「医師から『自宅でゆっくり休んでください』と言われたけれど、具体的にどう過ごせばいいのかわからない」 「一日中寝てばかりで、家族に申し訳ない…」 うつ病の治療中、このような不安を感じていませんか?

実は、うつ病の治療において、自宅での過ごし方は薬物療法と同じくらい、あるいはそれ以上に重要です。

しかし、「正しい休み方」を学校で習うことはありませんから、戸惑うのは当然のことです。

この記事では、うつ病の治療における「自宅での適切な過ごし方」を、病気の回復段階(急性期・回復期)に合わせて具体的に解説します。

また、回復を妨げないために「やってはいけないこと」もお伝えします。

焦る必要はありません。

まずはこの記事を読んで、「今の自分は何もしなくていいんだ」と安心することから始めましょう。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

うつ病でお困りの方へ

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。

※負担軽減費とは:治験協力者が負担する交通費や時間的拘束などがあるためお金が支給されます。

治験ジャパンでは参加者の皆様に医療費の負担を軽減しながら、最新治療を受ける機会のご提供が可能です。

まず大前提:「休むこと」が一番の治療です

自宅療養中に最も患者さんを苦しめるのが「みんなが働いているのに自分だけ休んでいる」という罪悪感です。

しかし、まずはこの認識を変える必要があります。

うつ病は「エネルギー切れ」の状態

うつ病は、脳の神経伝達物質のバランスが崩れ、心身のエネルギーが枯渇してしまった状態と言えます(参考:NCNP病院 5)。

携帯電話のバッテリーが0%になっている状態を想像してください。

バッテリーがない状態で無理にアプリを起動しようとしても、すぐに電源が落ちてしまいます。

まずはコンセントに繋いで、しっかりと充電(休息)することが最優先事項です(参考:厚生労働省 4)。

「怠け」ではなく「治療」と割り切る

家でゴロゴロしたり、一日中布団に入っていたりすることは、決して「怠け」や「サボり」ではありません。

骨折をした人がギプスをして安静にするのと同じように、うつ病の人が脳と体を休めることは、立派な「治療行為」です。

「今は休むのが仕事」と割り切り、何もしない自分を許してあげてください(参考:日本うつ病学会 3)。

【時期別】うつ病の自宅での過ごし方ポイント

うつ病の回復過程は、大きく「急性期」と「回復期」に分けられます。

時期によって適切な過ごし方は全く異なります。

急性期(心身ともに辛い時期):ひたすら休息を優先

診断直後や、症状が重く何もする気が起きない時期です。

  • 寝たいだけ寝る: 睡眠リズムが崩れていても気にせず、体が求めるままに眠ってください。まずは脳と体を休ませることが最優先です(参考:日本うつ病学会 2)。
  • 無理に食べようとしない: 食欲がない場合に無理をして完食する必要はありません。ゼリーやヨーグルト、果物など、口当たりが良く食べられるものを少量ずつ口にするだけで十分です(参考:日本うつ病学会 2)。
  • 脳への刺激を減らす: 仕事のメールチェックはもちろん、SNSやニュースを見るのも控えましょう。これらは脳にとって大きな負担となります。
  • お風呂はシャワーでもOK: 入浴は意外と体力を使います。辛い時はシャワーで済ませたり、蒸しタオルで顔を拭くだけでも構いません(参考:日本うつ病学会 2)。

この時期の目標は「エネルギーの流出を防ぐこと」です。「何もしない」ことが最大の成果です。

回復期前期(少し動ける時期):生活リズムを整える

少しずつエネルギーが溜まり、身の回りのことができるようになってきた時期です。

  • 生活リズムを整える: 起床時間と就寝時間をなるべく一定にします。夜眠れなくても、朝は決まった時間にカーテンを開けましょう。
  • 日光を浴びる: 朝の光を浴びると、脳内で「セロトニン」という神経伝達物質が活性化し、体内時計がリセットされます。ベランダに出るだけでも効果があります(参考:日本うつ病学会 2)。
  • 軽い散歩: 調子の良い日は、近所を5分〜10分程度散歩してみましょう。景色を見ることで気分転換になります。

回復期後期(社会復帰へ向かう時期):活動量を増やす

復職や社会復帰を意識し始める時期です。

  • 活動的な時間を作る: 図書館に行く、簡単な家事をするなど、日中の活動量を増やしていきます。
  • 認知機能のリハビリ: 読書や料理など、手順を考えたり集中力を使う作業を取り入れます。
  • 復帰のシミュレーション: 復職を目指す場合は、通勤と同じ時間に起きて図書館へ行くなど、擬似的な通勤訓練を行うこともあります。

うつ病の時に「やってはいけない」5つのこと

良かれと思ってやったことや、焦りからくる行動が、かえって回復を遅らせてしまうことがあります。

以下の5つは特に注意してください。

1. 重大な決断(退職、離婚、引っ越しなど)

うつ病の時は、悲観的な考えに支配されやすく、正常な判断ができない状態です。

「迷惑をかけるから会社を辞めよう」などと考えがちですが、回復してから後悔することが非常に多いです。

人生に関わる大きな決断は、病気が良くなるまで「先送り」にしてください(参考:日本うつ病学会 1)。

2. 激しい運動や無理な外出

「体力をつけなきゃ」と焦ってジムに通ったり、遠出をしたりするのは危険です。

一時的に気分が良くなっても、後から反動(揺り戻し)が来て、ガクンと体調を崩すことがあります。

3. お酒(アルコール)への逃避

寝付けないからといって寝酒をするのはNGです。

アルコールは睡眠の質を下げ、うつ病の回復を妨げます。

また、抗うつ薬との相性も悪く、治療の効果を妨げたり副作用が強く出る危険性があります(参考:日本うつ病学会 1)。

4. 不規則な昼夜逆転生活

急性期は仕方ありませんが、いつまでも昼夜逆転の生活を続けていると、自律神経が整わず、気分の落ち込みが改善しにくくなります。

少し動けるようになったら、朝型の生活を心がけましょう(参考:厚生労働省 4)。

5. 自分を責める思考(自責)

「今日も何もできなかった」と自分を責めるのはやめましょう。

うつ病の時は、無意識に自分を攻撃してしまいがちです。

「今日は歯を磨けた」「今日は窓を開けた」など、できたことに目を向け、自分を褒めてあげてください。

暇で辛い時、何もできない時のおすすめの過ごし方

体が動かず、かといって眠れもしない時間は、不安が押し寄せて辛いものです。

そんな時は、脳を疲れさせずにリラックスする方法を試してみてください。

  • 聴覚を中心にする: テレビやスマホの「視覚情報」は脳を酷使します。もし音が苦痛でなければ、好きな音楽を流したり、ラジオを聴き流したりする「聴覚」中心の過ごし方がおすすめです(参考:日本うつ病学会 2)。
  • ボーッとする: 窓の外の雲を眺めたり、アロマの香りを嗅いだりして、何もしない時間を楽しみましょう。
  • 単純作業: 塗り絵やパズルなど、結果を評価されず、無心になれる単純作業は、心の安定に役立つことがあります。

一人暮らしや家族がいる場合の注意点

生活環境に合わせた注意点を紹介します。

一人暮らしの場合

誰の目もない分、生活が乱れがちです。また、孤独感も敵になります。

  • 食事の確保: 買い物に行くのが辛い時は、ネットスーパーや宅配弁当を遠慮なく活用しましょう。
  • 繋がりを持つ: 誰とも話さない日が続くと気分が落ち込みます。家族や友人と短時間電話をする、SNSで同じ境遇の人を見る(見過ぎは注意)など、緩やかな繋がりを保ちましょう。

家族と暮らす場合

家族に気を使ってしまうことがストレスになる場合があります。

  • 距離感を大切に: 家族には「今はそっとしておいてほしい」と伝え、干渉しすぎない距離感を保ってもらいましょう。
  • 「できない」を伝える: 家事などができない時は、「今は病気の症状でできない」とはっきり伝え、役割を変わってもらうことが大切です(参考:日本うつ病学会 2)。
治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本ではうつ病でお困りの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

まとめ:焦らず「牛歩」で進みましょう

うつ病の回復は、右肩上がりに良くなるものではありません。

3歩進んで2歩下がるような、一進一退を繰り返しながら、薄紙を剥ぐように良くなっていきます。

「昨日できたことが、今日はできない」という日があっても、それは悪化しているわけではありません。

「そういう日もある」と受け流し、焦らずゆっくり過ごしてください。

 今日のあなたが、少しでも心穏やかに過ごせることを願っています。

うつ病に関するよくある疑問

Q: 一日中寝てばかりで、体がなまりませんか? 

A: 急性期であれば、体がなまることよりも脳を休めることの方が優先です。

動けるようになってから、少しずつ散歩などで体力を戻していけば問題ありません。焦って動くとかえって回復が遅れます。

Q: 気分転換にゲームやスマホをしてもいいですか?

A: 楽しいと感じるなら短時間はOKですが、長時間続けると目と脳が疲労し、後でぐったりしてしまうことがあります。時間を決めて(例:1回15分など)、疲れる前にやめるのがコツです。

Q: うつ病が治りかけている兆候(サイン)はありますか?

A: 「朝起きた時の絶望感が少し減った」「ご飯が美味しいと感じた」「テレビを見て笑えた」など、小さな変化が現れます。

また、「暇だな」「何かしたいな」という退屈感が出てくるのも、エネルギーが溜まってきた良い兆候です。


参考資料・文献一覧

  1. 日本うつ病学会「日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)」 https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/20190724.pdf
  2. 日本うつ病学会「うつ病看護ガイドライン」 https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_kango_20220705.pdf
  3. 日本うつ病学会「Decision Aid for Depression Treatment 治療法を一緒に選ぶための手引き」 https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/psychoeducation_20241118.pdf
  4. 厚生労働省「こころの耳:うつ病 治療と予後」 https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad003/
  5. 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)「うつ病」 https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease01.html