激しい回転性のめまいや難聴、耳鳴りを繰り返す「メニエール病」。
発作への恐怖から、「何を食べたら悪化するのか?」「食べてはいけないものはあるのか?」と不安に感じている方は非常に多いです。
「コーヒーが好きだけど我慢すべき?」
「チョコレートはダメと聞いたけど本当?」
そんな疑問に対し、この記事では日本めまい平衡医学会のガイドラインや厚生労働省の研究報告などの一次情報に基づき、医学的に正しい食事との付き合い方を解説します。
結論から言うと、「絶対に食べてはいけない禁止食品」はありません(参考:日本めまい平衡医学会 1)。
しかし、症状をコントロールするために「控えたほうがよいもの」と、逆に「積極的に摂るべきもの」は明確に存在します。
特に「お水」のとり方については、昔と今で常識が180度変わっていることをご存知でしょうか?
正しい知識を身につけ、恐れすぎずに毎日の食事を楽しみましょう。
※この記事は疾患啓発を目的としています。

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【結論】メニエール病に「絶対禁止」の食べ物はありません
まず安心してください。
メニエール病は食物アレルギーとは異なり、「特定の食品を一口でも食べたら即座に発作が起きる」という病気ではありません。
メニエール病の本質は、耳の奥にある内耳(ないじ)という部分が水ぶくれを起こす「内リンパ水腫」です(参考:厚生労働省 2)。
したがって、食事療法の目的は「内耳のむくみを取ること」にあります。
「食べてはいけないもの」はありませんが、「内耳をむくませてしまう成分」は控える必要があります。
特に注意すべきは以下の3大要素です。
- 塩分(ナトリウム)
- カフェイン
- アルコール
これらを完全に断つ必要はありませんが、過剰摂取は発作の引き金(トリガー)になる可能性があります(参考:AAO-HNS 3)。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
注意すべき食品①「塩分」:内耳のむくみの最大要因
メニエール病の食事療法で最も重要なのが「減塩」です。
なぜ塩分が悪いのか?
塩分(ナトリウム)を摂りすぎると、体内の塩分濃度を薄めようとして、体は水分を溜め込もうとします。
これがいわゆる「むくみ」です。
体や顔がむくむのと同じように、耳の奥の「内耳」でもむくみ(内リンパ水腫)が悪化し、神経を圧迫してめまいや難聴を引き起こします(参考:国立長寿医療研究センター 4)。
このため、日本の診療ガイドラインでも塩分制限を行うことが推奨されています(参考:日本めまい平衡医学会 1)。
「隠れ塩分」に注意
「塩をかけなければ大丈夫」と思っていませんか?
日本の食卓には、見えない塩分がたくさん潜んでいます。
- 麺類のスープ:
- ラーメンやうどんの汁を飲み干すと、それだけで1食5〜6g(1日の目標量近く)の塩分をとってしまいます。
- 加工食品:
- ハム、ソーセージ、練り物(ちくわ・かまぼこ)。
- 漬物・干物:
- 保存食は基本的に高塩分です。
- スナック菓子:
- 気づかないうちに塩分過多になります。
無理のない減塩のコツ
とはいえ、いきなり極端な薄味にするのはストレスが大きい方も多いでしょう。
まずは「麺類の汁は残す」「しょうゆは『かける』のではなく小皿に『つけて』食べる」といった小さな工夫から始めましょう。
注意すべき食品②「カフェイン」:コーヒー・チョコはダメ?
「コーヒーをやめなければいけませんか?」という質問は診察室でもよく聞かれます。
なぜカフェインが悪いのか?
カフェインには神経を興奮させる作用と、血管を収縮させる作用があります。
過敏になっている内耳の神経を刺激したり、睡眠の質を低下させてストレスに対する感受性を高めてしまう可能性があります(参考:日本めまい平衡医学会 1)。
また、カフェインの利尿作用で脱水状態になると、体は防衛反応として逆に水分を溜め込もうとする(抗利尿ホルモンが出る)ため、結果的に内耳のむくみにつながるリスクもあります。
チョコレートについて
チョコレート、特に近年人気の「ハイカカオチョコレート(カカオ70%以上など)」には、コーヒー以上のカフェインが含まれていることがあります。
「健康に良い」とされていても、メニエール病の方にとっては刺激が強すぎる場合があるため、食べ過ぎには注意が必要です。
上手な付き合い方
- コーヒー・紅茶:
- 1日1〜2杯程度にし、ガブ飲みは避ける。
- お茶の選択:
- 玉露や抹茶はカフェインが多いです。麦茶、黒豆茶、ルイボスティー、ハーブティーなど、ノンカフェインの飲み物を常備すると安心です。
- チョコレート:
- 夜遅くの摂取は避け、少量を楽しむ程度に留めましょう。
注意すべき食品③「アルコール」:脱水とむくみの原因
お酒もメニエール病の大敵と言われます。
なぜアルコールが悪いのか?
アルコールは分解される過程で大量の水を必要とし、体を脱水状態にします。
その反動で喉が渇き、水分代謝が乱れます。
また、アルコール自体が平衡感覚(小脳の機能など)を低下させるため、めまいを感じやすくなります(参考:AAO-HNS 3)。
完全に禁酒すべき?
発作が頻繁に起きている時期は、禁酒をおすすめします。
症状が落ち着いている時期であれば、「たしなむ程度」は許容されることも多いですが、必ず「同量のお水(チェイサー)」を一緒に飲み、脱水を防ぐようにしてください。
【超重要】水は「控える」のではなく「飲む」が正解

ここが最も誤解されているポイントであり、この記事で一番お伝えしたいことです。
「メニエール病は水ぶくれだから、水を控えたほうがいい」というのは、古い常識です。
現在は、「水分を十分に摂取することで、逆に内耳のむくみを解消する」という「水分摂取療法」が、多くの専門医によって推奨されています(参考:日本めまい平衡医学会 1)。
なぜ水を飲むと、水ぶくれが治るのか?
少し専門的な話になりますが、水分不足になると、体は「水を逃すな!」という指令(抗利尿ホルモン/バソプレシン)を出します。
このホルモンは、内耳に水を貯留させる作用も持っています。
逆に、十分な水を飲むと、このホルモンの分泌が止まり、尿として余分な水分がスムーズに排出されます。
結果として、内耳の循環も良くなり、むくみが取れるのです(参考:厚生労働省 5)。
正しい水の飲み方
厚生労働省の研究班などの報告では、以下のような飲み方が推奨されています。
- 量: 男性で1日2〜2.5リットル、女性で1.5〜2リットル程度を目安にする(食事に含まれる水分とは別に)。
- 種類: お茶やコーヒーではなく、「水(または炭酸水)」で摂取する。
- 飲み方: 一気に飲むのではなく、コップ1杯の水をこまめに飲む。
※ただし、心臓病や腎臓病で水分制限がある方は、必ず主治医の指示に従ってください。
メニエール病に「良い食べ物」はある?
「避ける」だけでなく、積極的に摂ることで症状改善が期待できる栄養素もあります。
1. カリウム(塩分の排出を助ける)
体内の余分な塩分(ナトリウム)を排出してくれる「カリウム」は強い味方です。
特にメニエール病の治療薬である「利尿薬(イソソルビド等)」を服用している場合、カリウムが尿と共に排出されやすくなるため、食事からの補給が重要になります。
- バナナ
- 海藻類(わかめ、昆布)
- 芋類
- アボカド
2. ビタミンB群(神経を整える)
耳の神経の働きを助けるビタミンB12(メコバラミン)は、病院で薬として処方されることもあります(参考:日本めまい平衡医学会 1)。
日々の食事でも意識してみましょう。
- 豚肉、うなぎ(ビタミンB1)
- 貝類、レバー(ビタミンB12)
- 玄米

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本ではメニエール病でお困りの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
最新の治療をいち早く受けられることがある
専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
食事よりも大切かもしれない「生活リズム」
最後に、食事と同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが「ストレス管理」と「睡眠」です。
「コーヒーもダメ、チョコもダメ、減塩しなきゃ…」と、食事制限自体がストレスになってしまっては本末転倒です。
メニエール病の最大の敵はストレスです(参考:厚生労働省 2)。
- 完璧を目指さない:
- 「今日は少し塩分多かったから、明日は野菜を多めにしよう」くらいの気持ちでOKです。
- 有酸素運動:
- ウォーキングなどの軽い運動は、内耳の血流を良くする効果が認められています(参考:日本めまい平衡医学会 1)。
まとめ:恐れすぎず、正しい知識でコントロールを
メニエール病において、「これを食べたら終わり」という毒のような食品はありません。 大切なのは、以下の3点を意識した生活です。
- 塩分は控えめに(スープは残す習慣を)
- 水はこまめにたっぷりと(水分摂取療法)
- カフェイン・アルコール・ストレスは「ほどほど」に
ご自身の体調と相談しながら、美味しく食べて、リラックスした毎日を過ごしてください。それが発作予防への一番の近道です。
参考資料・文献一覧
- 日本めまい平衡医学会「メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版」 https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00590/
- 厚生労働省 難病情報センター「メニエール病(指定難病に関わる調査研究)」 https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/kenkyuhan_pdf2011/s-tyoukaku1.pdf
- American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery (AAO-HNS) “Clinical Practice Guideline: Ménière’s Disease” https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32267799/
- 国立長寿医療研究センター「病院レター第51号:内リンパ水腫」 https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/051.html
- 厚生労働省「前庭機能異常に関する調査研究班 研究報告書」 https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/20268
