼし)がある場合は、専門医に相談してインソールを作成するのも有効です。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では巻き爪でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
よくある質問(FAQ)で疑問を解決
巻き爪に関するよくある質問を紹介します。
巻き爪は自然に治ることはある?
巻き爪は自然治癒することはほぼないとされています。
爪の彎曲や食い込みは、適切な治療や生活習慣の改善がなければ進行する傾向があります。
また、痛みがない場合でも放置すると悪化リスクが高まります。
軽症ならセルフケアで改善の可能性はありますが、痛みや炎症がある場合は早めの医療機関への受診が大切です。
まずは皮膚科専門医に相談してみましょう。
どの診療科でも巻き爪矯正はできる?
すべての医療機関で矯正治療が受けられるわけではないため、爪専門外来を開設している医療機関が望ましいです。
皮膚科の病院やクリニックでは巻き爪矯正を積極的に行う施設も増えてきましたが、施設によっては対応していない場合も。
病院のウェブサイトや電話で、矯正治療の有無や費用を事前に確認しましょう。
まとめ:皮膚科専門医 川島裕平医師からのアドバイス
巻き爪は一般的に加齢とともに出現し、放置すると進行することが多いです。
軽症のうちは見た目や爪が切りにくいなどの悩みで済みますが、進行すると歩行時の痛み、陥入爪を合併して重症化することもあります。
人生100年時代、爪の健康、足の健康は全身の健康、快適な日常生活とも密接に関連しています。
一人では悩まず、早めに医療機関を受診して相談してみましょう。
記事監修者情報

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医として、専門分野の爪疾患、重症のアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの皮膚疾患の診療、美容皮膚科診療に従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本睡眠学会
関連記事