「皮膚の一部が白くなってきた気がする」

「これってストレスが原因?」

ある日突然、皮膚に白い斑点ができる尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)。

見た目の変化に対する戸惑いとともに、「なぜ自分が?」という原因への不安を抱えている方は少なくありません。

インターネットで検索すると「ストレス」や「遺伝」といった言葉が並び、何を信じればよいのか分からなくなってしまうこともあるでしょう。

結論から申し上げますと、尋常性白斑の根本的な原因は現代医学でも完全には解明されていません。

しかし、研究が進む中で「自己免疫の異常」や「酸化ストレス」が有力な原因であると考えられるようになってきました(参考:日本皮膚科学会 1)。

この記事では、尋常性白斑が発症するメカニズムをはじめ、多くの方が気にするストレスとの関係、遺伝や生活習慣などの要因について、医学的な視点からわかりやすく解説します。

原因を正しく理解することは、適切な対策と治療への第一歩です。

ぜひ最後までお読みください。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

尋常性白斑でお困りの方へ

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尋常性白斑の主な原因は「自己免疫」の異常

現在、尋常性白斑の発症原因として最も有力視されているのが「自己免疫説」です。

自分の細胞を自分で攻撃してしまう仕組み

私たちの体には本来、ウイルスや細菌などの外敵から身を守るための「免疫システム」が備わっています。

しかし、何らかの理由でこの免疫システムに異常が生じると、誤って自分自身の正常な細胞を「敵」とみなして攻撃してしまうことがあります。

これを自己免疫反応と呼びます。

尋常性白斑の場合、免疫細胞(T細胞など)が皮膚の色を作る「メラノサイト(色素細胞)」を標的にして攻撃・破壊してしまいます。

その結果、メラニン色素が作られなくなり、その部分の皮膚が白く色が抜けてしまうのです(参考:日本皮膚科学会 1)。

なぜ免疫異常が起きるのか?

「なぜ免疫が誤作動を起こすのか?」という点については、まだ完全には明らかになっていません。

単一の原因ではなく、生まれ持った体質(遺伝的要因)と、後天的な環境要因(酸化ストレス、外傷、日焼け、化学物質など)が複雑に絡み合って発症すると考えられています(参考:日本皮膚科学会 1)。

神経説や酸化ストレス説

自己免疫説以外にも、いくつかの説が研究されています。

  • 神経説:
    • 神経の末端からメラノサイトを傷つける物質が放出されているという説。皮膚の神経に沿って白斑ができる「分節型」の原因として有力視されています。
  • 自己破壊説(酸化ストレス説):
    • 色素を作る過程や環境要因によって細胞内に「活性酸素」などの有害な物質(酸化ストレス)が蓄積し、メラノサイト自身が傷ついてしまうという説。最近の研究では、この酸化ストレスがきっかけとなって自己免疫反応が誘発されると考えられています(参考:日本皮膚科学会 1)。

いずれにせよ、メラノサイトが破壊・消失することで白斑が生じるという結果は共通しています。

ストレスは白斑の直接的な原因になるのか?

「最近ストレスが多かったから白斑ができたのでしょうか?」

 診察室でも非常によく聞かれる質問です。

ストレスは「発症・悪化のトリガー」

医学的には、精神的なストレス”だけ”で白斑が発症するとは断定できません。

しかし、ストレスが発症や悪化の「引き金(トリガー)」になる可能性は指摘されています(参考:日本皮膚科学会 2)。

過度な精神的ストレスや肉体的疲労は、体内の酸化ストレスを増加させたり、自律神経や免疫システムのバランスに影響を与えたりする可能性があります。

これが、潜在的に持っていた発症リスクを表面化させたり、症状を進行させたりする要因になり得ると考えられています。

精神的ストレスと身体的ストレス

ストレスには、仕事や人間関係などの「精神的ストレス」だけでなく、睡眠不足、過労、激しい運動、不規則な生活といった「身体的ストレス」も含まれます。

心と体をいたわることは、白斑の進行を抑える上で大切なケアの一つと言えます。

注意すべき環境要因と生活習慣

自己免疫やストレス以外にも、日常生活の中に白斑を誘発・悪化させる要因が潜んでいます。

これらを知ることは、これ以上の拡大を防ぐために非常に重要です。

物理的な刺激(ケブネル現象)

尋常性白斑には、「正常な皮膚に物理的な刺激が加わると、その部分が白斑になる」という特徴的な性質があります。

これを「ケブネル現象」と呼びます(参考:日本皮膚科学会 1)。

以下のような刺激は、新しい白斑を作る原因になり得ます。

  • 下着やベルト、靴による締め付けや摩擦
  • 腕時計やアクセサリーによる擦れ
  • ナイロンタオルでのゴシゴシ洗い
  • 掻き傷、切り傷、虫刺され
  • 強い日焼け(サンバーン)

特に、ベルトのあたる腰回りや、下着のラインに白斑が出やすいのはこのためです。

患部を保護し、皮膚への無用な刺激を避けることが予防につながります。

化学物質の影響

稀なケースですが、特定の化学物質に触れることで白斑が生じることがあります(化学白斑)。

過去には特定の美白成分(ロドデノールなど)が含まれる化粧品によって白斑様症状が起きた事例も報告されています(参考:消費者庁 5)。

フェノール類などの特定の化学物質がメラノサイトにダメージを与えることが原因です。

現在は安全対策が進んでいますが、肌に異変を感じた場合は直ちに使用を中止し、専門医に相談することが重要です。

「遺伝」や「うつる可能性」についての疑問

白斑について、ご自身だけでなくご家族の心配をされる方も多くいらっしゃいます。

親から子へ遺伝する確率は?

「親が白斑だと、子供にも必ず遺伝しますか?」という不安の声も聞かれます。

結論から言うと、尋常性白斑は「必ず遺伝する病気」ではありません。

確かに、遺伝的ななりやすさ(体質)は関与していると考えられており、過去の調査では血縁者に白斑の方がいるケースは20〜30%程度あるという報告もあります(参考:日本皮膚科学会 3)。

しかし、残りの大多数の方は家族歴に関係なく発症しています。

「親が白斑だから子供も必ずなる」というわけではないので、過度に心配しすぎる必要はありません。

他の人にうつることはある?

尋常性白斑は、細菌やウイルスによる感染症ではありません。

したがって、人にうつることは絶対にありません (参考:日本皮膚科学会 2)。

温泉やプールに一緒に入ったり、タオルを共有したりしても感染することはないため、周囲の方も正しい理解を持つことが大切です。

他の病気が原因で白斑ができることもある?

尋常性白斑は、皮膚だけの病気である場合が大半ですが、稀に他の病気と関連して現れることがあります。

合併しやすい自己免疫疾患

白斑の原因が「自己免疫の異常」であることから、同じく自己免疫が関わる他の病気を合併することがあります(参考:日本皮膚科学会 1)。

  • 甲状腺疾患: 橋本病(慢性甲状腺炎)やバセドウ病など
  • 円形脱毛症
  • 糖尿病
  • 貧血(悪性貧血)

これらが必ず併発するわけではありませんが、皮膚科を受診した際に、必要に応じて血液検査などで甲状腺機能などをチェックすることが推奨されています。

尋常性白斑は「難病」なのか?

医学的な位置づけと「治りにくさ」

インターネット上で「難病」という言葉を見かけて不安になる方もいるかもしれません。 

公的な医療費助成の対象となる国の「指定難病」には、尋常性白斑自体は含まれていません(※全身性の重篤な自己免疫疾患の一部症状として現れる場合などを除く)(参考:厚生労働省 4)。

しかし、医学的に「治療に反応しにくく、完治が難しい病気(難治性疾患)」であることは事実です。

かつては「治らない病気」と言われることもありましたが、現在は紫外線療法(ナローバンドUVBなど)や外用薬(ステロイド、タクロリムスなど)、皮膚移植術など、有効な治療法が進歩しています(参考:日本皮膚科学会 1)。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では尋常性白斑の方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

まとめ

尋常性白斑の原因について、現在の医学的見解をまとめます。

  • 根本原因: 完全には解明されていないが、「自己免疫の異常」と「酸化ストレス」によるメラノサイトの破壊が主因。
  • ストレス: 直接の原因ではないが、発症や悪化の引き金(トリガー)になり得る。
  • 環境要因: 摩擦や怪我(ケブネル現象)、日焼け、特定の化学物質などが新たな白斑を作る原因になる。
  • 遺伝と感染: 遺伝的体質は関与するが絶対ではなく、人には絶対にうつらない

「原因不明」と言われると不安になりますが、メカニズムの研究は進んでおり、それに基づいた治療法も確立されています。

ストレスを溜め込みすぎず、皮膚への刺激を避ける生活を心がけながら、根気よく皮膚科専門医と一緒に治療に取り組んでいきましょう。

参考資料・文献一覧

  1. 日本皮膚科学会「尋常性白斑診療ガイドライン第2版 2025」 https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/Hakuhan2025.pdf
  2. 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 尋常性白斑」 https://qa.dermatol.or.jp/qa20/index.html
  3. 日本皮膚科学会「尋常性白斑診療ガイドライン(第1版 2012)」 https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/guideline_vv.pdf
  4. 厚生労働科学研究成果データベース「白斑の診断基準及び治療指針の確立」 https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/17273
  5. 消費者庁「薬用化粧品使用中止のお願い及び回収状況について」 https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2013/129/doc/129_130806_shiryou9-4.pdf