「首にしこりができて痛い」

「風邪のような熱がなかなか下がらない」

 病院で検査を受けたら「菊池病(きくちびょう)」や「組織球性壊死性リンパ節炎」という病名を告げられ、聞き慣れない名前に不安を感じている方もいるかもしれません。

特に「壊死(えし)」という言葉を聞くと、何か恐ろしい病気のように感じるかもしれません。

ですが、菊池病は「良性」の病気であり、ガン(悪性腫瘍)ではありません (参考:日本感染症学会 1)。

この記事では、主に若い女性に発症しやすい「菊池病」について、どのような症状が出るのか、原因や治療法、そして完治までの期間についてわかりやすく解説します。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

菊池病でお困りの方へ

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菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)とはどのような病気か

菊池病は、首のリンパ節が腫れて痛みや発熱を伴う病気です。

医学的には「組織球性壊死性リンパ節炎(そしききゅうせいえしせいりんぱせつえん)」、あるいは「亜急性壊死性リンパ節炎」と呼ばれます。

日本人が発見した良性のリンパ節炎

この病気は1972年に、福岡大学の病理医である菊池昌弘先生らによって報告されたことから「菊池病」という名前がついています (参考:日本小児感染症学会 2)。

リンパ節の組織が一部壊死(細胞が死ぬこと)を起こす特徴がありますが、これは良性の炎症によるものであり、転移したり命に関わったりするような悪性の病気ではありません

多くの場合、1〜3ヶ月程度で自然に治癒(自然寛解)します (参考:日本感染症学会 1)。

20〜30代の若い女性に多いのが特徴

菊池病の大きな特徴の一つが、20代〜30代の若い女性に発症しやすいという点です (参考:福岡県薬剤師会 3)。

男女比については報告により差があり、近年の調査では男女差は少ない(1:1に近い)とする報告もあります (参考:日本感染症学会 1)。

ですが、一般的には女性の方が男性よりも多い傾向にあると言われています (参考:日本小児感染症学会 2)。

欧米に比べて日本を含む東アジア系の人種に多く見られますが、なぜ若いアジア人女性に多いのか、その明確な理由はまだわかっていません。

菊池病の主な症状チェックリスト

風邪と間違われやすいですが、症状が長引くのが特徴です。

以下のような症状が見られることが一般的です。

首のリンパ節の腫れと痛み

最も代表的な症状は、首(頸部)のリンパ節の腫れです (参考:日本感染症学会 1)。

  • 多くの場合、左右どちらか一方(片側)の首が腫れます。
  • 腫れている部分を押すと痛み(圧痛)があります。
  • しこりの大きさは小指の先程度から、クルミ大(数センチ)になることもあります。

長引く発熱と全身症状

リンパ節の腫れと同時に、38度以上の発熱が見られることが多くあります (参考:日本感染症学会 1)。

  • 熱が下がらず、数週間続くことがあります。
  • 全身の倦怠感(だるさ)、関節痛、皮疹(肌の赤み)が出現することもあります。
  • 扁桃腺が腫れ、喉の痛みを伴うこともあり、初期は「扁桃炎」や「風邪」と診断されることも少なくありません (参考:福岡県薬剤師会 3)。

血液検査の異常

一般的な細菌性の感染症では、細菌と戦うために「白血球」の数が増えます。

しかし、菊池病では逆に「白血球の数が減少する」(あるいは正常範囲内)という特徴的なデータを示すことが多く (参考:日本感染症学会 1)、これが診断の手がかりの一つになります。

菊池病の原因は?ストレスや遺伝は関係ある?

現在のところ「原因不明」

残念ながら、菊池病がなぜ発症するのか、そのはっきりとした原因はまだ解明されていません。

現在の医学では、以下のような説が考えられています (参考:福岡県薬剤師会 3)。

  • ウイルス感染説:
    • EBウイルスやヘルペスウイルスなどの感染がきっかけになるという説。
  • アレルギー・免疫反応説:
    • ウイルスなどの刺激に対して、自分の免疫細胞(Tリンパ球や組織球)が過剰に反応してしまうという説。

ただし、特定のウイルスが直接的な原因であるという確証はまだ得られていません (参考:日本小児感染症学会 2)。

人にはうつらない

「ウイルス説」と聞くと感染を心配されるかもしれませんが、菊池病そのものが人から人へうつることはありません。

家族やパートナー、職場の人に移してしまう心配はないため、隔離などの必要はありません。

検査と診断:悪性リンパ腫との鑑別が重要

菊池病の診断において最も重要なのは、「悪性リンパ腫(血液のガン)」や「膠原病(全身性エリテマトーデスなど)」ではないことを確認することです (参考:九州大学病院 4)。

なぜ詳しい検査が必要なのか

菊池病の症状(首のしこり、発熱、寝汗、体重減少など)は、悪性リンパ腫の症状と非常によく似ています。

エコー検査(超音波)やCT検査、血液検査である程度の予測はつきますが、それだけでは100%の診断が難しい場合があります。

確定診断には「生検」が行われることも

診断を確実にするために、「リンパ節生検(せいけん)」が行われることがあります (参考:日本感染症学会 1)。

これは、腫れているリンパ節の一部(あるいは丸ごと)を手術で採取し、顕微鏡で細胞の並び方や種類を直接確認する検査です。

体にメスを入れるため患者さんの負担にはなりますが、「悪性の病気ではない」と確定させるために非常に重要な検査です。

菊池病の治療法と完治までの期間

特効薬はなく「対症療法」が基本

菊池病には、ウイルスや菌を退治するような特効薬はありません。

基本的には自然に治るのを待つ(自然治癒)病気です。

治療は、辛い症状を和らげる「対症療法」が中心となります (参考:日本感染症学会 1)。

  • 解熱鎮痛剤(NSAIDs):
    • 熱を下げ、痛みを抑えるためにロキソニンなどが処方されます。
  • ステロイド薬:
    • 高熱が続く場合や腫れがひどい場合、リンパ節の炎症を抑えるためにステロイド(プレドニゾロンなど)が使われることがあります。

治るまでの期間は1〜3ヶ月程度

個人差はありますが、発症から1ヶ月〜3ヶ月程度で熱が下がり、リンパ節の腫れも引いていきます (参考:日本感染症学会 1)。

基本的には予後(経過)が良く、後遺症を残すことはほとんどありません。

ただし、稀(数%程度)ですが再発することもあるため、治った後も体調管理には注意が必要です (参考:日本小児感染症学会 2)。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では菊池病でお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 菊池病は難病指定されていますか?

A. いいえ、難病指定はされていません。症状は辛いですが、良性であり自然治癒が見込める疾患であるためです。

Q. 仕事や学校は休むべきですか?

A. 人にうつる病気ではないため、体調が良ければ行くことは可能です。しかし、高熱や痛みが続く時期は無理をせず、自宅療養することが回復への近道です。医師と相談して決めましょう。

Q. 何科を受診すればいいですか?

A. 首の腫れですので、まずは「耳鼻咽喉科」が良いでしょう。また、全身の症状や血液検査の観点から「内科」「血液内科」で診療されることもあります。

まとめ

菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)は、若い女性に多く見られるリンパ節の病気です。

「壊死」という言葉や、原因不明であることから不安を感じる方も多いですが、基本的には良性で、時間が経てば自然に治る病気です。

ただし、自己判断は禁物です。

「首のしこり」は他の重大な病気のサインである可能性もゼロではありません。

もし首の腫れや長引く熱がある場合は、必ず医療機関を受診し、適切な検査を受けて安心を得るようにしてください。

焦らずゆっくりと体を休めることが、回復への一番の薬です。

参考資料・文献一覧

  1. 日本感染症学会「菊池病 69 例の臨床的検討」(感染症学雑誌 第83巻 第4号) http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0830040363.pdf
  2. 日本小児感染症学会「組織球性壊死性リンパ節炎の病理と臨床」(小児感染免疫 Vol.25 No.2) https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02502/025020175.pdf
  3. 公益社団法人 福岡県薬剤師会「質疑応答:菊池病とはどんな病気か?(一般)」 https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html?mode=0&classId=0&blockId=176605&dbMode=article&searchTitle=&searchClassId=0&searchAbstract=&searchSelectKeyword=&searchKeyword=&searchMainText=
  4. 九州大学病院 総合診療科「診療案内(不明熱・リンパ節腫脹)」 https://www.soshin.med.kyushu-u.ac.jp/guide/humeinetu/index.php