「子宮内膜症」という診断を受けたとき、あるいはその疑いがあるとき、多くの方が最初に抱く疑問は「なぜ私が?」というものではないでしょうか。

激しい生理痛や将来の不妊への不安とともに、「生活習慣が悪かったのか」「ストレスのせいなのか」と、ご自身を責めてしまう方も少なくありません。

結論から申し上げますと、子宮内膜症になるはっきりとした原因は、現代の医学でも完全には解明されていません(参考:日本産科婦人科学会 1)。

しかし、有力な説や発症リスクを高める要因については分かってきています

この記事では、現在医学界で有力視されている発症メカニズムと、ネット上で囁かれる「性行為やストレスとの関係」の真偽について、日本産科婦人科学会等の信頼できる情報を基に解説します。

正しい知識を持ち、不安を解消して前向きな治療につなげましょう。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

子宮内膜症でお困りの方へ

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なぜ子宮内膜症になるの?現在有力視されている2つの原因説

子宮内膜症は、本来なら子宮の内側にしかないはずの「子宮内膜」組織が、何らかの原因で卵巣やお腹の中(腹膜)など、子宮以外の場所にできてしまい、そこで発育する病気です(参考:日本産科婦人科学会 1)。

なぜ、本来あるはずのない場所に組織ができてしまうのでしょうか。

現在、主に2つの有力な説が唱えられています(参考:日本産婦人科医会 2)。

【有力説1】月経血の逆流(移植説/サンプソン説)

現在、最も有力とされているのが、「月経血(生理の出血)がお腹の中に逆流してしまう」という説(移植説)です(参考:日本産婦人科医会 2、日本内分泌学会 5)。

通常、生理の出血は子宮から膣を通って体の外へ排出されます。

しかし、その一部は卵管を通ってお腹の中(腹腔内)へ逆流していることが知られています。

これは生理のある女性の多くに見られる現象であり、決して異常なことではありません(参考:日本内分泌学会 5)。

では、なぜ病気になる人とならない人がいるのでしょうか?

逆流した血液中に含まれる子宮内膜の組織は、通常であれば体の免疫機能によって処理されます。

しかし、何らかの理由でこれらが処理されず、お腹の中の膜や卵巣にくっついて(生着して)増殖を始めてしまうのが子宮内膜症だと考えられています(参考:日本内分泌学会 5)。

【有力説2】体腔上皮化生(かせい)説

もう一つ有力なのが「化生(かせい)説」です。

これは、お腹の内側を覆っている「腹膜」や卵巣の表面にある細胞が、何らかの刺激によって「子宮内膜の組織」に変化(変身)してしまうという説です(参考:日本産婦人科医会 2)。

初経前の女性や、生まれつき子宮を持たない女性にも稀に子宮内膜症が見つかることがあるため、月経血の逆流だけでは説明がつかないケースの理由として考えられています(参考:日本産婦人科医会 2)。

女性ホルモン「エストロゲン」が燃料になる

原因(きっかけ)が逆流であれ化生であれ、この病気を進行・悪化させる最大の要因は「女性ホルモン(エストロゲン)」です(参考:日本産科婦人科学会 1)。

子宮内膜症の組織も、通常の子宮内膜と同じように女性ホルモンの影響を受けます。

そのため、生理のサイクルに合わせて増殖し、出血します。

  1. 通常の生理:
    • 出血しても膣から外へ排出される。
  2. 子宮内膜症:
    • 出口がないため、お腹の中や卵巣の中に古い血液が溜まり続ける。

これが炎症や痛み、癒着(ゆちゃく)を引き起こす原因となります。

つまり、「生理がくるたびに病気が進行しやすい」という特徴があります(参考:日本産科婦人科学会 1)。

「なりやすい人」はいる?発症リスクを高める要因

「私の生活習慣がいけなかったの?」と悩む必要はありません。

現代において子宮内膜症が増えている最大の理由は、個人の不摂生ではなく、女性のライフスタイルの変化にあると言われています。

最大の要因は「月経回数の多さ」

昔の女性は、多くの子供を産み、授乳期間も長かったため、生涯の生理回数は約50回程度だったと言われています(参考:国立成育医療研究センター 3)。

一方、現代の女性は初経が早まり、晩婚化・少子化が進んだことで、一生涯に経験する生理の回数は約450回にも及ぶとされています(参考:国立成育医療研究センター 3)。

これは昔の約9倍です。

  • 生理の回数が多い = 月経血が逆流するチャンスが多い
  • 生理の回数が多い = エストロゲンにさらされる期間が長い

つまり、現代を生きる女性であれば誰でも、子宮内膜症になるリスクを持っていると言えます。

初経年齢と月経周期の影響

以下のような傾向がある場合、エストロゲンにさらされる期間が長くなるため、リスクがやや高まると考えられています。

  • 初経年齢が早い
  • 月経周期が短い(頻発月経)
  • 月経期間が長い

遺伝や免疫の影響はある?

はっきりとした遺伝子は特定されていませんが、母親や姉妹に子宮内膜症の方がいる場合、発症リスクが高くなるという報告もあります。

また、逆流した内膜組織を排除できない何らかの免疫機能の違いが関与している可能性も研究されています(参考:日本内分泌学会 5)。

【ファクトチェック】「性行為」や「ストレス」が原因って本当?

インターネット上やSNSでは、子宮内膜症の原因について様々な噂が飛び交っています。

特にご自身を責める原因になりやすい「性行為」や「ストレス」について、医学的な視点で解説します。

「性行為のしすぎ」は医学的根拠なし

「性行為の回数が多いとなる」「性感染症が原因」といった情報を見かけることがあります。

ですが、子宮内膜症の発症と性行為の頻度に、直接的な因果関係があるという医学的根拠はありません。

性行為によって細菌が入り炎症を起こす「子宮内膜炎(ないまくえん)」とは名前が似ていますが、全く別の病態です。

ご自身の行動を責める必要は全くありません。

ストレスは直接の原因ではない

「ストレスで子宮内膜症になる」という説も、直接的な原因としては証明されていません

 ただし、強いストレスはホルモンバランスを乱し、月経不順や生理痛の悪化を招くことがあります。

また、痛みに対する感受性を高めてしまうこともあるため、病気そのものの原因ではなくても、症状のつらさに影響する可能性はあります。

「冷え」や「タンポン」は関係ある?

  1. 冷え:
    • 「冷えが原因で発症する」という明確なエビデンスはありません。ただし、冷えによる血行不良が骨盤内のうっ血を招き、痛みを増強させることは考えられます(参考:日本産婦人科医会 6)。
  2. タンポン:
    • 過去に「タンポンが月経血の逆流を助長するのではないか」という議論がありましたが、現在ではタンポンの使用が子宮内膜症のリスクを有意に高めるという確実な証拠はないとされています。

子宮内膜症を放置するとどうなる?不妊との関連

「たかが生理痛」「鎮痛剤で我慢すればいい」と放置してしまうことは、リスクを伴います。

  1. 痛みの増強:
    • 年齢とともに病変が広がり、生理期間以外にも腰痛や下腹部痛が生じることがあります。
  2. 癒着(ゆちゃく):
    • 炎症によって卵管や卵巣、腸などがくっついてしまい、引きつれるような痛みの原因になります。
  3. 不妊症:
    • 子宮内膜症の患者さんの約30〜50%に不妊の症状が見られると言われています(参考:日本産婦人科医会 4)。癒着によって卵管が詰まったり、卵巣の状態が悪くなったりすることが原因です。

しかし、「子宮内膜症=妊娠できない」ではありません。

適切な治療とコントロールを行えば、妊娠されている方はたくさんいらっしゃいます。

だからこそ、早期の対策が重要です。

原因を踏まえた治療と対策

原因が「月経血の逆流」や「女性ホルモンの影響」である以上、治療の鍵は「生理の回数を減らす・軽くする」ことになります。

「生理を止める」ことが根本治療に近い理由

低用量ピル(OC/LEP)やホルモン製剤(ジェノゲスト等)を使って、排卵を止めたり、子宮内膜が厚くなるのを抑えたりする治療法(薬物療法)が一般的です(参考:日本産婦人科医会 1)。 

これにより、以下の効果が期待できます。

  • 月経血の逆流自体を減らす
  • エストロゲンの影響を抑え、病変の萎縮(いしゅく)を目指す
  • 生理痛を劇的に和らげる

妊娠・出産と子宮内膜症の関係

妊娠中は生理が止まり、プロゲステロンというホルモンが優位になるため、子宮内膜症の病変が改善したり、症状が治まったりすることがよくあります。

これを「妊娠治療」と呼ぶこともありますが、あくまで自然な体の変化によるものです。

現在妊娠を希望されている場合は、不妊治療と並行して病気のコントロールを行う計画を立てる必要があります。

早期発見・早期治療が将来の妊娠力を守る

「まだ妊娠は考えていないから」といって激しい生理痛を我慢していると、その間に病気が進行し、いざ妊娠したいと思った時に癒着などで苦労する可能性があります。

鎮痛剤が効かないほどの生理痛がある場合は、将来の自分のために、一度婦人科を受診することをお勧めします。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では子宮内膜症の方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

FAQ

Q. 子宮内膜症は閉経すれば治りますか?

A. はい、基本的には閉経して女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下すると、症状は軽快し、病変も萎縮していくことが多いです(参考:日本産科婦人科学会 1)。ただし、卵巣がん化のリスクなど、閉経後も経過観察が必要なケースもあります。

Q. 母親が子宮内膜症でした。予防法はありますか?

A. 確実な予防法はありませんが、遺伝的要因も否定できないため、生理痛が重いと感じたら早めに受診することが大切です。低用量ピルを服用して月経血の量を減らすことは、発症や進行の予防につながる可能性があります。

Q. ピルを飲む以外に自分でできる対策はありますか?

A. 根本的な治療は薬物療法になりますが、補助的な対策として、体を冷やさないこと、適度な運動で骨盤内の血流を良くすることは痛みの緩和に役立つと言われています(参考:日本産婦人科医会 6)。喫煙はホルモンバランスに悪影響を与えるため控えましょう。

まとめ

子宮内膜症の原因について解説してきました。

  • 原因は完全には解明されていないが、「月経血の逆流」などが有力(参考:日本産婦人科医会 2)。
  • 性行為やストレス、個人の不摂生が原因ではない(自分を責めないでください)。
  • 現代女性は生涯の月経回数が多いため、誰でもなりうる「現代病」である(参考:国立成育医療研究センター 3)。
  • 生理がある限り進行しやすいため、放置せず医療機関でコントロールすることが大切。

「原因不明」と聞くと不安になるかもしれませんが、治療法は確立されています。

ピルなどでホルモンをコントロールし、生理の回数や量を調整することは、現代を生きる女性の体を守るための賢い選択肢の一つです。

ひとりで悩みや痛みを抱え込まず、専門医に相談して、あなたに合った対策を見つけていきましょう。

参考資料・文献一覧
  1. 公益社団法人日本産科婦人科学会「子宮内膜症」 https://www.jsog.or.jp/citizen/5712/
  2. 公益社団法人日本産婦人科医会「(1)子宮内膜症の発生」 https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%881%EF%BC%89%E5%AD%90%E5%AE%AE%E5%86%85%E8%86%9C%E7%97%87%E3%81%AE%E7%99%BA%E7%94%9F/
  3. 国立研究開発法人国立成育医療研究センター「女性のライフステージと健康の特徴」 https://w-health.jp/introduction/lifestage/
  4. 公益社団法人日本産婦人科医会「(4)子宮内膜症性不妊への対応」 https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%884%EF%BC%89%E5%AD%90%E5%AE%AE%E5%86%85%E8%86%9C%E7%97%87%E6%80%A7%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%BF%9C/
  5. 一般社団法人日本内分泌学会「子宮内膜症」 https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=77
  6. 公益社団法人日本産婦人科医会「(1)月経困難症」 https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%881%EF%BC%89%E6%9C%88%E7%B5%8C%E5%9B%B0%E9%9B%A3%E7%97%87/