機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)の開発・申請には、数百万から億単位の費用がかかります。

この高額なコストを戦略的にカバーするためには、補助金・助成金の活用が不可欠です。

しかし、制度は複雑で、「どの地域で」「何のために」利用できるのか、情報が分散しがち。

この記事では、

機能性表示食品(都道府県の支援が豊富)とトクホ(研究開発型助成金が基本戦略)の補助金の探し方。

採択率を高めるための「市場性」「実現可能性」を軸とした申請書の勝ち筋。

などを網羅的に解説します。

事業フェーズに合った最適な補助金を見つけ、採択を勝ち取るための道筋を把握しましょう。

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使える補助金は「地域×用途×制度」の掛け合わせで探す

機能性表示食品やトクホの開発・申請に利用できる補助金を探す際、最も重要なのは「どの地域で」「何のために」「どのような制度を」利用したいのかを明確にすることです。

結論から言うと、主に利用可能な補助金は「都道府県主体の補助金」と「ものづくり補助金」の2種類です。

機能性表示食品

都道府県が主体となる補助金が豊富で、製品開発だけでなく、届出に必要な書類作成(研究レビュー:SR)といった実務支援まで対象となるケースが多いのが特徴です。

具体的な公募情報が見つけやすく、「今すぐ使える制度」を比較検討することが可能です。

また、設備投資や研究開発を広く支援する国の「ものづくり補助金」を活用できる可能性もあります。

トクホ

トクホ専用の補助金は非常に稀です。

しかし、ものづくり補助金や地方自治体の研究開発助成金を活用することで、トクホの開発プロセスの一部(試作、臨床試験委託、品質管理設備導入など)を補助対象にできる場合があります。

制度の基本

まずは、機能性表示食品とトクホの基本的な違いを理解しましょう。

この違いが、補助金の探し方や種類に直結します。

機能性表示食品とトクホの違い

機能性表示食品

国の許可は不要で、事業者の責任において科学的根拠を届け出る「届出制」です。

科学的根拠は、既存の研究論文を精査する研究レビュー(SR)か、製品を用いたヒト試験のいずれかとなります。

トクホ

国が有効性・安全性を個別に審査し「許可」する制度です。

原則としてヒトでの臨床試験が必須であり、開発から許可取得までに数千万円から億単位の費用がかかることもあります。

この高コストこそが、事業者が補助金を求める大きな理由です。

都道府県×用途別 補助金・助成金

情報が分散しがちな都道府県別の補助金制度を一覧で比較検討できるよう、表で整理しました。

自社の所在地と開発フェーズを軸に、最適な制度を見つけてください。

都道府県×用途別 早見(例:静岡・徳島・佐賀)

地域用途カテゴリ対象者上限額補助率主な対象経費公募時期の目安相談窓口(一次情報)
静岡県研究開発・試作県内中小企業200万円1/2試作品開発費、分析費、専門家委託費例年4~6月静岡県産業振興財団(未来型食品等開発助成金)
徳島県届出実務支援県内中小企業100万円1/2SR作成委託費、専門家謝金随時(予算枠到達で終了)徳島県 商工労働部(機能性表示食品創出支援)
佐賀県届出実務支援県内中小企業・農林漁業者SR作成:75万円/届出書類作成:30万円1/2SR作成費、届出書類作成費例年6月頃佐賀県地域産業支援センター

金額・時期は2025年の目安です。

最終的な要件・日程・対象経費は、各「相談窓口(一次情報)」の公募要領で必ずご確認ください。

カテゴリ別の補助金制度

機能性表示食品向け

  1. 研究開発・試作(大型)

    静岡県産業振興財団の「機能性表示食品等研究開発推進事業」のように、上限1,000万円規模の大型助成が代表例です。

    ※2025年度からは『未来型食品等開発助成金』としてリニューアルされ、補助率1/2・上限額200万円に縮小されています(参考:静岡ウェルネスプロジェクト 1)

  2. 届出実務支援

    徳島県の「機能性表示食品創出支援事業費補助金」や佐賀県の「機能性表示食品届出補助事業費補助金」など、SR作成費用や専門家への相談費用を補助する、実務に特化した支援があります。

トクホ開発にも活用可能な補助金

  1. ヒト試験・臨床評価

    特定の製品分野に限定されない、自治体による中小企業向けの「研究開発型」助成金が狙い目です。ヒト試験費用が対象経費に含まれるかを確認しましょう。

【全国対象】設備投資・開発なら「ものづくり補助金」の活用を

全国の中小企業が利用できる代表的な補助金が、経済産業省の「ものづくり補助金」です。

ものづくり補助金は新製品開発や革新的な生産プロセス改善を支援する制度であり、機能性表示食品やトクホの開発も対象となり得ます。

ただし、ものづくり補助金の交付を受けるためには、新たに設備投資をすること等が必須条件となっています。

また、採択されるためには「新素材の活用」「製造工程の抜本的改善」「新技術導入による品質・効率の向上」といった革新性を示す必要があります。

地域用途カテゴリ対象者上限額補助率主な対象経費公募時期の目安相談窓口(一次情報)
全国(経産省)設備投資全国の中小企業750万〜1,250万円(類型で変動)1/2(小規模は2/3)設備導入費、試作ライン構築、HACCP対応設備年3回程度(春・夏・秋)ものづくり補助金公式
全国(消費者庁)研究費大学・研究機関・共同研究企業等課題ごとに異なる食品安全に関する研究費(基礎研究寄り)例年5〜7月消費者庁研究費ページ

機能性表示食品やトクホ開発の場合、基本的にはものづくり補助金の「製品・サービス高付加価値化枠」で申請します。

海外展開も計画している場合は「グローバル展開型」も検討できます。

採択事例

  1. 株式会社小栗農園(静岡県)

    自社のお茶由来のカテキンを活用し、「体脂肪を減らす」機能性を表示した新商品の開発で採択されました。

  2. 有限会社田向商店(青森県)

    特許技術を使い、機能性表示食品とサメ肉のレトルト食品を開発する計画で採択されています。

ものづくり補助金の重要なポイント

ものづくり補助金への申請を検討する際は、以下の点に注意する必要があります。

革新性・生産性向上を明確に

単なる既存商品の改良ではなく、新しい技術の導入や、製造プロセスを根本的に改善するような「革新的な取り組み」を具体的に示す必要があります。

なぜその設備が必要で、導入によって生産性がどう向上するのかを明確に説明しましょう。

補助対象となる経費を正しく理解する

機能性表示食品・トクホの開発においてものづくり補助金の交付を受けるには、設備投資が必須となります。

詳しくは後述しますが、対象となるのは、主に機械装置費、技術導入費、試作品開発のための原材料費や外注費などです。自社の社員の人件費や、建物の建設費などは対象外なので注意が必要です。

事業期間に注意(特にトクホ開発)

トクホの認可取得には数年かかることが多い一方、ものづくり補助金の事業期間は10〜12ヶ月です。

そのため、補助金でカバーできるのは「開発初期の試作」「臨床試験の一部」「品質管理設備の導入」など、期間内に完結できる工程に限られます。

補助金で前半フェーズのコストを軽減し、その後は自社資金や他制度を組み合わせて進める、という分担設計が現実的です。

また、ものづくり補助金以外にも、食品衛生基準科学研究費補助金などが全国的に利用可能です。

消費者庁が公募する「食品衛生基準科学研究費補助金」は、大学や研究機関が中心となって申請する研究費です。

ただし、中小企業単独での申請はできない場合が多いため、利用を検討する際は大学や公設試験研究機関との共同研究体制を前提に考える必要があります。(参考:消費者庁 2)。

ものづくり補助金の募集要綱

ここでは第21次公募要領を例に、ものづくり補助金の補助対象者や補助対象経費を解説します。

募集ごとに要綱が変わる可能性もあるため、最新の情報は確認しましょう。

補助対象者

日本国内に本社および補助事業実施場所(工場・店舗など)を持つ事業者で、以下のいずれかに該当する場合に対象となります。

A. 中小企業者

「中小企業等経営強化法」に基づく中小企業。

業種資本金従業員数
製造業・建設業など3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業・サービス業5,000万円以下50~100人以下

※医療法人・財団法人・任意団体などは対象外。

B. 小規模企業者・小規模事業者

  • 製造業など:従業員20人以下
  • 商業・サービス業:従業員5人以下
  • 宿泊業・娯楽業:20人以下
  • 小規模事業者は補助率2/3。

C. 特定事業者の一部

  • 資本金10億円未満、従業員数500人以下の中堅企業(中小企業等経営強化法 第2条第5項該当者)。

D. 特定非営利活動法人(NPO)

  • 中小企業振興に直結する活動を行うこと。
  • 従業員300人以下。
  • 「収益事業」を行っており、認定NPOではないこと。
  • 経営力向上計画の認定を受けていること。

E. 社会福祉法人

  • 所轄庁の認可を受けて設立。
  • 従業員300人以下。
  • 収益事業を行っていること。

補助対象外となる事業者(申請できない主なケース)

  • 過去16か月以内に以下の補助金に採択された者:
  • 過去の採択事業で「事業化状況報告書」を未提出。
  • 過去3年間で2回、同補助金の交付を受けた事業者。
  • 「みなし大企業」(大企業の子会社・支配下など)。
  • 直近3年の課税所得平均が15億円超。
  • 暴力団関係、虚偽申請、名義貸しなど。
    経済産業省・中小機構からの交付停止・指名停止中。
  • 主体性を欠く申請(GビズIDを他者が使用など)。

補助対象要件(満たすべき条件)

基本要件(全申請者共通)

  • 賃金増加要件:
     給与支給総額または1人当たり給与を年平均2%以上増加。未達の場合は返還義務。
  • 付加価値額増加要件:
     補助事業後3~5年で付加価値額を年平均3%以上増加。
  • 最低賃金水準要件:
     事業所内最低賃金を地域最低賃金+30円以上に維持。未達時は返還義務。
  • 仕事・子育て両立要件(従業員21名以上):
     「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画を策定・公表済であること。

補助対象経費の概要

  • 設備投資が必須条件。
     単価50万円(税抜)以上 の機械装置等を取得・納品・検収し、適切に管理すること。
  • 「機械装置・システム構築費」以外の経費は、
    • 一般枠:最大 500万円(税抜)
    • グローバル枠:最大 1,000万円(税抜)までが上限。
  • 補助対象経費は「補助事業実施期間内」に支払いを完了したもののみ。
     発注・契約・購入が交付決定日前のものは対象外。
  • 経費の支払いは、補助事業者本人名義での銀行振込が必須。
    補助金算定時、消費税は除外して計算すること。

補助対象となる主な経費区分

機械装置・システム構築費(必須項目)

  • 本事業に専ら使用される機械・装置、工具・器具(測定・検査工具等)の購入、製作、借用費。
  • 専用ソフトウェア・情報システムの購入、構築、借用費。
  • 上記に伴う改良・修繕・据付費。
  • 生産性向上のための防災性能に優れた設備も対象可。
  • 自社製作する場合の部品購入費も含む。
  • リース・レンタルは交付決定後契約かつ期間内分のみ対象。
  • 据付工事は軽微な範囲(基礎工事・整地工事は対象外)。

技術導入費

  • 特許権・実用新案権・ノウハウ・設計情報などを他者から導入する費用。

専門家経費

  • 外部専門家による指導、助言、技術支援等に要する謝金・旅費・宿泊費など。

運搬費

  • 機械・装置の搬入、輸送に関する費用。

クラウドサービス利用費

  • 本事業で導入するシステム・データ活用に必要なクラウド使用料(期間内分)。

原材料費

  • 試作品やサンプル開発に必要な材料・副資材・部品などの購入費用。

外注費

  • 試作品製作や検査、分析などの委託業務費。
     (※本事業の主要部分を丸投げする委託は不可)

知的財産権関連経費

  • 特許出願・商標登録など、知的財産の取得・維持に要する費用。

補助対象外となる経費

  • 交付決定前の契約・支出
  • 交際費・寄付金・接待費
  • 借入金の返済やリース終了後の買い取り費用
  • 自社社員の人件費・旅費
  • 税金、社会保険料、公共料金など

申請を通すための“勝ち筋”

補助金は単に要件を満たせば採択されるわけではありません。

審査員に「この事業に投資したい」と思わせる、説得力のあるストーリーが必要です。

ここでは、採択率を高めるための共通テンプレートを紹介します。

加点評価されるストーリー設計:4つの軸

申請書を作成する際は、以下の4つの軸を意識して事業の価値を訴求しましょう。

1
地域性

地域の特産品や未利用資源を活用するなど、地域経済への貢献をアピールします。

2
市場性

健康寿命の延伸といった社会課題の解決にどう貢献できるか、明確なターゲットと市場規模を示します。

3
実現可能性

社内体制はもちろん、大学や公設試験研究機関、CRO(開発業務受託機関)といった外部機関との連携計画を具体的に示すことで、計画の信頼性を高めます。

4
波及効果

事業の成功が、新たな雇用創出や業界のモデルケースとして横展開できる可能性を示します。

体制・外注計画の見せ方

誰が何を担当するのかを明確にした体制図を作成し、役割分担を視覚的に示しましょう。

特に自社にないノウハウを大学や専門機関との連携でどう補うのかを具体的に記述することが重要です。

KPIとマイルストーンの設定例

事業の進捗を客観的に示すため、具体的な数値目標(KPI)と達成時期(マイルストーン)を設定します。

(例)3ヶ月後:ヒト試験のプロトコル確定 → 1年後:機能性表示食品の届出完了/トクホの許可申請 → 2年後:製品上市、初年度売上〇〇円達成

最新動向とリスク回避

補助金を活用して事業を推進する上で、制度の最新動向を把握し、潜在的なリスクを回避することは極めて重要です。

【機能性表示食品】制度変更と注意点

現在、機能性表示食品制度の見直しが進められています(参考:消費者庁 3)。

消費者庁が公表する「機能性表示食品の今後について」といった最新資料を定期的に確認し、情報提供のあり方や表示の適正化に関する動向を常に把握しておくことが、事業撤回のリスクを最小化するために不可欠です。

【特定保健用食品】厳格な審査を通過するためのポイント

トクホは国の厳格な審査を伴います。

制度の要求事項を正確に理解することが成功の鍵です。Q&Aの改正なども定期的にチェックしましょう。

経費申請でよくあるNG例

  • 対象外経費の計上: 完成した製品の広告宣伝費や、本格的な量産にかかる費用は対象外となることがほとんどです。
  • 期間外の支払い・不適切な手続き: 補助事業として定められた期間外に発注・支払いを行った経費や、規定通りの相見積もりを取っていないケースは認められません。

機能性表示食品・トクホに関するよくある質問(FAQ)

機能性表示食品・トクホに関するよくある質問とその回答を紹介します。

Q
ヒト試験の費用はどこまで補助対象になりますか?
A

補助金によりますが、CRO(開発業務受託機関)への委託費、被験者の募集費、試験結果を論文化するための投稿料などが対象になる場合があります。

必ず個別の公募要領で「対象経費」の詳細を確認してください。

Q
機能性表示食品で、研究レビュー(SR)と自社でのヒト試験はどちらを選ぶべき? 
A

評価したい機能性関与成分について、質の高い科学的根拠となる研究論文がすでに複数存在する場合は、それらを網羅的に評価する研究レビュー(SR)が効率的です。

一方、独自開発の素材など、既存の研究がない場合は、自社で新たにヒト試験を実施する必要があります。

また、中小企業がヒト試験を行う場合、いきなり高額な予算を投資し試験を行うより、まずは数百万円の予算で食品の安全性や有効性を確認するケースが多いです。

Q
広告表現で注意することはありますか? 
A

補助金はあくまで製品開発や届出・申請を支援するものです。

製品販売時の広告は、薬機法や景品表示法を遵守する必要があります。

特に機能性表示食品では、届け出た表示の範囲を逸脱した表現は認められないため、注意が必須です。

Q
トクホの取得には総額でいくらくらいかかりますか?
A

ヒト試験の規模や内容によって大きく変動しますが、数千万円から、場合によっては億単位の費用がかかることも珍しくありません。

高額な投資となるからこそ、補助金の戦略的な活用が重要になります。

まとめ

補助金を探す際は「地域×用途×制度」の掛け合わせが重要です。

機能性表示食品は都道府県主体の補助金が豊富で、製品開発から届出実務まで幅広く支援するのが特徴です。

一方、トクホは、ものづくり補助金や中小企業向けの研究開発助成金などの補助金制度を活用するのが基本戦略となります。

 また、補助金の経費として広告宣伝費が対象外であったり、事業期間外の支払いが認められなかったりするため、公募要領を正確に理解することが重要です。

参考資料・文献一覧

1.静岡ウェルネスプロジェクト https://www.fsc-shizuoka.com/info/07miraigatasyokuhin/

2.消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/sience/research_grant/index.html

3.消費者庁 https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms201_240823_01.pdf.

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