間質性膀胱炎による辛い痛みや頻尿を抱え、「この痛みから解放されたい」「希望が欲しい」と切実に願っている方は少なくありません。
間質性膀胱炎は「完治が難しい」とされていますが、それと同時に、症状が改善し「実質的に治った」状態(日常生活の回復)を手に入れた方々がいるのも事実です。
この記事では、なぜ完治が難しいのかという医学的な背景から、具体的な改善方法、そしてどのように向き合うべきかまでを網羅します。
間質性膀胱炎が「治った」の本当の意味。“完治”と“症状改善”の違い
まず最も重要な点として、間質性膀胱炎における「治った」という言葉の定義を整理します。
間質性膀胱炎において「治った」と表現される状態は、多くの場合、病気そのものが消滅する「医学的完治」ではなく、症状がコントロールされ、日常生活の質(QOL)が戻る「寛解・症状コントロール」を指します。
- 医学的完治:病気の原因が取り除かれ、再発の心配がない状態。
- 寛解・症状改善:症状が大幅に軽減、または消失し、安定した状態が続くこと。日常生活に支障がない状態。
間質性膀胱炎は、原因不明な点が多く、根本治療が未確立のため「医学的完治は難しい」と説明されます(参考:難病情報センター 1)。
しかし、適切な治療とセルフケアにより、多くの人が「実質的に治った」と感じる寛解状態を目指すことは可能とされています。
なぜ「完治は難しい」と言われるのか?
間質性膀胱炎は、細菌感染による一般的な膀胱炎とは異なり、原因がまだ完全には解明されていません(参考:日本間質性膀胱炎研究会 2)。
膀胱の粘膜に異常が起き、尿がしみ込むことで痛みや頻尿が発生するという考えもありますが、根本的な原因が不明なため、そこを断ち切る「根本治療」も未確立です。
また、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す「波」があるのも特徴で 、これが「治りにくい」「再発する」と感じる要因にもなっています(参考:米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所 3)。
多くの人が目指す「実質的に治った」状態とは?
では、「実質的に治った」状態とは、具体的にどのような生活でしょうか。
これは、多くの患者さんが目標とする状態です。
ただし、症状に関しては個人差が大きい点に注意が必要です。
- 夜中に痛みや尿意で起きず、朝まで眠れる。
- トイレの場所を気にせず、旅行や長距離の移動ができる。
- 仕事や趣味に集中でき、痛みや尿意を忘れている時間がある。
- 食事制限を過度に気にしなくても、症状が安定している。
- 「また痛くなるかも」という不安から解放される。
間質性膀胱炎の症状を改善するための治療法と選択肢
現在行われている主な治療の選択肢を整理します(参考:日本泌尿器科学会 4)。
病院で行われる主な治療法(保険適用)
- 膀胱水圧拡張術: 麻酔下で膀胱に生理食塩水を注入し、膀胱を水圧で広げる治療法。診断と治療を兼ねて行われることが多いです。特にハンナ型(膀胱粘膜に特有の病変があるタイプ)に有効な場合がありますが 、効果の持続期間には個人差があります。
- 薬物療法: 症状緩和のため、複数の薬が組み合わせて使われる場合があります。
抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬: 膀胱の炎症やアレルギー反応を抑える。
三環系抗うつ薬: 少量を使い、膀胱の知覚過敏や痛みを抑える目的で処方される。
鎮痛薬: 痛みが強い場合に用いる。 - 膀胱内注入療法: 膀胱内に直接薬剤(ジメチルスルホキシド(DMSO)やヘパリンなど)を注入し、粘膜の修復を促す治療法です。
- ハンナ型の場合の手術: ハンナ病変を電気やレーザーで焼灼(焼く)する手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBt)など)が行われることがあります。
日常生活でできるセルフケア(食事療法・行動療法)
治療と並行して、セルフケアが症状改善の鍵となります。
- 避けるべき食べ物:症状を悪化させる可能性がある食品(酸味の強いもの(柑橘類、トマト)、カフェイン 、アルコール、香辛料 、炭酸飲料など)を特定し、避けることが推奨されます。これらを一度やめ、一つずつ試して自分に合うか確認する「除去食」が有効です(参考:東京女子医科大学附属足立医療センター 5)。
- 水分摂取のタイミングと量:尿が濃くなると刺激になるため、水分を我慢しすぎるのは逆効果です。一度にがぶ飲みせず、こまめに(ただし就寝前は控えるなど)水分を摂ることが重要です。
- ストレス管理と骨盤底筋トレーニング:ストレスは症状を悪化させる要因の一つです。リラックスできる時間を持つことが大切です。また、過度な骨盤底筋トレーニング(締める運動)は逆効果になることがあるため、専門家の指導のもと「緩める」ことを意識したリラクセーションが推奨される場合もあります(参考:米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所 6)。
間質性膀胱炎の不安との向き合い方
治療法やセルフケアだけでなく、「どのように向き合うか」という視点も重要です。
不安や孤独感を抱える中で、希望を持つための「心の持ち方」を紹介します。
また、信頼できる医師の見つけ方も併せて紹介します。
完璧(完治)を求めず「コントロール可能な状態」を受け入れる
「症状ゼロ」の完璧な状態を目指しすぎると、少しの不調で「また治らなかった」と絶望しやすくなります。
「痛みがない時間が持てた」「今日は旅行に行けた」という小さな改善を評価し、症状と共存しながらコントロールする状態(寛解)を受け入れることが重要です。
「再発はあっても改善できる」と症状の波を理解する
この病気は、体調やストレスによって症状に「波」が出るのが特徴です。
悪化した時に「もうダメだ」と落ち込むのではなく、「今は波が来ている時期。
でも、食事に気をつければまた落ち着くはず」と、再発を一時的なものとして捉え 、対処法を知っていることが強みになります。
孤立せず、医師や家族、同じ悩みを持つ人と繋がる
痛みや頻尿は、周囲に理解されにくい症状です。
孤独感はストレスとなり、症状を悪化させる可能性があります。
信頼できる医師を「パートナー」として治療方針を一緒に考えたり、家族に症状を正しく伝えたり、患者会などで同じ悩みを持つ人と繋がり、「一人ではない」という安心感を得ることが重要です。
自分に合う治療法・専門医(名医)の見つけ方
間質性膀胱炎は専門性が高い領域のため、病院選びが非常に重要です。
- 「間質性膀胱炎」の診療実績や症例数を公表しているか。
- 膀胱水圧拡張術や膀胱内注入療法など、専門的な治療の選択肢を持っているか。
- 食事指導や生活指導にも熱心か。
- 医師がこちらの話をよく聞いてくれるか(信頼関係が築けるか)。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では間質性膀胱炎でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
間質性膀胱炎に関するよくある疑問
最後に、関連する疑問とその回答を紹介します。
Q. 間質性膀胱炎は一生治らないのですか?
A.「完治」(医学的に病気が消え去ること)は難しいとされますが 、多くの人が症状をコントロールし「実質的に治った」状態(寛解)で日常生活を送っています。
Q. 症状が改善するまで、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 個人差が非常に大きいです。治療法(手術、投薬、セルフケアなど)や、それらがご自身の体質と合うかによって異なります。
Q. やはり食べ物や飲み物は関係ありますか?
A. 大きく関係すると言われます。特に酸味の強いもの(柑橘類)、カフェイン、香辛料、アルコールなどは、膀胱を刺激し症状を悪化させる可能性があるため、避ける食事療法が推奨されます。
まとめ:自分に合う「改善」の道筋を見つけましょう
間質性膀胱炎は、医学的な完治が難しいとされる病気ですが、「症状の改善」と「生活の質の回復」を実感している方もいます。
症状をコントロールし、旅行や趣味を楽しめる状態(=実質的に治った状態)を目指すことは決して不可能ではありません。
治療法、セルフケア、そして間質性膀胱炎にどのように向き合うかを参考に、一人で抱え込まず、あなたに合った治療法を専門医と一緒に見つけてください。
参考資料・文献一覧
1.難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/4430
2.日本間質性膀胱炎研究会 https://square.umin.ac.jp/SICJ/about/index.html
3.米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所 https://www.niddk.nih.gov/health-information/urologic-diseases/interstitial-cystitis-bladder-pain-syndrome/symptoms-causes
4.日本泌尿器科学会 https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/35_interstitial_cystitis_ver2021_info.pdf
5.東京女子医科大学附属足立医療センター https://twmu-amc.jp/mce/prsurgery/type/4.html
6.米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所 https://www.niddk.nih.gov/health-information/urologic-diseases/interstitial-cystitis-bladder-pain-syndrome/symptoms-causes