「橋本病と診断されました。この病気は治るのでしょうか?」
「一生、薬を飲み続けなければならないのですか?」
病院で診断を受けたばかりの方や、治療を続けている方にとって、「治るのか、治らないのか」は最も切実な疑問だと思います。
結論からお伝えすると、橋本病は現代の医学では、一時的な風邪のように「原因が完全になくなって元通りになる(完治)」ということは難しい病気です。
しかし、悲観する必要はありません。
なぜなら、適切な管理を行えば、症状をなくし、健康な人と全く変わらない生活を送ることができるからです。
また、実は診断されても「治療(薬)が必要ない」方も多くいらっしゃいます(参考:近畿大学 1)。
この記事では、橋本病における「治る」の意味や、薬との付き合い方、日常生活で気をつけるべき点について、医学的な観点から分かりやすく解説します。
※この記事は疾患啓発を目的としています。

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。
※負担軽減費とは:治験協力者が負担する交通費や時間的拘束などがあるためお金が支給されます。
治験ジャパンでは参加者の皆様に医療費の負担を軽減しながら、最新治療を受ける機会のご提供が可能です。
通院1回につき1万円程度、入院1泊あたり2万円程度が負担軽減費の相場
安心・信頼できるのみ試験を紹介しており、安全に配慮された環境下で行われます。
橋本病は「完治」するのか?医学的な現状と見通し
インターネットで検索すると「橋本病は治らない」「一生付き合う病気」といった言葉が並び、不安を感じているかもしれません。
ここでは、その言葉の真意を紐解いていきます。
現代医学では「完治」よりも「良い状態の維持」を目指す
橋本病(慢性甲状腺炎)は、自分の免疫システムが誤って自分の甲状腺を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです(参考:日本甲状腺学会 2)。
現在の医療では、この「攻撃してしまう体質」そのものを根本的に治して、攻撃を完全にゼロにすることは難しいとされています。
その意味では「完治(根治)はしない」と言われます。
しかし、治療のゴールは「体質を変えること」ではありません。
「甲状腺ホルモンの値を正常に保ち、症状がない状態を維持すること」です。
これを医学的には「コントロール良好な状態」と呼びます。
この状態になれば、だるさやむくみといった症状は消え、病気であることを忘れるくらい元気に過ごすことが可能です。
実は「治療不要」な人が約7〜8割もいる
意外に知られていない事実ですが、橋本病と診断されたからといって、全員がすぐに薬を飲むわけではありません。
橋本病の方のうち、実際に甲状腺の機能が低下して(ホルモンが不足して)治療が必要になるのは、全体の約4〜5人に1人未満(2割程度)と言われています(参考:近畿大学 1)。
残りの約8割近くの方は、甲状腺の腫れや抗体はあるものの、ホルモン値は正常です。
この場合、直ちに治療をする必要はなく、半年に1回程度の定期検査で「経過観察」を行うだけで、普通通りの生活を送ることができます。
甲状腺機能低下症になっても「薬」で完全にコントロール可能
もし甲状腺の働きが弱まり「甲状腺機能低下症」となった場合でも、過度に恐れる必要はありません。
不足している甲状腺ホルモンを薬(レボチロキシンナトリウム、製品名:チラーヂンSなど)で補えば、個人差はありますが数ヶ月程度でホルモン値は安定し、症状は消失していきます(参考:日本内分泌学会 3)。
数値が安定していれば、健康な人と全く同じ活動(仕事、スポーツ、旅行など)が可能です。
薬は一生飲み続ける必要がある?治療期間の真実

「一度薬を飲み始めたら、一生やめられない」という話を聞いて、服薬をためらう方もいます。
これについては、正しい理解が必要です。
一度飲み始めたらやめられないの?
甲状腺の細胞が広く破壊されており、自力で十分なホルモンを出せなくなっている場合は、長期的に(多くの場合は生涯にわたって)薬を飲み続ける必要があります。
これは、視力が悪い人が眼鏡をかけ続けるのと同じで、「足りない機能を補って快適に過ごすため」に必要な措置です。
一方で、一時的な炎症(無痛性甲状腺炎など)によって一時的に機能が低下している場合は、炎症が治まれば甲状腺の機能が回復し、薬が不要になるケースもあります。
最も避けるべきなのは、「治らないなら飲んでも無駄だ」「調子が良いからやめよう」と自己判断で薬を中断することです。
急に中断すると、極度のホルモン不足に陥り、心臓や代謝に大きな負担がかかるリスクがあります。
薬を減らす・やめる判断は、必ず主治医の血液検査に基づいて行ってください。
甲状腺ホルモン薬は「補充」である
処方される甲状腺ホルモン薬に対して、「強い薬なのではないか」「副作用が怖い」と不安を持つ方もいます。
しかし、この薬は痛み止めや抗生物質のような異物ではなく、もともと人間の体の中にあるホルモンを化学的に合成したものです。
つまり、サプリメントのように「足りない栄養素を補う」感覚に近い治療法です。
適切な量(足りない分だけ)を服用している限り、重篤な副作用が出ることは極めて稀な、安全性の高い薬です。
橋本病が「治った」ように生活するために(日常生活・食事)
薬による治療以外に、日常生活で気をつけることで、より健康な状態を保つことができます。
やってはいけないことはある?(ヨウ素制限など)
「海藻を食べてはいけないのですか?」という質問が多く寄せられます。
ヨウ素(昆布などに多く含まれる)を過剰に摂取すると、甲状腺の働きが抑制されることがあります。
ですが、これは「毎日大量の昆布だしを飲み続ける」「根昆布療法をする」といった極端な場合に限られます(参考:日本内分泌学会 3)。
一般的な日本人の食生活(お味噌汁や海苔を食べる程度)であれば、厳密な制限は必要ありません。
むしろ、気にしすぎてストレスを溜める方が体に良くありません。
ただし、うがい薬(イソジンなどヨウ素を含むもの)の毎日の過剰使用などは避けたほうが無難です。
詳細は主治医に確認しましょう。
「太りやすい」「痩せない」は治るのか
甲状腺機能が低下すると代謝が落ちるため、確かに太りやすくなったり、むくみやすくなったりします(参考:厚生労働省 4)。
しかし、薬でホルモン値が正常に戻れば、代謝機能も回復します。
「薬を飲んでいるのに痩せない」という場合は、まだホルモン値が安定していないか、あるいは単なるカロリーオーバーなど別の要因も考えられます。
ホルモン値が正常化すれば、「痩せにくい体質」も改善に向かいます。
ストレスと免疫の関係
橋本病は自己免疫疾患ですので、免疫のバランスが乱れると悪化する可能性があります。
ストレス、過労、睡眠不足は免疫を不安定にさせます。
「病気を治そう」と必死になるよりも、規則正しい生活を心がけ、心身ともにリラックスして過ごすことが、結果として一番の良薬となります。

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では橋本病でお困りの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
最新の治療をいち早く受けられることがある
専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
よくある質問(寿命・妊娠・遺伝)
Q. 橋本病だと寿命は短くなる?
A. いいえ、短くはなりません。 適切に治療を受け、甲状腺ホルモン値を正常に保っていれば、健康な人と変わらない寿命を全うできます。生命保険への加入も、条件付きや無条件で可能なケースがほとんどです。放置して動脈硬化や心臓病のリスクを高めないことが重要です。
Q. 妊娠・出産はできる?
A. 可能です。 橋本病であっても、多くの女性が無事に出産されています(参考:国立成育医療研究センター 5)。ただし、妊娠中や妊娠希望時は、通常時よりも厳密なホルモンコントロール(少し高めに保つなど)が必要になります。胎児の成長に甲状腺ホルモンは不可欠ですので、妊娠を考えた時点で必ず主治医に相談し、薬の量を調整してもらいましょう。
まとめ
橋本病は、「完治(病気がなくなること)」はしなくても、「克服(コントロールして健康に生きること)」は十分に可能な病気です。
- 約8割近くの人は、経過観察のみで治療不要(参考:近畿大学 1)。
- 治療が必要でも、薬で不足分を補えば健康な人と変わらない。
- 寿命や妊娠への影響も、適切な管理で防げる。
「治らない」という言葉に悲観せず、「一病息災(一つ病気がある方が、健康に気を使うので長生きできる)」のつもりで、上手に付き合っていきましょう。
不安なことがあれば、一人で抱え込まず、甲状腺専門の医師に相談してください。
参考資料・文献一覧
- 近畿大学医学部「甲状腺の病気について」 https://www.kindai.ac.jp/health/about/thyroid/
- 一般社団法人日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」 https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html
- 一般社団法人日本内分泌学会「橋本病(慢性甲状腺炎)」 https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=41
- 厚生労働省研究班 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「甲状腺の病気」 https://w-health.jp/woman_trouble/thyroid/
- 国立成育医療研究センター「橋本病と妊娠」 https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/bosei-leaf03.pdf
