「最近、疲れが取れない」「やる気が出ない」「寒がりになった」といった体調の変化を感じ、「これはストレスのせい?それとも甲状腺の病気?」と不安を感じて検索されたのではないでしょうか。

甲状腺機能低下症は、特に女性に多く見られる疾患であり、その症状は日々のストレスによる不調と非常によく似ています。

結論から申し上げますと、ストレスそのものが甲状腺機能低下症の「直接的な発症原因」になることは稀です (参考:NIH PMC 1, 2)。

しかし、ストレスは甲状腺の働きや免疫システムに作用し、病気の発症を誘発したり、すでに持っている症状を悪化させたりする「重要な環境要因」であることが分かっています。

この記事では、ストレスが甲状腺に与える影響のメカニズム、甲状腺機能低下症の本来の原因、そして病気と上手に付き合いながら悪化を防ぐための具体的なストレス管理法や生活習慣について、専門的な視点から分かりやすく解説します。

ご自身の不調の原因を正しく理解し、適切な対策を取るための一助となれば幸いです。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

甲状腺機能低下症でお困りの方へ

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。

※負担軽減費とは:治験協力者が負担する交通費や時間的拘束などがあるためお金が支給されます。

治験ジャパンでは参加者の皆様に医療費の負担を軽減しながら、最新治療を受ける機会のご提供が可能です。

  • 通院1回につき1万円程度、入院1泊あたり2万円程度が負担軽減費の相場
  • 安心・信頼できる試験のみを紹介しており、安全に配慮された環境下で行われます。

詳しくはこちらから

甲状腺機能低下症とは?基本的な知識

まずは、甲状腺機能低下症という病気がどのようなものか、基本的な知識を整理しておきましょう。

甲状腺は喉仏の下にある蝶のような形をした臓器で、私たちの生命活動に欠かせないホルモンを分泌しています (参考:慶應義塾大学病院 3)。

甲状腺機能低下症の概要と役割

甲状腺ホルモンは、いわば「身体の元気の源」です。

全身の細胞に作用して新陳代謝を活発にし、体温を調節し、脳や心臓、消化管などの臓器の働きを活性化させる役割を担っています。

甲状腺機能低下症とは、何らかの原因でこの甲状腺ホルモンの分泌量が不足し、身体の機能が全体的に低下してしまう状態を指します。

車で例えるなら、アクセルを踏んでもスピードが出ず、エンジンがうまく回らない状態と言えるでしょう。

主な症状としては以下のようなものが挙げられます (参考:日本甲状腺学会 4)。

  • 全身の倦怠感、疲れやすさ
  • 寒がりになる(低体温)
  • 皮膚の乾燥、カサつき
  • 顔や手足のむくみ
  • 体重増加(食事量は変わらないのに太る)
  • 便秘
  • 動作が緩慢になる
  • 記憶力の低下、集中力の欠如
  • 気分の落ち込み、抑うつ状態
  • 月経異常(過多月経など)

これらの症状は加齢や単なる疲労、あるいはうつ病などの精神疾患とも似ているため、病気だと気づかれにくいという特徴があります。

甲状腺機能亢進症との違い

甲状腺の病気には、ホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)」もあります。

こちらは低下症とは逆に、新陳代謝が異常に高まる状態です (参考:日本甲状腺学会 4)。

亢進症では、暑がりになる、汗をかきやすくなる、動悸がする、食欲はあるのに痩せる、イライラする、手が震えるといった症状が現れます。

低下症と亢進症のイメージ

低下症はエネルギー不足で身体が停滞するのに対し、亢進症はエネルギーを過剰に消費して身体が空回りしている状態とイメージすると分かりやすいでしょう。

どちらも甲状腺の異常ですが、現れる症状は対照的です。

ストレスは甲状腺機能低下症の直接の原因ではない?その真実

「強いストレスを感じた後に甲状腺の病気になった」という話を聞くことがありますが、医学的にはストレスだけで甲状腺機能低下症が発症するわけではありません。

しかし、無関係かというとそうではなく、発症の「引き金」や「悪化要因」として深く関わっています。

ストレスと自己免疫疾患(橋本病)の関係性

甲状腺機能低下症の最も代表的な原因は「橋本病(慢性甲状腺炎)」という自己免疫疾患です。

自己免疫疾患とは、本来ウイルスなどの外敵から身を守るはずの免疫システムが、誤って自分自身の正常な細胞(この場合は甲状腺)を攻撃してしまう病気です。

橋本病の発症には遺伝的な体質が関与していますが、それだけでは必ずしも発症しません。

そこに環境要因が加わることで発症すると考えられており、その環境要因の一つとして「ストレス」が挙げられます。

免疫システムへの影響

過度なストレスは免疫システムのバランスを崩し、自己免疫反応を増悪させる可能性があります (参考:NIH PMC 2)。

ストレスが甲状腺機能に間接的に与える悪影響のメカニズム

では、なぜストレスが甲状腺に悪影響を及ぼすのでしょうか。

そのメカニズムには、脳とホルモンの複雑な連携が関係しています。

  • 視床下部-下垂体-甲状腺軸(HPT軸)への影響: 甲状腺ホルモンの分泌は、脳の「視床下部」と「下垂体」からの指令によって厳密にコントロールされています。これをHPT軸と呼びます。ストレスを感じると、脳はそれに対抗するために「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」を分泌させますが、このコルチゾールが過剰になると、HPT軸の働きを抑制してしまうことがあります。その結果、脳からの「甲状腺ホルモンを出せ」という指令(TSH)がうまく伝わらなかったり、甲状腺ホルモン(T4からT3)への変換が阻害されたりして、機能低下を招くのです (参考:NIH PMC 1)。
  • 自律神経の乱れと炎症反応: ストレスは自律神経のバランスを乱し、交感神経を過剰に優位にします。これが続くと血管収縮による血流障害や、体内の慢性的な炎症反応を引き起こしやすくなります。

このように、ストレスは直接甲状腺を壊すわけではありませんが、身体の調整システムを乱すことで、間接的に甲状腺の機能を弱めてしまうのです。

甲状腺機能低下症の主な原因(ストレス以外の要因も網羅)

ストレスの影響を理解した上で、甲状腺機能低下症を引き起こす医学的な原因について、さらに詳しく見ていきましょう。

自己免疫性甲状腺炎(橋本病)

日本における甲状腺機能低下症の原因として圧倒的に多いのが、先述した橋本病(慢性甲状腺炎)です (参考:甲状腺機能低下症について 5)。

特に中高年の女性に多く見られます。

リンパ球という免疫細胞が甲状腺組織に入り込み、慢性的な炎症を起こすことで、徐々に甲状腺が破壊され、ホルモンを作る能力が低下していきます。

ただし、橋本病と診断されても、すべての人がすぐに機能低下症になるわけではありません。

甲状腺機能が正常に保たれている期間も長く、定期的な経過観察が重要となります。

その他の原因

橋本病以外にも、以下のような原因で甲状腺機能低下症になることがあります (参考:甲状腺機能低下症について 5)。

  • 甲状腺の手術や放射線治療後: 甲状腺がんやバセドウ病の治療のために甲状腺の一部または全部を手術で摘出した場合や、アイソトープ(放射性ヨウ素)治療を受けた後に、甲状腺ホルモンが作れなくなり機能低下症になることがあります。この場合は、生涯にわたってホルモン薬の服用が必要になることが多いです。
  • 特定の薬剤の影響: 不整脈の治療薬(アミオダロン)や、精神疾患の治療薬(リチウム)、インターフェロン、一部の抗がん剤などの副作用として甲状腺機能異常が現れることがあります (参考:日本甲状腺学会 6)。
  • ヨードの過剰摂取または不足: 甲状腺ホルモンの材料となるヨード(ヨウ素)は、海藻類(特に昆布)に多く含まれています。日本人は日常的に海藻を食べるためヨード不足になることは稀ですが、根昆布療法などで過剰に摂取しすぎると、逆に甲状腺ホルモンの合成が抑制され、一過性の機能低下症になることがあります (参考:甲状腺機能低下症について 5)。この場合、ヨード摂取を制限すれば機能は回復します。
  • 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症): 生まれつき甲状腺が形成されていなかったり、ホルモンを作る能力が弱かったりする病気です。現在は新生児マススクリーニング検査で早期発見・治療が可能になっています。
  • 下垂体性(中枢性)甲状腺機能低下症: 甲状腺自体は正常でも、脳の下垂体に腫瘍などができ、甲状腺を刺激するホルモン(TSH)が出なくなることで起こる稀なタイプです (参考:日本甲状腺学会 6)。

ストレスが甲状腺機能低下症の症状を悪化させる可能性

甲状腺機能低下症と診断された後も、ストレス管理は非常に重要です。

なぜなら、ストレスは既存の症状を増幅させ、QOL(生活の質)を著しく下げる要因になるからです。

精神的なストレスがもたらす影響

甲状腺機能低下症の代表的な症状に「気分の落ち込み」「意欲低下」「倦怠感」がありますが、これらは精神的なストレスによって引き起こされる「うつ状態」と非常に似ています (参考:日本甲状腺学会 4)。

病気によるホルモン不足でメンタルが不安定になっているところに、仕事や人間関係などの精神的ストレスが加わると、症状が相乗効果で悪化してしまいます。

「薬を飲んでいるのに元気がおきない」という場合、ホルモン値は正常範囲内でも、ストレスによる自律神経の乱れが不調を長引かせている可能性があります。

肉体的なストレス(過労、睡眠不足など)がもたらす影響

長時間の労働、激しい運動、睡眠不足、感染症への罹患などは、身体にとって大きなストレス(肉体的ストレス)となります。

甲状腺機能低下症の人は、もともと代謝が落ちており、エネルギー産生効率が悪いため、健常な人よりも疲れやすく、回復に時間がかかります。

無理をして肉体的ストレスをかけ続けると、身体は防御反応としてさらに代謝を落とそうとし、だるさやむくみ、冷えといった症状が強く出るようになります。

生活習慣とストレスの複合的な影響

ストレスが多い生活は、食生活の乱れや暴飲暴食、運動不足、喫煙、過度な飲酒など、生活習慣の悪化を招きがちです。

これらの生活習慣は、甲状腺ホルモンの働きを妨げたり、自己免疫反応を促進させたりするリスクがあります。

コントロールを難しくする要因

ストレスそのものの影響に加え、ストレスによって乱れた生活習慣が、甲状腺機能低下症のコントロールを難しくしてしまうのです。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では甲状腺機能低下症でお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

  • 最新の治療をいち早く受けられることがある
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

治験ジャパンに登録する

甲状腺機能低下症の診断と治療の基本

「もしかして甲状腺機能低下症かも?」と思ったら、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。

診断と治療は確立されており、適切に対処すれば健康な人と変わらない生活を送ることができます。

診断方法

診断は主に血液検査によって行われます (参考:日本甲状腺学会 4)。

  • TSH(甲状腺刺激ホルモン): 脳下垂体から分泌され、甲状腺に命令を出すホルモン。甲状腺の機能が低下すると、脳は「もっと働け」と命令を強めるため、TSHの値は高くなります。
  • FT3、FT4(遊離甲状腺ホルモン): 実際に血液中を流れている甲状腺ホルモン。機能低下症ではこれらの値が低くなります。
  • 抗甲状腺抗体(抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体): 橋本病かどうかを調べるための検査です。これらの抗体が陽性であれば、自己免疫異常が背景にあることが分かります。

その他、甲状腺の大きさや形、腫瘍の有無を確認するために、超音波(エコー)検査を行うことも一般的です。

主な治療法

甲状腺機能低下症の治療の基本は、不足している甲状腺ホルモンを薬で補う「補充療法」です。

一般的には「レボチロキシンナトリウム(製品名:チラージンSなど)」という合成T4製剤を1日1回服用します (参考:甲状腺機能低下症について 5)。

この薬は体内で自然に作られるホルモンと同じ成分であるため、副作用はほとんどなく、妊娠中や授乳中でも安心して服用できます。

少量から開始し、血液検査でホルモン値を確認しながら、最適な量に調整していきます。

ホルモン値が正常範囲内で安定すれば、症状は劇的に改善し、むくみやだるさも取れてきます。

ただし、薬をやめると再び機能低下の状態に戻ってしまうことが多いため、多くの場合は長期的な服用が必要になります。

服用の継続が重要

自己判断で中断せず、医師の指示通りに服用を続けることが重要です。

甲状腺機能低下症を悪化させないためのストレス対策と生活習慣改善

薬による治療と並行して、ストレスを溜めない生活習慣を心がけることが、症状の安定と再発予防につながります。

今日からできる具体的な対策をご紹介します。

効果的なストレス管理法

  • リラクゼーション(ヨガ、瞑想、深呼吸): 副交感神経を優位にし、自律神経のバランスを整えるのに効果的です。
  • 適度な有酸素運動: ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、血行を促進し代謝を高めるだけでなく、ストレス解消ホルモン(セロトニン)の分泌を促します。
  • 趣味や休息の確保: 仕事や家事から離れて、自分の好きなことに没頭する時間を作りましょう。また、疲れを感じたら無理をせず、こまめに休息を取る勇気を持つことも大切です。
  • 十分な睡眠: 睡眠は傷ついた細胞を修復し、ホルモンバランスを整えるための最も重要な時間です。

食生活の見直し

  • バランスの取れた食事: 特定の食品に偏らず、タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することが基本です。
  • 特定の栄養素と甲状腺機能: 甲状腺ホルモンの合成や活性化には、亜鉛、セレン、鉄、ビタミンDなどの栄養素が必要です。これらはレバー、魚介類、ナッツ類、きのこ類などに含まれています。
  • ヨード摂取の注意点: 先述の通り、昆布などの海藻類に含まれるヨードの過剰摂取は甲状腺機能を低下させる可能性があります。日本人は日常的に海藻を食べるためヨード不足になることは稀ですが、昆布だしを毎日大量に飲む、根昆布エキスを常用するといった極端な摂取は控えましょう。通常の食事で海藻を食べる程度であれば問題ありません (参考:厚生労働省eJIM 7)。

医師との連携と定期的な受診の重要性

甲状腺機能低下症は、症状が改善しても定期的な通院が必要です。

体調の変化やストレスの状況によって、必要な薬の量が変わることがあるからです。

些細な変化も医師へ相談

「最近ストレスが多くて調子が悪い」「動悸がするようになった」といった変化があれば、些細なことでも医師に伝えましょう。

医師と二人三脚で、自分の身体の状態に合わせた最適なコントロールをしていくことが、健やかな生活を送る鍵となります。

まとめ

甲状腺機能低下症の原因について、ストレスとの関係を中心にお伝えしました。

記事のポイント

  • ストレスは甲状腺機能低下症の「直接の原因」ではありませんが、発症のきっかけや症状悪化の「重要な要因」となり得ます。
  • 主な原因は自己免疫疾患である「橋本病」であり、ストレスは免疫系やホルモンバランスを乱すことで間接的に悪影響を及ぼします。
  • 治療の基本は薬によるホルモン補充ですが、薬だけに頼らず、ストレス管理や生活習慣の見直しを行うことで、より安定した体調を維持できます。

「なんとなく不調」が続いている方は、ストレスのせいだと決めつけず、一度甲状腺の検査を受けてみることをお勧めします。

適切な治療とケアを行えば、甲状腺機能低下症は決して怖い病気ではありません。

ご自身の身体の声を聴き、無理のないペースで生活を整えていきましょう。

甲状腺能低下症に関するよくある疑問

Q1:ストレスで甲状腺機能低下症になるきっかけはありますか?
A1:はい、きっかけになる可能性はあります。強いストレスは免疫システムやホルモンバランスを乱すため、もともと橋本病などの素因がある方の場合、ストレスが引き金となって発症したり、潜在していた症状が表面化したりすることがあります (参考:NIH PMC 2)。
Q2:ストレスによってTSHの数値はどのように変化しますか?
A2:ストレスがかかると、一時的にTSH(甲状腺刺激ホルモン)の分泌が抑制されたり、逆に変動したりすることがあります。ただし、TSHの変動要因は多岐にわたるため、ストレスだけが原因とは限りません。
Q3:橋本病はストレスで悪化しますか?
A3:悪化する可能性があります。ストレスは自己免疫反応を活性化させ、甲状腺への攻撃を強める恐れがあります (参考:NIH PMC 2)。
Q4:甲状腺機能低下症と診断されたら、仕事は続けられますか?
A4:はい、続けられます。適切な治療(ホルモン補充療法)を行い、甲状腺ホルモンの値が安定すれば、健康な人と変わらない生活や仕事が可能です。
Q5:甲状腺機能低下症の予防にストレス管理は有効ですか?
A5:直接的な予防(発症を完全に防ぐこと)は難しいですが、発症のリスクを下げたり、発症後の悪化を防いだりするためには非常に有効です。