「目薬をさしても、すぐに目が乾いてしまう」

 「夕方になると目が痛くて、パソコン画面を見るのが辛い」

もしあなたがこのような症状に悩み続けているなら、それは単なる目の疲れではなく、ドライアイが「重症化」しているサインかもしれません。

ドライアイは、日本の成人の約6人に1人(推定2,000万人以上)、オフィスワーカーに限れば3人に1人が罹患しているとも言われる国民病です(参考:ドライアイ研究会 1)。

ですが、その「重症度」によって適切な対処法が異なることをご存じでしょうか?

軽度のうちは市販薬でも対処可能な場合がありますが、重症度が進むと角膜(黒目)に傷がつき、視力の低下や激しい痛みを引き起こすため、専門的な治療が必要になります。

この記事では、眼科診療ガイドラインや医学的知見に基づき、ドライアイの「重症度の目安」、それぞれの具体的な症状、そして状態に応じた適切な治療法について、分かりやすく解説します。

今の自分の目の状態がどのレベルにあるのかを知り、正しいケアへの第一歩を踏み出しましょう。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

ドライアイでお困りの方へ

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。

※負担軽減費とは:治験協力者が負担する交通費や時間的拘束などがあるためお金が支給されます。

治験ジャパンでは参加者の皆様に医療費の負担を軽減しながら、最新治療を受ける機会のご提供が可能です。

ドライアイの重症度はどう決まる?症状のレベル分類目安

日本の最新の診断基準(2016年改訂)では、ドライアイを細かく重症度分類することはしていません。

ですが、国際的なワークショップ(TFOS DEWS II)や過去の基準では、症状と目の表面の状態に応じてレベル分けを行うことがあります(参考:日本眼科学会 2)。

ここでは、一般的な症状の目安として分かりやすい4段階の分類について解説します。

※以下の分類はあくまで目安であり、確定診断は眼科医による検査が必要です。

【レベル1:軽度】自覚症状はあるが角膜の傷は軽微

もっとも多くの人が該当する段階です。

  1. 主な症状:
    • 「なんとなく目が乾く」「目がゴロゴロする」「目が疲れやすい」と感じる。
  2. 目の状態:
    • 涙の量はやや不安定ですが、角膜(目の表面)に目立った傷はありません。
  3. 生活への影響:
    • コンタクトレンズの装用時や、長時間パソコン作業をした時に不快感を感じる程度です。少し休めば回復することが多いです。

【レベル2:中等度】日常生活に支障が出始める

放置すると徐々に悪化しやすい段階です。

  1. 主な症状:
    • 「1日に何度も目薬をささないと辛い」「光がまぶしい」「目が痛い」と感じる頻度が増えます。
  2. 目の状態:
    • 涙の安定性が低下し、角膜に点状の細かい傷(点状表層角膜症)がついている可能性があります(参考:日本眼科学会 3)。
  3. 生活への影響:
    • 仕事の後半になると目が開けていられない、エアコンの風が当たると辛いなど、生活の質(QOL)に影響が出始めます。

【レベル3:重度】強い痛みと視機能への影響

専門的な治療が不可欠な段階です。

  1. 主な症状:
    • 「常に目が痛い」「目を開けているのが苦痛」「見えにくさ(かすみ)がある」状態です。
  2. 目の状態:
    • 角膜や結膜の傷が広範囲に及び、涙がほとんど目の表面を保護できていません。まばたきの摩擦でさえ目にダメージを与えてしまいます。
  3. 生活への影響:
    • 読書や運転、パソコン作業などの継続が困難になります。「目が痛くて頭痛がする」など、全身症状を伴うこともあります。

【レベル4:最重度】合併症のリスクと専門治療の必要性

非常に深刻な状態で、失明には至らないものの、著しい視力低下や感染症のリスクがあります

  1. 主な症状:
    • 激しい目の痛み、充血、目やに、視界がぼやける。
  2. 目の状態:
    • 角膜上皮の剥離や、角膜の混濁が見られることがあります(参考:厚生労働省 4)。
  3. 背景にある病気:
    • このレベルの場合、「シェーグレン症候群」や「スティーブンス・ジョンソン症候群」などの自己免疫疾患や重篤な疾患が原因である可能性も考慮されます(参考:日本眼科学会 3)。

あなたはどのタイプ?重症度に関わる2つの原因分類

重症度を知る上で重要なのが、あなたのドライアイが「どのタイプか」ということです。

ドライアイは原因によって大きく以下のタイプに分類されます。

1. 涙の量が足りない「涙液減少型」

涙を作る工場(涙腺)の働きが低下し、分泌される涙の量そのものが減ってしまうタイプです。

高齢の方や、シェーグレン症候群の方に多く見られます。

「絶対的な量」が足りないため、目の表面が常に露出した状態になりやすく、重症化しやすい傾向があります。

2. 涙がすぐに乾く「蒸発亢進型」と「BUT短縮型」

現代のドライアイ患者の多くが関与していると言われるのがこのタイプです。

涙の量は十分に出ているのに、「質の悪い涙」であるために、すぐに蒸発してしまう状態です。

  1. マイボーム腺機能不全(MGD):
    • まぶたの縁にある油を出す腺(マイボーム腺)が詰まり、涙の表面を覆う「油層」が不足することで、涙がすぐに蒸発します(参考:日本角膜学会 5)。
  2. BUT短縮型ドライアイ:
    • 近年、日本の眼科領域で特に重視されている概念です。「涙液層破壊時間(BUT)」が5秒以下と極端に短く、目を開けて数秒で目の表面が乾いてしまいます(参考:日本眼科学会 2)。

検査で「涙の量は正常ですね」と言われたのに、「でも目が痛いんです」と訴える方の多くがこのタイプです。

【セルフチェック】病院に行くべき重症サイン

正確な診断は眼科での検査が必要ですが、簡易的なセルフチェックでリスクを確認してみましょう。

10秒間、目を開けていられますか?(BUTチェック)

これは、涙の保水力(BUT)を測る簡易テストです。

ドライアイの定義では、目を開けてから涙の膜が壊れるまでの時間(BUT)が「5秒以下」であることが診断基準の一つとなっています(参考:日本眼科学会 2)。

  1. 数回まばたきをして、目を開きます。
  2. そのまま、まばたきを我慢して秒数を数えます。
判定
  • 10秒以上: 正常範囲の可能性が高いです。
  • 5秒~9秒: ドライアイの疑いがあります。
  • 5秒未満: ドライアイの可能性が非常に高いです。

特に、目を開けた瞬間に痛みや乾きを感じて閉じてしまう場合は、涙の膜が瞬時に壊れている(BUT短縮型)可能性があります。

放置してはいけない危険な自覚症状リスト

以下の症状がある場合は、重症度が高い(レベル2以上)可能性があります

早めに眼科を受診してください。

  • 目薬をさしても10分も経たずに乾きを感じる。
  • 日によって視力が変わる、夕方になると極端に見えにくくなる(実用視力の低下)。
  • 光をまぶしく感じる(羞明感)。
  • 目が痛くて開けていられない時間がある。
  • 目やにが多く出る。

重症度・タイプ別の最新治療アプローチ

「ドライアイはずっと付き合っていくしかない」と諦めていませんか?

眼科では「TFOT(Tear Film Oriented Therapy:涙液の層別治療)」と呼ばれる、涙の足りない成分(水分、ムチン、油分)をターゲットにした治療が行われており、適切に組み合わせることで症状を改善できる可能性があります(参考:日本眼科学会 3)。

軽度~中等度の基本ケア

まずは点眼薬と環境改善でコントロールします。

  1. 点眼薬の選択:
    • 人工涙液・ヒアルロン酸: 足りない水分を補給します。防腐剤フリーのものが角膜への負担が少なく推奨されます。
    • ムチン産生促進薬(ジクアス・ムコスタなど): 涙を目の表面に留める物質「ムチン」を増やし、涙の質を改善します。特にBUT短縮型に効果的とされています(参考:PMDA 6)。
  2. 環境調整:
    • 加湿器の使用、エアコンの風を避ける、意識的なまばたき(PC作業中など)が重要です。

重度・改善しない場合の専門治療

点眼薬だけでは改善しない(レベル3以上、あるいは難治性の)場合、眼科では以下のようなステップアップ治療が検討されます。

  1. 涙点プラグ:
    • 涙の排出口(涙点)にシリコン製の小さなプラグ(栓)を差し込み、涙を目の表面に溜める治療です。自分の涙を最大限に活用できるため、涙液減少型の方に高い効果が期待できます(参考:日本眼科学会 3)。
  2. 自己血清点眼:
    • ご自身の血液から血清成分を抽出し、点眼薬として使用する方法です。市販薬にはない栄養成分が含まれており、重度の角膜障害を修復する効果がありますが、保険適用外(自費診療)であり、実施施設は限られます(参考:日本眼科学会 3)。
  3. IPL治療(マイボーム腺治療):
    • 特殊な光を照射してマイボーム腺の詰まりを解消する新しい治療法です。「蒸発亢進型(MGD)」の方に効果が期待されていますが、こちらも一般的には自由診療となります。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本ではドライアイでお悩みの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

よくある質問(FAQ)

Q: ドライアイは完治しますか?

ドライアイは高血圧や糖尿病と同じ「慢性疾患」の側面があり、完全に「治って終わり」というよりは、「症状が出ない良い状態を維持する」ことが治療のゴールとなります。しかし、適切な治療(プラグや適切な点眼)を行うことで、点眼薬がいらないレベルまで回復するケースも少なくありません。

Q: 重症化すると失明することはありますか?

一般的なドライアイだけで失明に至ることは極めて稀です。しかし、重症化して角膜の傷から細菌感染を起こすと(角膜潰瘍など)、視力が著しく低下したり、最悪の場合は失明のリスクが生じたりする可能性があります(参考:厚生労働省 4)。たかが乾きと思わず、痛みがある場合は必ず受診してください。

Q: 市販の目薬で治らないのはなぜですか?

市販の目薬は主に「水分補給(一時的な潤い)」や「充血除去」を目的としたものが多く、ドライアイの本質的な原因である「涙の質の異常(ムチン不足や油分不足)」や「角膜の傷」を治す有効成分が含まれていないことがあるためです。また、防腐剤が含まれている市販薬を頻繁に使いすぎると、かえって角膜を傷つけ、ドライアイを悪化させる(角膜毒性)こともあります。

まとめ:自己判断せずに眼科で「あなたのレベル」を知ろう

ドライアイの診断において重要なのは、以下の要素です。

  1. 自覚症状の強さ(痛み、見えにくさ)
  2. 角膜・結膜の傷の程度
  3. 涙の安定性(BUTが5秒以下か)

「ただ目が乾くだけ」と放置していると、角膜の傷が深くなり、視力の低下や感染症のリスクを招くことになります。

特に「10秒間目を開けていられない」「目薬が効かない」と感じている方は、専門的な治療が必要な状態である可能性があります

眼科を受診し、「自分の重症度はどの程度か?」「涙の量は減っているのか、質が悪いのか?」 を診断してもらうことが、辛い症状から解放されるための最短ルートです。

まずは一度、専門医に相談してみましょう。

参考資料・文献一覧
  1. ドライアイ研究会「ドライアイ Q&A」 https://dryeye.ne.jp/
  2. 公益財団法人日本眼科学会「日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000172618.pdf
  3. 公益財団法人日本眼科学会「ドライアイ診療ガイドライン」 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/dryeye_guideline.pdf
  4. 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 角膜混濁」 https://www.pmda.go.jp/files/000240112.pdf
  5. 日本角膜学会「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/MGD.pdf
  6. 参天製薬株式会社「ジクアス点眼液3% 添付文書」 https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1319758Q1021_1_11/