「片足だけ急にむくんで痛い」
「診断されたけれど、本当に治るのだろうか」
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)と診断されたり、その疑いがあったりする場合、命に関わる病気というイメージから強い不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、深部静脈血栓症は、早期に発見し適切な治療を行えば「治る(十分にコントロールできる)」病気です(参考:日本循環器学会 1)。
かつては長期入院が必要なイメージがありましたが、近年は優れた飲み薬の登場により、通院だけで治療できるケースも増えています。
しかし、一方で「放っておいても治るだろう」と油断することは禁物です。
この記事では、深部静脈血栓症がどのように治っていくのか、治療期間の目安、そして自己判断で放置してはいけない理由について、医学的な観点から分かりやすく解説します。
※この記事は疾患啓発を目的としています。

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。
※負担軽減費とは:治験協力者が負担する交通費や時間的拘束などがあるためお金が支給されます。
治験ジャパンでは参加者の皆様に医療費の負担を軽減しながら、最新治療を受ける機会のご提供が可能です。
通院1回につき1万円程度、入院1泊あたり2万円程度が負担軽減費の相場
安心・信頼できるのみ試験を紹介しており、安全に配慮された環境下で行われます。
結論:深部静脈血栓症は適切な治療で「治る」ことが多い
深部静脈血栓症は、足の奥にある静脈に血のかたまり(血栓)ができる病気ですが、医療機関で標準的な治療を受ければ、多くの場合は予後(経過)が良好な病気です。
「治癒」とはどういう状態か
この病気における「治る」とは、大きく分けて2つのゴールがあります。
- 血栓が消失、または小さくなり血流が再開すること
- 血栓が肺に飛ぶ「肺血栓塞栓症」を予防できていること
必ずしも血栓が100%きれいに消え去らなければならないわけではありません。
薬によって血栓が固まり、血管の壁に同化して安定し、血液の通り道(血流)が十分に確保されれば、日常生活に支障のない状態まで回復します(参考:慶應義塾大学病院 3)。
昔と違い「通院・飲み薬」での治療が可能に
以前は、深部静脈血栓症の治療といえば入院して点滴(ヘパリン等)を行うのが一般的でした。
しかし、近年ではDOAC(ドアック:直接作用型経口抗凝固薬)と呼ばれる、効果が安定しており食事制限なども少ない新しい経口抗凝固薬が普及しました。
これにより、重症例や肺塞栓を併発している場合を除き、外来への通院と飲み薬だけで治療が完結するケースが非常に増えています(参考:日本循環器学会 1)。
「入院して仕事を休まなければならない」という不安から受診をためらう必要はなくなってきています。
深部静脈血栓症の治療期間はどのくらい?
「いつまで薬を飲み続けなければならないのか」は、患者さんにとって最大の関心事の一つです。
基本的な治療期間は「3ヶ月〜6ヶ月」
一般的に、血栓ができてから安定・消失するまでの期間を考慮し、最低3ヶ月間は抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用することが推奨されています(参考:日本循環器学会 1)。
多くの専門医やガイドラインでは、発症の誘引(原因)が一過性のもの(手術後、長時間のフライト、怪我など)であれば、3ヶ月程度の服薬で治療を終了できるとしています。
治療期間が長引くケース・薬を飲み続けるケース
一方で、以下のような場合は再発リスクが高いため、3ヶ月〜6ヶ月以上の長期、あるいは生涯にわたって薬の服用が必要になることがあります。
- 原因不明で発症した場合(特発性)
- がん(悪性腫瘍)の治療中である場合
- 遺伝的に血栓ができやすい体質の場合
- 過去に何度も深部静脈血栓症を繰り返している場合
医師は「血栓が消えたか」だけでなく、「薬をやめたら再発しないか」を慎重に見極めて治療終了を判断します。
入院が必要になるケースとは
飲み薬で治療できるようになったとはいえ、以下のような状況では入院治療が必要となります。
- 肺血栓塞栓症(息苦しさ、胸の痛み)を併発している場合
- 血栓が非常に大きく、広範囲に及んでいる場合
- 出血のリスクが高く、慎重な管理が必要な場合
【要注意】深部静脈血栓症は自然に治る?放置するリスク

インターネット上の検索では「自然治癒」を期待する声も見られますが、ここには大きな誤解とリスクがあります。
自然治癒を期待して放置してはいけない理由
ごく小さな血栓であれば、体の持つ「線溶(せんよう)」という働きによって自然に溶けてなくなることも稀にあります。
しかし、「自分の血栓が自然に消えるタイプか、命に関わるタイプか」を自分で判断することは不可能です。
「ただの筋肉痛だろう」「そのうち治るだろう」と放置している間に血栓が大きくなり、ある日突然、歩いた拍子に血栓が剥がれて心臓や肺へ飛んでしまうリスクがあります。
医療機関の見解としては、自然治癒を期待して様子を見ることは推奨されていません(参考:厚生労働省 2)。
最大のリスク「肺血栓塞栓症」
深部静脈血栓症の最も恐ろしい合併症が、肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)です。
足の静脈でできた血栓が血流に乗って流れ出し、肺の動脈に詰まってしまう病気です。
突然の呼吸困難、胸痛、最悪の場合は突然死に至ることもあります(参考:日本循環器学会 1)。
適切な治療を行えばこのリスクは大幅に減らせますが、未治療の状態が一番危険です。
足のむくみが残る「血栓後症候群(PTS)」
命は助かっても、治療が遅れると足に後遺症が残ることがあります。
これを血栓後症候群(PTS)と呼びます。
血栓によって静脈の中にある「弁」が壊れてしまい、血液が心臓に戻りにくくなる状態です。
- 慢性的な足のむくみ
- 足のだるさ、重さ
- 皮膚の変色(茶色くなる)
- 治りにくい皮膚の潰瘍
これらを防ぐためにも、発症早期(できればむくみが出てから数日以内)に治療を開始することが重要です(参考:佐賀大学医学部附属病院 4)。
具体的な治療方法と流れ
診断がついた場合、どのような治療が行われるのか解説します。
抗凝固療法(血液をサラサラにする薬)
治療の中心です。
今ある血栓をこれ以上大きくしないこと、そして新しい血栓ができないようにすることで、自分の体が持つ「血栓を溶かす力」を助けます。
飲み薬(内服薬)と注射薬(ヘパリンなど)がありますが、現在は飲み薬(特にDOAC)が主流です。
弾性ストッキングによる圧迫療法
医療用の締め付けの強いストッキング(弾性ストッキング)を着用します。
足を圧迫することで、表面の静脈を抑えて深部静脈への血流を速め、うっ滞(血のよどみ)を防ぎます。
主にむくみの改善や、血栓後症候群の予防のために行われます(参考:慶應義塾大学病院 3)。
カテーテル治療や手術(重症の場合)
血栓が広範囲に及び、足が壊死する危険があるような重症例で用いられます。
カテーテルを使って直接血栓を吸引したり、血栓を溶かす薬を直接注入したりする治療が行われることもあります。
治った後の生活で気をつけること
治療を終えた後、あるいは治療中に再発を防ぐためには生活習慣の改善も大切です。
再発予防のための水分補給と運動
血液がドロドロにならないよう、こまめな水分補給を心がけましょう。
また、ふくらはぎは「第2の心臓」と呼ばれ、ポンプの役割をして血液を心臓に送り返しています。
ウォーキングや足首の曲げ伸ばし運動を行い、筋ポンプ作用を働かせることが重要です(参考:佐賀大学医学部附属病院 4)。
長時間の座り仕事・移動時の注意点
デスクワークや長時間の乗り物移動など、同じ姿勢が続く時は特に注意が必要です。
- 1時間に1回は立ち上がって歩く
- 座ったままでも足首を回したり、つま先立ちのような運動をする
- ゆったりとした服装を心がける

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では深部静脈血栓症の方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
最新の治療をいち早く受けられることがある
専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
FAQ(よくある質問)
Q. 足が痛いですが、何科に行けばいいですか?
A. 「循環器内科」または「血管外科(心臓血管外科)」を受診してください。近くに専門の科がない場合は、まずは一般内科やかかりつけ医に相談し、超音波検査などができる病院を紹介してもらいましょう。
Q. 患部をマッサージしてもいいですか?
A. 自己判断での強いマッサージは絶対にやめてください。 血栓ができている状態でふくらはぎを強く揉むと、血栓が剥がれて肺に飛んでしまう(肺血栓塞栓症)リスクがあります。医師の指示がある場合を除き、むやみに触らないようにしましょう(参考:厚生労働省 2)。
まとめ:早期受診が「早くきれいに治す」近道
深部静脈血栓症は、決して「不治の病」ではありません。
医学の進歩により、多くの場合は飲み薬でコントロールし、治癒を目指せる病気になりました。
しかし、「治る」ための最大の条件は「早期発見・早期治療」です。
「片足だけ急に腫れてきた」
「ふくらはぎを押すと痛い」
このような症状がある場合、自己判断でマッサージをしたり様子を見たりせず、できるだけ早く循環器内科や血管外科を受診してください。
早い段階で治療を始めれば、それだけ治療期間も短く済み、後遺症のリスクも減らすことができます。
参考資料・文献一覧
- 日本循環器学会「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」 https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/JCS2017_ito_h.pdf
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 血栓症」 https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000665768.pdf
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「肺血栓塞栓症」 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000622/
- 佐賀大学医学部附属病院 検査部「かわら版 2025年3月号(特集 深部静脈血栓症について)」 https://kensabu.hospital.med.saga-u.ac.jp/2025_kawara_1gou/
