健康診断の結果表で「ALT(GPT)」の項目に異常を示す印を見つけ、不安な気持ちになっている方もいらっしゃるかもしれません。

「この数値はどのくらい危険なのだろうか」「すぐに病院へ行くべきか」といった疑問も浮かびます。

この記事では、健康診断でALT高値を指摘された方に向けて、その数値が示す意味やリスクの段階、そしていつ、どのような医療機関を受診すべきかという具体的な判断基準を解説します。

専門的な内容も含まれますが、できる限り分かりやすく説明し、あなたが抱える漠然とした不安を、次にとるべき具体的な行動へと繋げる手助けをします。

ただし、ここで提供する情報はあくまで一般的な知識です。最終的な診断や治療方針は、必ず医師の診察のもとで判断されるべきであることをご理解ください。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

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ALTとは?肝臓からのSOSサインを理解する

ALT(GPT)が示す肝機能の基本

ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、主に肝臓の細胞内に存在する酵素です。GPTとも呼ばれます。

この酵素は、肝臓が正常に機能している間は細胞の中に留まっていますが、何らかの原因で肝細胞がダメージを受け、壊れてしまうと血液中に漏れ出してきます(参考:日本肝臓学会 奈良宣言2023 1)。

ALTが「肝臓のサイン」といわれる理由

つまり、血液検査でALTの数値が高いということは、肝細胞が破壊されている可能性を示唆する、肝臓からの重要なSOSサインなのです。

ALT高値の主な原因とは?

ALTが上昇する背景には、さまざまな原因が考えられます。代表的なものを以下に挙げます。

  • 脂肪肝(アルコール性・非アルコール性)
  • ウイルス性肝炎(B型、C型など)
  • アルコール性肝障害
  • 薬剤性肝障害
  • 自己免疫性肝疾患
  • 筋肉の疾患や激しい運動

公的な資料では、肝疾患の主な原因として、肝炎ウイルスの感染、肥満・糖尿病・飲酒などによる脂肪性肝疾患、免疫の異常によるものが挙げられています(参考:厚生労働省 2)。

なお、筋肉の疾患や運動の影響については、公的文献ではASTの上昇との関連を中心に説明されており、ALT単独の上昇要因としての記載は確認できませんでした。

これらのうち、現代の日本人で最も多い原因の一つが「脂肪肝」であるとされています。健診や人間ドックの受診者のうち約25%が脂肪肝(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)に該当すると報告されています(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 3)。

あなたのALTはどの段階?数値が示すリスクの目安

ALTの数値が高いと一言でいっても、その程度によってリスクは異なります。

ご自身の数値がどの段階にあり、どのような可能性を示しているのか、具体的な目安を示します。

ALTの基準値と異常値の境界線

健康診断などにおけるALTの基準値は、検査機関によって多少異なりますが、一般的には「30 U/L 以下」が望ましいとされています。

この基準値を超えると「軽度異常」や「要経過観察」といった判定が下されることが多くなります。

ALTが30を超えたら、まずかかりつけ医へ

日本肝臓学会は「奈良宣言2023」として、健康診断などの血液検査でALT値が30を超えていた場合には、まずかかりつけ医等を受診することを勧めています(参考:日本肝臓学会 奈良宣言2023 1)。

基準値を少し超えた程度だからと軽視してはいけません。

たとえわずかな上昇であっても、肝臓に何らかの負担がかかっているサインであり、その背景にある原因を探ることが重要です。大幅に高い場合はもちろん、軽度の上昇でも放置しないことが勧められています(参考:日本肝臓学会 奈良宣言2023 1)。

基準値内でも「異常なし」とは限りません

一方で、ALTが基準値内であれば安心というわけでもありません。脂肪肝はALT値が低くても否定できず、健康診断で肝機能の数字が正常でも脂肪肝ではないとは限らないと説明されています(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 3)。

ALT高値の数値別リスク:軽度・中度・高度の目安

では、具体的な数値はどのようなリスクを示唆するのでしょうか。以下の段階分けは公的に定められた区分ではなく、あくまで一般的な目安ですが、次のように考えることができます。

軽度高値(31~50 U/L)
この段階では自覚症状がないことがほとんどです。しかし、この時点で脂肪肝や生活習慣の乱れが隠れているケースは少なくありません。

放置すると数値がさらに悪化する可能性があるため、生活習慣の見直しを始めるべき重要なシグナルです。特に、30台後半から40台の数値は決して安心できるものではありません。

中度高値(51~100 U/L)
このレベルになると、肝臓の炎症が慢性的に続いている可能性が高まります。脂肪肝が進行した非アルコール性脂肪肝炎(NASH)や、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害などが疑われる領域です。

医療機関での精密検査を検討すべき段階であり、早期の対策が将来の肝硬変や肝がんのリスク低減につながるとされています(参考:日本肝臓学会 奈良宣言2023 1)。

高度高値(101 U/L以上)
ALTが100を超える、あるいは数百といった高い数値を示す場合、肝臓に急性的または重度のダメージが起きている可能性があります。

ALTが100を大きく超えるときの注意点

急性肝炎や薬剤性肝障害などが考えられ、速やかな医療機関の受診が不可欠です。急性肝炎ではALTやASTの著明な上昇がみられ、広範に肝細胞障害が生じていることを示します(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 4)。

倦怠感や吐き気、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などの症状を伴う場合は、特に注意が必要です。

「ALTだけ高い」場合の注意点

健康診断の結果で、AST(GOT)など他の肝機能の数値は基準値内なのに「ALTだけが高い」というケースがあります。これは、比較的肝臓に特異的な異常を示唆していることが多い状態です。

特に考えられるのは、脂肪肝や慢性肝炎の初期段階。ASTは心筋や骨格筋にも存在しますが、ALTは主に肝臓に存在するため、ALTだけが優位に上昇している場合は、肝臓そのものに原因がある可能性が高いと判断されます(参考:千葉大学医学部附属病院薬剤部 5)。

ASTとALTの比率から読み解く肝臓の状態

ALTとあわせて測定されるAST(GOT)との比率(AST/ALT比)も、原因を探る上での重要な手がかりとなります。

一般的に、ALTの数値がASTの数値よりも高い「ALT優位」の状態は、脂肪肝や慢性ウイルス性肝炎を示唆します。

一方で、ASTがALTより高い「AST優位」の状態では、アルコール性肝障害や、病状が進行した肝硬変、肝がんなどが疑われます(参考:千葉大学医学部附属病院薬剤部 5)。アルコール性脂肪肝では、AST/ALT比の上昇を伴う軽度のAST・ALTの上昇やγ-GTPの上昇がみられます(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 6)。

ご自身の検査結果で、どちらの数値が高いかを確認してみるのも一つの手がかりになります。

ALT高値、見過ごしがちな個別ケースの疑問を解消

ALTが高い原因は、必ずしも肥満やお酒の飲み過ぎだけとは限りません。ここでは、よくある個別ケースの疑問について解説します。

お酒を飲まないのにALTが高いのはなぜ?

「お酒はほとんど飲まないのに、なぜ肝臓の数値が?」と疑問に思う方は少なくありません。その原因として最も多いのが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)です。

これは、飲酒習慣がないか、あっても少量にもかかわらず、肝臓に脂肪が蓄積する状態を指します。主な原因は、食べ過ぎや運動不足によるエネルギー過多、肥満、糖尿病、脂質異常症などです(参考:日本消化器病学会・日本肝臓学会 患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023 7)。

NAFLDの一部は、進行すると肝硬変や肝がんに至る可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へと移行するため、注意が必要です(参考:日本消化器病学会・日本肝臓学会 患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023 7)。

NAFLD・NASHは「MASLD・MASH」へ名称が変わりました

NAFLD・NASHという病名は国際的な合意にもとづいて見直され、2024年8月に日本消化器病学会と日本肝臓学会が、日本語病名を「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」「MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」と発表しています(参考:日本消化器病学会 8)。

2026年4月には、この名称変更を反映した「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)」も公開されています(参考:日本消化器病学会・日本肝臓学会 9)。

痩せているのにALTが高いのはなぜ?

痩せている方でもALTが高くなることは十分にあり得ます。日本では、脂肪肝(MASLD)の患者さんの約20%が非肥満であると推定されています(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 3)。

体型だけでは判断できない、以下のような原因が考えられます。

  • 内臓脂肪の蓄積:見た目は痩せていても、内臓の周りに脂肪がつく「内臓脂肪型肥満」の場合、脂肪肝になっている可能性があります。
  • ウイルス性肝炎:B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染していると、体型に関係なくALTが上昇します。
  • 薬剤の影響:常用している薬やサプリメント、漢方薬などが原因で肝臓に負担がかかっているケース。
  • 自己免疫性疾患:免疫システムが誤って自身の肝細胞を攻撃してしまう自己免疫性肝炎などの病気。

医薬品による肝障害は、解熱消炎鎮痛薬や抗真菌薬、漢方薬のほか、市販薬やサプリメントなどの健康食品でもみられることが報告されています(参考:医薬品医療機器総合機構 10)。

痩せているから大丈夫、と自己判断するのは禁物です。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本ではALT高値でお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

  • 最新の治療をいち早く受けられることがある
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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ALT高値と診断されたら?適切な受診判断と次の行動

健康診断でALT高値を指摘されたら、次にどう行動すべきか。具体的な受診の目安について解説します。

再検査・精密検査が必要なALTの数値とタイミング

一般的に、ALTが基準値を超えていた場合は、医療機関での再検査が推奨されます。特に、以下のようなケースでは早めの受診を検討しましょう。

  • ALTが50 U/Lを超えている場合
  • 前回の検診結果と比較して、数値が急激に上昇している場合
  • ALTだけでなく、ASTやγ-GTPなど他の肝機能項目にも異常が見られる場合

ただし、日本肝臓学会の「奈良宣言2023」ではALTが30を超えた場合にまずかかりつけ医等を受診することが勧められており、50 U/Lに達する前の段階でも相談する意義があります(参考:日本肝臓学会 奈良宣言2023 1)。

まずはかかりつけ医に相談するか、お近くの内科や消化器内科を受診するのが第一歩です。一度の異常だけでなく、継続して高い数値が出る場合は、より詳しい検査が必要になります。

かかりつけ医で採血や腹部超音波検査などを受け、必要と判断されればさらに消化器内科で詳しい検査を受けることが、肝疾患の早期発見・早期治療につながります(参考:日本肝臓学会 奈良宣言2023 1)。

肝臓専門医への受診を検討すべき症状と状況

ALT高値に加えて、以下のような自覚症状がある場合は、肝臓の病気が進行している可能性があります。なるべく早く、消化器内科や肝臓内科など、肝臓を専門とする医師の診察を受けることを強く推奨します。

  • 全身の倦怠感、疲れやすさが続く
  • 食欲がない、吐き気がする
  • 皮膚や白目が黄色っぽくなる(黄疸)
  • 尿の色が濃くなる(褐色尿)
  • お腹が張る、足がむくむ

黄疸・褐色尿・むくみは進行のサインのことも

急性肝炎では、黄疸に先立って褐色尿が現れ、黄疸の出現とほぼ同じ時期に食欲不振や全身倦怠感、嘔気などの症状が出現するとされています(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 4)。

また、脂肪肝炎から肝硬変に進行すると、黄疸や足のむくみ、腹水による腹部の膨満感があらわれることがあります(参考:日本消化器病学会・日本肝臓学会 患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023 7)。

これらの症状は、肝機能が著しく低下しているサインかもしれません。見過ごさずに専門医へ相談してください。

受診時に医師に伝えるべきことと検査の流れ

医療機関を受診する際は、より正確な診断のために、ご自身の情報を整理して医師に伝えることが大切です。

伝えるべき情報:

  • 飲酒の頻度と量
  • 服用中の薬、サプリメント、漢方薬
  • 過去の病歴や手術歴
  • 家族の病歴(特に肝臓の病気)
  • 具体的な自覚症状(あれば)

受診後の一般的な検査の流れとしては、まず詳しい問診と血液検査でALTの再測定や他の肝機能、ウイルス感染の有無などを確認します。

さらに原因を特定するために、肝臓や胆のうの状態を画像で確認する腹部超音波(エコー)検査が行われることが多いです(参考:日本消化器病学会・日本肝臓学会 患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023 7)。

ALTを下げるために今日からできること

医師の診断を受けることが最優先ですが、並行して生活習慣を見直すことも非常に重要です。

生活習慣の見直しで肝臓をいたわる

ALTの数値を改善するための基本は、肝臓への負担を減らすことです。

  • 食事:バランスの取れた食事を心がけ、過食を避ける。特に糖質や脂質の摂りすぎに注意する。
  • 運動:ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にし、余分な脂肪を燃焼させる。
  • 飲酒:アルコールが原因の場合は、節酒または禁酒を徹底する。
  • ストレス管理:過度なストレスは肝臓にも影響します。十分な休息と睡眠を確保する。

脂肪肝の治療でも、食事や運動といった生活習慣の改善が基本とされ、肥満がある場合は体重の7%の減量で脂肪肝炎の改善が期待できると報告されています(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 3)。

これらの具体的な方法については、医師や管理栄養士に相談しながら進めることがすすめられています(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 3)。

放置は厳禁!ALT高値を放置するリスク

ALT高値は、それ自体が病気ではありません。しかし、肝臓がダメージを受けているという紛れもないサインです。

放置した先に起こりうること

このサインを無視して放置すると、背景にある脂肪肝や肝炎が静かに進行し、やがて肝硬変や肝がんといった、命に関わる深刻な病気に至るリスクがあります。

脂肪肝を放置した場合、10年後には10~20%が肝硬変に進行し、肝硬変にまで進むと年率で数%に肝がんが発生すると報告されています(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 3)。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、重篤な状態になるまで自覚症状が出にくい特徴があります(参考:厚生労働省 2)。

症状がないからと安心せず、数値として表れたサインを真摯に受け止め、早期に対策を講じることが、あなたの未来の健康を守る鍵となります。

よくある質問(FAQ)

Q1. ALT高値は自覚症状がないと大丈夫?
A. 大丈夫ではありません。肝臓はダメージを受けても症状が出にくい臓器です。自覚症状がない段階でも、肝臓の炎症や線維化(組織が硬くなること)は進行している可能性があります(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 3)。数値の異常は、症状が出る前の早期発見のチャンスと捉え、放置しないことが重要です。
Q2. ALTを下げる薬はありますか?
A. ALTの数値そのものを直接下げる特効薬というものはありません。治療の基本は、ALTが上昇している原因となっている病気(例えば、ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎など)に対する治療です。脂肪肝などが原因の場合は、薬物治療よりも食事療法や運動療法といった生活習慣の改善が第一選択となります。脂肪肝そのものに対して保険適用として承認された薬剤は、現時点ではありません(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 3)。
Q3. 健康診断でALTが高いと言われたら、すぐに病院に行くべき?
A. 数値の高さや他の検査結果、自覚症状の有無にもよりますが、基本的には早めに医療機関を受診することが推奨されます。特にALTが基準値の2〜3倍を超えるような場合や、何らかの自覚症状を伴う場合は、速やかに受診してください。軽度の上昇であっても、一度は医師に相談し、原因や今後の対応について指導を受けるのが賢明です。日本肝臓学会もALTが30を超えた場合の受診を勧めています(参考:日本肝臓学会 奈良宣言2023 1)。

まとめ

健康診断で示されたALT高値は、あなたの肝臓が発している重要なメッセージです。その数値をただ眺めて不安に思うだけでなく、リスクの段階を正しく理解し、適切な行動に移すことが何よりも大切です。

この記事の要点

軽視して放置すれば、将来的に深刻な肝臓の病気へと繋がる可能性があります。

一方で、早期に原因を突き止め、生活習慣の改善や適切な治療に取り組めば、肝臓の状態の改善が期待できるとされています(参考:国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター 3)。

この記事を参考に、まずは専門の医療機関へ相談することから始めてみてください。