インフルエンザと診断された際、最も気がかりなのは「いつから学校や職場に復帰できるのか」「家族にうつさないために何日間別室で過ごすべきか」という点でしょう。

インフルエンザは急激な高熱や全身の倦怠感を伴う感染症であり、周囲への感染拡大を防ぐために一定の待機期間(隔離期間)を設ける必要があります。

ただし、適用されるルールは小中学生などの児童・生徒、保育園に通う幼児、そして職場へ出勤する大人でそれぞれ異なります。

本記事では、公的な基準に基づく対象別の待機日数や、間違いやすい「0日目」からの正しい数え方、さらには家庭内での別室隔離を解除するタイミングまでを整理しました。

復帰日の正確な計算と、二次感染を防ぐための具体的な対策にお役立てください。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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インフルエンザの隔離期間一覧|大人・小中高生・幼児の基準

インフルエンザにかかった場合の待機期間は、法律で明確に定められているケースと、各組織の判断に委ねられているケースに分かれます。

まずはご自身やご家族がどの基準に該当するのかを確認しましょう。

学校(小中高生)の出席停止基準:発症後5日+解熱後2日

小学生、中学生、高校生、および大学生などの学生については、学校保健安全法施行規則第19条によって出席停止期間が明確に規定されています。

基準となるのは、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまでです。ただし、病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません※1。

ここで特に注意したいのは、「かつ」という条件が付いている点です。

発症から5日間が過ぎていても、熱が下がってから2日間が経過していなければ登校はできません。

逆に、薬の効果などで早期に熱が下がり解熱後2日が経過したとしても、発症から5日間が経過するまでは自宅での療養を続ける必要があります。

つまり、2つの条件のうち遅く到来する方の日付までが出席停止期間となります。

保育園・幼稚園(未就学児)の基準:発症後5日+解熱後3日

幼稚園や保育園、認定こども園などに通う乳幼児(未就学児)の場合は、小学生以上よりも解熱後の待機期間が1日長く設定されています。

具体的な基準は「発症した後5日経過し、かつ解熱した後3日経過していること」です。

学校保健安全法施行規則は幼児の解熱後の日数を3日としており、保育所では、こども家庭庁の「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版、2023年に一部改訂)」が登園のめやすを示しています。

乳幼児はウイルスの排出期間が長引く傾向があるともいわれます。

また、一度熱が下がっても再び発熱する(二峰性発熱)ことがあります。

北海道大学大学院医学研究科小児科などの医師が2012年の流行期に調べた研究(新しい研究結果を報告した原著論文)では、吸入薬(ザナミビル・ラニナミビル)で治療を受けた5~18歳の子どもで、年齢が1歳下がるごとに二峰性発熱が1.19倍起こりやすくなっていました※2。

社会人(大人)の出勤停止ルール:法的な強制力と企業の一般的な目安

会社員やパート・アルバイトなどの社会人に関しては、学校保健安全法のような一律の法的強制力を持つ出勤停止期間は存在しません。

労働安全衛生法第68条と労働安全衛生規則第61条には、「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病」(病原体を人にうつすおそれのある感染症)にかかった人の就業禁止に関する規定がありますが、学校のような日数の基準は書かれていません※3※4。

もっとも、社内での集団感染を防ぐ目的で、独自の就業規則や出勤停止ルールを設けている企業もあります。

その際、目安として学校保健安全法の基準(発症後5日を経過し、かつ解熱後2日を経過するまで)を参考にする職場もあります。

職場によっては「解熱後2日経過すれば出勤可能」とするところもあれば、医療機関や福祉施設などのように厳格な基準を設けているところもあります。

自己判断で出勤しない

自己判断で出勤してしまうと就業規則違反や周囲への感染拡大につながる恐れがあるため、診断を受けた段階で必ず職場の担当部署や上司へ報告し、指示を仰いでください。

なお、休養期間中の扱いが有給休暇になるのか、特別休暇や欠勤になるのかといった点も企業の規定によって異なります。

一目でわかる対象別隔離期間の比較表

対象ごとの基準を整理すると、以下の表のようになります。

対象区分 待機期間の基準 根拠となる法令・指針 最短での復帰可能日
小・中・高・大学生 発症後5日を経過、かつ解熱後2日を経過するまで 学校保健安全法施行規則 発症日を0日目として6日目以降
幼稚園・保育園児(幼児) 発症後5日を経過、かつ解熱後3日を経過するまで 学校保健安全法施行規則・保育所ガイドライン 発症日を0日目として6日目以降
社会人(大人) 一律の法的規定なし(職場の就業規則に従う) 各企業の就業規則(学校の基準を参考にする職場もある) 職場の規定による(目安は6日目以降)

学校や園では、両方の条件を満たした翌日から登校・登園が可能となります。

正しい日数の数え方|「発症日」と「解熱日」はどちらも0日目

待機期間を計算する際、多くの方がつまずきやすいのが日数のカウント方法です。

「発症後5日」とは発症した日を含めて5日間なのか、それとも翌日から数えて5日間なのかによって、復帰日が1日ずれてしまいます。

こども家庭庁のガイドラインでは、発症した日(発熱が始まった日)や解熱した日は期間に数えず、その翌日を「1日目」とします※5。

つまり、発症した日と解熱した日は、どちらも「0日目」として扱います。

カレンダーでシミュレーションする最短復帰日

具体的な日付を当てはめて計算してみましょう。

ここでは、小中高生(または学校基準に準ずる大人)が、4月1日に発症したと仮定します。

まず、基本となる「発症後5日」のカウントです。4月1日に発熱した場合、この4月1日が「0日目」となります。

  1. 4月1日:発熱(0日目)
  2. 4月2日:1日目
  3. 4月3日:2日目
  4. 4月4日:3日目
  5. 4月5日:4日目
  6. 4月6日:5日目
  7. 4月7日:6日目(最短の復帰日)

この5日目までは自宅での待機が必要であり、最短でも登校・出勤が可能になるのは翌日の「4月7日(6日目)」からとなります。

ただし、これに加えて「解熱後2日(幼児は3日)」の条件をクリアしなければなりません。

解熱したタイミング別に復帰日がどう変わるかを見てみましょう。

ケース 発症後5日 解熱後の日数 復帰日
ケース1:4月3日に解熱 4月6日まで 解熱後2日目は4月5日(幼児の解熱後3日目は4月6日) 小中高生も幼児も4月7日
ケース2:4月5日に解熱 4月6日まで 解熱後2日目は4月7日(幼児の解熱後3日目は4月8日) 小中高生は4月8日、幼児は4月9日

ケース1では、発症後5日(4月6日まで)の方が遅いため、小中高生も幼児も4月7日から復帰可能です。

ケース2では、4月5日(解熱0日目)から数えると、解熱後1日目が4月6日、解熱後2日目が4月7日となります。

したがって、小中高生が登校できるのは4月8日からです。幼児の場合は解熱後3日目が4月8日となるため、4月9日からの登園となります。

最短の6日目に復帰できる条件

このように、小中高生は発症から3日目まで(幼児は2日目まで)に熱が下がれば、最短の6日目(上記の例では4月7日)に復帰できます。

それより遅く解熱した場合は、解熱した日から数えて3日後(幼児は4日後)へと復帰日が後ろ倒しになります。

ところで、「発症日」の定義についても疑問が生じやすいところです。

こども家庭庁のガイドラインでは、「発症」とは一般的には「発熱」のことを指し、発熱がないのにインフルエンザと診断された場合は、インフルエンザにみられるような何らかの症状がみられた日を発症日と考えるとしています。何度からを発熱とみなすかについては、同ガイドラインは、発熱時の体温はあくまでもめやすであり、個々の平熱に応じて判断するとしています※5。

受診して検査で陽性と判明した日ではなく、実際に熱が出始めた日が基準となるため、受診時には「いつから熱が出たか」を医師へ正確に伝えてください。

なお、時間帯にかかわらず、朝に発熱しても夜に発熱しても、その日1日は「0日目」としてカウントされます。

熱がぶり返した場合や解熱剤を使ったときのカウントルール

インフルエンザの療養中によくあるトラブルが、解熱剤(頓服薬)の使用に伴う判断ミスと、一度下がった熱が再び上がる現象です。

解熱剤で下がった熱に注意

まず注意したいのは、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を使用して一時的に体温が下がった状態は「解熱」とは見なされないという点です。

こども家庭庁のガイドラインも、解熱剤を使用している場合は登園を控えるのが望ましいとしています※5。

解熱剤はあくまで一時的に熱や痛みを和らげる対症療法(症状を和らげるための治療)であり、ウイルスの増殖が収まって体温調節機能が正常に戻ったわけではありません。

薬の効果で一時的に下がっている間は、本当に熱が下がったのかが分かりません。解熱剤を使わずに熱が下がった状態が続いているかを確かめてから「解熱した」と判断すると安心です。

また、インフルエンザでは、一度平熱近くまで下がった後に再び熱が上がる「二峰性発熱」が起こることがあります。

前述の北海道大学などの研究(吸入薬のザナミビル・ラニナミビルで治療を受けた5~18歳が対象)では、37.5℃未満が24時間を超えて続いた後に再び37.5℃を超えた場合を二峰性発熱とし、B型の子どもの7.3%、A型(H3N2)の子どもの4.3%にみられました※2。

例えば、午前中に熱が下がったため「今日が解熱0日目だ」と考えていたところ、その日の夜や翌日に再び発熱してしまった場合、解熱のカウントはリセットされます。

再度熱が下がった日を、あらためて「解熱0日目」として数え直すことになります。

朝は体温が低く、夕方から夜にかけて体温が上がりやすいという人間の生理的なリズムも影響します。

朝の検温だけで「解熱した」と早合点せず、朝・昼・晩と複数回検温し、夜になっても熱が上がらないことを確認してからカウントを始めるのが安全です。

ここまでの内容を、復帰日を計算するときの確認項目にまとめると次のとおりです。

  • 発症日:熱が出始めた日(受診日や検査で陽性になった日ではない)。この日が0日目
  • 解熱日:解熱剤を使わずに熱が下がった日。この日も0日目
  • 解熱後の日数:小学生以上は2日、幼児は3日
  • 発症後の日数:どの年齢でも5日。2つの条件のうち遅い方の翌日から復帰
  • 独自のルール:学校・園・職場が別に定めている届け出や手続き

家庭内ではいつまで別室に隔離すべき?家族感染を防ぐ対応策

学校や職場への復帰日と並んで切実な問題となるのが、家庭内での隔離期間です。

同居する家族にインフルエンザをうつさないためには、患者本人に別室で過ごしてもらう対策が役立ちます。

別室隔離を解除する安全なタイミング

家庭内での別室隔離をいつまで続けるべきかという点について、公的な法律はありません。

厚生労働省によると、インフルエンザは発症前日から発症後3~7日間は感染性のウイルスを排出しているといわれ、排出されるウイルス量は解熱とともに減少するものの、解熱後も排出されます※6。

そのため、学校保健安全法の出席停止期間と同じく「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで」を、別室での生活を続けるひとつの目安にすると判断しやすくなります。

熱が下がると本人の体調は急速に回復するため、子どもであれば部屋から出たがったり、大人であれば家事を再開しようとしたりしがちです。

ところが、熱が下がった後もウイルスは排出されています。

熱が下がったからといってすぐにリビングで家族と食事を共にしたり、同じ寝室で寝たりすると、そのタイミングで家族へ二次感染してしまうリスクが高まります。

別室で過ごす期間の目安

目安として、発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)が経過するまでは、食事や就寝を含めて部屋を分けておくと安心です。

もし高齢者や基礎疾患のある方、妊婦、乳幼児など重症化リスクの高い家族が同居している場合は、その後も咳や鼻水などの症状が落ち着くまで、共用スペースでのマスク着用を徹底するなど慎重に対応しましょう。

狭い住環境でも二次感染リスクを下げる3つの空間管理法

住宅の間取りや家族構成によっては、「患者を完全に独立した個室へ隔離するのが難しい」「小さな子どもを1人で別室に寝かせるわけにはいかない」という事情もあるでしょう。

個室での完全隔離が困難な環境であっても、空間の使い方を工夫することで感染リスクを下げることは可能です。

次の3つの工夫は、厚生労働省が新型コロナウイルス感染症の家庭内対策として示した「8つのポイント」にも含まれています※7。

  • 物理的な距離と仕切りの確保:同じ部屋で過ごさざるを得ない場合は、ベッドや布団の間隔をできるだけ離します(目安として2メートル以上)。十分な距離が取れない場合でも、患者と家族の間にカーテンやパーテーションなどの仕切りを設置すると、咳やくしゃみの飛沫が直接かかりにくくなります。
  • 寝る向きの調整:同じ寝室に布団を並べる際は、頭の位置を同じ方向に揃えるのではなく、互い違い(足と頭が並ぶ向き)に配置します。
  • 看病する人の固定:子どもの世話などでどうしても密接な接触が避けられない場合、家族全員が交代で世話をするのではなく、できるだけ限られた人が担当します。持病のある方や妊婦の方などは、お世話の担当を避けてください。

仕切りには、背の高い家具や室内用の簡易テントを使う方法もあります。

寝る向きを互い違いにするのは、呼吸や咳による飛沫を顔の近くで吸い込みにくくするための工夫です。

看病の担当者は不織布マスクを着用し、部屋の出入りごとに手洗いやアルコール消毒を行うことで、家族全体へ感染が広がるのを抑えやすくなります。

タオルの共用禁止や消毒・換気の具体的なポイント

インフルエンザウイルスは、咳やくしゃみによる「飛沫感染」だけでなく、ウイルスが付着した手で目や鼻、口などの粘膜に触れることで起こる「接触感染」によっても広がります。

空間を分けるのと同時に、日常生活における接触感染ルートを断つ対策が欠かせません。

タオルは共用しない

特に注意したいのが、洗面所やトイレでのタオルの共用です。

患者が顔を洗ったり手を拭いたりしたタオルにはウイルスが付着している可能性が高いため、隔離期間中はタオルの共用を厳禁とし、ペーパータオルに切り替えるか、個人ごとにタオルを完全に分けます。

また、こども家庭庁のガイドラインは、保育所のドアノブ、手すり、照明のスイッチなどは、水拭きした後にアルコール等で消毒するとよいとしています※5。

家庭でも、家族全員がよく触れる次のような場所を、消毒用エタノール(アルコール)を含ませた布やペーパーで拭いておくと安心です。

  • ドアノブ
  • 手すり
  • 照明のスイッチ
  • トイレの洗浄レバー・水道の蛇口・冷蔵庫の取っ手など

インフルエンザウイルスには、アルコール製剤による手指衛生も効果があります。

インフルエンザウイルスは「エンベロープ」(ウイルスを包む脂質の膜)を持つ構造をしており、アルコールや界面活性剤(一般的な家庭用洗剤や石けん)はこの膜を壊すと考えられています。

前述の厚生労働省の新型コロナウイルス感染症の家庭内対策では、タオルや衣類、食器などは通常の洗濯や洗浄でかまわないとされています。

患者が使用した食器や衣類、シーツなども、特別に消毒液へ浸け置きせず、通常の食器用洗剤や洗濯用洗剤で洗う方法が一般的です。

ただし、洗う前の食器や洗濯物を扱う際は、使用後に必ず石けんで手を洗ってください。

室内の空気環境については、定期的な換気と加湿が基本となります。

厚生労働省は、対角線上にあるドアや窓を2か所開けると効果的な換気ができるとしています。

窓や扉を開けて空気の通り道を作り、ウイルスを含む空気を外へ逃がしましょう。

加えて、空気が乾燥すると喉や鼻の粘膜の防御機能が低下するため、加湿器などで部屋の湿度を50〜60%程度に保つことが勧められています※6。

乾燥した空気ではウイルスが空間を漂いやすくなるともいわれます。加湿器がない場合は、室内に濡れタオルを干す方法もあります。

家族や兄弟は外出できる?濃厚接触者の登校・出勤ルール

家族の誰かがインフルエンザにかかった際、「元気な兄弟は学校や保育園に行っていいのか」「親は仕事に出勤していいのか」という疑問が生じます。

兄弟の登校・登園判断と潜伏期間中の観察ポイント

学校保健安全法施行規則では、患者本人のような日数の基準は、同居する家族には定められていません。

一方で、同規則第19条には、第一種または第二種の感染症(インフルエンザは第二種)の患者がいる家に住む人について、学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止とする規定もあります。

兄弟や姉妹に発熱や咳、喉の痛みなどの症状が全くなく、普段通りに元気であれば、学校や幼稚園・保育園へ登校・登園できることが多いものの、扱いは学校や園によって異なります。

ただし、通っている園や学校によっては、感染拡大防止の観点から独自のルール(「家族が感染した場合は念のため休ませてほしい」「登園前に必ず検温結果を報告してほしい」など)を設けている場合があります。

トラブルを避けるためにも、連絡帳や電話で家族がインフルエンザにかかった旨を伝え、園や学校の指示を確認しておくと安心です。

また、無症状で登校・登園させる場合でも、インフルエンザの潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)には十分な警戒が必要です。

潜伏期間の目安

日本学校保健会の「学校において予防すべき感染症の解説」では、インフルエンザの潜伏期間は1~3日程度とされています※8。

こども家庭庁の保育所向けガイドラインでは1~4日とされており※5、どちらの資料でも、感染から数日以内に症状が出る点は共通しています。

そのため、患者が発症した当日や翌日に兄弟が元気であっても、数日後に時間差で発症することがあります。

潜伏期間を踏まえ、患者の発症後しばらくは、兄弟の体調変化を注意深く観察してください。

朝は平熱でも日中に急激に熱が上がることがあるため、園や学校からの緊急連絡にすぐ対応できるよう準備を整えておくと安心です。

少しでも「いつもより元気がない」「食欲がない」「微熱がある」といった兆候が見られた場合は、無理に登校・登園させず自宅で様子を見ることが、周囲への感染拡大を防ぐ結果につながります。

同居家族の出勤可否と職場で推奨される感染予防策

社会人の同居家族についても、本人に症状がなければ法律上の出勤制限はありません。

通常通り出勤できることが多いでしょう。

もっとも、医療機関や高齢者施設、保育施設、接客業など、職場によっては「同居家族がインフルエンザと診断された場合は報告すること」「一定期間は自宅待機または在宅勤務に切り替えること」といった社内ルールが定められていることがあります。

まずは職場の規定を確認し、上司へ状況を共有しましょう。

出勤する場合に心がけたいのは、自分自身がすでに感染しており、潜伏期間中(発症前日)であるかもしれないという前提に立った行動です。

厚生労働省によると、インフルエンザは発症前日から感染性のウイルスを排出しているといわれています。

本人に自覚症状がなくても、職場へウイルスを持ち込んでしまうリスクはゼロではありません。

そのため、患者の発症後しばらくは、次のような配慮が職場内でのクラスター(集団感染)を防ぐ上で役立ちます。

  • 職場内での不織布マスクの着用
  • こまめな手洗いや手指消毒
  • 同僚との近距離での会話を控える
  • 社員食堂・休憩室などでマスクを外した会食(ランチなど)を控える

発症から5日経過後も感染力はあるのか

待機期間が満了し、いよいよ明日から復帰という段階になっても、「本当に5日経てば他人にうつらないのだろうか」「まだ咳が出ているけれど出勤して大丈夫か」と不安を感じる方は少なくありません。

ウイルスの排出期間と他人にうつすリスクの推移

学校保健安全法などで定められている「発症後5日(かつ解熱後2〜3日)」という期間は、体内のウイルスが完全にゼロになる日数を示したものではありません。

厚生労働省によると、インフルエンザは発症前日から発症後3~7日間は感染性のウイルスを排出しているといわれ、特に発症後1~3日間は平均的な排出量が多いとされています。排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後も排出され、排出期間の長さには個人差があります。

6日目でもウイルスが残っている可能性

つまり、発症から5日が経過し、解熱から2日が経過した「6日目」の時点では、排出量の多い時期に比べれば減っているものの、まだ鼻や喉に少量のウイルスが残っている可能性があるということです。

待機期間が明けたからといって即座に感染力が完全に消失するわけではない、という点を念頭に置いておきましょう。

熱が下がっても咳や鼻水が続く場合の復帰判断とマスク対策

待機期間の基準(発症後5日かつ解熱後2〜3日)を満たしていれば、少し咳や鼻水が残っていても制度上は登校・出勤が可能です。

気道の粘膜がウイルスとの戦いで傷ついているため、熱が下がった後もしばらく咳や痰、鼻水といった呼吸器症状だけが長引く(感染後咳嗽:感染症が治った後も続く咳)こともあります。

とはいえ、まだ体内にウイルスがわずかに残っているかもしれない時期に、マスクなしで激しい咳やくしゃみをすれば、飛沫とともにウイルスを周囲へ飛ばしてしまうリスクが生じます。

厚生労働省も、咳やくしゃみなどの症状が続いている場合には、不織布製マスクを着用するなど、周りの人へうつさないよう配慮することを呼びかけています。

そこで、待機期間が明けて職場や学校へ復帰する際は、次の点に留意して行動しましょう。

まず、咳やくしゃみなどの症状が続いている間は、隙間なくフィットする不織布マスクを着用する「咳エチケット」を徹底してください。

もしマスクをしていない状態でとっさに咳やくしゃみが出そうになった場合は、ティッシュやハンカチ、あるいは服の袖(肘の内側)で口と鼻を覆います。

鼻をかんだ後のティッシュにもウイルスが含まれている可能性があるため、すぐにゴミ箱へ捨て、その都度石けんで手を洗うかアルコール消毒を行いましょう。

一方、基準の日数は経過したものの、「激しい咳き込みが続いて夜も眠れない」「強い倦怠感が残っていて立ち上がるのもつらい」「息苦しさがある」といった場合は、無理に復帰すべきではありません。

インフルエンザでは、気管支炎や肺炎、中耳炎などの合併症が起こることもあります。

咳が長引いて気管支炎が気になるときは、気管支炎の原因や人にうつる期間を解説した記事が参考になります。

こうした合併症を起こしている可能性もあるため、出勤や登校を見合わせ、再度医療機関を受診して医師の診察を受けてください。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本ではインフルエンザでお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

  • 最新の治療をいち早く受けられることがある
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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インフルエンザの隔離・待機期間に関するよくある疑問(FAQ)

最後に、インフルエンザの隔離期間や療養生活に関して、患者や家族から寄せられることの多い疑問について回答します。

Q1. インフルエンザにかかったら家族には何日後にうつりますか?(潜伏期間)

インフルエンザの潜伏期間は、日本学校保健会の解説では1~3日程度、こども家庭庁のガイドラインでは1~4日とされています。

そのため、家庭内で誰かが発症した場合、その数日後に同居家族が発熱することがあります。

患者が発熱した時点で、すでに前日から家族がウイルスを吸い込んでいる可能性もあるため、発症が判明した直後から別室隔離やマスク着用、換気などの対策を講じるとともに、しばらくは家族全員の体調変化に注意を払ってください。

Q2. 5日目以降に市販の抗原検査キットで陰性を確認する必要はありますか?

学校への登校や職場への出勤にあたり、医療用や一般用(市販)の抗原定性検査キットを使って「陰性確認」を行う必要は原則としてありません。

厚生労働省も、児童生徒が快復して登校を始める前に、改めて検査を受ける必要はないとしています。

インフルエンザの復帰基準は、あくまで「発症からの経過日数(5日)」と「解熱からの経過日数(2日または3日)」という臨床的な経過によって判断されます。

そもそも抗原検査キットは、発症初期のウイルス量が多い時期に感染の有無を判定するためのツールであり、治癒や感染力の消失を確認する目的で使うものではないと考えられています。

待機期間が明ける頃にはウイルス量が減少しているため陰性になることも多いですが、反対に、すでに感染力を失ったウイルスの断片(死骸)に反応して陽性が出続けることもあるといわれます。

不要な混乱を招くため、復帰前の再検査は勧められていません。

Q3. 治癒証明書や陰性証明書の提出は求められますか?

厚生労働省は、職場が従業員に「治癒証明書」や「陰性証明書」の提出を求めることは望ましくなく、提出は不要としています。

その理由として、インフルエンザなどは陰性を証明することが一般的に困難であることや、患者の治療にあたる医療機関に過剰な負担をかける可能性があることを挙げています。児童生徒が学校に復帰する場合も、治癒証明書や陰性証明書の提出は不要としています※6。

回復後に証明書をもらうためだけに再受診すると、待合室で別の感染症をもらってしまうリスクも考えられます。

保育所については、こども家庭庁のガイドラインで、インフルエンザは「医師が意見書を記入することが考えられる感染症」に分類されています。ただし、意見書や登園届は一律に作成・提出が必要なものではなく、扱いは市区町村の支援の下で地域の医療機関や医師会などと協議して決めるとされています※5。

学校や園によっては、保護者が発症日や解熱日、受診した医療機関名などを記入する登校・登園届(経過報告書)の提出を求めるところもあります。

大人の職場においても、自己申告や受診時の領収書・診療明細書、薬の説明書(薬剤情報提供書)のコピーなどで対応する企業がありますが、社内規定によっては診断書の提出が求められるケースもあるため、事前に勤務先へ確認しておきましょう。

Q4. 隔離期間中の食事の受け渡しやゴミ捨てで注意すべきことは?

別室で隔離している患者へ食事を届ける際は、部屋のドアの前にトレイを置き、看病する人が離れた後に患者本人が部屋の中へ取り込む「置き配」のような形式をとると、直接の対面接触を避けられます。

本人が起き上がれない状態であれば、双方が不織布マスクを着用した上で手早く受け渡しを行い、退室後に必ず手を洗ってください。

食べ終わった後の食器は、前述の通り通常の食器用洗剤と水(またはぬるま湯)で洗えば問題ありません。

また、患者の部屋から出るゴミ(特に鼻をかんだティッシュや使用済みのマスク)にはウイルスが付着している可能性があります。

隔離部屋の中にはあらかじめビニール袋をかぶせたゴミ箱を用意しておき、ゴミを回収する際は袋の口をしっかりと結んで密閉してから部屋の外へ持ち出します。

ゴミ袋に触れた後は、必ず石けんでの手洗いかアルコールによる手指消毒を行ってください。

まとめ

インフルエンザの隔離・待機期間は、周囲への感染拡大を防ぎ、患者本人が十分に体力を回復させるために重要な期間です。

最後に、日数計算と感染対策の要点を振り返ります。

  • 小中高生(大人の職場でも参考にされることがある目安):発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで。
  • 幼稚園・保育園に通う幼児:発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後3日を経過するまで。
  • 日数の数え方:発症した日と解熱した日はそれぞれ「0日目」とし、翌日から1日目とカウントする。2つの条件のうち、遅く到来する日付まで待機が必要。
  • 解熱の目安:解熱剤を使用せずに熱が下がり、その状態が続いているかを確かめて判断すると安心。
  • 家庭内での別室隔離:外への復帰基準と同じく、発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)が経過するまでを別室で過ごすひとつの目安とし、タオルの共用を避け、換気や消毒を心がける。

社会人の出勤停止期間には一律の法律がありません。

職場の規定を確認した上で十分な休養をとり、復帰後も咳などの症状が続く間はマスクの着用や手洗いを徹底して、安全な社会復帰につなげてください。

次のシーズンに向けて予防接種について知りたいときは、インフルエンザ予防接種の効果と接種時期を解説した記事も参考にしてください。