治験って危険なの?応募する前に知っておきたいアレコレ

2020年6月9日

治験参加の条件とは?

高額アルバイトというイメージのある治験です。
興味があるという方は少なくありませんが、その一方でやや不安を覚える方も多いようです。

治験が、まだ承認されていない薬の臨床試験であるからでしょう。
確実に安全という保証の無い治験薬を投与されれば、どのような副作用が出るか分からないと不安になるのも無理はありません。

それでは治験は本当に危険なのでしょうか。
今回は、治験に応募する前に知っておきたい事柄について解説いたします。

治験って危険なの?

治験はまだ厚生労働省によって承認されていない治験薬を使った臨床試験であるため、不安を覚える方がいるのも無理はありません。
治験に応募した際には、副作用の説明もあり、余計に不安になってしまう方もいらっしゃいます。

治験は、死亡事故も起きてはいますが、ごくまれな例であります。

治験による死亡事故はまれに発生する

残念ながら治験によって起こってしまった死亡事故も存在します。

フランス

2016年、フランスで、新薬の治験に参加していた被験者のうち1人が死亡、5名が神経系合併症を起こすという事故が起こったのです。

この治験は健康な成人男性を対象にしたものだったため、世界に衝撃を与えました。
動物実験である程度の安全性が証明された治験薬が、重篤な副作用を起こしたのです。

日本

2019年、日本国内で、てんかんの治療薬の治験に参加した20代の男性が、薬の投与の終了後、電柱から飛び降りて死亡するという事件が発生しました。

男性は、入院中から幻覚や幻聴を訴えていました。
この事件に関しては、厚生労働省は治験と死亡事故との因果関係を否定できないと発表しました。

精神科医が不在という体制で治験が行われていたこと、文書を用いてのリスクの説明がなされていなかったことから、より配慮すべき事例であったと考えられています。

治験は絶対危険というわけではない

しかしこうした死亡事故は極めてまれであり、治験は絶対に死亡するというほど危険ではないという事も覚えておく必要があります。

そもそもこうした死亡事故が取り上げられることは、治験における死亡事故が珍しい事態だから、ともいえるでしょう。

たとえば、日本国内では毎日交通事故が起こっています。2019年の交通事故の件数はなんと1日平均1,043件、つまり1分間から2分間に1回は交通事故が起こっているという計算になります。

もちろんこうした交通事故すべてがニュースや新聞で取り上げられるわけではありません。それは交通事故が非常に起こりやすく、一般的になってしまっているからです。

その一方で、治験は事故が起こることが非常にまれであるため、死亡者が出るとセンセーショナルに取り上げられます。治験での事故が起こりにくいものだからこそ、注目されるのでしょう。

高額報酬は身体的負担の軽減を目的とする

治験は危険だから高額の報酬が得られると考える方もいらっしゃいます。
確かに、治験の終了後にもらえる報酬、いわゆる「負担軽減費」は、一般的なアルバイトの時給や日当と比較するとかなり高いものです。

高額とされるアルバイトであっても、日給1万円から12,000円程度であることがほとんどです。
治験の負担軽減費は通院タイプでも7,000円から12,000円程度、入院タイプの治験であれば一泊あたり1万円から2万円以上のこともあります。

しかし、治験は「危険だから」負担軽減費が高額に設定されているわけではないのです。
たとえば、入院しなければならない治験の場合、拘束時間が長くなります。
採血も頻繁に行われます。治験薬がどの程度体内に吸収され、どのくらいの時間で体外に排出されるかを調べるためです。

採血の回数はかなり多く、場合によっては1日に20回から30回行われる場合もあります。
痛みをともなうこともあり、決して楽なものではありません。
よく眠れない、めまいがするといった軽度の副作用を経験することもあるかもしれません。

こうした心身の負担に対して支払われるのが高額の負担軽減費なのです。
したがって、治験は未知の薬を使っているから危険というのは、正しい認識ではありません。

治験は慎重に段階を経て行われる

治験は、いきなり開発途中の薬を人間に投与するものではありません。

新たな薬が開発されると、その薬を動物に投与して数年間にわたり安全性を確認します。
この段階で重篤な副作用がある場合には、そもそも治験薬となりません。

動物に投与してある程度安全であることが分かっているものだけが、治験に用いられます。つまり人間に有害、もしくは悪影響を与える可能性があるとわかっている治験薬を投与することはありません。

もちろん、副作用が出る恐れは否定できませんが、重篤な副作用が出るとわかっていて投与することはありません。
さらに、治験には段階があり、その過程で少しでも危険な症状が認められれば即座に中止できます。

治験に参加する人に対しては、ごく少量の薬が投与されます。
副作用が出なければ、徐々に投薬の量を増やしていき体内への吸収率や排せつなどを確認するのです。

成人の健康な男性を中心に投薬が行われ、安全性が確認されれば効果を発揮すると思われる少人数の患者群に、効果が認められればさらに多くの患者群といった流れで治験を行っていきます。

製薬会社も慎重を期して治験を行っているのです。

治験の危険性

副作用にもしっかりした対応が

こうして慎重に行われる治験ですが、副作用が出てしまう事があるのもまた事実です。
治験に応募するのをためらう方は、この副作用を心配しているのかもしれません。

それでは、どのような副作用があるのか、どのように対応してもらえるのか、詳しく見ていきましょう。

治験が引き起こす可能性がある副作用

治験で治験薬が投与されると、時折、副作用と感じる症状が見られることがあります。
のどの痛み、鼻づまり、めまい、立ち眩み、眠気など様々です。
こうした軽度な副作用に加え、まれに発疹や発熱、血が止まりにくいといったやや重度の副作用も起こり得ます。

こうした重度の副作用が発生した場合、速やかに製薬会社と治験審査委員会に連絡がなされます。
治験審査委員会は治験の継続を許可するかどうかを審議し、製薬会社は国への報告と治験の計画の見直しを行わなければなりません。

さらに副作用が出ていない参加者がいる場合には、参加を継続するかどうかの意思確認が必ず行われます。
副作用の有無にかかわらず、治験はいつでも自分の意志で中止することができることも覚えておきましょう。

副作用が主作用となるケースもある

副作用というと体に有害な症状だけが注目されますが、副作用を主作用としてできた薬もあります。

アレルギーの治療薬は眠気を誘います。アレルギーへの効果を望む人にとっては眠気は副作用ですが、不眠症に悩む人にとっては眠気はポジティブな作用です。

アメリカで降圧剤に多毛症の副作用があることがわかり、養毛剤として利用されたケースもあります。これが有名なリアップです。

また、もともとは狭心症の治療薬として開発されていた薬が、その副作用から、現在はバイアグラとして知られるようになりました。

副作用といえば有害なイメージがありますが、このように、副作用が別の症状には主作用として働くこともあります。

副作用はすぐに治療

残念ながら治験によって有害な副作用が発生してしまったとしましょう。めまいや、血圧が下がったり、血が止まりにくくなったりした場合です。
これらの症状が治験と因果関係が否定できないのであれば、治療費や検査費用を製薬会社が負担します。

入院タイプの治験であればすぐに治療が行われます。治験により死亡もしくは後遺障害が残るなどの被害が発生すれば、その補償も受けられます。

ただし、治験との因果関係がある場合に限ります。
明確に因果関係が否定されるケースでは補償は受けられません。
しかし、通常の副作用のケースであれば、治療費用などを自己負担しなければならないという状況は生じないでしょう。

治験ではいつでも参加の可否・継続を決定できる

治験は危険というのは固定観念もあり、やみくもにおそれることはないのがおわかりいただけたかと思います。

製薬会社が慎重に治験を行い、病院と協力しながら健康被害が出ないように注意を払っているからです。
副作用の可能性が低い治験薬を用い、段階を経て治験を行っていきます。

それに加えて、治験は自分で参加・不参加を決めることができるというポイントもあります。ではいつ、どのように参加・不参加を決めることができるのでしょうか。

治験に参加することを検討している方にとって非常に重要なポイントですが、治験においては参加者がいつでも継続するかどうかを決定できます。
事前に記入する同意書にも明記されているはずです。

事前検診の時であっても、治験が始まった後であっても、いつでも治験への参加を中止できます。

治験への参加はリスクも知ったうえで決めよう

治験は危険と考えている方は少なくありませんが、やみくもにおそれることはありません。
治験は慎重に行われるものであるため、重篤な副作用が起こることは極めてまれであるといえるでしょう。
ただし、リスクがあることは理解しておく必要があります。

製薬会社は、慎重に対応するため、担当者が病院を訪れてモニタリングを行います。
副作用が発生した場合には速やかに治療が行われることでしょう。
治験を継続するかどうかも参加者の意図が尊重されます。不安なら中止することも可能です。

治験に参加をご検討中の方は、記事を参考に、リスクを知ったうえで、判断しましょう。

ここで解決!治験に関するFAQ

治験とはなんですか?
治験とは、『医薬品の製造販売承認申請の際に提出すべき資料のうち臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施』、つまり、「国から薬としての販売承認を受けるために行う臨床試験」のことです。
治験ボランティアはアルバイト/バイトなのですか?
法的にはアルバイト/バイトではありません。治験ボランティア参加は負担軽減費(謝礼金)の支給がありますが、時間的拘束や、交通費などの負担を軽減する目的でお支払いするもので、治験協力費ともよばれます。
治験って安全ですか?副作用はありませんか?
治験薬は事前に生体への安全性を確認し、問題ないと予想されるものだけが使用され、治験実施についても、国の基準に沿い、参加者の方の安全に配慮した綿密な治験実施計画書に基づいて慎重に進められています。
健康被害が生じた場合は?
治験薬の副作用などにより、何らかの健康被害が生じた場合には、治験薬との因果関係が否定できない場合に限り、治験依頼者(製薬メーカー)から補償を受けることができます。補償の扱いは治験により異なりますので、それぞれの治験説明の際、医師や治験コーディネーターが詳しくお話しします。
都合のいい日程で参加ができますか?
治験の日程は予め決められております。決められた期間内での選択できる場合は、その日程内で調整していただきます。