ふと鏡を見た時、おでこにくっきりと刻まれた線にショックを受けたことがあるかもしれません。
「まだ10代・20代なのに、どうして自分だけ?」「もしかして、老化が早く進んでいるの?」
そんな不安を抱きすぎる必要はありません。
若い世代でも額のシワに悩む人は決して珍しくなく、多くの場合、年齢そのものよりも表情のクセや紫外線、乾燥、まぶたの状態といった要因が関わっています。
おでこのシワの正体は、日々の「表情のクセ」や「乾燥」、あるいは「まぶたの筋力低下(眼瞼下垂)」など様々です。
原因に応じて、セルフケアで目立ちにくくできる場合もあれば、美容医療で改善を図ることもできます。
この記事では、皮膚科専門医である阿佐ヶ谷皮フ科 院長 江上 将平医師監修のもと、まずあなたのシワの原因を特定する「タイプ別診断」を行い、今日からすぐに実践できる「本気の改善法」をわかりやすく解説します。
※この記事は疾患啓発を目的としています
若いのにおでこにシワができる5つの原因
「おでこのシワ=おじいちゃん・おばあちゃん」というイメージは必ずしも正しくありません。
若い肌であっても、特定の条件が重なればシワは深く刻まれてしまいます。
ここでは代表的な5つの原因を紹介します。
1. 表情のクセ(眉を上げる・目を見開く)
スマホの画面を見る時、人と話して驚いた時、マスカラを塗る時などに、無意識に「眉をグッと持ち上げる」クセはありませんか?
おでこの皮膚は、表情筋(前頭筋)の動きに合わせて折りたたまれます。
表情のクセによって同じ場所が何度も折りたたまれると、もともと弾力のある若い肌でも、少しずつ折り目が残りやすくなり、いわゆる「表情ジワ」として固定していきます。
2. 肌の乾燥・「内側の水分不足」
10代・20代は皮脂分泌が活発なため「自分は乾燥していない」と思いがちですが、実際には角層の水分が不足している状態がみられることがあります。
過剰な洗顔やエアコンの風などで角層のバリア機能が低下すると、キメが乱れて細かいシワ(乾燥小ジワ、ちりめんジワ)が目立ちやすくなります。
このような乾燥状態を放置すると、将来的により深いシワが目立ちやすくなるおそれがあります。
3. 紫外線ダメージ(光老化)
皮膚の「光老化」とは、長年の紫外線による慢性的なダメージによって起こる老化現象です。
日本皮膚科学会でも、光老化によって真皮の弾性線維が破壊され、深いシワが生じることが説明されています(参考:日本皮膚科学会Q&A)。
紫外線は肌の奥の真皮層にあるコラーゲンやエラスチンを変性させ、肌の「ハリ・弾力」を低下させます。
その結果、表情でできたシワが戻りにくくなり、跡として残りやすくなります。
4. 現代生活:スマホ・PCによる眼精疲労と姿勢
長時間スマホやPCを見続ける生活は、眼精疲労や前かがみ姿勢を招きやすくなります。
おでこの筋肉(前頭筋)は頭皮(帽状腱膜)とつながっており、目の周りや頭部の筋肉の緊張と関係しています。
頭や目に力が入りやすい生活が続くと、額に力を入れて眉を上げるクセがつき、表情ジワが定着しやすくなると考えられています。
ただし、「頭皮マッサージでシワが予防できる」といった明確なエビデンスは現時点ではありません。
5. 眼瞼下垂(がんけんかすい)やまぶたの筋力低下
医学的な原因として重要なのが眼瞼下垂です。
眼瞼下垂は「上まぶたが下がった状態」で、加齢による変化やコンタクトレンズ長期装用などが主な原因とされています(参考:日本眼科学会「眼瞼下垂」)。
まぶたが上がりにくくなると、無意識におでこの筋肉(前頭筋)で眉を持ち上げて視界を確保しようとするため、眉の位置が高くなり額のシワが目立つ、頭痛や肩こりの一因となることもあるとされています(参考:日本形成外科学会)。
コンタクトレンズの長期使用がまぶたの筋肉に負担をかけ後天性眼瞼下垂の危険因子として報告されており、強く目をこする習慣とあわせて、まぶたへの負担には注意が必要です。
【タイプ別診断】自分のシワはどれ?原因を知って正しい対策を
原因は一つとは限りません。「自分のシワはどのタイプか」を知ることが、改善への近道です。
鏡を見ながらチェックしてみましょう。
タイプA:ちりめんジワタイプ(浅い・細かい)
特徴
- 細かい線が浅く入っている
- お風呂上がりなど、肌が潤っている時は目立ちにくくなる
- 日によってシワの濃さが変わる
主な原因
乾燥、間違ったスキンケア、紫外線などによる角層の水分不足。
対策方針
表皮の乾燥が主な原因と考えられ、保湿ケアを適切に行うことで、シワが目立ちにくくなる場合があります。
タイプB:表情ジワタイプ(動かすと出る・深い)
特徴
- 真顔ではシワがほとんど目立たない、または薄い
- 上目遣いをしたり、驚いた表情をすると横ジワがくっきり出る
- 眉間にシワが寄りやすい
主な原因
表情のクセ、前頭筋など表情筋の過緊張。
対策方針
筋肉の動きが関わるタイプです。
額に力を入れるクセを減らす意識を持つことに加え、医療機関ではボツリヌス毒素製剤(ボトックス®など)による治療が、表情ジワに対する有効な選択肢の一つとされています(参考:美容医療診療指針)。
タイプC:眼瞼下垂リスクタイプ(まぶたが重い)
特徴
- おでこを手で押さえて動かないようにし、目を開けようとすると、目が開きにくい
- 普段から「眠そう」と言われることがある
- 眉毛の位置が高い、または左右で高さが違う
- 肩こりや頭痛がひどい
主な原因
まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)の機能低下による眼瞼下垂など(参考:日本眼科学会、日本形成外科学会)。
対策方針
このタイプでは、美容的なケアだけでは十分な改善が難しい場合があります。
視界の狭さや生活への支障がある場合には、形成外科や眼科での診察を検討しましょう。
【自宅で改善】今日からできるおでこのシワ対策・セルフケア
タイプA・Bの初期段階であれば、自宅ケアで悪化を防ぎ、目立ちにくくできる可能性があります。
「自力でケアしたい」人がまずやるべき3つのアクションを紹介します。
1. スキンケア編:徹底保湿と有効成分の活用
若いからといって、化粧水だけで済ませていませんか?おでこのシワ対策には、水分を与えるだけでなく、それを逃がさない「油分」の蓋も重要です。
- セラミド配合
角層バリアと保湿機能を支える重要な成分で、乾燥による小ジワを目立ちにくくする助けになります。 - シワ改善有効成分(医薬部外品)
レチノールやニコチン酸アミド(ナイアシンアミド)が「シワを改善する」効能を持つ医薬部外品有効成分として厚生労働省に承認されています。
これらの成分を配合した薬用化粧品は、角層や真皮のコラーゲンに働きかけ、シワの改善が期待できるとされています。
2. マッサージ編:おでこは「擦らず」、頭〜目の周りをいたわる
「シワを伸ばしたい」と、おでこを指で強く擦るのは避けた方がよいとされています。
皮膚への摩擦は、バリア機能の低下や炎症の一因になり得るためです。
マッサージを行う場合は、おでこそのものを強くこするのではなく、頭皮やこめかみ周囲を「やさしく触れる」程度にとどめ、リラックス目的で行いましょう。
シワ予防効果についてははっきりしたエビデンスはないため、「気持ちよい範囲で行う補助的なケア」と考えるのが無難です。
3. 生活習慣編:スマホ姿勢と「表情の脱力」
- スマホはなるべく目の高さで
下を向いて画面をのぞき込む姿勢が続くと、目を細めたり眉間にシワが寄りやすくなります。画面を目の高さに近づけ、猫背を避けるよう意識しましょう。 - 視力の矯正
度が合っていないメガネやコンタクトを使っていると、ピントを合わせようとして目の周りや額に力が入り、シワが寄りやすくなることがあります。合わないと感じる場合は、眼科や眼鏡店で度数の見直しをしましょう。 - 表情の「脱力」を意識する
1日に何度か、「今、おでこに力が入っていないかな?」と意識してみましょう。気づいたら、息を吐きながら眉の力をふっと抜く習慣をつけることで、理論上は表情ジワの悪化予防につながると考えられています。
【美容医療】深く刻まれたおでこのシワや即効性を求める場合
「セルフケアだけでは追いつかない」「すでに深い溝になっている」「イベントまでに早く整えたい」という場合には、美容医療を検討する選択肢もあります。
ボツリヌス毒素注射(表情ジワの予防と改善)
対象:表情とともに出る額の横ジワ・眉間のシワなど。
- 仕組み
表情筋にボツリヌス毒素製剤を注射し、筋肉の過剰な動きを一時的に抑えることで、シワが寄りにくくします。 - 効果の現れ方
数日〜2週間ほどかけて徐々に効果が出てきて、表情ジワが目立ちにくくなることが多いとされています。 - 持続期間
一般的には4か月~9か月かけて徐々に元に戻るため、効果を維持したい場合は定期的な治療が必要です。
若い世代でも、将来深いシワを刻みにくくする予防的な治療として選ばれることがありますが、必要性やメリット・デメリットは必ず医師と相談して判断しましょう。
ヒアルロン酸注入(深い溝をふっくらさせる)
対象:真顔でもくっきりと残る、溝状の深いシワや凹み。
- 仕組み
シワの溝の下にヒアルロン酸を注入し、内側から皮膚を持ち上げることで、溝を浅くして目立ちにくくします。 - 注意点
注入量や部位選びを誤ると不自然な印象になることもあるため、経験豊富な医師による施術が重要です。
眼瞼下垂の手術・治療
対象:まぶたが重くて視界が狭い、眉を大きく上げないと見えにくいなど、眼瞼下垂が疑われるケース。
- 仕組み
まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)を短縮・固定するなどの手術を行い、まぶたの開きを改善します。 - 効果
まぶたを額の筋肉で無理に持ち上げる必要が減ることで、額のシワが目立ちにくくなることがあります。ただし、シワが完全に消えるとは限りません。 - 保険適用
視野障害など日常生活に支障がある場合には、公的医療保険の適用となることがあります。適用の可否は医療機関で相談しましょう。
こんなときは病院・クリニックへ(受診の目安)
「ただのおでこのシワ」と自己判断してしまう前に、以下のサインがあれば専門医への相談を検討してください。
医療機関に相談すべきサイン
- 視界が狭く感じる・まぶたが重い
上の視野が見えにくい場合、眼瞼下垂などが疑われます。 - ひどい頭痛や肩こりを伴う
まぶたを上げるために前頭筋を過剰に使っていることが一因となる場合があります。 - 左右差が大きい・片側だけ深いシワがある
筋肉や骨格のバランス、片側性の眼瞼下垂などが隠れている可能性があります。 - 3か月以上セルフケアを続けても全く変化がない、むしろ悪化している
何科を受診すべき?
- まぶたの機能(重さ・開きにくさ)が気になる場合
→ 形成外科または眼科(特に眼形成専門外来)。眼瞼下垂の診断や保険診療の手術について相談できます。 - 見た目の改善(シワを目立たなくしたい)が主目的の場合
→ 美容皮膚科または美容外科。ボトックスやヒアルロン酸注入、レーザーや高周波、HIFUなどの選択肢があります。
治験に参加するのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本ではシワでお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられることもある
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
>>治験ジャパン新規登録はこちら<<おでこのシワに関するよくある疑問
おでこのシワに関するよくある疑問を紹介します。
Q. 高校生でおでこにシワがあるのは変ですか?
A. 決して珍しいことではありません。
高校生でも、勉強やスマホによる眼精疲労、洗顔やニキビケアによる乾燥、表情のクセなどが重なれば、一時的な額のシワが目立つことがあります。
若い時期は肌の回復力も比較的高いため、保湿と紫外線対策、眉を上げるクセを減らす意識で、シワが目立ちにくくなる場合があります。
Q. 前髪を作れば隠れますか?
A. 見た目を一時的にカバーする方法としては有効ですが、ケアの代わりにはなりません。
厚めの前髪でシワを隠すと、人目は気になりにくくなります。
ただし、毛先や整髪料が肌に触れることで、肌荒れやかぶれの原因になることがあります。
おでこは清潔に保ち、シワの原因そのもの(乾燥・紫外線・表情のクセなど)への対策も並行して行いましょう。
Q. 生まれつきおでこにシワがあるのは遺伝ですか?
A. シワそのものが「遺伝する」というより、骨格や筋肉のつき方、肌質などの要素が影響します。
「おでこの形」や「目元の骨格」「筋肉の動き方」などは親子で似ることがあります。
その結果として、シワの入り方が似ることもありますが、紫外線・表情のクセ・スキンケア習慣など後天的な要因も大きく関わります。
Q. メンズ(男性)のシワ対策で気をつけることは?
A. 「実は乾燥しやすい」ことと日焼け対策がポイントです。
男性は皮脂量が多い一方で、皮膚からの水分蒸散量が多くバリア機能が弱い傾向が報告されており、乾燥小ジワが目立ちやすいとされています。
- 洗顔後は化粧水だけでなく乳液やクリームで水分と油分の両方を補う
- 通勤・屋外スポーツなど、日中はできるだけ日焼け止めを使用する
といった「基本のケア」がシワ対策にもつながります。
まとめ:若いからこそ「早めのケア」で未来の肌は変えやすい
「若いのにおでこにシワがある」と気づいた今こそが、ケアを始めるベストタイミングです。
- まずはタイプ別診断で、自分のシワのタイプと原因候補(乾燥・表情のクセ・眼瞼下垂など)を整理する。
- 今日から「こすらない保湿」と「毎日の紫外線対策」を習慣化する。
- スマホを見るときは目の高さを意識し、額に力を入れるクセに気づいたらふっと脱力する。
- 視界の異常や強い左右差、セルフケアでも改善しない場合は、形成外科・眼科・美容皮膚科など専門医に相談する。
若い肌は、光老化や乾燥の影響を受けながらも、ケアによって状態を整えやすい時期でもあります。
浅いシワの段階で対策を始めることで、将来のシワの悪化をある程度抑えられる可能性があります。
「もう手遅れかも」と諦めず、できることから一つずつ始めてみてください。
あなたのおでこは、正しいケアと生活習慣の積み重ねに、必ず少しずつ応えてくれます。
記事監修者情報
臨床助教や理化学研究所でのリサーチアソシエイトを歴任し、アカデミアと臨床の両面で研鑽を積んできた。加えて、美容皮膚科クリニックでの勤務経験も有し、一般皮膚科から美容皮膚科、小児皮膚科まで、幅広い年齢層・疾患に対応している。
2023年に 阿佐ヶ谷皮フ科 を開院し、「赤ちゃんからご高齢の方まで、安心して相談できるかかりつけ皮膚科」を目指して診療を行っている。
皮膚科専門医として、皮膚疾患およびアレルギー疾患に関する医学的内容の妥当性・安全性を確認し、最新の専門知識に基づいた監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会(最優秀論文賞受賞歴あり)
- 日本アレルギー学会
- 日本研究皮膚科学会(優秀演題選出歴あり)
- 慶應医学会
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参考資料・文献一覧
- 公益社団法人 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「光老化は普通の老化とどう違うのですか?」
- 公益社団法人 日本眼科学会「眼瞼下垂」疾患解説ページ
- 一般社団法人 日本形成外科学会「加齢性眼瞼下垂(腱膜性眼瞼下垂・眼瞼皮膚弛緩症)」
- 厚生労働省「2017年1月20日 薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録」(レチノールを有効成分とする薬用化粧品のシワ改善効能)
- 厚生労働省「2016年5月20日 薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録」(ニコチン酸アミド配合薬用乳液のシワ改善効能)
- 公益社団法人 日本皮膚科学会ほか「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」(シワ治療に関する章)