足の爪が丸く曲がって皮膚に食い込んでズキズキと痛む「巻き爪」。
歩くたびに痛みが走り、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
この記事では、巻き爪が痛む原因やメカニズム、放置した場合のリスク、自宅でできる応急処置、医療機関での治療法、そして再発を防ぐための予防策を解説します。
皮膚科専門医 川島裕平医師の監修のもと、巻き爪に関する情報をわかりやすくお届けします。
巻き爪の痛みを我慢せず、早めに対処するための知識を身につけましょう。
巻き爪が痛くなるのはなぜ?原因とメカニズム
巻き爪が痛むメカニズムを解説します。
巻き爪と陥入爪(かんにゅうそう)の違い
巻き爪と似た病気の中に陥入爪(かんにゅうそう)があります。
巻き爪は爪の両端が内側に丸く曲がった状態を指し、痛みがなく変形のみが見られる場合があります。
一方で陥入爪は、爪の端が皮膚に食い込んで炎症を生じて痛みを引き起こした状態です。
巻き爪は爪自体の形状変化によるもので、陥入爪は爪が皮膚に刺さることで起こります。
両者は併発することもあり、巻き爪が進行して陥入爪を引き起こすことも多々あります。
日本創傷外科学会によると、巻き爪は爪の変形そのものであり、陥入爪は炎症を伴う状態と定義されています(参考:日本創傷外科学会1)。
巻き爪と陥入爪の違いを理解することは、適切な治療法を選ぶ第一歩となります。
爪の圧迫で皮膚に炎症が起こる仕組み
巻き爪が痛む主な原因は爪が皮膚を圧迫し、炎症を引き起こすことです。
爪が内側に曲がると、皮膚に食い込み、周辺組織に圧力がかかります。
爪はもともと内側に巻く傾向があり、歩行時の地面からの力がバランスを保つことで平らに保たれます。
しかし、このバランスが崩れると、爪が内側にどんどん丸く曲がって皮膚を刺激し、炎症を引き起こすのです。
巻き爪の痛みは、爪と皮膚の間の物理的な圧迫が主な原因であり、早めの対処が重要です。
靴・歩き方・爪の切り方が原因になる可能性もある
巻き爪の原因は靴の選び方、歩き方の癖、爪の切り方に大きく関係しています。
まず、ハイヒールや先の狭い靴は爪を圧迫し、変形を促します。
次に浮き指(足指が地面につかない歩き方)では、爪に適切な圧力がかからず、巻き込みが進行します。
また、深爪や爪の角を切りすぎると、爪が皮膚に食い込みやすくなります。
靴・歩き方・爪の切り方が巻き爪の原因となる理由は、爪の成長に必要なバランスが崩れるためです。
例えば、深爪をすると爪が短くなり、皮膚が盛り上がって食い込みを助長します。
中にはハイヒールを長時間履く女性や、スポーツで足指を使わないランナーが巻き爪になりやすいとの報告もあります。
放置しても大丈夫?痛みが続くとどうなる?
巻き爪を放置すると、爪が皮膚に食い込み続けることで、炎症を生じて陥入爪を合併することがあります。
陥入爪を放置すると痛みが強まり、歩行困難になるケースもあります。
また、痛みを避けようとして不自然な歩き方になると、膝や腰に負担がかかるほか、足裏のタコや外反母趾(がいはんぼし)を誘発する可能性もあります。
重症化すると外科的な処置が必要な場合もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
今すぐ痛みを和らげたい!自宅でできる応急処置
巻き爪の痛みを和らげる応急処置について解説します。
テーピング・コットンパッキングのやり方
巻き爪の痛みを軽減するため、自宅でできる応急処置としてテーピングやコットンパッキングが有効です。
テーピングは、伸縮性のあるテープで皮膚を爪から離すように固定する方法です。
コットンパッキングは、爪と皮膚の間に小さなコットンを挟む手法です。
爪の食い込みを物理的に防ぎ、圧迫を軽減することが期待できます。
コットンパッキングは、軽度の巻き爪に特に有効で、痛みを比較的速やかに和らげることが可能です。
具体的なやり方はまず清潔な状態でコットンを小さく切り、ピンセットで爪の端と皮膚の間に慎重に挟みます。
テーピングは、爪の周囲の皮膚を下に引っ張るようにテープを貼るのがコツです。
これらの方法は応急処置として痛みを軽減し、医療機関受診までのつなぎとして役立ちます。
市販の巻き爪ケアグッズは効果ある?
市販の巻き爪ケアグッズ(矯正クリップやテープなど)は、軽度の巻き爪に一定の効果が期待できますが、効果には個人差があります。
また、重症例には効果が不十分な場合が多々あるので注意が必要です。
市販の巻き爪ケアグッズが軽い変形を矯正する設計である一方、炎症や深い食い込みには対応しきれません。
市販グッズは一時的な痛み軽減に役立つ可能性はありますが、根本治療には医療機関の受診が推奨されます。
絶対にやってはいけないNG行為(爪を深く切る/皮膚を削る)
巻き爪の痛みを軽減しようとして、爪を深く切ったり、皮膚を削ったりするのは絶対に避けるべきです。
これらは症状を悪化させる可能性が高い行為とされています。
その理由は深爪が爪の食い込みを助長し、皮膚を削ると感染リスクが高まるためです。
深爪をすると爪が短くなり、皮膚が盛り上がってさらに食い込みやすくなります。
巻き爪の自己処理はリスクを伴うため、専門医の指導のもとで適切なケアを行うことが大切です。
巻き爪の痛みに対する主な治療法と費用目安
巻き爪の主な治療法について解説します。
ワイヤー矯正/プレート矯正とは?
ワイヤー矯正やプレート矯正は、巻き爪の形状を正常に戻す保存的治療法です。
ワイヤー矯正は爪に形状記憶合金のワイヤーを装着し、徐々に矯正していきます。
プレート矯正(例:B/Sブレース)は、爪表面に樹脂プレートを貼り平らにします。
これらの矯正治療は爪の彎曲を物理的に修正し、皮膚への圧迫を軽減してくれます。
ワイヤー矯正やプレート矯正は痛みが少なく、比較的早く効果が期待できる場合もあります。
施術後、爪の改善がある程度の期間継続する点もメリットです。
ワイヤーやプレート矯正は、軽度から中等度の巻き爪に適しており、痛みの軽減にも効果的です。
外科的処置(部分抜爪・フェノール法)の詳細
重度の巻き爪や陥入爪には、部分抜爪やフェノール法などの外科的処置が検討されます。
外科的処置は炎症の程度が強い場合に行うことで、痛みの軽減にも繋がるとされています。
部分抜爪は食い込んだ爪の一部を除去する方法です。
フェノール法は、爪の根元にフェノールという薬剤を塗布し、部分的に爪が生えてこないようにすることで再発を防ぎます。
ただ、処置後に爪の幅が狭くなるデメリットもあり、実際に処置を行うかは医師と十分に検討する必要があります。
保険適用の有無と治療費の相場
巻き爪治療の保険適用は、治療法によって異なります。
フェノール法や部分抜爪は保険適用される場合が多いですが、ワイヤー矯正やプレート矯正は自費診療となることが多いです。
これは保険適用の基準が、炎症や感染の治療に限定されることが理由です。
矯正治療は美容目的とみなされる場合もあり、保険対象外となることがあります。
治療費の相場は、ワイヤー矯正が1回8,000~15,000円、プレート矯正が5,000~10,000円、フェノール法が保険適用で5,000~10,000円程度(3割負担の場合)。
自費診療の場合、医療機関によって大きく異なります。事前に保険適用の有無と医療機関への確認が重要です。
痛みを繰り返さない!巻き爪の予防と日常ケア
巻き爪予防のためにできる日常ケアを解説します。
正しい爪の切り方とケア方法
巻き爪の予防には、正しい爪の切り方が基本です。
爪は指先と同じ長さに揃え、角を丸くする「スクエアオフカット」を心がけましょう。
爪の白い部分を少し残し、四角い形に整えるのが理想です。
深爪は避けるべきです。
爪の自然な形状を保ち、皮膚への食い込みを防ぐことが重要です。
また、爪切り後にヤスリで角を軽く整えると、引っかかりや食い込みを防げます。
さらに爪周りの保湿も乾燥によるひび割れ防止に有効です。
正しい爪切りと保湿は巻き爪予防の基本であり、日常的に実践することが推奨されます。
靴とインソールの選び方
足に合った靴とインソールの選択も、巻き爪予防に欠かせません。
つま先に負担のかかるハイヒールや先の狭い靴は可能な限り避けましょう。
適切な靴が爪への圧迫を軽減し、足指の動きを妨げないことに繋がります。
また、インソールは足裏のアーチをサポートし、歩行時のバランスを整えます。
靴とインソールの適切な選び方は、巻き爪の予防と足の健康維持に直結します。
足指の運動と歩行習慣の改善
足指の運動と正しい歩行習慣は、巻き爪の予防に効果的です。
足指をしっかり使って歩くことで、爪に適切な圧力がかかり、変形を防ぎます。
これは歩行時の地面からの力が、爪の形状を保つためです。
浮き指やかかと重心の歩き方は、爪の巻き込みを助長する可能性があるため注意が必要です。
また、運動としては足指でタオルを掴むエクササイズや、かかとから爪先まで体重を移動させる歩行練習が推奨されます。
研究では、親指に圧力をかける歩行が巻き爪改善に有効とされています。
足指の運動と歩行習慣の改善は、巻き爪の予防と全身の健康に寄与します。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では巻き爪でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
巻き爪に関するよくある質問(FAQ)
巻き爪に関するよくある質問を紹介します。
市販薬だけで治せますか?
市販薬(軟膏や抗菌剤)だけで巻き爪を根本的に治すのは難しいとされます。
炎症を一時的に抑える可能性はありますが、爪の形状を矯正するには不十分です。
爪の変形そのものを改善するには、矯正や外科的処置が必要な場合が多いです。
例えば、爪周囲の炎症に対して抗生剤の軟膏を使用しても、爪の食い込みが続く限り症状の改善は期待できません。
市販薬は応急処置として役立つ可能性がありますが、根本治療には医療機関の受診が推奨されます。
矯正と外科的処置はどちらがよい?
矯正と外科的処置の選択は、巻き爪の重症度や患者の希望によります。
軽度ならワイヤーやプレート矯正が、炎症がひどい場合は外科的処置が適する場合があります。
矯正が爪の形状を徐々に改善するのに対し、外科的処置は炎症や痛みの軽減を目指します。
医師と相談し、症状やライフスタイルに応じた治療法を選びましょう。
巻き爪は再発しやすいですか?
一般的に巻き爪は再発しやすい傾向があるとされています。
特に原因(靴や歩き方)が改善されない場合、再発リスクが高まります。
また、矯正治療後も、適切なケアを怠ると再発する可能性が報告されています。
実際にフェノール法で治療した患者でも、残った爪が再び巻くケースや、深爪を繰り返すことで再発する例が見られます。
再発を防ぐには、予防策(正しい爪切り、靴選び、歩行改善)を継続することが不可欠です。
まとめ|巻き爪の痛みは早めの対処と医師への相談を!
巻き爪の痛みは爪の形状変化や皮膚への食い込みが原因で、放置すると陥入爪を合併したり歩行困難などのリスクが高まります。
自宅でのテーピングやコットンパッキングで一時的な緩和が可能ですが、根本的な改善には医療機関での矯正や外科的処置が有効です。
また、巻き爪の予防には正しい爪切り、適切な靴選び、足指を使った歩行が重要です。
巻き爪が痛いと感じたら早めに皮膚科や形成外科を受診し、専門医の診断を受けることを強くおすすめします。
痛みを我慢せず、適切な治療とケアで快適な生活を取り戻しましょう。
皮膚科専門医 川島裕平医師からのアドバイス
巻き爪は一般的に加齢とともに出現し、放置すると進行することが多いです。
軽症のうちは見た目や爪が切りにくいなどの悩みで済みますが、進行すると歩行時の痛み、陥入爪を合併して重症化することもあります。
人生100年時代、爪の健康、足の健康は全身の健康、快適な日常生活とも密接に関連しています。
一人では悩まず、早めに医療機関を受診して相談してみましょう。
参考資料・サイト一覧
1.日本創傷外科学会 https://www.jsswc.or.jp/general/kannyusou_makidume.html
記事監修者情報

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医として、専門分野の爪疾患、重症のアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの皮膚疾患の診療、美容皮膚科診療に従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本睡眠学会
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