健康診断の結果を見て、「eGFR(推算糸球体濾過量)」の数値が下がっていることにショックを受けたことはありませんか? 

「腎臓が悪くなると透析になる」という話を聞き、なんとかして数値を上げたい、回復させたいと検索されている方も多いでしょう。

結論からお伝えすると、慢性的に低下してしまった腎機能(慢性腎臓病:CKD)を、特定の食べ物だけで劇的に「上げる(元通りに治す)」ことは、現代医学では非常に難しいとされています(参考:厚生労働省 4)。

しかし、諦める必要は全くありません。

食事の内容を見直し、残っている腎臓への負担を減らすことで、「機能の低下を食い止め、数値を維持する(守る)」ことは十分に可能だからです。

この記事では、腎臓内科の標準的な診療ガイドラインに基づき、腎臓を守るために今日から実践できる「3つの基本ルール」と「おすすめの食材」について分かりやすく解説します。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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そもそもeGFRは食事で上がるの?【腎臓を守る考え方】

インターネット上には「腎機能が回復する食べ物」といった情報が溢れていますが、情報の受け取り方には注意が必要です。

「上げる」ではなく「維持する・守る」が正解

腎臓のフィルターの役割をしている「糸球体(しきゅうたい)」は、一度壊れて傷跡(硬化)になってしまうと、基本的には再生しません。

したがって、食事療法の最大の目的は、「まだ元気に働いている残りの腎臓(ネフロン)に過度な負担をかけず、これ以上壊れないように大切に使うこと」になります(参考:日本腎臓学会 1)。

結果として、負担が減ることで一時的な機能低下が改善し、数値が少し上向く(安定する)ことはありますが、これは「治った」というよりは「腎臓が楽になった」状態と捉えるのが正確です。

ステージによって変わる「野菜・果物」の常識

腎臓病の食事というと「野菜や果物(カリウム)はダメ」と思われがちですが、これは腎機能の低下具合(ステージ)によって正解が異なります

  1. 初期~中期(ステージG1~G3aなど):
    • 腎臓がまだカリウムを排出できる段階では、野菜や果物の摂取が多い人ほど、死亡リスクや透析導入リスクが低いという報告があります。これらに含まれるカリウムやアルカリ成分が腎保護に働く可能性があるため、高カリウム血症がない限り摂取が推奨される場合があります(参考:日本腎臓学会 1)。
  2. 進行期(ステージG3b~G5):
    • 腎機能が低下しカリウムを尿から捨てられなくなると、体内に蓄積し「高カリウム血症(不整脈などのリスク)」の原因になります。この段階では医師の指示に基づく制限(例えば1日1,500mg以下など)が必要になります(参考:日本腎臓学会 1)。

※ご自身のステージや食事制限の有無については、必ず主治医の指示に従ってください。

腎機能低下を防ぐ食事の「3大原則」

腎臓を守るための食事療法には、どのステージの方にも共通する重要な「3つの柱」があります。

【原則1】塩分制限(1日6g未満を目指す)

腎臓にとって最大の敵は「高血圧」です。

塩分を摂りすぎると血圧が上がり、細かい血管の塊である腎臓に直接ダメージを与えます。 

また、塩分過多は薬の効果を弱めてしまうこともあります。

  1. 目標: 1日6g未満(小さじ1杯強)(参考:日本腎臓学会 1)。
  2. コツ:
    • 「かける」より「つける」(醤油やソースは小皿で)。
    • 酸味(レモン・酢)や香り(シソ・スパイス・だし)を活用して満足感を出す。
    • 汁物(味噌汁・ラーメンのスープ)は残す、または1日1杯までにする。

【原則2】タンパク質の適正化と「質」へのこだわり

タンパク質は筋肉や血液を作る大切な栄養素ですが、代謝された後に「燃えカス(尿素窒素などの老廃物)」が出ます。

この燃えカスを濾過して捨てるのが腎臓の仕事です。 つまり、タンパク質を摂りすぎると、腎臓が残業続きの過労状態になってしまいます

ただし、極端に減らしすぎると筋肉が落ちて体力や免疫力が低下(サルコペニア・フレイル)してしまいます。

ガイドラインでは、ステージG3aまでは「過剰摂取を避ける」、ステージG3b以降で「制限(0.6~0.8g/kg体重/日)を考慮する」とされています(参考:日本腎臓学会 1)。

量は医師の指示通りに調整しつつ、「アミノ酸スコア」の高い良質なタンパク質(魚、肉、卵など)を選ぶことが基本となります。

ですが、最近では大豆製品などの植物性タンパク質も腎臓への負担が少ないとして推奨されています(参考:日本腎臓学会 1)。

【原則3】十分なエネルギー(カロリー)確保

ここが最も誤解されやすいポイントです。

食事制限というとカロリーも減らしてしまいがちですが、腎臓病の食事療法では「エネルギーはしっかり摂る」が鉄則です。

エネルギーが不足すると、身体は自分の筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとします。

その際、筋肉から老廃物が出てしまい、かえって腎臓に負担をかけてしまうのです(これを「異化」と呼びます)。

 一般的に、標準体重あたり25~35kcal/日のエネルギー摂取が推奨されています(参考:日本腎臓学会 1)。

揚げ物や炒め物で油を適度に使ったり、タンパク質を含まないデンプン食品(春雨、低タンパク米)やお菓子(飴、ゼリー)を活用してエネルギーを確保しましょう。

腎臓をいたわる!積極的に摂りたい食べ物・成分

制限の範囲内で、腎臓の保護に役立つとされる食材を上手に取り入れましょう。

オメガ3脂肪酸(青魚・アマニ油・エゴマ油)

サバ、イワシ、サンマなどの青魚や、アマニ油に含まれる「オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)」には、血液をサラサラにし、血管の炎症を抑える働きがあるとして、一般的な健康維持の観点から注目されています。

 動脈硬化を防ぐことは、血管の塊である腎臓を守ることにもつながる可能性があります。

肉のメインディッシュを週に数回、魚料理に置き換えるのがおすすめです。

抗酸化作用のある野菜(下処理を工夫して)

腎臓病の進行には「酸化ストレス(体のサビ)」が関わっていると言われています。

ビタミンやポリフェノールを含む野菜は抗酸化作用が期待できます。

前述の通り、初期ステージでは野菜の摂取が推奨されますが、カリウム制限がある方は以下の工夫をして取り入れましょう。

  1. カリウムを減らす調理法:
    • 野菜は細かく切ってから「茹でこぼす」(カリウムはお湯に溶け出します)。
    • 水にさらす。
  2. おすすめ食材:
    • タマネギ、パプリカ、キャベツなど。

食物繊維(海藻・きのこ・こんにゃく)

便秘になると、腸内で発生した毒素が体内に吸収され、腎臓へ負担をかけます(腸腎連関)。

食物繊維を摂って便通を良くすることは、腎臓を守るためにも大切です。

※海藻やきのこはカリウム・リンが多い傾向にあるため、制限がある場合は「茹でて食べる」などの工夫が必要です。

注意が必要!腎臓に負担をかけやすい食べ物

加工食品・インスタント食品

ハム、ベーコン、練り物、インスタントラーメンなどは、塩分が高いだけでなく、食品添加物として「無機リン」が多く含まれています。

リンは腎臓機能が低下すると排出されにくくなり、血管の石灰化や骨もろさの原因になります。

添加物のリンは吸収率が非常に高いため、できるだけ「素材から調理する」ことを心がけましょう。

カリウムが多い果物(制限がある場合)

バナナ、メロン、キウイ、アボカド、ドライフルーツなどはカリウムが非常に豊富です。

カリウム制限がある場合は、缶詰の果物(シロップは捨てる)を利用するのも一つの手です(缶詰加工の過程でカリウムがある程度抜けているため)。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では腎臓病や腎疾患の方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

腎臓と食べ物に関するよくある質問(FAQ)

Q. 腎臓病に納豆はだめですか?

A. 禁止ではありませんが、量とタレに注意が必要です。 納豆は良質なタンパク質であり、食物繊維も豊富ですが、カリウムも含まれています。また、付属のタレは塩分が高いです。1パックを半分にしたり、タレを減らして薬味で食べるなどの工夫をすれば、一概に食べてはいけないわけではありません。 ※ワーファリン等の薬を服用している場合は禁止されることがあります。

Q. コーヒーは飲んでも平気ですか?

A. 最新のガイドラインでは、腎臓保護の可能性も示唆されています。 かつてはカフェインの影響などが懸念されましたが、最新のガイドラインでは「コーヒー摂取はCKDの進展抑制効果が期待できる」と記載されています(参考:日本腎臓学会 2)。 ただし、ブラック以外で砂糖やミルクを多用する場合や、カリウム制限が厳しい場合は注意が必要です。適量(1日1~2杯程度)を楽しむ分には問題ないと考えられます。

Q. 水をたくさん飲めば毒素が出ますか?

A. 飲みすぎによる効果は証明されておらず、むくみがある場合は危険です。 脱水は腎機能を悪化させるため、適切な水分補給(1日1リットル以上など)は重要です(参考:日本腎臓学会 2)。しかし、必要以上に大量の水を飲んでも毒素が余計に出るわけではなく、腎機能低下で尿が作れない状態では、体に水が溜まり(溢水)、心不全や肺水腫の原因になります。 主治医から水分制限の指示がないか確認し、喉の渇きに応じて適切に摂取しましょう。

まとめ:今日からできる「腎臓を守る」ひと工夫

「eGFRを上げる」魔法の食べ物はありませんが、「塩分を控える」「質の良い食事を適量とる」という地道な積み重ねが、5年後、10年後のあなたの腎臓を確実に守ります。

  1. まずは「減塩」から徹底する。
  2. 医師の指示に合わせてタンパク質とカリウムを調整する。
  3. エネルギー不足にならないようしっかり食べる。

この3つを意識しながら、定期的に尿検査と血液検査を受け、eGFRの推移を医師と一緒に見守っていきましょう。

参考資料・文献一覧

  1. 一般社団法人日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023 第8章 栄養」 https://jsn.or.jp/data/gl2023_ckd_ch08.pdf
  2. 一般社団法人日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023 第6章 生活習慣」 https://jsn.or.jp/data/gl2023_ckd_ch06.pdf
  3. 一般社団法人日本腎臓学会「生活指導ガイドライン」 https://jsn.or.jp/general/guide/note/page14.php
  4. 厚生労働省 e-ヘルスネット「CKD / 慢性腎臓病」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-073