お子さんが風邪をひくたびに、ゼーゼー、ヒューヒューと苦しそうな呼吸音が聞こえてくると、親御さんとしては胸が締め付けられる思いがするものです。

「これはただの風邪の咳?」「もしかして、喘息なのでは…」と、不安でいっぱいになるかもしれません。

特に、普段は元気なのに風邪をひいた時だけ症状が出る場合、判断に迷うのは当然のことです。

実はその症状、ウイルス感染をきっかけに気管支が狭くなる「風邪誘発型喘息」のサインである可能性があります。なお「風邪誘発型喘息」は通称で、日本小児耳鼻咽喉科学会の学会誌に掲載された総説では、特定のアレルゲンによらずウイルス感染などで喘鳴を繰り返すタイプを「非IgE関連喘息(ウイルス誘発性喘息)」として整理しています※1

この記事では、風邪の時の症状が喘息なのかどうかを見分けるポイントから、その原因、そして家庭でできる適切な対応まで、分かりやすく解説します。

お子さんの健やかな成長を守るための第一歩として、正しい知識を身につけましょう。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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風邪をひくと咳や喘鳴が…それは喘息の兆候?

風邪と喘息の初期症状は似ている部分も多く、見分けるのは簡単ではありません。

しかし、注意深く観察すると、いくつか特徴的な違いが見えてきます。

「ただの風邪」と「風邪誘発型喘息」症状の違いを見極める

風邪による咳は、主に喉の炎症や鼻水が喉に流れることが原因で起こります。いわゆる「コンコン」という乾いた咳や、「ゴホゴホ」という痰が絡んだ咳が中心です。

一方、喘息の可能性がある咳には、以下のような特徴が見られます。

  • 呼吸のたびに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴:ぜんめい)が聞こえる。
  • 夜間から明け方にかけて咳がひどくなる傾向がある。
  • 運動した後や、笑ったり泣いたりした後に咳き込む。
  • 一度咳き込むとなかなか止まらない。
  • 息を吐くときの方が苦しそうに見える。

これらのサインは、気管支が狭くなって空気の通り道が細くなっていることを示唆しています。

特に、風邪をひくたびにこうした症状を繰り返す場合は、喘息の可能性を考える必要があります。

「喘鳴(ぜんめい)」が指しているもの

喘鳴は、息を吐くときに胸から聞こえる連続した高い音を指し、空気の通り道が狭くなっているサインです。未就学児では比較的よくみられる症候で、(細)気管支炎と気管支喘息が高頻度の原因になります。乳幼児の喘息を見極める際も、この「息を吐くときの喘鳴(呼気性喘鳴)」かどうかが重要な手がかりになります※1

一度きりのゼーゼーで喘息と判断できない理由

重要なのは、子供が一度ゼーゼーしたからといって、すぐに喘息と診断されるわけではないという点です。

特に乳幼児期は、気道がもともと細く未発達なため、RSウイルスなどの特定のウイルス感染によって「喘息様気管支炎」や「急性細気管支炎」といった、喘息とよく似た症状を起こすことがあります。急性細気管支炎は冬期に流行しやすく、その大半はRSウイルス感染によるもので、パラインフルエンザウイルスやヒトメタニューモウイルス、アデノウイルスでも起こります。

これは一時的なもので、成長とともに気道が太くなれば、風邪をひいてもゼーゼーしなくなるケースも少なくありません。海外の出生コホート研究でも、3歳までに喘鳴を経験した子のうち学童期まで症状が続いて喘息と診断されたのは一部にとどまっており、乳幼児期の喘鳴がそのまま喘息につながる頻度は高くないと報告されています※1

そのため、医師は一度の症状だけでなく、症状を繰り返しているかどうか、家族のアレルギー歴なども含めて総合的に判断します。

受診の目安:どんな時に病院へ行くべきか?

お子さんに以下のような様子が見られたら、かかりつけの小児科を受診しましょう。早めの相談が、的確な診断と治療につながります。

  • ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音が聞こえる。
  • 咳で夜眠れない、または起きてしまう日が続く。
  • 息苦しさから、食事や水分をあまり取れない。
  • 肩で息をする、呼吸に合わせて胸がペコペコとへこむ(陥没呼吸)。
  • 顔色が悪く、ぐったりしている。
  • 話すのがつらそうに見える。

ただちに受診したい「強い発作のサイン」

独立行政法人環境再生保全機構は、遊べない・話せない・歩けない、食事がほとんどとれない、横になれない・眠れない、顔色が悪い(唇や爪の赤みがない)、ぼーっとしているか普段より興奮している、遠くからでも明らかにゼーゼーがわかる、息を吸うときにのどやろっ骨の間がはっきりへこむ・小鼻が開く、脈がとても速い、といったサインが一つでもあれば、ただちに受診が必要であり救急車を要請してもかまわないとしています※2

特に、呼吸が明らかに苦しそうな場合や、唇の色が悪い(チアノーゼ)場合は、夜間や休日でも救急外来を受診する必要があります。

なぜ風邪で喘息のような症状が出てしまうのか

普段は何ともないのに、なぜ風邪、つまりウイルスに感染すると喘息のような症状が誘発されるのでしょうか。

その背景には、子供の気道の特性とウイルスの影響が深く関わっています。

ウイルス感染が気道を過敏にさせるメカニズム

風邪の原因となるライノウイルスやRSウイルスなどが気道に感染すると、粘膜に炎症が起こります。

もともと喘息の素因を持っている子供の場合、この炎症が引き金となり、気道が通常よりもはるかに敏感な状態(気道過敏性)に陥ります。

わずかな刺激、例えば冷たい空気やホコリなどにも過剰に反応してしまい、気管支の周りの筋肉が収縮。これが気道を急激に狭め、空気の通りを悪くすることで、ゼーゼーという喘鳴や激しい咳といった喘息発作につながるのです。

環境再生保全機構の「ぜん息などの情報館」も、子どものぜん息発作のきっかけとして最も頻度が高いのは風邪であり、その多くがウイルス感染症で、ライノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルスなどが原因として知られているとしています※3

気管支が狭くなる「喘息体質」の背景

風邪をひいても誰もが喘息症状を起こすわけではありません。

背景には、アレルギー反応を起こしやすい、あるいは気道が刺激に敏感に反応しやすいといった、いわゆる「喘息体質」が関係していると考えられています。

両親や兄弟にアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなど)や喘息がある場合、子供も同様の体質を受け継ぐ可能性が高まります。

ただし、遺伝的要因がすべてではありません。環境再生保全機構の「おしえて先生!子どものぜん息ハンドブック」は、ぜん息になりやすい体質は遺伝する一方で発症には環境因子の影響も大きく、両親がぜん息でも必ず発症するわけではないと説明しています※4

アレルギーの有無と非アトピー型喘息の可能性

小児喘息と聞くと、ダニやハウスダスト、ペットの毛などのアレルゲンが原因となる「アトピー型喘息」をイメージする方が多いかもしれません。

しかし、特に乳幼児期においては、特定のアレルゲンがはっきりしない「非アトピー型喘息」も多く見られます。

このタイプは、アレルギー検査をしても陽性反応が出ないものの、ウイルス感染をきっかけに喘息症状を繰り返すのが特徴です。

「アレルギーがないから喘息ではない」とは限らないことを知っておくことが大切です。

「IgE関連」と「非IgE関連」という分け方

喘息と診断されたあとは、ダニなどへの特異的IgE抗体が関わる「IgE関連喘息(アトピー型)」と、ウイルス感染やタバコ煙・冷気への曝露などで起こる「非IgE関連喘息」に分類されます。乳幼児期の非IgE関連喘息の一部は、学童期までにアトピー型あるいは非アトピー型へ移り変わることがあり、年齢とともに病態が変化するため長期のフォローアップが必要になります※1

子供の喘息、診断のポイントと検査の流れ

医療機関では、どのような流れで喘息の診断が行われるのでしょうか。

問診で聞かれる内容や検査について理解しておくと、スムーズに受診できます。

小児喘息の診断基準と重要なサイン

小児喘息の診断は、問診と診察を軸に、必要に応じた検査を組み合わせて総合的に行われます。医師は、特徴的な症状が繰り返し起きているかどうかに最も注目します。

環境再生保全機構の「もしかしてぜん息?<検査や診断>」も、受診時に明らかな症状がなくても、これまでの経過や検査から喘息と診断されることがあると説明しています※5

診断の際に確認される主なポイントは以下の通りです。

  • ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴を繰り返しているか。
  • 特徴的な咳(夜間・早朝、運動後など)が長引いていないか。
  • 気管支拡張薬(気道を広げる薬)を使うと症状が改善するか。
  • 本人や家族にアレルギー疾患の既往歴があるか。

これらの情報を総合的に評価し、喘息の可能性を探っていきます。

繰り返し症状が出ることが診断の決め手に

前述の通り、喘息の診断で最も重要なのは「症状の反復性」です。

1〜2回、風邪の後にゼーゼーしただけでは、まだ喘息とは断定できません。しかし、同じような症状を3回以上繰り返すようであれば、小児喘息と診断される可能性が高まります。

乳幼児の喘息はどう診断されるのか

日本小児アレルギー学会の「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023」は、Mindsガイドラインライブラリにも収載された現行版で、乳幼児のウイルス感染による喘鳴の治療なども臨床上の疑問として取り上げています※6

同ガイドラインでは、5歳以下の反復性喘鳴のうち、24時間以上続く明らかな呼気性喘鳴を3エピソード以上繰り返し、β2刺激薬の吸入後に呼気性喘鳴や努力性呼吸などの改善が認められる場合に「乳幼児喘息」と診断するとされています。ただし3エピソードは治療開始の必須条件ではなく、初めての喘鳴でも重症であれば喘息として治療することがあり、エピソードとエピソードの間に1週間程度以上の無症状期間があるかどうかも確認されます※1

受診の際には、いつから、どんな時に、どのくらいの頻度で症状が出ているのかを記録したメモ(咳日記など)を持参すると、医師が診断する上で役立ちます。

どんな検査が行われる?(アレルギー検査など)

診断を補助するために、いくつかの検査が行われることがあります。

  • アレルギー検査(血液検査や皮膚テスト): ダニ、ハウスダスト、カビ、ペットなど、喘息の増悪因子となりうるアレルゲンを特定するために行います。アトピー型か非アトピー型かを見極める参考にもなります。
  • 呼吸機能検査: スパイロメトリーという機械を使い、息を思いきり吸ったり吐いたりして、気道が狭くなっていないかを調べます。思いきり息を吸って吐き出す動作が必要なため乳幼児には難しく、年長児から行われるのが一般的です。
  • 胸部X線(レントゲン)検査: 喘息以外の呼吸器疾患(肺炎など)が隠れていないかを確認するために行われることがあります。

これらの検査は、診断を確定させるためだけでなく、治療方針を決める上でも重要な情報となります。日本小児アレルギー学会の「患者さん向け 小児ぜん息治療ガイドライン」によれば、呼吸機能検査では1秒率が70%(小児では80%)以下に低下している場合に喘息が疑われます※7

受診前に整理しておきたい記録

診断の決め手は「回数」だと受け取られがちですが、ガイドラインは3エピソードを必須条件とはしていません。つまり家庭で数えるべきは回数そのものよりも、一回一回のエピソードの中身です。

24時間以上続いたか、息を吐くときの音だったか、薬で改善したか、その合間は無症状だったか。この4点がそろった記録は、回数の申告よりも診断の助けになります。

環境再生保全機構が受診時に伝えるポイントとして挙げている項目を、家庭で書き留める形に並べ替えると次のようになります※5

  • どんなときに咳が出るか: 風邪をひいたとき/寝入り/明け方/運動した後/梅雨や台風の時期/大笑いしたとき
  • どんな音がするか: ヒューヒュー/ゼーゼー/ゼロゼロ/ゴロゴロ(息を吸うときか、吐くときか)
  • 咳の強さの程度は: 眠れない/しゃべれない/息苦しい
  • 咳以外の症状は: 発熱/鼻水/おう吐
  • 治療内容や効果は: 吸入して治った/飲み薬を1か月飲んだ
  • いつごろから: 生後○か月ごろから/1か月前から
  • どのくらいの頻度か: 月に1回/年に数回

症状が出ているときの様子を短い動画で撮っておくと、診察時に伝わりやすくなります。

診断されたらどうする?子供の喘息治療と管理の基本

もしお子さんが喘息と診断されても、過度に心配する必要はありません。

現在の喘息治療は大きく進歩しており、適切な管理を続けることで、症状をコントロールしながら健康な子供たちと変わらない生活を送ることが可能です。

治療の目標:発作を予防し、健やかな生活へ

喘息治療の最終的な目標は、発作を完全にゼロにすることだけではありません。

最も大切なのは、発作をできるだけ起こさないように予防し、症状がない状態を長く維持することで、学業や運動、遊びなど、子供らしい日常生活を制限なく送れるようにすることです。

ガイドラインが挙げる3つの治療目標

日本小児アレルギー学会の「患者さん向け 小児ぜん息治療ガイドライン」は、治療の目標として、昼も夜も症状がないこと、肺の機能が正常であること、日常生活を普通に行えることの3点を挙げています。よい状態を保つことが、大人への持ち越しを防ぐ方法と位置づけられています※7

この目標を達成するために、医師と保護者が協力し、長期的な視点で治療に取り組むことが重要になります。

主な薬物療法(吸入薬など)の種類と使い方

喘息の薬には、大きく分けて2つの種類があります。

  • 長期管理薬(コントローラー): 発作を予防するための薬です。主に、気道の炎症を抑える「吸入ステロイド薬」が使われます。毎日継続して使用することで、気道の過敏な状態を落ち着かせ、発作が起きにくい状態を保ちます。
  • 発作治療薬(リリーバー): 発作が起きてしまった時に、症状を和らげるための薬です。狭くなった気管支を速やかに広げる効果のある「短時間作用性β2刺激薬」などが用いられます。これはあくまで一時的な対症療法であり、日常的に使うものではありません。

これらの薬を、お子さんの年齢や重症度に合わせて適切に使い分けることが治療の基本です。

治療はいつまで続けるもの?長期的な視点

「薬はいつまで続ければいいの?」という疑問は、多くの親御さんが抱くものです。

長期管理薬は、症状がない時も続けることに意味があります。自己判断で中断してしまうと、気道の炎症が再燃し、再び発作を起こしやすくなるため注意が必要です。

治療期間は、症状が安定している期間を見ながら、医師が慎重に判断します。

小児喘息は、成長とともに症状が軽快したり、消失したりする(寛解する)ケースも少なくありません。ここでいう寛解は薬を使わなくても症状が出ない状態を指し、薬をやめてから5年以上症状がない状態が治癒と呼ばれます。焦らず、かかりつけ医と相談しながら根気強く治療を続けていきましょう。

家庭で実践する喘息ケアと発作時の対応

喘息の管理は、医療機関での治療と家庭でのセルフケアの両輪で進めていくことが大切です。

日常生活での工夫や、いざという時のための備えについて解説します。

日常生活でできる環境整備と予防策

発作の引き金となる要因を、日常生活からできるだけ取り除くことが予防の基本です。

  • 掃除と換気を徹底する: アレルゲンとなりやすいホコリやダニ、カビを減らすため、こまめな掃除と定期的な換気を心がけます。換気には室内の湿度を下げる意味もあります。
  • 寝具のケア: 布団や枕、シーツはダニの温床になりやすい場所です。防ダニカバーを利用したり、こまめに洗濯や布団乾燥機にかけたりするのが効果的です。1〜2週間に1回、布団専用ノズルで掃除機をかける方法もあります。
  • 適切な温度・湿度管理: 空気が乾燥しすぎたり、急激な温度変化があったりすると、気道を刺激しやすくなります。加湿器などを利用して、快適な室内環境を保ちましょう。ただしチリダニは室温20℃以上・湿度60%以上で繁殖しやすいため、加湿のしすぎには注意が必要です。
  • 受動喫煙を避ける: タバコの煙は、気道にとって非常に強い刺激物です。家族の禁煙は、喘息の子供を守る上で不可欠です。

ダニ対策の目安について、環境再生保全機構の「おしえて先生!子どものぜん息ハンドブック」は、床の掃除は週に1〜2回、1平方メートルにつき20秒以上を目安に入念に掃除機をかけること、寝具は天日干しや布団乾燥機で乾燥させ、ダニを通さない高密度繊維の布団カバーを使うことを勧めています※4

また同機構の「実践しよう!悪化因子への対策」は、タバコの煙が喘息治療薬の効果を弱めることもわかっているとして、室内での喫煙は避け、家族が禁煙することを勧めています※8

風邪をひかないための体調管理、つまり規則正しい生活やバランスの取れた食事、十分な睡眠も重要な予防策です。

症状が出た時の応急処置と冷静な対応

もし発作が起きてしまったら、親御さんが慌ててしまうとお子さんの不安も増大してしまいます。

まずは深呼吸をして、冷静に対応することが何よりも大切です。

  1. 楽な姿勢をとらせる 体を起こして座らせ、少し前かがみの姿勢にさせると呼吸が楽になります。衣服を緩めるのも良いでしょう。
  2. 医師から処方された発作治療薬を使用する 指示された用法・用量を守って、吸入薬などを使います。効果の確認は、吸入した場合は15分後、内服した場合は30分後が目安です。
  3. 水分補給 温かい飲み物などを少しずつ飲ませ、落ち着かせます。
  4. 症状の変化を観察する 薬を使っても症状が改善しない、呼吸がどんどん苦しくなる、顔色が悪いといった場合は、ためらわずに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。

発作のときに間違えやすい2つのこと

気管支拡張薬の貼り薬(ホクナリンテープなど)は効果があらわれるまでに数時間かかるため、発作をすぐに止めたいときの薬としては適していません。また、ゼーゼーしていてもぐっすり眠っている場合は、起こして薬を飲ませたり吸入させたりする必要はありません※2

あらかじめ、かかりつけ医と発作時の対応について具体的に相談し、緊急時の連絡先や手順を確認しておくと安心です。

喘息を悪化させる要因

良かれと思って行ったことが、かえって症状を悪化させてしまうケースもあります。例えば、咳を止めようとして市販の咳止め薬を安易に使うことは避けたいところです。

喘息の咳は気道の慢性的な炎症から起こるため、市販薬で咳だけを抑えても炎症そのものは残ります。なお「咳止めが痰の排出を妨げる」といった説明も見られますが、小児の喘息に市販の咳止めを使うことの是非を明示した公的資料は確認できませんでした。自己判断で使う前に、かかりつけ医に相談してください。

また、発作時に背中を強く叩くといった民間療法についても、有効性や安全性を示す公的な根拠は見当たりません。医師の指示に基づいた対応を優先しましょう。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では喘息でお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

  • 最新の治療をいち早く受けられることがある
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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親御さんの不安を和らげるために

お子さんの病気と向き合う中で、親御さん自身が大きな不安やストレスを抱えてしまうことも少なくありません。

最後に、少しでも心を軽くするための大切な考え方をお伝えします。

「母親のせい」ではないことを知る

「自分の育て方が悪かったのでは」「アレルギー体質にしてしまったのは自分のせいかも」と、ご自身を責めてしまう親御さん、特に母親は少なくありません。しかし、それはまったくの誤解です。

小児喘息の発症は、遺伝的な体質や環境要因が複雑に絡み合って起こるものであり、決して誰か一人の責任ではありません。

自分を責めることは、何の解決にもならず、かえってご自身を追い詰めてしまいます。大切なのは、過去の原因を探すことではなく、今、そして未来に向けてお子さんのために何ができるかを考えることです。

喘息は適切な管理でコントロールできる病気

かつて喘息は「治らない病気」というイメージが強かったかもしれません。

ですが、医療の進歩により、今や喘息は「適切に管理することで、健康な人と変わらない生活を送れる病気」へと変わっています。

正しい治療とセルフケアを継続すれば、症状をコントロールし、運動や旅行などを楽しむことも十分に可能です。悲観的にならず、前向きに病気と向き合っていく姿勢が大切です。

かかりつけ医との連携が子供の未来を守る

喘息の治療は長期にわたることが多いため、信頼できるかかりつけ医との良好な関係が非常に重要です。

日々の症状の変化や治療に関する疑問、生活上の不安など、どんな些細なことでも気軽に相談できるパートナーを見つけましょう。

医師と保護者がチームとなってお子さんを支えることで、治療はより効果的なものになります。一人で抱え込まず、専門家と連携しながら、お子さんの健やかな未来を育んでいきましょう。

まとめ

お子さんが風邪をひくたびにゼーゼーと苦しそうな呼吸をすることは、親御さんにとって大きな心配の種です。

その症状は、単なる風邪の悪化ではなく、ウイルス感染が引き金となる小児喘息のサインかもしれません。

この記事の要点

重要なのは、症状を「繰り返す」かどうかです。夜間や明け方の咳、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴が風邪のたびに見られる場合は、早めに小児科を受診しましょう。

たとえ喘息と診断されたとしても、現在の治療法は非常に進んでいます。

医師と連携し、発作を予防する治療と家庭での環境整備を根気強く続けることで、症状をコントロールし、お子さんは元気に毎日を送ることができます。この記事で得た知識が、お子さんの健康とご家族の安心につながることを心から願っています。

子供の喘息に関するよくある疑問

Q1: 風邪から喘息になる子供は多いのでしょうか?
風邪、特にウイルス感染がきっかけで喘息の症状が初めて現れたり、悪化したりする子供は少なくありません。これを「風邪誘発型喘息」と呼ぶことがあり、医学的には非IgE関連喘息(ウイルス誘発性喘息)に当たります。特に気道が未熟な乳幼児期に多く見られる傾向があります。ただし、風邪をひいた子供全員が喘息になるわけではなく、もともと喘息になりやすい体質を持っている場合に発症しやすいとされています。
Q2: 子どもが喘息になるきっかけには何がありますか?
子供が喘息を発症する、あるいは発作を起こすきっかけ(誘因)は様々です。代表的なものとして、風邪などのウイルス感染、ダニ・ハウスダスト・カビ・ペットの毛などのアレルゲン、タバコの煙、運動、気圧の変化や冷たい空気、ストレスなどが挙げられます。何が誘因になるかは子供によって異なります。
Q3: 小児喘息の発作は通常何日で治まるものですか?
発作の程度や治療内容によって異なり、「何日で治まる」と一律に示した公的資料は確認できませんでした。軽い発作であれば、処方された発作治療薬(気管支拡張薬)の吸入などで症状が和らぐことが多く、効果の確認は吸入後15分、内服後30分が目安とされています。苦しくて眠れない、気管支拡張薬の効果が不十分、手元に気管支拡張薬がない、強い発作のサインがあるといった場合は、経過を待たずに医療機関を受診してください。
Q4: 喘息と診断された場合、運動はできますか?
はい、できます。むしろ、適切な管理下での運動は、体力や心肺機能の向上につながるため推奨されています。ただし、運動によって発作が誘発されること(運動誘発喘息)があるため、事前にウォーミングアップを十分に行ったり、冬など空気が冷たく乾燥しているときはマスクを使ったり、医師の指示に従って運動前に気管支拡張薬を吸入したりするなどの対策が必要です。運動中に咳やゼーゼーが出始めたときは運動をいったん止め、水分をとって楽な姿勢で休ませます。どのような運動が適しているか、どんな点に注意すべきか、かかりつけ医とよく相談しましょう。