生理が始まると、お腹の痛みだけでなく「腰が砕けるように痛い」「重だるくて座っているのもつらい」といった症状に悩まされていませんか?
生理痛というと腹痛のイメージが強いですが、実は多くの女性が腰痛に悩んでおり、中には「ぎっくり腰のような激痛で動けない」「腰が痛すぎて夜も寝られない」という切実な声も少なくありません(参考:厚生労働省研究班 1)。
この記事では、生理中に腰が痛くなる医学的なメカニズムから、今すぐ自宅でできる解消法、そして痛くて眠れない時のおすすめの寝姿勢までを網羅的に解説します。
さらに、生理前からの痛みの正体や、婦人科で行われる検査・治療の内容についても詳しく解説しました。
つらい痛みを「体質だから」と諦めず、正しい対処法を見つけましょう。
※この記事は疾患啓発を目的としています。
生理痛・月経困難症でお困りの方へ

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なぜ生理中に腰が痛くなるの? 主な原因
生理中の腰痛は、単なる「疲れ」や「姿勢」だけの問題ではなく、生理特有のホルモンの動きが深く関係しています。
なぜお腹だけでなく腰まで痛くなるのか、その主な原因は以下の2つです。
1. 痛みの物質「プロスタグランジン」の過剰分泌
生理痛の最大の原因と言われるのが、「プロスタグランジン」という物質です。
生理が始まると、不要になった子宮内膜を血液(経血)として体の外に排出するために、子宮を収縮させる必要があります。
この収縮を命令するのがプロスタグランジンの役割です。
しかし、このプロスタグランジンの分泌量が多すぎると、子宮を必要以上に強く収縮させてしまい、陣痛のような腹痛を引き起こします。
さらに厄介なことに、プロスタグランジンには血管を収縮させる作用もあります。
この作用が子宮周辺の腰周りの血管にも及び、血流が悪化することで、腰に重い痛みやだるさ、冷えを引き起こすのです(参考:厚生労働省研究班 1, 日本産婦人科医会 2)。
2. 骨盤内の「うっ血」と冷え
上記のホルモンバランスに加え、現代女性に多い「冷え」や「デスクワークによる長時間座りっぱなし」も腰痛を悪化させる要因です。
骨盤内はただでさえプロスタグランジンの影響で血行が悪くなりやすい状態です。
そこに運動不足などが加わると、骨盤内に血液が滞る「うっ血(骨盤内うっ血)」が生じます。
うっ血すると組織が酸欠状態になり、痛み物質がさらに蓄積されるという悪循環に陥ってしまいます。
生理中に腰が鉛のように重く感じるのは、このうっ血が関係していることが多いのです(参考:厚生労働省研究班 1)。
生理「前」から腰が痛いのはなぜ?(PMSの影響)
「生理が始まる数日前から腰が痛む」という場合、それは月経前症候群(PMS)の症状の一つかもしれません。
生理前(黄体期)には、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」というホルモンが多く分泌されます。
このホルモンには、体に水分を溜め込ませる働きがあります。
- むくみによる圧迫:
- プロゲステロンの影響で骨盤の周りの組織がむくみ、神経を圧迫することで腰痛が生じやすくなります(参考:日本産科婦人科学会 3)。
- 血行不良:
- むくみによって血管が圧迫され、血流が悪くなることも痛みの原因となります。
生理が始まるとプロゲステロンの分泌は減るため、このタイプの腰痛は生理開始とともに軽くなることがあります。
ですが、入れ替わりでプロスタグランジンによる痛み(生理痛)が始まるため、結果的に「ずっと痛い」と感じてしまうことがあります。
生理中のつらい腰痛を和らげるセルフケア
「今まさに腰が痛い」という方のために、即効性が期待できる具体的なセルフケアを紹介します。
1. カイロで「仙骨」と「おへその下」を温める
冷えは血管収縮を招き、痛みを増幅させます。
使い捨てカイロを使って、効率的に体を温めるのが最も手軽で有効な手段です。
- 仙骨(せんこつ):
- お尻の割れ目の少し上にある、手のひらサイズの平らな骨の部分です。ここを温めることで骨盤全体の血流改善が期待できます。
- おへその下(丹田):
- おへそから指4本分くらい下の位置、子宮の真上にあたります。
※低温やけどを防ぐため、必ず肌着やショーツの上から貼るようにしてください(参考:厚生労働省研究班 1)。
2. 腰痛に効く軽いストレッチ
生理中に激しい運動はNGですが、ベッドの上でできる程度の軽いストレッチは、筋肉の緊張をほぐし、うっ血を取り除くのに非常に有効です。
仰向けで膝を立てて左右にパタンパタンと倒す「骨盤ゆらし」など、腰周りの筋肉を優しく動かすことで血流を促しましょう(参考:厚生労働省研究班 1)。
3. 服装の締め付けを解放する
スキニーパンツやガードルなど、体を強く締め付ける服装は血行を妨げます。
血流が悪くなるとプロスタグランジンが滞留しやすくなるため、生理中はウエストがゴムのボトムスやワンピースなど、お腹と腰周りを締め付けない服装を選びましょう(参考:厚生労働省研究班 1)。
4. 鎮痛剤(痛み止め)の正しい使い方
「薬に頼りたくない」と我慢するのは得策ではありません。
一般的な鎮痛剤(NSAIDs)は、痛みの原因物質であるプロスタグランジンが作られるのを抑える薬です。
一度痛み物質が大量に作られてしまってからでは効きにくいため、「痛みが出始めたとき」や「生理開始直後」に早めに服用するのが、痛みのピークを抑えるための賢い使い方です(参考:東京医科大学病院 4)。
5. 食事で体の中からケアする
生理痛を和らげるためには、食事の内容も意識してみましょう。
- オメガ3系脂肪酸:
- 青魚(サバ、イワシ)やアマニ油に含まれるEPA/DHAなどは、プロスタグランジンの過剰な生成を抑える働きがあると言われています。
- マグネシウム:
- 大豆製品、ナッツ、海藻類に含まれ、子宮の過剰な収縮調整に関わります。
- 体を温める:
- 生姜や根菜類を摂り、冷たい飲み物は控えるようにしましょう。
腰が痛くて寝れない時に試してほしい「寝姿勢の工夫」

「腰が痛くて寝返りが打てない」という悩みも多く聞かれます。
医学的に「万人に効く正解の寝方」はありませんが、腰への負担を減らす工夫は可能です。
横向きで寝る(シムス位の応用)
腰への負担が比較的少ないとされる姿勢です。
体の片側を下にして横向きになり、背中を少し丸めます。
この時、膝と膝の間にクッションや抱き枕を挟むと、上になった脚の重みで骨盤がねじれるのを防ぎ、腰が楽になることがあります。
仰向けなら膝下にクッションを
仰向けで足を伸ばすと、腰が反って(反り腰になり)痛みが増すことがあります。
膝の下に丸めたバスタオルやクッションを入れて、膝を軽く立てた状態を作ると、腰が布団に密着しやすくなり、緊張が緩みます。
生理痛の腰痛がひどい場合に考えられる病気「月経困難症」
生理のたびに寝込むほどの腰痛がある場合、それは単なる体質ではなく、医学的に治療が必要な「月経困難症」の可能性があります。
機能性月経困難症
子宮や卵巣に明らかな病変は見つからないタイプです。
主に、プロスタグランジンの分泌量が過剰であったり、子宮の出口が狭かったりすることが原因です。
思春期から20代前半の若い女性に多く見られます(参考:厚生労働省研究班 1, 日本産婦人科医会 2)。
器質性月経困難症
子宮内膜症、子宮筋腫など、子宮や卵巣に何らかの病気が隠れているタイプです。
特に子宮内膜症は、子宮の内側以外(卵巣や腹膜など)に組織ができ、癒着を引き起こす病気です。
子宮の後ろ側(腰側)で癒着が起きると、腰の神経を刺激して強烈な腰痛を引き起こすことがあります。
20代後半以降で生理痛が年々重くなっている場合は、早めの受診が重要です(参考:厚生労働省研究班 1)。
婦人科に行くと何をするの?怖くない検査と治療
「病院に行くと何をされるか不安」「内診が怖い」という理由で受診をためらっている方も多いかもしれません。
しかし、婦人科では患者さんの不安に配慮した診療が行われています。
どんな検査をするの?
- 問診:
- 生理の周期、痛みの程度、既往歴などを医師に伝えます。
- 超音波検査(エコー): 子宮や卵巣の状態を画像で確認します。
- 通常は腟から器具を入れる「経腟エコー」が鮮明ですが、性交経験がない方や痛みが強い方には、お腹の上からあてる「経腹エコー」や、お尻から診る「経直腸エコー」を選択できる場合があります。不安な場合は事前に医師に相談しましょう(参考:日本産科婦人科学会 5)。
- 血液検査:
- 貧血の有無や、子宮内膜症のマーカー(CA125など)を調べることがあります。
治療の選択肢は「痛み止め」だけじゃない
「痛み止めをもらうだけなら市販薬と同じ」と思っていませんか?
婦人科では、根本的に痛みを改善するための様々な治療法があります。
- LEP(低用量ピル):
- 排卵を抑えて子宮内膜が厚くなるのを防ぐことで、プロスタグランジンの産生を減らし、痛みを劇的に軽くします(参考:日本産科婦人科学会 5)。
- IUS(ミレーナ):
- 子宮の中に小さな器具を入れ、黄体ホルモンを持続的に放出させる方法です。一度入れれば最長5年間効果が続き、生理痛や過多月経に高い効果があります(参考:日本産科婦人科学会 5)。
- 漢方薬:
- 冷えや血行不良などの体質を改善し、痛みを和らげます。ピルが飲めない方にも処方されます(参考:日本産科婦人科学会 5)。
治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では生理痛や月経困難症でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
最新の治療をいち早く受けられることがある
専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
まとめ
生理中の腰痛は、「プロスタグランジン」による血行不良や、生理前からのホルモン変動による「むくみ」などが複合して起こります。
まずは体を温め、早めに鎮痛剤を使用し、無理のない範囲でリラックスして過ごしてください。
しかし、生活に支障が出るほどの痛みは「月経困難症」という病気かもしれません。
「生理痛は我慢するもの」ではなく、「治療して楽にできるもの」です。
低用量ピルや漢方など、あなたに合った治療法は必ずあります。
我慢せずに婦人科のドアを叩いてみてください。
- 厚生労働省研究班「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」 https://w-health.jp/
- 日本産婦人科医会「女性の健康Q&A」 https://www.jaog.or.jp/
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会「月経前症候群(PMS)」 https://www.jsog.or.jp/
- 東京医科大学病院 薬剤部「お薬のしおり」 https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023」 https://www.jsog.or.jp/
