シミ治療を考える際、気になるのが「保険適用されるのか」という点ですよね。
治療するにしても少しでも費用を抑えたいところでしょう。
皮膚科で処方されるシミの薬はトラネキサム酸やシナール、ユベラなど種類が豊富ですが、保険適用の可否は治療目的か美容目的かで大きく異なります。
この記事では皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、保険適用の条件、処方薬の種類、費用目安、セルフケアのポイントまでわかりやすく解説。
シミ治療を始めたい方や費用を抑えたい方はぜひ参考にしてください。
皮膚科でもらえるシミの薬は保険適用されるのか?
皮膚科でもらえる薬は基本的に保険適用外ですが、医師の診断結果に左右されます。
基本的に保険適用外だが例外あり
シミ治療に用いられる薬は、基本的に保険適用外の自由診療となることが多いものの、特定の条件を満たせば保険が適用される場合があります。
シミ治療は美容目的とみなされることが多く、自由診療として全額自己負担となるケースが一般的。
しかし、特定のシミが医療的に「治療が必要」と診断されると、保険適用となる可能性があります。
例えば、炎症後色素沈着は、医療的な治療目的とみなされることがあります。
具体例として、トラネキサム酸は一部保険適用となる場合がありますが、美容目的の場合は適用外です。
また、シナールやユベラはビタミン剤として処方される場合に保険適用されることもありますが、シミ治療目的では自由診療となることがほとんど。
シミの薬が保険適用されるかどうかは、診断内容や治療目的に大きく左右されるため、まずは医師に相談することが重要です。
医師の診断によって適用の可否が決まる
保険適用の可否は、医師の診断に基づいて決定されます。
医師はシミの種類や原因を診察し、それが医療的に治療が必要かどうかを判断します。
例えば、炎症後色素沈着は診断名がつけば保険適用となる可能性が高いです。
一方、加齢によるシミや肝斑は、美容目的と判断されやすいため、保険適用外となるケースが多いです。
トラネキサム酸は湿疹や蕁麻疹(じんましん)などの治療で保険適用されることがありますが、肝斑治療では適用外となることが多いです。
このように同じ薬でも診断内容によって適用条件が異なるため、医師との詳細な相談が不可欠です。
保険適用されるシミの種類とは?
先天性色素異常や炎症や外傷が原因のシミは、保険適用となる可能性があります。
太田母斑・扁平母斑など先天性色素異常
太田母斑や扁平母斑(へんぺいぼはん)などの先天性色素異常は、保険医療で使われる薬剤では効果がありません。
これらのシミは生まれつきまたは幼少期から存在する色素異常で、レーザー治療が必要とされる場合があります。
特に太田母斑は顔面に青灰色の斑点が現れる症状で、見た目だけでなく心理的な影響も考慮され、レーザー治療が保険適用となることが多いです。
ただし、クリニックや医師の判断により異なるため、事前の確認が必要です。
先天性色素異常の治療が保険適応となるかどうかは医師に詳細を相談しましょう。
外傷性色素沈着・炎症後色素沈着
外傷性色素沈着や炎症後色素沈着も、保険適用となる可能性が高いシミです。
これらのシミは、ニキビ、虫刺され、火傷などの炎症や外傷が原因で発生します。
医療的に「炎症の結果」として扱われるため、治療目的の診断がつけば保険適用となることがあります。
ただし、美容目的とみなされると適用外となるため、医師の診断が重要です。
外傷や炎症によるシミは保険適用を受けやすいので、原因を明確に伝えることがポイントです。
老人性色素斑や肝斑は基本的に適用外
老人性色素斑や肝斑は、基本的に保険適用外となるシミです。
老人性色素斑は加齢や紫外線によるメラニン蓄積が原因で、肝斑はホルモンや紫外線の影響で発生します。
これらは外見の改善を目的とする美容的治療とみなされるため、保険適用外となることがほとんどです。
また、老人性色素斑に対するレーザー治療も自由診療です(参考:慶應義塾大学病院 1)。
皮膚科で処方されるシミの薬と保険適用の有無
皮膚科で処方される主要な薬について解説します。
トラネキサム酸|肝斑治療で一部保険適用
トラネキサム酸はシミや肝斑の治療に広く用いられる内服薬ですが、保険適用の可否は診断によります。
トラネキサム酸はメラニン生成を促すプラスミンという物質を抑え、肝斑や炎症後色素沈着の改善に期待できます(参考:日本皮膚科学会 2)。
湿疹や蕁麻疹の治療では保険適用されますが、肝斑治療では自由診療となることが多いです。
例えば、肝斑治療で1日1,500mgのトラネキサム酸が処方される場合、30日分で2,000~3,000円程度(自由診療)の費用がかかります。
一方、炎症後色素沈着で保険適用されると、費用は1,000円前後に抑えられることもあります。
シナール・ユベラ|ビタミン剤としての役割と適用条件
シナール(ビタミンC・B5配合)やユベラ(ビタミンE)は、シミ治療で補助的に使われるビタミン剤ですが、保険適用は限定的です。
シナールはメラニン生成を抑え、コラーゲン生成を促進。
ユベラは血行促進や抗酸化作用で肌のターンオーバーを助けます。
これらは皮膚の健康維持目的で保険適用される場合がありますが、シミ治療目的では自由診療が一般的です。
例えば、シナールは30日分で800~1,100円、ユベラは1,000円程度(自由診療)。
保険適用されると、費用は半額程度になることもあります。
ハイドロキノン・トレチノイン|自由診療が主流
ハイドロキノンとトレチノインは、シミ治療に効果的な外用薬ですが、基本的に自由診療です。
ハイドロキノンは「肌の漂白剤」とも呼ばれ、メラニン生成を抑えます。
トレチノインはビタミンA誘導体で、ターンオーバーを促進しメラニンを排出。
どちらもシミやニキビ跡に効果的ですが、自由診療となることがほとんどです。
例えば、ハイドロキノンクリーム(4%)は5gで2,000~5,000円、トレチノイン(0.05%)は5gで3,000~6,000円程度。
保険適用されるケースはありません。
保険適用される場合の診療の流れと費用目安
皮膚科診療の流れや費用の目安を解説します。
初診・再診・処方の一連の流れ
保険適用でシミ治療を受ける場合、以下の流れで進みます。
まず、皮膚科を受診し、医師がシミの種類や原因を診断します。
初診では問診や皮膚の観察を行い、必要に応じて検査を実施。
再診では効果の確認や処方の調整が行われます。
診断によって美容目的ではないと診断されれば、保険適用の薬(例:トラネキサム酸)が処方されます。
診療費・薬剤費の相場感
保険適用された場合の費用は、診療費と薬剤費で構成されます。
初診料は2,000~3,000円(保険適用で500~1,000円程度)、再診料は1,000~2,000円(保険適用で300~600円)。
薬剤費はトラネキサム酸(30日分)が500~1,000円、シナールやユベラが300~600円程度です。
例えば、トラネキサム酸とシナールを保険適用で処方された場合、初診+薬剤費で2,000円程度が目安。
一方自由診療では、トラネキサム酸(2,000~3,000円)+ハイドロキノン(3,000~5,000円)+初診料(3,000円)で、1ヶ月あたり8,000~11,000円程度かかることもあります。
自由診療は効果が高い薬や施術を組み合わせられる一方、費用負担が大きいため、予算に応じて選択しましょう。
保険適用を受けるためのポイントと注意点
シミ改善で保険適用を受けるには、病院への事前確認を含め、治療としての診断を受けることが重要です。
治療としての診断を受けることがカギ
保険適用を受けるには、シミが「治療が必要な疾患」と診断されることが重要です。
例えば、炎症後色素沈着は、医療としての治療目的として扱われやすいです。
また、医師にシミの原因(例:ニキビ跡、怪我)や症状(例:かゆみ、痛み)を詳しく伝えることで、治療目的の診断を受けやすくなります。
治療目的の診断を受けるには、症状を具体的に伝えることが大切です。
診療前に保険適用の有無を医師に確認する
保険適用の可能性を高めるには、事前に医師に確認することが大切です。
受診前に、クリニックのウェブサイトや電話で「シミ治療の保険適用は可能か」を問い合わせましょう。
特にトラネキサム酸やハイドロキノンの保険適用の有無は、クリニックや診断内容で異なるため、明確な回答を得ることが重要です。
美容皮膚科と一般皮膚科の違いに注意
美容皮膚科と一般皮膚科では、保険適用のアプローチが異なります。
美容皮膚科は自由診療を前提に、レーザー治療や効果の高い薬を提供することが多いです。
一方、一般皮膚科は治療目的の診断を重視し、保険適用を受けられる場合があります。
ただし、一般皮膚科でもシミ治療を扱わない場合があるため、事前確認が必要です。
クリニック選びでは、保険適用を希望するなら一般皮膚科を優先し、事前に診療内容を確認しましょう。
セルフケアと並行して行うべき対策とは?
シミを改善するには紫外線対策をはじめ、生活習慣の見直しも重要です。
紫外線対策の基本(UVケア)
シミ治療の効果を高めるには、紫外線対策が欠かせません。
紫外線はメラニン生成を促進し、シミを悪化させる主な原因です。
SPF50+、PA++++の日焼け止めを毎日塗り、帽子やサングラスを活用しましょう。

特にハイドロキノン使用中は肌が紫外線に敏感になるため、徹底したUVケアが必要です。
例えば、朝に日焼け止めを塗り、2~3時間ごとに塗り直す習慣が推奨されます。
紫外線対策を徹底することで、シミの予防と治療効果の向上が期待できます。
スキンケアの選び方と習慣改善
適切なスキンケアは、シミ治療の補助として重要です。
保湿剤やビタミンC配合の化粧品は肌のバリア機能を高め、メラニン生成を抑えます。
ハイドロキノンやトレチノイン使用時は肌が乾燥しやすいため、低刺激の保湿剤(例:セラミド配合)を併用しましょう。
例えば、朝はビタミンC美容液+保湿剤、夜はハイドロキノン+保湿剤のルーティンが効果的です。
生活習慣(睡眠・ストレス・栄養)の見直し
生活習慣の改善も、シミ治療の成功に欠かせません。

睡眠不足やストレスはホルモンバランスを乱し、肝斑を悪化させる可能性があります。
肌の健康維持の手助けとなるビタミンCやEを多く含む食品(例:ブロッコリー、アーモンド)を積極的に摂取し、栄養バランスを整えましょう。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本ではシミでお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられる
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
皮膚科医 川島眞医師がシミの疑問に回答


自己判断でのケアではなく、まずは診断からスタートしましょう。


市販薬で改善しない場合は、皮膚科での診断・処方治療をおすすめします。


日焼け止めはSPF30〜50、PA+++以上が目安で、汗をかいたりこすれたらこまめに塗り直すことが重要です。


早いうちからのケアが将来的なシミ予防につながります。


ただし、医薬部外品では強いシミを消す効果は限定的です。
治療との併用や予防的ケアとして使うのが理想的です。
まとめ|保険適用でのシミ治療には条件がある
シミ治療の保険適用は、医師による診断内容と治療目的に左右されます。
炎症後色素沈着は保険適用される可能性が高い一方、老人性色素斑や肝斑は自由診療が一般的です。
トラネキサム酸やシナールは治療目的なら保険適用される場合がありますが、美容目的では全額自己負担です。
保険適用を希望するならシミの原因や症状を医師に詳しく伝え、治療目的の診断を受けることが重要です。
参考資料・サイト一覧
1.慶応義塾大学病院 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000293/
2.日本皮膚科学会「美容医療診療指針」https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/biyo2v.pdf
記事監修者情報

Dクリニックグループ代表
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚アレルギー学会
- 日本香粧品学会
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