「健康診断で腎臓の数値が悪いと言われたけれど、食事について具体的にどうすればいいかわからない」
「大好きな食べ物を全部我慢しなければならないの?」
慢性腎臓病(CKD)と診断されたとき、これからの食事について大きな不安を感じる方は少なくありません。
食事療法は、腎臓を守り、将来的な透析導入を避けるために非常に重要な治療法の一つです(参考:日本腎臓学会 1,2)。
しかし、それは単に「食べないこと」ではありません。
本記事では、日本腎臓学会のガイドラインや公的機関の一次情報に基づき、CKDのステージごとの具体的な食事基準から、日常で気をつけるべき食品の選び方まで、わかりやすく解説します。
正しい知識を身につけ、無理なく続けられる「腎臓をいたわる食事」を始めましょう。
※この記事は疾患啓発を目的としています。

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。
※負担軽減費とは:治験協力者が負担する交通費や時間的拘束などがあるためお金が支給されます。
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なぜ食事療法が必要なのか?腎臓を守るための基本メカニズム
腎臓は、血液中の老廃物をろ過し、尿として体外に排出する「体のフィルター」の役割を果たしています。
慢性腎臓病(CKD)になり、このフィルターの機能が低下すると、ろ過しきれなかった老廃物が体内に蓄積し、尿毒症などの深刻な症状を引き起こす恐れがあります。
腎臓の負担を減らし、進行を遅らせる
食事療法の最大の目的は、腎臓への負担を減らすことです。
私たちが食べたものは、体内でエネルギーや筋肉になりますが、その過程で「燃えかす(老廃物)」が出ます。
この燃えかすを処理するのが腎臓です。
食事の内容を調整することで、発生する老廃物の量を減らし、弱っている腎臓を休ませることができます。
これにより、病気の進行を遅らせ、透析治療が必要になる時期を先延ばしにすることが期待できます(参考:日本腎臓学会 1)。
慢性腎臓病(CKD)食事療法の「3大原則」
CKDの食事療法には、ステージ(病期)に関わらず基本となる3つの柱があります。
【原則1】塩分制限(1日3g以上6g未満)
塩分の摂りすぎは高血圧を招きます。
高血圧は腎臓の血管に強い圧力をかけ、機能を急速に悪化させる最大の要因の一つです。
また、塩分過多は「むくみ」の原因にもなります。
日本腎臓学会のガイドラインでは、1日の食塩摂取量は3g以上6g未満が推奨されています(参考:日本腎臓学会 2)。
3g未満の過度な減塩は食事摂取量の低下を招くリスクもあるため、適切な範囲での制限が重要です。
まずはこの範囲を目指す「減塩」が食事療法のスタートラインです。
【原則2】タンパク質の制限
タンパク質は筋肉や血液を作る重要な栄養素ですが、体内で代謝されると「尿素窒素」などの老廃物(燃えかす)を生み出します。
健康な腎臓ならこれを排泄できますが、CKDの方にとっては、過剰なタンパク質は腎臓に大きな負担をかけます。
腎機能の低下具合(ステージ)に合わせて、摂取量を調整する必要があります(参考:日本腎臓学会 1)。
ただし、極端に減らしすぎると筋肉が落ちてしまう(サルコペニアやフレイル)ため、医師の指示通りの量を守ることが大切です。
【原則3】エネルギー(カロリー)の適切な確保
ここが最も誤解されやすいポイントです。
「食事制限」というとカロリーも減らすイメージがありますが、CKDの食事療法では、適切なエネルギーを確保する必要があります。
摂取カロリーが不足すると、体は自分の筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとします。
筋肉が分解されると、そこから老廃物が発生し、かえって腎臓に負担をかけてしまうのです(異化亢進)。
基本的には標準体重あたり25〜35kcal/日が目安とされますが、年齢や身体活動レベル、肥満の有無によって調整が必要です(参考:日本腎臓学会 1,2)。
「タンパク質は控えて、カロリーは適切に摂る」。
これがCKD食の鉄則です。
【ステージ別】食事制限の基準値一覧表

食事制限の厳しさは、CKDのステージ(G1〜G5)によって異なります。
ご自身のステージを把握し、主治医の指示に従ってください。
| ステージ | GFR区分 | 状態 | タンパク質制限 | 塩分制限 | カリウム制限 |
| G1・G2 | 60以上 | 正常〜軽度低下 | 過剰摂取を避ける | 6g未満 | 原則なし |
| G3a | 45〜59 | 軽度〜中等度低下 | 0.8〜1.0 g/kg体重 | 6g未満 | 原則なし |
| G3b | 30〜44 | 中等度〜高度低下 | 0.6〜0.8 g/kg体重 | 6g未満 | 2000mg以下※ |
| G4・G5 | 30未満 | 高度低下〜末期 | 0.6〜0.8 g/kg体重 | 6g未満 | 1500mg以下 |
※標準体重(kg) = 身長(m) × 身長(m) × 22
※カリウム制限は血清カリウム値が高い場合に適用されます。
(参考:日本腎臓学会 2)
ステージG1・G2:まずは減塩と肥満解消
この段階では、厳しいタンパク質制限はまだ不要なケースが多いですが、過剰摂取は避けるべきです。
最優先すべきは「減塩(1日6g未満)」と、肥満がある場合は適正体重への減量です。
生活習慣病(糖尿病、高血圧)のコントロールが腎臓を守ります。
ステージG3a・G3b:タンパク質制限の開始
G3aあたりから、タンパク質の制限が始まります。
肉や魚を食べる量を少し控え、その分をご飯やエネルギー補給食品で補う工夫が必要になります。
G3b以降では、検査値によってカリウム制限も加わることがあります。
ステージG4・G5:厳格な管理が必要
腎機能がかなり低下しているため、タンパク質、塩分、カリウム、リンなどの厳格な管理が求められます。
栄養不足(PEW:タンパク質エネルギー消耗状態)にならないよう、医師や管理栄養士の指導を受けながら食事を組み立てることが重要です(参考:日本腎臓学会 1)。
食べてはいけない?注意すべき食品と選び方のコツ
「食べてはいけないもの」と決めつけると食事が苦痛になります。
重要なのは「量」と「頻度」、そして「処理方法」です。
注意が必要な成分ごとに見ていきましょう。
【塩分】加工食品・漬物・汁物は「隠れ塩分」
塩辛いと感じなくても、塩分が多く含まれている食品があります。
- 注意すべき食品:
- ハム・ソーセージ・練り物(ちくわ、かまぼこ)、インスタントラーメン、漬物、干物。
- 対策:
- 麺類のスープは残す、醤油は「かける」のではなく小皿にとって「つける」、酸味(酢・レモン)や香辛料で味にアクセントをつける。
【カリウム】生野菜・果物は「茹でこぼし」で対策
カリウムは水に溶ける性質があります。
腎機能が低下してカリウムが高くなると、不整脈などの原因になります。
- カリウムが多い食品:
- 生野菜(ほうれん草、トマトなど)、生の果物(バナナ、メロン、キウイなど)、イモ類、海藻、豆類、ドライフルーツ。
- 対策:
- 野菜は細かく切ってから「茹でこぼす(茹でてお湯を捨てる)」か、水にさらすことでカリウムを30〜50%程度減らせます(参考:日本臨床内科医会 3)。果物は缶詰(シロップは捨てる)を利用するのも手です。
【リン】「食品添加物」に要注意
リンが血液中にたまると、骨がもろくなったり、血管の石灰化(動脈硬化)を招きます。
リンはタンパク質の多い食品に含まれますが、特に注意すべきは「無機リン」と呼ばれる食品添加物です。
- 無機リン(吸収率90%以上):
- ハム、ソーセージ、プロセスチーズ、インスタント食品、スナック菓子に含まれる添加物。これらは吸収されやすいため、できるだけ避けることが推奨されます(参考:日本臨床内科医会 3)。
- 有機リン(吸収率20〜60%):
- 肉や魚、豆腐などに含まれる天然のリン。こちらはタンパク源として重要なので、医師の指示範囲内で摂取します。
無理なく続けるための食事・調理の工夫【実践編】
「低タンパク米」や「減塩調味料」を賢く使う
主食であるご飯やパンにもタンパク質が含まれています。
これを「低タンパク米」や「低タンパクパン」に置き換えるだけで、おかず(肉や魚)の量を減らしすぎずに済み、食事の満足度を上げることができます。
また、減塩醤油やだし割り醤油を活用しましょう。
エネルギーアップの秘訣
タンパク質を減らすとカロリー不足になりがちです。
- 油を活用:
- 揚げ物や炒め物、ドレッシングやマヨネーズは、少量で高カロリーを確保できるCKDの味方です(糖尿病や脂質異常症がある場合は医師に相談してください)。
- 甘味を活用:
- 砂糖、ハチミツ、飴、ゼリーなどで糖分を補給します。腎臓病用のエネルギー補給ゼリーなども市販されています。

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では慢性腎臓病の方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
最新の治療をいち早く受けられることがある
専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
よくある質問(FAQ)
Q. 腎臓病に良い食べ物はありますか?
A. 残念ながら、食べるだけで腎機能が回復するような特定の食品はありません。テレビなどで「○○が腎臓にいい」と紹介されることがありますが、CKDの方にとってはカリウム過多になるリスクがある場合も多いため注意が必要です。特定の食品に偏らず、指示された栄養量の範囲内でバランスよく食べることが一番の薬です。
Q. お酒やコーヒーは飲んでもいいですか?
A. アルコールは適量(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)であれば許可されることが多いですが、おつまみの塩分には注意が必要です。コーヒーにはカリウムが含まれています。1日1〜2杯程度なら問題ないことが多いですが、インスタントコーヒーはドリップよりもカリウムが多めです。検査値や合併症(糖尿病など)によりますので、必ず主治医に確認してください。
まとめ
慢性腎臓病の食事療法は、「塩分・タンパク質の制限」と「エネルギーの確保」が基本です。
制限ばかりに目が行きがちですが、「加工食品(無機リン)を控えて、家で作った肉料理(有機リン)を楽しむ」「茹でこぼしをして野菜を食べる」など、工夫次第で豊かな食生活を送ることは可能です。
自己判断で極端な制限をすると、かえって栄養失調や体調悪化を招くことがあります。
必ず定期的に血液検査を受け、医師や管理栄養士と相談しながら、あなたのステージに合った食事を続けていきましょう。
参考資料・文献一覧
- 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」 https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00779/
- 日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版」 https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD-Dietaryrecommendations2014.pdf
- 日本臨床内科医会「慢性腎臓病(CKD)患者への食事指導」(日本臨床内科医会会誌 第29巻第5号) https://www.japha.jp/doc/CKDJ_vol9.pdf
- 日本腎臓学会「生活指導ガイドライン」 https://jsn.or.jp/general/guide/note/page14.php
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「CKD / 慢性腎臓病」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-073
